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Lorentz 変換と4元ベクトル

2026年10月15日21分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第4章 4元ベクトルとテンソル
目次
  1. 変換の行列
  2. 条件から分かること
  3. 逆変換と共変成分の変換
  4. 4元ベクトルの定義と不変な内積
  5. 4元ベクトルの例:4元波数
  6. 確認テスト
  7. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第4章 §4.2 ★★★ Lorentz 変換を「計量を保つ行列」として定義し直し、それと同じ規則で変換する量を4元ベクトルと呼ぶ。内積の不変性はこの定義から1行で出る

変換の行列

ブースト (4.2) は線形変換なので、4行4列の行列 Λμν\Lambda^\mu{}_\nu を使って

x′μ=Λμν xν(4.10)x'^\mu=\Lambda^\mu{}_\nu\,x^\nu\tag{4.10}

と書ける。xx 方向のブーストの行列は

Λμν=(γ−γβ00−γβγ0000100001)(4.11)\Lambda^\mu{}_\nu=\begin{pmatrix}\gamma&-\gamma\beta&0&0\\-\gamma\beta&\gamma&0&0\\0&0&1&0\\0&0&0&1\end{pmatrix}\tag{4.11}

である。行の番号が上の添字 μ\mu、列の番号が下の添字 ν\nu に対応する。添字の高さを保って行列を書くため、下の添字は1文字ぶん右にずらして Λμν\Lambda^\mu{}_\nu と書く。この位置はあとで添字を上げ下げしたときにどちらの添字が先かを区別するために必要になる。

第3章では、ブーストで不変間隔が保たれることを成分の計算で確かめた。ここでは向きを逆にして、不変間隔を保つことを Lorentz 変換の定義にする。

定義 4.2(Lorentz 変換)

線形変換 x′μ=Λμνxνx'^\mu=\Lambda^\mu{}_\nu x^\nu が、すべての xμx^\mu について次を満たすとき、これを Lorentz 変換と呼ぶ。

ημνx′μx′ν=ημνxμxν\eta_{\mu\nu}x'^\mu x'^\nu=\eta_{\mu\nu}x^\mu x^\nu

この定義は「2乗の量」が保たれることしか要求していない。しかし、実は内積全体が保たれることが従う。

定理 4.3(Lorentz 変換の条件)

線形変換 Λ\Lambda が Lorentz 変換であるための必要十分条件は

ημν ΛμαΛνβ=ηαβ(行列の形で ΛTηΛ=η)(4.12)\eta_{\mu\nu}\,\Lambda^\mu{}_\alpha\Lambda^\nu{}_\beta=\eta_{\alpha\beta} \qquad\bigl(\text{行列の形で }\Lambda^{\mathsf T}\eta\Lambda=\eta\bigr)\tag{4.12}

である。このとき任意の2つの4元ベクトルについて内積が保たれる。

証明

2つのベクトル x,yx,y について、内積の双線形性と η\eta の対称性から

(x+y)⋅(x+y)=x⋅x+2 x⋅y+y⋅y(x+y)\cdot(x+y)=x\cdot x+2\,x\cdot y+y\cdot y

が成り立つので、x⋅y=12[(x+y)⋅(x+y)−x⋅x−y⋅y]x\cdot y=\tfrac12\bigl[(x+y)\cdot(x+y)-x\cdot x-y\cdot y\bigr] と書ける(この書き換えを偏極恒等式と呼ぶ)。右辺の3つの2乗はどれも Lorentz 変換で保たれるので、左辺の内積 x⋅yx\cdot y も保たれる。すなわち、すべての x,yx,y について

ημνΛμαΛνβ xαyβ=ηαβ xαyβ.\eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\alpha\Lambda^\nu{}_\beta\,x^\alpha y^\beta=\eta_{\alpha\beta}\,x^\alpha y^\beta .

