tecktom.com

時間の遅れと長さの収縮(ミューオンの寿命)

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第2章 Lorentz 変換
目次
  1. 時間の遅れ
  2. 長さの収縮
  3. ミューオンの寿命
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第2章 §2.2 ★★★ 同じ変換を「何を固定して何を測るか」の2通りで読むと、時間の遅れと長さの収縮になる

Lorentz 変換は1組の式であるが、そこから引き出す結論は「どの事象の組を比べるか」で変わる。時間の遅れと長さの収縮は、比べる事象の組の選び方が違うだけで、同じ式 (2.12) の帰結である。どちらの場合も、測定の手続きを先に決めてから変換に代入する。

時間の遅れ

K′K' の原点 x′=0x'=0 に時計を固定する。この時計が時刻 t1′t'_1 と t2′t'_2 を指す2つの事象を考える。2つの事象は K′K' では同じ場所で起きるので、その時刻の差 Δτ=t2′−t1′\Delta\tau=t'_2-t'_1 は、時計と一緒に動く1個の時計で読める量である。このように、2つの事象と同じ場所に静止した1個の時計が測る時間を固有時と呼び、τ\tau で書く。

同じ2つの事象を KK で見る。逆変換 (2.13) で Δx′=0\Delta x'=0 と置けば

c Δt=γ (c Δτ+β⋅0)⟹Δt=γ Δτ(2.16)c\,\Delta t=\gamma\,(c\,\Delta\tau+\beta\cdot0) \quad\Longrightarrow\quad \Delta t=\gamma\,\Delta\tau\tag{2.16}

を得る。γ≥1\gamma\ge1 なので Δt≥Δτ\Delta t\ge\Delta\tau である。KK で測る経過時間は、動く時計が刻んだ時間より γ\gamma 倍だけ長い。これを時間の遅れと呼ぶ。

ここで KK の側は、複数の時計で Δt\Delta t を測っている。時計は通り道に沿って並べ、KK で互いに合わせて(同期して)ある。2つの事象は KK では別の場所(Δx=v Δt\Delta x=v\,\Delta t)で起きるので、1個の時計では測れないからである。この非対称が、次の「お互いさま」の話を矛盾なく成り立たせる。

時間の遅れはお互いさま

K′K' から見れば、KK の方が逆向きに動いている。したがって KK に固定した時計は、K′K' の時計の列と比べて遅れて見える。「KK の時計が遅れる」と「K′K' の時計が遅れる」は両立する。2つの主張では、比べている事象の組が違うからである。

KK の1個の時計を、K′K' の複数の時計と比べる場合を考える。K′K' の時計の列は K′K' で同期させてある。KK から見るとその同期はずれていて、ずれは Δt′=−γv Δx/c2\Delta t'=-\gamma v\,\Delta x/c^2 である。このずれを勘定に入れると、どちらの主張も(2.12) の同じ帰結になる(確認テスト 2.2-4)。

長さの収縮

次に、K′K' に静止して x′x' 軸に沿って置かれた棒を考える。両端の x′x' 座標の差 L0=x2′−x1′L_0=x'_2-x'_1 は時刻によらず、棒と一緒に動く物差しで測れる。これを棒の固有長と呼ぶ。

KK で棒の長さを測るとは、この系の同じ時刻に両端の位置 x1,x2x_1,x_2 を読み、その差をとることである。KK の同じ時刻 Δt=0\Delta t=0 に (2.12) の第2式を使うと

L0=Δx′=γ (Δx−v⋅0)=γ Δx⟹L=Δx=L0γ=L01−β2(2.17)L_0=\Delta x'=\gamma\,(\Delta x-v\cdot0)=\gamma\,\Delta x \quad\Longrightarrow\quad L=\Delta x=\frac{L_0}{\gamma}=L_0\sqrt{1-\beta^2}\tag{2.17}

を得る。動いている棒は、運動の方向に 1/γ1/\gamma 倍に縮んで測られる。これを長さの収縮(Lorentz 収縮)と呼ぶ。運動に垂直な方向の長さは (2.6) により変わらない。

