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固有時と双子のパラドックス

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第3章 時空図と不変間隔
目次
  1. 固有時
  2. 慣性運動の世界線は固有時を最大にする
  3. 双子のパラドックス
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第3章 §3.3 ★★★ 世界線に沿って時計が刻む時間。慣性運動の世界線で最大になる性質が双子のパラドックスの答えであり、のちに測地線の定義になる

固有時

時計を持って運動する観測者を考える。その時計が刻む時間は、観測者の世界線だけで決まり、どの慣性系で記述するかにはよらないはずである。この時間を間隔から作る。

時計の世界線の上の隣り合う2事象を考える。ある瞬間に時計とともに動く慣性系(瞬間静止系)では、2事象は同じ場所で起き、時計はその時間差 dt0\mathrm{d} t_0 を刻む。命題 3.4 から c dt0=dsc\,\mathrm{d} t_0=\mathrm{d} s である。ds\mathrm{d} s は不変量なので、どの慣性系で計算しても同じ値になる。

定義 3.6(固有時)

時間的な世界線の上で

dτ=dsc=1cc2dt2−dx2−dy2−dz2=dt1−u2c2(3.8)\mathrm{d}\tau=\frac{\mathrm{d} s}{c}=\frac1c\sqrt{c^2\mathrm{d} t^2-\mathrm{d} x^2-\mathrm{d} y^2-\mathrm{d} z^2}=\mathrm{d} t\sqrt{1-\frac{u^2}{c^2}}\tag{3.8}

を固有時の要素と呼ぶ。ここで u=∣dx/dt∣u=\left\vert \mathrm{d}\bm{x}/\mathrm{d} t\right\vert は慣性系 KK で測った時計の速さである。世界線の2点 PP、QQ のあいだの固有時を

τPQ=∫tPtQ1−u(t)2c2 dt(3.9)\tau_{PQ}=\int_{t_P}^{t_Q}\sqrt{1-\frac{u(t)^2}{c^2}}\,\mathrm{d} t\tag{3.9}

で定める。

固有時の要素 (3.8) は加速度を含まない。時計の進み方は、その瞬間の速さだけで決まると仮定している。この仮定を時計の仮説と呼ぶ。原子の振動のように、時計の内部の時間の尺度に比べて加速度による速さの変化がゆっくりな場合には、この仮説が実験とよく合うことが確かめられている。

uu が一定なら、式 (3.9) は次の形になる。

τ=Δtγu,γu=(1−u2c2)−1/2\tau=\frac{\Delta t}{\gamma_u},\qquad \gamma_u=\Bigl(1-\frac{u^2}{c^2}\Bigr)^{-1/2}

これは第2章 §2.2 の時間の遅れである。

慣性運動の世界線は固有時を最大にする

2つの事象 PP、QQ が時間的に離れているとき、2事象を結ぶ時間的な世界線はたくさんある。そのうち PP から QQ へ一定の速度で進む直線の世界線(慣性運動)が特別な性質を持つ。

定理 3.7(固有時の最大性 ★★★)

時間的に離れた2事象 PP、QQ を結ぶ時間的な世界線のうち、固有時が最も長いのは直線の世界線である。直線以外の世界線の固有時は、直線の世界線の固有時より真に短い。

証明

命題 3.4 から、2事象が同じ場所で起きる慣性系が存在する。これを K0K_0 と書く。K0K_0 では、直線の世界線は空間の1点に静止する世界線である。その固有時は座標の時間差 T=tQ−tPT=t_Q-t_P に等しい。

2事象を結ぶ別の時間的な世界線を、K0K_0 で x(t)\bm{x}(t) と書く。その固有時は

τ=∫tPtQ1−u(t)2c2 dt≤∫tPtQdt=T\tau=\int_{t_P}^{t_Q}\sqrt{1-\frac{u(t)^2}{c^2}}\,\mathrm{d} t\le\int_{t_P}^{t_Q}\mathrm{d} t=T

である。被積分関数は1以下である。

等号が成り立つのは、すべての tt で u(t)=0u(t)=0 のときに限る。つまり世界線が K0K_0 で静止した直線のときである。

実際、uu が連続なら、どこかで u≠0u\ne0 となる区間がある限り、そこで被積分関数は1より真に小さい。そのため積分も真に小さくなる。固有時は不変量なので、この大小関係はどの慣性系で見ても同じである。

Euclid 平面では、2点を結ぶ曲線のうち直線が最も短い。時空では直線が最も長い固有時を与える。この向きの違いは、間隔 (3.7) の空間部分が負の符号を持つことによる。空間方向に寄り道するほど ds\mathrm{d} s は小さくなる。

一方、固有時の下限は存在しない。光の世界線に沿ってジグザグに進む世界線の固有時は、いくらでも0に近づけることができる(確認テスト 3.3-3)。

この定理は、第9章で測地線(自由落下する粒子の世界線)を「固有時が停留する世界線」として定めるときの出発点になる。固有時の作用 −mc∫ds-mc\int\mathrm{d} s から運動方程式を導く道は、虎の巻『解析力学から様々な理論分野を組み立てる』第2部第3章で扱っている。

双子のパラドックス

双子の兄は地球に残り、弟は宇宙船で遠くの星まで行って戻ってくる。地球の系 KK から見ると弟の時計は遅れるので、再会したとき弟のほうが若い。ところが弟の宇宙船から見ると地球が動いているので、兄の時計が遅れ、兄のほうが若くなるようにも思える。これが双子のパラドックスである。

