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電磁気学との食い違いと Michelson–Morley の実験

2026年10月15日14分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第1章 相対性原理と光速不変
目次
  1. 波動方程式は Galilei 変換で形を変える
  2. エーテルの仮説
  3. Michelson–Morley の干渉計
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第1章 §1.2 ★★★ 波動方程式が Galilei 変換で形を変えることと、光の媒質に対する地球の運動が見つからなかった実験を並べ、相対論が要る理由を示す

波動方程式は Galilei 変換で形を変える

真空中の Maxwell 方程式から、電場と磁場の各成分 ψ\psi が波動方程式

∂2ψ∂x2+∂2ψ∂y2+∂2ψ∂z2−1c2∂2ψ∂t2=0,c=1ε0μ0(1.6)\frac{\partial ^2\psi}{\partial x^2}+\frac{\partial ^2\psi}{\partial y^2}+\frac{\partial ^2\psi}{\partial z^2}-\frac{1}{c^2}\frac{\partial ^2\psi}{\partial t^2}=0,\qquad c=\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0\mu_0}}\tag{1.6}

に従うことが導かれる(導出は『電磁気学入門』第9章 §9.1)。cc は真空の誘電率と透磁率だけで決まる定数で、「何に対する速さか」という情報を含んでいない。

この方程式を Galilei 変換で K′K' の座標に書き直す。y,zy,z は変わらない。したがって xx と tt の微分だけを調べればよい。K′K' の座標を KK の座標の関数とみて連鎖律を使うと

∂∂x=∂x′∂x∂∂x′+∂t′∂x∂∂t′=∂∂x′,∂∂t=∂x′∂t∂∂x′+∂t′∂t∂∂t′=−v∂∂x′+∂∂t′\frac{\partial }{\partial x}=\frac{\partial x'}{\partial x}\frac{\partial }{\partial x'}+\frac{\partial t'}{\partial x}\frac{\partial }{\partial t'}=\frac{\partial }{\partial x'},\qquad \frac{\partial }{\partial t}=\frac{\partial x'}{\partial t}\frac{\partial }{\partial x'}+\frac{\partial t'}{\partial t}\frac{\partial }{\partial t'}=-v\frac{\partial }{\partial x'}+\frac{\partial }{\partial t'}

となる。2階の微分は、これをもう一度作用させて

∂2∂x2=∂2∂x′2,∂2∂t2=(−v∂∂x′+∂∂t′)2=v2∂2∂x′2−2v∂2∂x′∂t′+∂2∂t′2(1.7)\frac{\partial ^2}{\partial x^2}=\frac{\partial ^2}{\partial x'^2},\qquad \frac{\partial ^2}{\partial t^2}=\Bigl(-v\frac{\partial }{\partial x'}+\frac{\partial }{\partial t'}\Bigr)^2=v^2\frac{\partial ^2}{\partial x'^2}-2v\frac{\partial^2}{\partial x'\partial t'}+\frac{\partial ^2}{\partial t'^2}\tag{1.7}

である。これらを (1.6) に入れると、K′K' での方程式は

(1−v2c2)∂2ψ∂x′2+2vc2∂2ψ∂x′∂t′+∂2ψ∂y′2+∂2ψ∂z′2−1c2∂2ψ∂t′2=0(1.8)\Bigl(1-\frac{v^2}{c^2}\Bigr)\frac{\partial ^2\psi}{\partial x'^2}+\frac{2v}{c^2}\frac{\partial^2\psi}{\partial x'\partial t'}+\frac{\partial ^2\psi}{\partial y'^2}+\frac{\partial ^2\psi}{\partial z'^2}-\frac1{c^2}\frac{\partial ^2\psi}{\partial t'^2}=0\tag{1.8}

になる。x′x' の2階微分の係数が 1 から 1−v2/c21-v^2/c^2 へ変わり、もとの式に無かった交差微分の項が現れた。どちらも v≠0v\neq0 なら消えないので、波動方程式は Galilei 変換のもとで形を保たない。

(1.8) の意味は平面波を入れると分かる。KK で xx 方向に進む平面波を考える。

ψ=ei(kx−ωt),ω=ck\psi=\mathrm{e}^{\mathrm{i}(kx-\omega t)},\qquad \omega=ck

その位相を K′K' の座標で書くと

kx−ωt=k(x′+vt′)−ωt′=kx′−(ω−kv)t′kx-\omega t=k(x'+vt')-\omega t'=kx'-(\omega-kv)t'

となる。K′K' での角振動数は ω′=ω−kv\omega'=\omega-kv である。したがって位相速度は ω′/k=c−v\omega'/k=c-v である。