時間の遅れでは Δx′=0\Delta x'=0 を、長さの収縮では Δt=0\Delta t=0 を課した。課す条件が異なる系にあるので、「時間は γ\gamma 倍に伸びるから長さも γ\gamma 倍に伸びる」という類推は成り立たない。

長さの測定には、KK での同時刻という条件が入る。その2事象が K′K' では同時刻でないことが、γ\gamma が逆数で現れる理由である。実際、両端を同時に読んだ2事象は、K′K' では Δt′=−γv Δx/c2\Delta t'=-\gamma v\,\Delta x/c^2 だけ時刻がずれている。

図

図 2.2 γ=1/1−β2\gamma=1/\sqrt{1-\beta^2} のグラフ。β=0.5\beta=0.5 でも γ=1.15\gamma=1.15 にとどまり、β→1\beta\to1 で急に大きくなる。

図 2.2 のとおり、γ\gamma は β\beta が小さいうちはほとんど 1 のままである。テイラー展開すると

γ=1+12β2+38β4+O(β6)(2.18)\gamma=1+\frac12\beta^2+\frac38\beta^4+\mathcal{O}(\beta^6)\tag{2.18}

であり、時間の遅れの割合 γ−1\gamma-1 は β2/2\beta^2/2 の大きさである。秒速300メートルで飛ぶ旅客機では β=1.0×10−6\beta=1.0\times10^{-6} で、γ−1=5×10−13\gamma-1=5\times10^{-13} にすぎない。

ミューオンの寿命

時間の遅れが目に見える大きさで現れる身近な例が、宇宙線のミューオンである。宇宙から来た高いエネルギーの陽子が大気の上層の原子核に衝突すると、パイ中間子が生まれ、それが崩壊してミューオンができる。

ミューオンは不安定な粒子で、静止しているときの平均寿命は τ0=2.197 μs\tau_0=2.197\ \mu\mathrm s である。生成からの時間 τ\tau のあいだ崩壊せずに残る確率は、exp⁡(−τ/τ0)\exp(-\tau/\tau_0) である。ここで τ\tau はミューオンと一緒に動く時計で測った時間、すなわち固有時である。

ミューオンが光速に近い速さで飛んでも、時間の遅れが無ければ平均で cτ0≈660 mc\tau_0\approx660\ \mathrm m しか進まない。ところが、高さ十数キロメートルで生まれたミューオンは地表でたくさん観測される。これは時間の遅れで説明できる。

例題 2.2 宇宙線ミューオンが地表に届く割合 ★★★

オリジナル高さ h=15.0 kmh=15.0\ \mathrm{km} の大気で生まれたミューオンが、速さ v=0.995cv=0.995c で鉛直に地表へ向かうとする。平均寿命は τ0=2.197 μs\tau_0=2.197\ \mu\mathrm s、光速は c=2.998×108 m/sc=2.998\times10^8\ \mathrm{m/s} とする。

  1. 地表の系で測った平均寿命 γτ0\gamma\tau_0 と、平均の飛行距離 γvτ0\gamma v\tau_0 を求めよ。
  2. 地表に届くまで崩壊しない確率を求め、時間の遅れを無視した場合の確率と比べよ。
  3. ミューオンの静止系では大気の厚さはいくらか。その系で同じ確率を計算し、(2) と一致することを確かめよ。
解答

(1)  γ=1/1−0.9952=1/0.009975=10.01\gamma=1/\sqrt{1-0.995^2}=1/\sqrt{0.009975}=10.01 である。地表の系での平均寿命は

γτ0=10.01×2.197 μs=22.0 μs,\gamma\tau_0=10.01\times2.197\ \mu\mathrm s=22.0\ \mu\mathrm s,

平均の飛行距離は

γvτ0=10.01×0.995×2.998×108 m/s×2.197×10−6 s=6.56 km\gamma v\tau_0=10.01\times0.995\times2.998\times10^8\ \mathrm{m/s}\times2.197\times10^{-6}\ \mathrm s=6.56\ \mathrm{km}

である。時間の遅れが無いときの vτ0=0.656 kmv\tau_0=0.656\ \mathrm{km} の10倍になる。

(2)  地表の系で、地表に届くまでの時間は

Δt=hv=1.50×104 m0.995×2.998×108 m/s=50.3 μs\Delta t=\frac{h}{v}=\frac{1.50\times10^4\ \mathrm m}{0.995\times2.998\times10^8\ \mathrm{m/s}}=50.3\ \mu\mathrm s