ここで xx と yy に基底ベクトル(1つの成分だけ1で残りは0)を代入する。すると両辺の係数が成分ごとに一致して、(4.12) を得る。逆に (4.12) が成り立てば、両辺に xαxβx^\alpha x^\beta を掛けて和をとることで定義の条件が出る。

ブースト (4.11) がこの条件を満たすことは、直接の計算で確かめることができる。添字の組 (α,β)(\alpha,\beta) ごとに書くと

(0,0):ημνΛμ0Λν0=γ2−γ2β2=1=η00,(0,1):γ⋅(−γβ)−(−γβ)⋅γ=0=η01,(1,1):γ2β2−γ2=−1=η11\begin{aligned}(0,0)&:\quad \eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_0\Lambda^\nu{}_0=\gamma^2-\gamma^2\beta^2=1=\eta_{00},\\ (0,1)&:\quad \gamma\cdot(-\gamma\beta)-(-\gamma\beta)\cdot\gamma=0=\eta_{01},\\ (1,1)&:\quad \gamma^2\beta^2-\gamma^2=-1=\eta_{11}\end{aligned}

となり、残りの成分は自明である。

空間の回転も Lorentz 変換である。たとえば zz 軸まわりの角 θ\theta の回転は、次の成分を持つ。

Λ11=Λ22=cos⁡θ,Λ12=−Λ21=sin⁡θ,Λ00=Λ33=1\Lambda^1{}_1=\Lambda^2{}_2=\cos\theta,\qquad \Lambda^1{}_2=-\Lambda^2{}_1=\sin\theta,\qquad \Lambda^0{}_0=\Lambda^3{}_3=1

この変換は x0x^0 を変えず、∣x∣2\left\vert \bm{x}\right\vert ^2 を保つ。

条件から分かること

条件 (4.12) から、Lorentz 変換の一般的な性質をいくつか読み取ることができる。

命題 4.4(Lorentz 変換の性質)

Lorentz 変換 Λ\Lambda について次が成り立つ。

  1. det⁡Λ=±1\det\Lambda=\pm1。
  2. (Λ00)2=1+∑i(Λi0)2≥1(\Lambda^0{}_0)^2=1+\sum_{i}(\Lambda^i{}_0)^2\ge1。
  3. 2つの Lorentz 変換の積と、Lorentz 変換の逆も Lorentz 変換である。
証明

(1) 行列の式 ΛTηΛ=η\Lambda^{\mathsf T}\eta\Lambda=\eta の両辺の行列式をとると、(det⁡Λ)2det⁡η=det⁡η(\det\Lambda)^2\det\eta=\det\eta である。det⁡η=−1≠0\det\eta=-1\neq0 なので (det⁡Λ)2=1(\det\Lambda)^2=1 となる。

(2) (4.12) の α=β=0\alpha=\beta=0 の成分を書き出すと

ημνΛμ0Λν0=(Λ00)2−∑i(Λi0)2=η00=1.\eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_0\Lambda^\nu{}_0=(\Lambda^0{}_0)^2-\sum_i(\Lambda^i{}_0)^2=\eta_{00}=1 .

(3) Λ1,Λ2\Lambda_1,\Lambda_2 がともに条件を満たすとする。積については

(Λ1Λ2)Tη(Λ1Λ2)=Λ2T(Λ1TηΛ1)Λ2=Λ2TηΛ2=η(\Lambda_1\Lambda_2)^{\mathsf T}\eta(\Lambda_1\Lambda_2)=\Lambda_2^{\mathsf T}(\Lambda_1^{\mathsf T}\eta\Lambda_1)\Lambda_2=\Lambda_2^{\mathsf T}\eta\Lambda_2=\eta

である。逆については、(1) から Λ\Lambda は正則である。条件の両辺に、左から (Λ−1)T(\Lambda^{-1})^{\mathsf T}、右から Λ−1\Lambda^{-1} を掛ける。すると η=(Λ−1)TηΛ−1\eta=(\Lambda^{-1})^{\mathsf T}\eta\Lambda^{-1} を得る。