Galilei 変換を認めると、光の速さは慣性系ごとに変わり、K′K' で測った光の速さは c−vc-v になる。光の速さが cc に見える慣性系はただ1つに限られ、Maxwell 方程式が (1.6) の形で成り立つのはその系だけということになる。

同じ現象に2つの説明が要る例

磁石と導体の輪の相対運動で、輪に電流が流れる場合を考える。磁石を止めて輪を動かすと、輪の中の電荷は Lorentz 力 qu×Bq\bm{u}\times\bm{B} を受けて電流が流れる。輪を止めて磁石を動かすと、変化する磁場が Faraday の法則により電場をつくり、その電場が電流を流す。

2つの場合で流れる電流は相対速度だけで決まり同じ値になるが、Galilei 変換の立場では「どちらが本当に動いているか」によって説明が違う。Einstein の1905年の論文はこの非対称から議論を始めている。電場と磁場が慣性系の付け替えで互いに混ざり合うことは、『電磁気学入門』第10章 §10.5 と、この本の第6章で扱う。

エーテルの仮説

19世紀の物理学者の多くは、この食い違いを次のように解釈した。音が空気を伝わる波であるのと同じように、光もエーテルと呼ばれる媒質を伝わる波であり、Maxwell 方程式 (1.6) はエーテルに対して静止した系(エーテル系)でだけ成り立つ。この解釈では相対性原理は力学だけの原理になり、電磁気学には特別な慣性系がある。エーテル系に対する地球の速さが分かれば、地上で測る光の速さは向きによって c±vc\pm v の範囲で変わるはずである。

地球は太陽のまわりを約 30 km/s30\,\mathrm{km/s} で回っている。季節によって速度の向きが変わるので、少なくとも1年のうちのどこかで、地球はエーテルに対してこの程度の速さで動いているはずである。比 v/cv/c は約 10−410^{-4} と小さい。光の往復の時間は v/cv/c の2乗でしか変わらないことが後で分かるので、検出には 10−810^{-8} の精度が要る。

光行差

18世紀前半に Bradley は、恒星の見かけの位置が1年周期で最大約 20′′20'' ずれることを見つけた。これを光行差という。雨の中を走ると雨が前から降ってくるように見えるのと同じで、望遠鏡を光の到来方向から角度 v/cv/c だけ前へ傾ける必要がある。

v=3.0×104 m/sv=3.0\times10^4\,\mathrm{m/s} なら v/c=1.0×10−4 radv/c=1.0\times10^{-4}\,\mathrm{rad} である。角度に直すと約 20.6′′20.6'' で、観測とよく合う。

光行差は、地球が自分のまわりのエーテルを引きずって運んでいる、という考えとは合わない(引きずられたエーテルの中では光の向きはずれない)。したがってエーテルがあるとすれば、地球はその中を動いていなければならない。

Michelson–Morley の干渉計

Michelson と Morley は1887年に、干渉計を使ってエーテルに対する地球の運動を測ろうとした。装置を図 1.2 に示す。光源 S からの光を半透明鏡 H で2つに分け、互いに直交する2本の腕の先の鏡 M1_1、M2_2 で反射させて H に戻し、重ね合わせて検出器 D で干渉縞を見る。2本の光の往復時間に差があると干渉縞の位置がずれる。

図

図 1.2 Michelson–Morley の干渉計の模式図。腕1は装置の運動の向きに、腕2はそれと直交する向きに置く。2本の光は半透明鏡 H で分かれ、鏡 M1_1・M2_2 で反射して H に戻り、検出器 D で干渉する。

エーテルの仮説に従って、2本の腕を光が往復する時間を計算する。装置はエーテルに対して腕1の方向へ速さ vv で動いているとし、β=v/c\beta=v/c と書く。

腕1(運動に平行)  装置から見ると、行きの光は相対的な速さ c−vc-v で鏡 M1_1 に近づく。帰りの光は速さ c+vc+v で H に近づく。往復の時間は

T1=L1c−v+L1c+v=2L1cc2−v2=2L1c 11−β2(1.9)T_1=\frac{L_1}{c-v}+\frac{L_1}{c+v}=\frac{2L_1c}{c^2-v^2}=\frac{2L_1}{c}\,\frac{1}{1-\beta^2}\tag{1.9}

である。

腕2(運動に垂直)  エーテル系から見て、光が H を出てから M2_2 に着くまでの時間は T2/2T_2/2 である。その間に装置は vT2/2vT_2/2 だけ横へ動く。エーテル系で光は速さ cc で斜めに進むので、Pythagoras の定理より

