相対論入門 第6章 §6.2 ★★★ Lorentz 力は4元力 qFμνuν の空間成分で、時間成分は電場のする仕事。一様磁場の中では固有時で等速の回転になる
4元力としての Lorentz 力
荷電粒子に働く3次元の力は Lorentz 力 F=q(E+u×B) である。これを4元力 (6.2) に組み込むと
fμ=γu(cqE⋅u, q(E+u×B))
となる(時間成分では (u×B)⋅u=0 を使った)。右辺は電磁場について1次で、4元速度についても1次である。これは次の形の式とちょうど同じである。
命題 6.1(Lorentz 力の共変形 ★★★)
電荷 q の粒子の運動方程式は
dτdpμ=qFμνuν(6.13)
と書ける。空間成分は dp/dt=q(E+u×B)、時間成分は dE/dt=qE⋅u である。
証明
uν=(γuc, −γuu) である。μ=0 では、F00=0 と (6.6) から
F0νuν=i∑F0iui=i∑(−cEi)(−γuui)=cγuE⋅u.
左辺は dp0/dτ=γud(E/c)/dt である。両辺の γu を約して dE/dt=qE⋅u を得る。μ=1 では
F1νuν=F10u0+F12u2+F13u3=cExγuc+(−Bz)(−γuuy)+By(−γuuz)=γu(Ex+uyBz−uzBy)
で、括弧の中は (E+u×B)x である。左辺は dp1/dτ=γudpx/dt である。両辺の γu を約して x 成分の式を得る。μ=2,3 も同じである。
(6.13) の右辺は、4元ベクトル uν に Fμν を縮約した形である。したがって Fμν がテンソルであれば右辺は4元ベクトルになり、方程式はすべての慣性系で同じ形になる。
逆向きの論法も成り立つ。Lorentz 力の法則がすべての慣性系で同じ形で成り立つことを、実験の事実として受け入れる。すると左辺 dpμ/dτ は4元ベクトルで、右辺の uν は(ある範囲の時間的な)任意のコベクトルを動ける。第4章の商定理によって、Fμν はテンソルでなければならない。
§6.1 の変換則 (6.12) は、この意味で Lorentz 力の形から決まっている。
Fμν の反対称性から、4元力は4元速度と直交する。
uμfμ=qFμνuμuν=0(6.14)
(uμuν は対称、Fμν は反対称)。第5章 §5.4 で見たように、これは粒子の質量が変わらないことと同じである。電磁場は荷電粒子を加速するが、その静止質量を変えない。作用からこの方程式を導く道は、虎の巻『解析力学から様々な理論分野を組み立てる』第2部第2章・第3章にある。
一様な磁場の中の運動
電場がなく、一様な磁場 B=Bz^(B>0)がある場合を解く。(6.13) の時間成分は dE/dt=0 で、粒子のエネルギーは一定である。したがって γu も一定で、速さ u は変わらない。空間成分は、F12=−B、F21=B だけが 0 でないので
dτdu1=mqF12u2=ωcu2,dτdu2=mqF21u1=−ωcu1,dτdu3=0,ωc:=mqB(6.15)
となる(u2=−u2、u1=−u1 を使った)。ωc は質量と電荷と磁場だけで決まる定数で、Newton 力学のサイクロトロン角振動数と同じ式である。(6.15) は固有時についての定数係数の線形方程式である。初期条件を、固有時0で u1=γuu⊥、u2=0 とすると
u1=γuu⊥cosωcτ,u2=−γuu⊥sinωcτ,u3=γuu∥(6.16)
が解である。ここで u⊥ と u∥ は、磁場に垂直な速さと平行な速さである。2乗の和 u⊥2+u∥2=u2 は一定である。固有時でもう一度積分すると、xy 面への射影は中心 (0,−R) の円になる。半径は
R=ωcγuu⊥=qBγumu⊥=qBp⊥(6.17)
である(x=Rsinωcτ、y=Rcosωcτ−R)。q>0 なら +z の側から見て時計回りに回る(図 6.1)。z 方向には等速で進むので、3次元の軌道はらせんである。
固有時で見た角振動数は ωc で、速さによらない。一方、実験室の時間では dt=γudτ なので
ω=γuωc=γumqB(6.18)