(2) は、Λ00≥1\Lambda^0{}_0\ge1 か Λ00≤−1\Lambda^0{}_0\le-1 のどちらかであることを意味する。前者は時間の向きを保つ変換、後者は時間の向きを反転する変換である。det⁡Λ=+1\det\Lambda=+1 かつ Λ00≥1\Lambda^0{}_0\ge1 の変換を固有順時的(proper orthochronous)な Lorentz 変換と呼ぶ。

ブーストと回転はこれに属し、恒等変換から連続的につながる変換はすべてここに入る。行列式と Λ00\Lambda^0{}_0 の符号は、連続的な変形では飛び移れないためである。固有順時的でない変換の例は次の2つである。

  • 空間反転 P=diag(1,−1,−1,−1)P=\mathrm{diag}(1,-1,-1,-1) は det⁡P=−1\det P=-1 である。
  • 時間反転 T=diag(−1,1,1,1)T=\mathrm{diag}(-1,1,1,1) は T00=−1T^0{}_0=-1 である。

物理法則を「Lorentz 変換で形を変えない」と言うときは、ふつう固有順時的な変換を指す。

独立な変数の数も数えておく。Λ\Lambda は16個の成分を持ち、(4.12) は対称な 4×44\times4 行列の等式なので独立な条件は10本である。残る自由度は 16−10=616-10=6 で、3方向のブーストと3つの軸まわりの回転の数に一致する。

第2章 §2.4 で述べたように、向きの違う2つのブーストの積はブーストと回転の積になる(Thomas–Wigner 回転)。(3) により、その積も条件 (4.12) を満たす。

任意の向きのブースト

速度 v=cβ\bm{v}=c\bm{\beta}(向きは任意)のブーストの行列は、β=∣β∣\beta=\left\vert \bm{\beta}\right\vert として

Λ00=γ,Λ0i=Λi0=−γβi,Λij=δij+(γ−1)βiβjβ2\Lambda^0{}_0=\gamma,\qquad \Lambda^0{}_i=\Lambda^i{}_0=-\gamma\beta^i,\qquad \Lambda^i{}_j=\delta_{ij}+(\gamma-1)\frac{\beta^i\beta^j}{\beta^2}

である。β=(β,0,0)\bm{\beta}=(\beta,0,0) とおくと (4.11) に戻る。

この行列は次の形を書いたものである。位置ベクトルを、速度に平行な成分と垂直な成分に分ける。平行な成分にだけ xx 方向のブーストと同じ変換がかかり、垂直な成分はそのまま残る。

逆変換と共変成分の変換

下付きの成分 aμa_\mu がどう変換するかを調べる。そのために、Lorentz 変換の行列の添字を計量で上げ下げした量

Λμν≔ημα Λαβ ηβν(4.13)\Lambda_\mu{}^\nu\coloneqq\eta_{\mu\alpha}\,\Lambda^\alpha{}_\beta\,\eta^{\beta\nu}\tag{4.13}

を定義する。条件 (4.12) の両辺に ηβγ\eta^{\beta\gamma} を掛けて、β\beta について和をとる。両辺はそれぞれ

左辺=ημνΛμαΛνβηβγ=ΛμαΛμγ((4.13) を使った)右辺=ηαβηβγ=δαγ\begin{aligned}\text{左辺}&=\eta_{\mu\nu}\Lambda^\mu{}_\alpha\Lambda^\nu{}_\beta\eta^{\beta\gamma}=\Lambda^\mu{}_\alpha\Lambda_\mu{}^\gamma &&\text{((4.13) を使った)}\\ \text{右辺}&=\eta_{\alpha\beta}\eta^{\beta\gamma}=\delta_\alpha{}^\gamma\end{aligned}