(cT22)2=L22+(vT22)2\Bigl(\frac{cT_2}{2}\Bigr)^2=L_2^2+\Bigl(\frac{vT_2}{2}\Bigr)^2

が成り立ち、これを T2T_2 について解くと

T2=2L2c2−v2=2L2c 11−β2(1.10)T_2=\frac{2L_2}{\sqrt{c^2-v^2}}=\frac{2L_2}{c}\,\frac{1}{\sqrt{1-\beta^2}}\tag{1.10}

を得る。帰りも同じ形の直角三角形になるので、往復で同じ式になる。

2本の光の到着時刻の差は ΔT=T1−T2\Delta T=T_1-T_2 である。腕の長さを 10−810^{-8} の精度でそろえることはできない。したがって ΔT\Delta T そのものから vv を読むことはできない。

そこで Michelson と Morley は装置全体を水平面内で 90∘90^\circ 回転させ、腕1と腕2の役割を入れ替えた。回転後の時間差は

ΔTrot=2L1c11−β2−2L2c11−β2\Delta T_{\mathrm{rot}}=\frac{2L_1}{c}\frac{1}{\sqrt{1-\beta^2}}-\frac{2L_2}{c}\frac{1}{1-\beta^2}

であり、回転の前後での時間差の変化は

ΔT−ΔTrot=2(L1+L2)c(11−β2−11−β2)(1.11)\Delta T-\Delta T_{\mathrm{rot}}=\frac{2(L_1+L_2)}{c}\Bigl(\frac{1}{1-\beta^2}-\frac{1}{\sqrt{1-\beta^2}}\Bigr)\tag{1.11}

となる。腕の長さの差は打ち消し合い、和だけが残った。β≪1\beta\ll1 では次の近似が使える。

(1−β2)−1≃1+β2,(1−β2)−1/2≃1+β22(1-\beta^2)^{-1}\simeq1+\beta^2,\qquad (1-\beta^2)^{-1/2}\simeq1+\frac{\beta^2}{2}

したがって括弧の中は β2/2\beta^2/2 で近似できる。時間差の変化を光の周期 λ/c\lambda/c で割ったものが、干渉縞のずれの本数(縞1本を1とする)である。

ΔN=c (ΔT−ΔTrot)λ≃(L1+L2) β2λ.(1.12)\Delta N=\frac{c\,(\Delta T-\Delta T_{\mathrm{rot}})}{\lambda}\simeq\frac{(L_1+L_2)\,\beta^2}{\lambda}.\tag{1.12}

1887年の装置は、多数の鏡で光を何度も往復させて腕の実効的な長さを約 11 m11\,\mathrm m にしていた。例題 1.2 で計算するとおり、エーテルの仮説が予言する縞のずれは 0.40.4 本程度になる。実際に観測されたずれは 0.020.02 本を下回り、予言の数十分の一以下であった。その後、季節や時刻を変えた多くの追試でも、地球のエーテルに対する運動は見つかっていない。

Lorentz–FitzGerald の収縮仮説

1889年から1892年にかけて FitzGerald と Lorentz は、物体がエーテルに対して動く向きに長さ L1−β2L\sqrt{1-\beta^2} まで縮むと仮定すれば、(1.9) と (1.10) が等しくなって縞がずれないことに気づいた(確認テスト 1.2-3)。この仮説はエーテル系の存在を残したまま、測定にかからない理由だけを後から付け加えるものだった。第2章で導く長さの収縮は式の形は同じだが、エーテルを前提にしない。どちらの慣性系から見ても、相手の系で静止した物体が縮んで見える、という対称な効果である。

例題 1.2 干渉縞のずれの見積もりと速さの上限 ★★★

オリジナル腕の実効的な長さが L1=L2=11 mL_1=L_2=11\,\mathrm m、光の波長が λ=5.5×10−7 m\lambda=5.5\times10^{-7}\,\mathrm m の干渉計を考える。

  1. 装置がエーテルに対して v=3.0×104 m/sv=3.0\times10^4\,\mathrm{m/s} で動いているとする。装置を 90∘90^\circ 回すことで生じる縞のずれ ΔN\Delta N を、(1.12) で見積もれ。
  2. 縞のずれを 0.0200.020 本の精度で読み取れたが、ずれは見えなかった。エーテルに対する装置の速さの上限を求めよ。
  3. (1.11) を β\beta の4次まで展開し、(1.12) の近似の相対誤差が v=3.0×104 m/sv=3.0\times10^4\,\mathrm{m/s} でどの程度か評価せよ。
解答