である。ミューオン自身の時計で経過する時間(固有時)は (2.16) により Δτ=Δt/γ=5.02 μs\Delta\tau=\Delta t/\gamma=5.02\ \mu\mathrm s で、崩壊しない確率は

exp⁡(−Δττ0)=exp⁡(−5.022.197)=e−2.29=0.102\exp\left(-\frac{\Delta\tau}{\tau_0}\right)=\exp\left(-\frac{5.02}{2.197}\right)=\mathrm{e}^{-2.29}=0.102

である。約1割が地表に届く。時間の遅れを無視して Δt\Delta t をそのまま使うとexp⁡(−50.3/2.197)=e−22.9=1.1×10−10\exp(-50.3/2.197)=\mathrm{e}^{-22.9}=1.1\times10^{-10} となり、ほとんど1個も届かない。観測されるミューオンの数は前者と合う。

(3)  ミューオンの静止系では、大気(地表とその上の空気)が速さ vv で近づいてくる。大気の厚さは、地表の系で静止しているときの長さhh が固有長なので、(2.17) により

h′=hγ=15.0 km10.01=1.50 kmh'=\frac{h}{\gamma}=\frac{15.0\ \mathrm{km}}{10.01}=1.50\ \mathrm{km}

に縮む。地表がミューオンに届くまでの時間は h′/v=1.50×103 m/(0.995c)=5.02 μsh'/v=1.50\times10^3\ \mathrm m/(0.995c)=5.02\ \mu\mathrm s で、これはミューオンの静止系の時間なのでそのまま τ\tau として使える。確率は exp⁡(−5.02/2.197)=0.102\exp(-5.02/2.197)=0.102 で (2) と一致する。地表の系では「時計が遅れる」、ミューオンの系では「距離が縮む」という別の説明になるが、どちらも同じ Lorentz 変換から出る同じ予言である。

宇宙線のミューオンは速さも生成の高さもばらばらなので、上の例題は一つのモデルの見積もりである。速さをそろえた実験としては、加速器の貯蔵リングでミューオンを周回させ、崩壊までの時間を測る方法がある。1970年代に CERN で行われた実験では、γ≈29.3\gamma\approx29.3 のミューオンの寿命が約 64 μs64\ \mu\mathrm s と測られた。これは γτ0=29.3×2.197 μs=64.4 μs\gamma\tau_0=29.3\times2.197\ \mu\mathrm s=64.4\ \mu\mathrm s とよく一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 2.2-1 列車の中の乗客が、自分の腕時計で駅を2つ通過するあいだの時間を測った。地上の観測者が駅の時計2つで同じ時間を測った。どちらの時間が固有時か。どちらが長いか。

  2. 2.2-2 荷電パイ中間子の静止したときの平均寿命は 26.0 ns26.0\ \mathrm{ns} である。β=0.990\beta=0.990 のパイ中間子のビームが実験室で崩壊までに進む平均の距離を求めよ(c=2.998×108 m/sc=2.998\times10^8\ \mathrm{m/s})。

  3. 2.2-3 K′K' に、長さ 1.00 m1.00\ \mathrm m の棒が静止している。棒は x′y′x'y' 面内にある。x′x' 軸と棒のなす角は 60∘60^\circ である。 K′K' の速さを β=0.8\beta=0.8 とする(標準配置)。KK で測った棒の長さと、棒が xx 軸となす角を求めよ。

  4. 2.2-4 KK の原点に時計を固定する。この時計が t=0t=0 と t=Tt=T を指す2つの事象を考える。K′K' の速さを vv とする(標準配置)。

    • (a) K′K' で、この2つの事象の時刻の差が γT\gamma T になることを Lorentz 変換から示せ。
    • (b) 2つ目の事象と K′K' で同時刻にある、K′K' の時計の事象を考える。この事象が KK では2つ目の事象と同時刻でないことを、式で示せ。
    • (c) 「お互いに相手の時計が遅れる」が矛盾しない理由を説明せよ。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『基礎理論』の記事一覧へ