になる。したがって

Λμγ Λμα=δγα,すなわち(Λ−1)γμ=Λμγ(4.14)\Lambda_\mu{}^\gamma\,\Lambda^\mu{}_\alpha=\delta^\gamma{}_\alpha,\qquad\text{すなわち}\qquad (\Lambda^{-1})^\gamma{}_\mu=\Lambda_\mu{}^\gamma\tag{4.14}

である。Lorentz 変換の逆行列は、添字を上げ下げして転置するだけで得られる。これは回転行列の逆が転置で与えられることの4次元版である。

xx 方向のブーストでは、(4.13) で非対角の2成分に符号が掛かる。2成分とは Λ01\Lambda^0{}_1 と Λ10\Lambda^1{}_0 である。その符号は η00η11=−1\eta_{00}\eta^{11}=-1 である。したがって

(Λ−1)μν=(γγβ00γβγ0000100001)(4.15)(\Lambda^{-1})^\mu{}_\nu=\begin{pmatrix}\gamma&\gamma\beta&0&0\\\gamma\beta&\gamma&0&0\\0&0&1&0\\0&0&0&1\end{pmatrix}\tag{4.15}

となる。これは β\beta を −β-\beta に替えたブーストである。「動く系から見ると、もとの系は逆向きに速さ vv で動いている」という事実と一致する。

共変成分の変換は、定義 (4.6) に反変成分の変換を入れて求める。

aμ′=ημνa′ν=ημνΛνβ aβ=ημνΛνβ ηβγaγ=Λμγ aγ.(4.16)a'_\mu=\eta_{\mu\nu}a'^\nu=\eta_{\mu\nu}\Lambda^\nu{}_\beta\,a^\beta=\eta_{\mu\nu}\Lambda^\nu{}_\beta\,\eta^{\beta\gamma}a_\gamma=\Lambda_\mu{}^\gamma\,a_\gamma .\tag{4.16}

3つめの等号で aβ=ηβγaγa^\beta=\eta^{\beta\gamma}a_\gamma を使い、最後に (4.13) を使った。(4.14) と合わせると、共変成分は逆行列の転置 (Λ−1)T(\Lambda^{-1})^{\mathsf T} で変換する。xx 方向のブーストで書くと

a0′=γ(a0+βa1),a1′=γ(a1+βa0)a'_0=\gamma(a_0+\beta a_1),\qquad a'_1=\gamma(a_1+\beta a_0)

となり、反変成分の式と β\beta の符号だけが違う。

4元ベクトルの定義と不変な内積

定義 4.5(4元ベクトル)

2つの慣性系のあいだの Lorentz 変換 Λ\Lambda のもとで、成分が

a′μ=Λμν aν(4.17)a'^\mu=\Lambda^\mu{}_\nu\,a^\nu\tag{4.17}

と変換する4成分の量 aμa^\mu を(反変)4元ベクトルと呼ぶ。下付きの成分が (4.16) の規則 aμ′=Λμνaνa'_\mu=\Lambda_\mu{}^\nu a_\nu で変換する量を、共変4元ベクトル(コベクトル)と呼ぶ。

定義の要点は、成分が4つ並んでいることではなく、変換の規則にある。(ct,x,y,z2)(ct,x,y,z^2) は4つの数の組だが、ブーストで (4.17) に従わないので4元ベクトルではない。

また、厳密に言うと座標 xμx^\mu そのものは原点の取り方に依存する。そこで時空の並進 xμ→xμ+bμx^\mu\to x^\mu+b^\mu まで含めた変換(Poincaré 変換)を考える。その場合は、並進で変わらない量が4元ベクトルの原型になる。座標の差 Δxμ\Delta x^\mu や、微小変位 dxμ\mathrm{d} x^\mu である。

定理 4.6(内積の不変性)

aμ,bμa^\mu,b^\mu が4元ベクトルなら、内積 a⋅b=aμbμa\cdot b=a_\mu b^\mu はすべての慣性系で同じ値をとる。

証明

(4.16) と (4.17)、(4.14) を順に使うと

aμ′b′μ=Λμγaγ Λμνbν=(ΛμγΛμν)aγbν=δγν aγbν=aνbν.a'_\mu b'^\mu=\Lambda_\mu{}^\gamma a_\gamma\,\Lambda^\mu{}_\nu b^\nu=\bigl(\Lambda_\mu{}^\gamma\Lambda^\mu{}_\nu\bigr)a_\gamma b^\nu=\delta^\gamma{}_\nu\,a_\gamma b^\nu=a_\nu b^\nu .