となる。速い粒子ほど1周にかかる時間が長くなる。Newton 力学では周期が速さによらないので、一定の周波数の電場で粒子を加速し続けることができた(サイクロトロン)。
相対論的な速さでは γu が増えるにつれて周回が遅れ、加速の周波数か磁場を粒子のエネルギーに合わせて変えなければならない。(6.17) は、半径を決めるのが速さではなく運動量 p⊥ であることを示している。磁場と半径を測れば運動量が分かるので、加速器や検出器で粒子の運動量を測る方法になる。

図 6.1 一様な磁場 B=Bz^ の中の正電荷の軌道を xy 面に射影したもの。τ=0 に原点を +x 向きに出発し、半径 R=p⊥/(qB) の円を時計回りに回る。
例題 6.2 陽子加速器の曲率半径 ★★★
オリジナルエネルギー E=7.0 TeV の陽子を、強さ B=8.3 T の一様な磁場で円軌道に曲げる。陽子の静止エネルギーは 938.27 MeV とする。
- 陽子の γu と運動量 pc を求めよ。
- 軌道の半径を求めよ。
- Newton 力学の式 R=mu/(qB) に u≃c を入れた値と比べよ。
解答
- γu=E/(mpc2)=7.0×1012/(938.27×106)=7.46×103 である。運動量は E2=(pc)2+(mpc2)2 から
pc=E2−(mpc2)2=E1−γu21=7.0 TeV×(1−9.0×10−9)
で、pc は E と9桁目まで一致する。2. (6.17) で p⊥=p、q=e とする。pc を電子ボルトで表した数値を P と書く。p=Pe/c なので
R=eBp=cBP=2.998×108×8.37.0×1012 m=2.81×103 m.
半径はおよそ 2.8 km である。3. Newton 力学の式では RN=mpc/(eB)=938.27×106/(2.998×108×8.3) m=0.377 m となる。正しい値はその γu=7.46×103 倍である。陽子の速さは光速とほとんど変わらないが、運動量は γu に比例して大きくなるので、曲げるのに必要な磁場と半径の積も γu 倍になる。
一様な電場と磁場が直交する場合
一様な電場 E=Ey^ と一様な磁場 B=Bz^ が同時にある場合を考える。大きさは E<cB とする。(6.12) の y 成分は Ey′=γ(E−vB) である。
したがって標準配置で速さ v=E/B の系 K′ をとると、電場が消える。仮定 E<cB から、この速さは光速より小さい。
系 K′ では磁場 Bz′=γ(B−vE/c2)=B/γ だけがあり、粒子は前の小節の円運動(らせん)をする。元の系から見ると、その円運動全体が次の速度で流れる。
B2E×B=BEx^
これが E×B ドリフトで、Newton 力学で得られる速度と同じ式が、v が光速に近い場合も含めて成り立つ。E>cB の場合は、速さ c2B/E で動く系をとると磁場が消え、残った一様な電場の中の運動(確認テスト 6.2-4)になる。どちらの場合になるかは不変量 E2−c2B2 の符号で決まり、系の選び方にはよらない。
確認テスト
オリジナル
- 6.2-1 4元力 fμ=qFμνuν について uμfμ=0 を1行で示し、それが粒子のどの量の保存を表すかを答えよ。
- 6.2-2 運動エネルギー 1.0 MeV の電子(mec2=0.511 MeV)が、B=0.10 T の一様な磁場に垂直に入る。γu・運動量 pc・軌道の半径・回転の周波数を求めよ。周波数は、Newton 力学の式による値 eB/(2πme) と比べよ。
- 6.2-3 電場と磁場が E=E0y^、B=B0z^ で、大きさが次の値のときを考える。
E0=1.0×105 V/m,B0=1.0×10−3 T
電場が消える系の速さ v と β、その系での磁場を求めよ。不変量 B2−E2/c2 が一致することも確かめよ。4. 6.2-4 一様な電場 E=Ex^ の中で、電荷 q の粒子が固有時0に原点で静止していた。この粒子の4元速度を (6.13) から求めよ。また、第5章 §5.4 の双曲線運動(固有加速度 α=qE/m)になることを示せ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com