答えは定理 3.7 にある。兄の世界線は出発と再会の2事象を結ぶ直線(慣性運動)であり、弟の世界線は途中で向きを変える折れ線である。

2人の状況は対称ではない。弟は折り返しのときに加速度を受け、1つの慣性系に留まっていない。直線の世界線の固有時が最も長いので、兄のほうが年をとる。

弟の立場から何が起きているかを見るには、往路の慣性系と復路の慣性系の同時刻線の違いを調べればよい。具体的な数値で追ってみる。

図

図 3.3 双子のパラドックス(β=0.8\beta=0.8、星までの距離 44 光年)。赤の破線は折り返しの事象 TT における弟の同時刻線で、往路の系では兄の時刻 1.81.8 年、復路の系では 8.28.2 年の事象と同時になる。

例題 3.3 4光年先の星への往復 ★★★

オリジナル弟は地球から4.0光年離れた星まで β=0.8\beta=0.8 で行き、ただちに同じ速さで戻る。加速と減速にかかる時間は無視する。

  1. 地球の系 KK で、往復にかかる時間と、弟の時計が刻む固有時を求めよ。
  2. 往路の慣性系 K1K_1 で、折り返しの事象 TT と同時な兄の時計の時刻を求めよ。同じことを復路の慣性系 K2K_2 について求めよ。
  3. 弟の往路と復路のそれぞれで、弟の系から見て兄の時計が遅れて進むことを確かめ、(2) と合わせて兄の時計の進みの合計が (1) の往復時間と一致することを示せ。
解答
  1. KK での往路の時間は 4.0/0.8=5.04.0/0.8=5.0 年、往復で10.0年である。γ=1/1−0.64=1/0.6=5/3\gamma=1/\sqrt{1-0.64}=1/0.6=5/3 である。弟の固有時は、式 (3.9) で速さが一定の区間ごとに Δt/γ\Delta t/\gamma を足して

τ=2×5.05/3=2×3.0=6.0 年\tau=2\times\frac{5.0}{5/3}=2\times3.0=6.0\ \text{年}

である。再会のとき、兄は10歳、弟は6歳だけ年をとっている。2. 時間を年、距離を光年で測ると c=1c=1 である。TT の座標は (ct,x)=(5,4)(ct,x)=(5,4) である。

  • 往路の系 K1K_1 は β=0.8\beta=0.8 である。その同時刻線は ct−0.8x=一定ct-0.8x=\text{一定} の形をしている。TT を通るものは

ct−0.8x=5−3.2=1.8ct-0.8x=5-3.2=1.8

である。兄の世界線 x=0x=0 の上では ct=1.8ct=1.8 となり、兄の時計は1.8年を指す。

  • 復路の系 K2K_2 は β=−0.8\beta=-0.8 である。その同時刻線は ct+0.8x=一定ct+0.8x=\text{一定} の形をしている。TT を通るものは

ct+0.8x=5+3.2=8.2ct+0.8x=5+3.2=8.2

である。兄の時計は8.2年を指す(図 3.3)。3. 往路で弟の時計は3.0年進む。K1K_1 から見ると兄は速さ0.8で動いている。そのため兄の時計は 3.0/γ=3.0×0.6=1.83.0/\gamma=3.0\times0.6=1.8 年しか進まず、(2) の値と合う。復路でも同じく、K2K_2 から見て兄の時計は8.2年から1.8年進んで10.0年になる。

往路と復路の合計は 1.8+1.8=3.61.8+1.8=3.6 年にすぎない。しかし折り返しで、同時刻線が1.8年の事象から8.2年の事象へ切り替わる。その差の6.4年が加わり、

1.8+6.4+1.8=10.0 年1.8+6.4+1.8=10.0\ \text{年}

となって (1) と一致する。

「加速度が年齢差を作る」という説明について

  • 例題 3.3 の (3) で、兄の時計の進みの大部分(6.4年)は折り返しの瞬間の同時刻線の切り替えに現れた。これは弟が慣性系を乗り換えたことの表れである。
  • ただし、年齢差の大きさは加速度の大きさでは決まらない。折り返しにかかる時間を短くしても長くしても、往復の大部分を等速で飛ぶなら年齢差はほぼ同じである。年齢差は2本の世界線の固有時の差で決まり、その大小は定理 3.7 でわかる。

確認テスト

オリジナル

  1. 3.3-1 旅客機が地上に対して 250 m/s で40時間飛ぶとき、機内の時計が地上の時計に比べてどれだけ遅れるかを、β2/2\beta^2/2 までの近似で見積もれ(重力の影響は第7章で扱うので、ここでは無視する。地球の自転も無視する)。
  2. 3.3-2 円形の蓄積リングを γ=29.3\gamma=29.3 で周回するミューオンの寿命を、リングの系で測ると何 μ\mus になるか。静止したミューオンの寿命は 2.197 μ2.197\,\mus とする。等速円運動で加速度があっても、式 (3.9) がそのまま使えることを時計の仮説と結びつけて述べよ。
  3. 3.3-3 事象 P=(0,0)P=(0,0) と Q=(cT,0)Q=(cT,0) を結ぶ世界線として、次のものを考える。速さ uu で xx 方向へ進んでから戻る。進む時間は T/(2N)T/(2N) で、この往復を NN 回繰り返す。固有時を求め、u→cu\to c でいくらでも0に近づくことを示せ。NN に依存するか。
  4. 3.3-4 例題 3.3 の設定で、弟が星に1.0年間滞在してから戻る場合の、再会時の2人の年齢の進みを求めよ。滞在のあいだ弟は星とともに KK で静止しているとする。

木下の勉強ステータス

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