この定理の使い方は単純である。式の中のすべての添字が上下で対になって和をとられていれば、その量は計算するまでもなく不変である。添字の記法を使う最大の利点はこの点にある。

4元ベクトルの例:4元波数

新しい4元ベクトルを見つける方法の1つは、「4元ベクトルとの内積がどの系でも同じになる量」を探すことである。

平面波 cos⁡(ωt−k⋅x)\cos(\omega t-\bm{k}\cdot\bm{x}) の位相 ϕ=ωt−k⋅x\phi=\omega t-\bm{k}\cdot\bm{x} を考える。位相は、波の山がある事象を通過したかどうかを数える量であり、時空の1点が波の山に当たっているかどうかは観測者によらない事実である。したがって位相は系によらない量(スカラー)である。別の系で同じ事象を x′x' と書けば、ϕ′(x′)=ϕ(x)\phi'(x')=\phi(x) が成り立つ。

4元波数を

kμ≔(ωc, k),kμ=(ωc, −k)(4.18)k^\mu\coloneqq\Bigl(\frac{\omega}{c},\,\bm{k}\Bigr),\qquad k_\mu=\Bigl(\frac{\omega}{c},\,-\bm{k}\Bigr)\tag{4.18}

と並べると、位相は ϕ=kμxμ\phi=k_\mu x^\mu と書くことができる。すべての事象で kμ′x′μ=kμxμk'_\mu x'^\mu=k_\mu x^\mu が成り立つ。これに x′μ=Λμνxνx'^\mu=\Lambda^\mu{}_\nu x^\nu を入れると

kμ′Λμνxν=kνxν(すべての x)⟹kμ′Λμν=kν.k'_\mu\Lambda^\mu{}_\nu x^\nu=k_\nu x^\nu\quad(\text{すべての }x) \qquad\Longrightarrow\qquad k'_\mu\Lambda^\mu{}_\nu=k_\nu .

両辺に右から (Λ−1)νρ(\Lambda^{-1})^\nu{}_\rho を掛けると

kρ′=kν(Λ−1)νρ=Λρνkνk'_\rho=k_\nu(\Lambda^{-1})^\nu{}_\rho=\Lambda_\rho{}^\nu k_\nu

となる。つまり kμk_\mu はコベクトルの規則 (4.16) に従う。したがって kμk^\mu は4元ベクトルである。成分で書けば、xx 方向のブーストのもとで

ω′c=γ(ωc−βkx),kx′=γ(kx−βωc),ky′=ky,kz′=kz.(4.19)\frac{\omega'}{c}=\gamma\Bigl(\frac{\omega}{c}-\beta k_x\Bigr),\qquad k'_x=\gamma\Bigl(k_x-\beta\frac{\omega}{c}\Bigr),\qquad k'_y=k_y,\qquad k'_z=k_z .\tag{4.19}

真空中の光では ω=c∣k∣\omega=c\left\vert \bm{k}\right\vert なので、ノルムは0になる。

k⋅k=ω2c2−∣k∣2=0k\cdot k=\frac{\omega^2}{c^2}-\left\vert \bm{k}\right\vert ^2=0

すなわち kμk^\mu は光的である。不変性から、どの系でも ω′=c∣k′∣\omega'=c\left\vert \bm{k}'\right\vert が保たれる。