1.  β=v/c=3.0×104/(3.00×108)=1.0×10−4\beta=v/c=3.0\times10^4/(3.00\times10^8)=1.0\times10^{-4} なので β2=1.0×10−8\beta^2=1.0\times10^{-8} である。(1.12) から

ΔN≃(11+11)×1.0×10−85.5×10−7=2.2×10−75.5×10−7=0.40\Delta N\simeq\frac{(11+11)\times1.0\times10^{-8}}{5.5\times10^{-7}}=\frac{2.2\times10^{-7}}{5.5\times10^{-7}}=0.40

となる。縞 0.40.4 本のずれは、目盛りを使えば十分に読み取れる大きさである。

2.  ΔN=(L1+L2)β2/λ<0.020\Delta N=(L_1+L_2)\beta^2/\lambda<0.020 を β\beta について解くと

β<0.020 λL1+L2=0.020×5.5×10−722=5.0×10−10=2.24×10−5\beta<\sqrt{\frac{0.020\,\lambda}{L_1+L_2}}=\sqrt{\frac{0.020\times5.5\times10^{-7}}{22}}=\sqrt{5.0\times10^{-10}}=2.24\times10^{-5}

であり、v<2.24×10−5×3.00×108 m/s=6.7×103 m/sv<2.24\times10^{-5}\times3.00\times10^8\,\mathrm{m/s}=6.7\times10^3\,\mathrm{m/s} を得る。上限は約 7 km/s7\,\mathrm{km/s} で、地球の公転の速さ 30 km/s30\,\mathrm{km/s} より小さい。ΔN∝v2\Delta N\propto v^2 である。そのため、ずれの精度を 1/201/20 にすると、速さの上限は 1/20≈1/4.51/\sqrt{20}\approx1/4.5 になる。

3.  x=β2x=\beta^2 とおく。二項展開 (1−x)−1=1+x+x2+⋯(1-x)^{-1}=1+x+x^2+\cdots、(1−x)−1/2=1+12x+38x2+⋯(1-x)^{-1/2}=1+\frac12x+\frac38x^2+\cdots から

11−x−11−x=12x+(1−38)x2+⋯=12β2+58β4+⋯\frac{1}{1-x}-\frac{1}{\sqrt{1-x}}=\frac12x+\Bigl(1-\frac38\Bigr)x^2+\cdots=\frac12\beta^2+\frac58\beta^4+\cdots

となる。(1.12) は第1項だけを取ったものなので、相対誤差は (5/8)β4/(β2/2)=54β2=1.25×10−8(5/8)\beta^4/(\beta^2/2)=\frac54\beta^2=1.25\times10^{-8} である。この近似は実験の精度に比べて無視できる。

確認テスト

オリジナル

  1. 1.2-1 KK で +x+x 方向に進む光を考える。その速さは cc である。Galilei の速度合成則 (1.2) を認めると、この光が K′K' では速さ c−vc-v で進むことを1行で示せ。
  2. 1.2-2 腕の長さがともに LL の干渉計を考える。回転させない状態の時間差 ΔT=T1−T2\Delta T=T_1-T_2 を、β\beta の4次まで展開せよ。L=11 mL=11\,\mathrm m、β=1.0×10−4\beta=1.0\times10^{-4} での値を秒で求めよ。
  3. 1.2-3 腕1だけがエーテルに対する運動の向きに長さ L1→L11−β2L_1\to L_1\sqrt{1-\beta^2} と縮むと仮定する。L1=L2L_1=L_2 のとき、T1=T2T_1=T_2 となって縞がずれないことを示せ。
  4. 1.2-4 1次元の波動方程式

∂x2ψ−c−2∂t2ψ=0\partial_x^2\psi-c^{-2}\partial_t^2\psi=0

と、次の波を考える。

ψ=eik(x′−ct′)\psi=\mathrm{e}^{\mathrm{i} k(x'-ct')}

これは K′K' で正の向きへ速さ cc で進む波である。この波を Galilei 変換で KK の座標に戻すと、方程式を満たさないことを示せ。左辺に代入した値を k,v,ck,v,c で表せ。5. 1.2-5 光行差の角度は、星の方向と地球の速度が直交するとき tan⁡α=v/c\tan\alpha=v/c で与えられるとする。v=29.8 km/sv=29.8\,\mathrm{km/s} のときの α\alpha を求めよ。答えは角度の秒(′′'')で表し、c=2.998×108 m/sc=2.998\times10^8\,\mathrm{m/s} を使え。

木下の勉強ステータス

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