光が +x+x 方向に進む場合は kx=ω/ck_x=\omega/c である。このとき (4.19) の第1式は

ω′=γ(1−β)ω=1−β1+β ω\omega'=\gamma(1-\beta)\omega=\sqrt{\frac{1-\beta}{1+\beta}}\,\omega

を与え、第3章 §3.5 で光の信号を数えて求めた縦の Doppler 効果に一致する。周波数と波数の変換が1本の行列で済むことが、4元ベクトルとしてまとめた利点である。

図4.2 は、共変ベクトル kμk_\mu を「等位相面の重なり」として描いたものである。変位 Δxμ\Delta x^\mu がまたぐ等位相面の数は、kμΔxμ/(2π)k_\mu\Delta x^\mu/(2\pi) に等しい。コベクトルとベクトルの縮約は、「矢印が何枚の面を貫くか」を数える操作とみなすことができる。

図

図 4.2 平面波の等位相面(青の直線、隣り合う面の位相差は 2π2\pi)と変位 Δxμ\Delta x^\mu(赤の矢印)。ここでは ω/c=2π\omega/c=2\pi、kx=πk_x=\pi(長さの単位は任意)とした。矢印は ϕ\phi の値が 2π2\pi ずつ異なる面を2枚またぎ、kμΔxμ=2π⋅3−π⋅2=4πk_\mu\Delta x^\mu=2\pi\cdot3-\pi\cdot2=4\pi に一致する。この数え方はどの慣性系で描いても変わらない。

4元ベクトルの例はほかにもある。4元速度 uμ=dxμ/dτu^\mu=\mathrm{d} x^\mu/\mathrm{d}\tau と4元運動量 pμ=muμp^\mu=mu^\mu は第5章で導入する。電荷密度と電流密度を並べた4元電流 Jμ=(cρ,J)J^\mu=(c\rho,\bm{J}) も4元ベクトルであり、その理由は『電磁気学入門』第10章 §10.2 で確かめる。いずれの場合も、「4元ベクトルを不変量で割る」「不変量を掛ける」という2つの操作で新しい4元ベクトルが作られている。

  • dxμ\mathrm{d} x^\mu を不変量 dτ\mathrm{d}\tau で割ると、4元速度になる。これを uμu^\mu と書く。
  • 4元速度に不変量 mm を掛けると、4元運動量 pμp^\mu になる。

例題 4.2 恒星の光の光行差と横の Doppler 効果 ★★★

オリジナルKK 系で静止している遠方の恒星から、光が +y+y 方向へ進んでくる。波数と角振動数は k=(0,k,0)\bm{k}=(0,k,0)、ω=ck\omega=ck である。この光を、KK 系に対して速度 vx^v\hat{\bm{x}} で動く観測者が受ける。観測者の系を K′K' とする。

  1. 観測者の系での ω′\omega' と k′\bm{k}' を (4.19) で求めよ。
  2. 観測者の系で、恒星の見かけの方向は yy 軸からどちら向きに、どれだけの角 α\alpha だけずれるか。sin⁡α\sin\alpha を β\beta で表せ。
  3. 地球の公転の速さ v=29.78 km/sv=29.78\ \mathrm{km/s} を使い、角 α\alpha を角度の秒の単位で求めよ。あわせて振動数のずれ (ω′−ω)/ω(\omega'-\omega)/\omega を見積もれ。
解答
  1. ω/c=k\omega/c=k なので、恒星の系での成分は kμ=(k, 0, k, 0)k^\mu=(k,\,0,\,k,\,0) である。(4.19) に入れると

ω′c=γ(k−β⋅0)=γk,kx′=γ(0−βk)=−γβk,ky′=k,kz′=0.\frac{\omega'}{c}=\gamma(k-\beta\cdot0)=\gamma k,\qquad k'_x=\gamma(0-\beta k)=-\gamma\beta k,\qquad k'_y=k,\qquad k'_z=0 .

したがって ω′=γω\omega'=\gamma\omega、k′=(−γβk, k, 0)\bm{k}'=(-\gamma\beta k,\,k,\,0) である。検算として

∣k′∣2=γ2β2k2+k2=γ2k2(β2+1−β2)=γ2k2\left\vert \bm{k}'\right\vert ^2=\gamma^2\beta^2k^2+k^2=\gamma^2k^2(\beta^2+1-\beta^2)=\gamma^2k^2

なので ∣k′∣=γk=ω′/c\left\vert \bm{k}'\right\vert =\gamma k=\omega'/c となり、光的であることが保たれている。2. 光は k′\bm{k}' の向きに進むので、恒星は −k′=(γβk, −k, 0)-\bm{k}'=(\gamma\beta k,\,-k,\,0) の方向に見える。恒星の系では、恒星は −y-y の方向に見えていた。したがって見かけの方向は、観測者の進行方向(+x+x)の側に傾く。傾きの角は、−k′-\bm{k}' と −y-y 軸のなす角である。その正弦は

sin⁡α=γβk∣k′∣=γβkγk=β.\sin\alpha=\frac{\gamma\beta k}{\left\vert \bm{k}'\right\vert }=\frac{\gamma\beta k}{\gamma k}=\beta . 3. β=v/c=29.78/299792.458=9.933×10−5\beta=v/c=29.78/299792.458=9.933\times10^{-5} である。β≪1\beta\ll1 なので、角はほぼ β\beta ラジアンになる。

α=arcsin⁡(9.933×10−5) rad=9.933×10−5×180×3600π ′′≈20.49′′.\alpha=\arcsin(9.933\times10^{-5})\ \mathrm{rad}=9.933\times10^{-5}\times\frac{180\times3600}{\pi}\,''\approx20.49'' .

振動数のずれは

ω′−ωω=γ−1≃β22=4.93×10−9\frac{\omega'-\omega}{\omega}=\gamma-1\simeq\frac{\beta^2}{2}=4.93\times10^{-9}

である。光行差の角は β\beta の1次、振動数のずれは2次で、地球の公転で見る限り後者は10億分の5程度にとどまる。

光行差の角約 20.5′′20.5'' は、恒星の位置が1年周期で描く小さな楕円の長半径として実際に観測されている。第2章 §2.3 では同じ角を速度の合成則から求めた。ここでは4元波数の変換1回で、方向と振動数が同時に得られた。

確認テスト

オリジナル

  1. 4.2-1 xx 方向のブースト (4.11) について、行列式と成分 Λ00\Lambda^0{}_0 を求めよ。それを使って、固有順時的であることを確かめよ。
  2. 4.2-2 KK 系で aμ=(5, 3, 1, 0)a^\mu=(5,\,3,\,1,\,0) である4元ベクトルを考える。これを、β=0.6\beta=0.6 の xx 方向のブーストで別の系へ移せ。共変成分 aμ′a'_\mu も求め、a′⋅a′=a⋅aa'\cdot a'=a\cdot a を確かめよ。
  3. 4.2-3 xx 方向のブーストを2回続けた積 Λ(β2)Λ(β1)\Lambda(\beta_2)\Lambda(\beta_1) を計算せよ。それが次の速度のブーストに等しいことを示せ。

β=β1+β21+β1β2\beta=\frac{\beta_1+\beta_2}{1+\beta_1\beta_2} 4. 4.2-4 空間反転 P=diag(1,−1,−1,−1)P=\mathrm{diag}(1,-1,-1,-1) が条件 (4.12) を満たすことを確かめよ。また、空間反転が恒等変換から連続的な変形でつながらない理由を述べよ。5. 4.2-5 4成分の量 aμa_\mu を考える。すべての4元ベクトル bμb^\mu に対して、縮約 aμbμa_\mu b^\mu が不変になるとする。このとき aμa_\mu が (4.16) の規則で変換することを証明せよ。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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