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重力赤方偏移と重力の時間の遅れ

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第7章 等価原理
目次
  1. 加速するロケットの中の光
  2. エネルギー保存からの導出
  3. 時計の進みの違い
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第7章 §7.3 ★★★ 低い所の時計は遅れる。Δf/f=−ΔΦ/c2\Delta f/f=-\Delta\Phi/c^2 は GPS の運用に欠かせない補正になる

加速するロケットの中の光

等価原理を使って、重力場の中を上へ進む光の振動数がどう変わるかを求める。まず重力のない空間で考え、あとで等価原理によって重力場の話に移す。

重力のない空間で、ロケットが上向き(+z+z)に一定の加速度 gg で加速している。床に光源、高さ hh の天井に受信器を固定する。gh/c2≪1gh/c^2\ll1 を仮定し、(gh/c2)2(gh/c^2)^2 の程度の項は無視する。

光源が光を出した瞬間にロケットと一緒に動いている慣性系(瞬間静止系)を KK とし、その時刻を t=0t=0 とする。KK で見ると、その時刻に光源は静止しているので、光の振動数は光源の固有の振動数 f0f_0 である。

光が天井に届くのは時刻 t≃h/ct\simeq h/c である。正確には、その間に天井も 12gt2\frac12gt^2 だけ進むので到着は少し遅れるが、その違いは gh/c2gh/c^2 の相対的な補正にすぎず、この計算の精度では影響しない。到着の時刻に天井(受信器)は KK に対して速さ

u=g hc,βu=uc=ghc2(7.13)u=g\,\frac{h}{c},\qquad \beta_u=\frac{u}{c}=\frac{gh}{c^2}\tag{7.13}

で上向き、すなわち光の進む向きに動いている。受信器は光源から遠ざかる向きに動いているので、第3章 §3.5 の縦の Doppler 効果によって、受信器の測る振動数は

f=f01−βu1+βu≃f0(1−ghc2)(7.14)f=f_0\sqrt{\frac{1-\beta_u}{1+\beta_u}}\simeq f_0\Bigl(1-\frac{gh}{c^2}\Bigr)\tag{7.14}

となる((1−β)/(1+β)=1−β+O(β2)\sqrt{(1-\beta)/(1+\beta)}=1-\beta+\mathcal{O}(\beta^2) を使った)。天井では、床の光源の光が低い振動数に見える。逆に天井から床へ光を送れば、床は光源に近づく向きに速さ gh/cgh/c で動いているので、振動数は f0(1+gh/c2)f_0(1+gh/c^2) に高くなる。

ここで等価原理を使う。加速するロケットの中の物理は、重力加速度 gg の一様な重力場の中に静止した実験室の物理と区別できない(図 7.2)。したがって、地上の実験室でも、高さ hh だけ上に置いた受信器が床の光源の光を測ると、振動数は

f上f下=1−ghc2(7.15)\frac{f_{\text{上}}}{f_{\text{下}}}=1-\frac{gh}{c^2}\tag{7.15}

となる。重力場の中を上る光は振動数が下がる(波長が長くなり、可視光なら赤の側へずれる)。これを重力赤方偏移と呼ぶ。一様な場では Φ=gz+\Phi=gz+定数なので、(7.15) は gh=Φ上−Φ下gh=\Phi_{\text{上}}-\Phi_{\text{下}} を使って

Δff≔f受−f発f発=−Φ受−Φ発c2(7.16)\frac{\Delta f}{f}\coloneqq\frac{f_{\text{受}}-f_{\text{発}}}{f_{\text{発}}}=-\frac{\Phi_{\text{受}}-\Phi_{\text{発}}}{c^2}\tag{7.16}

と書ける。受信器が光源より高い所(Φ\Phi の大きい所)にあれば Δf<0\Delta f<0 である。

エネルギー保存からの導出

同じ結果は、第5章 §5.2 の質量とエネルギーの関係とエネルギー保存だけからも導ける。Einstein の 1911 年の議論を整理した形で述べる。

一様な重力場 gg の中で、高さ hh だけ離れた床と天井を考える。天井に静止質量 mm の物体があるとする。

  1. 物体を床まで落とす。床に着いたときの物体のエネルギーは、静止エネルギーと運動エネルギーの和 mc2+mghmc^2+mgh である(gh≪c2gh\ll c^2 なので Newton 力学の運動エネルギーで足りる)。
  2. 床で物体のエネルギーを全部、光(光子の集まり)に変える。光のエネルギーは E下=mc2+mghE_{\text{下}}=mc^2+mgh である。
  3. 光を天井へ送り、天井で光のエネルギー E上E_{\text{上}} を全部、静止した物体に戻す。

天井で元と同じ質量 mm の物体が得られ、さらにエネルギーが余れば、この一巡を繰り返すことで無からエネルギーを取り出せてしまう。エネルギー保存が成り立つためには E上=mc2E_{\text{上}}=mc^2 でなければならず、

E上E下=mc2mc2+mgh=11+gh/c2≃1−ghc2\frac{E_{\text{上}}}{E_{\text{下}}}=\frac{mc^2}{mc^2+mgh}=\frac{1}{1+gh/c^2}\simeq1-\frac{gh}{c^2}

となる。光子1個のエネルギーは ℏω=2πℏf\hbar\omega=2\pi\hbar f で振動数に比例し、上る途中で光子の数は変わらないので、振動数の比も同じ 1−gh/c21-gh/c^2 である。

これは (7.15) と一致する。重力場の中を上る光は「位置エネルギーの分だけエネルギーを失う」と読むことができる。これは等価原理の次の主張と同じ内容である。光のエネルギー EE に慣性質量 E/c2E/c^2 を割り当てるなら、重力質量も同じ値でなければならない。

時計の進みの違い

(7.16) は、光の側に何かが起きたと読むこともできるが、時計の進みの違いとして読むほうが一般的である。重力場が時間によって変わらないとし、低い所の点 A と高い所の点 B にそれぞれ静止した時計を置く。A の時計で振動数 fAf_{\mathrm A} の光を B へ送る。

光の山が A を出てから B に着くまでの時間は、場が時間変化しないので、どの山についても同じである。したがって、A で nn 個の山が出る間に、B にもちょうど nn 個の山が届く。A の時計でそれにかかった時間を ΔτA=n/fA\Delta\tau_{\mathrm A}=n/f_{\mathrm A}、B の時計で受け取りにかかった時間を ΔτB=n/fB\Delta\tau_{\mathrm B}=n/f_{\mathrm B} とすると

ΔτBΔτA=fAfB=1+ΦB−ΦAc2\frac{\Delta\tau_{\mathrm B}}{\Delta\tau_{\mathrm A}}=\frac{f_{\mathrm A}}{f_{\mathrm B}}=1+\frac{\Phi_{\mathrm B}-\Phi_{\mathrm A}}{c^2}

である((7.16) の逆数を1次まで展開した)。同じ2つの出来事(nn 個の山の送出の始めと終わりを B で受けた2つの時刻)の間隔を、B の時計は A の時計より長く測る。つまり、高い所の時計は低い所の時計より速く進む。

時計どうしを比べる共通の基準として、重力場の影響がない無限遠(Φ=0\Phi=0)に静止した時計の時刻 tt を使う。すると、ポテンシャル Φ\Phi の所に静止した時計の固有時は

dτ=(1+Φc2)dt(7.17)\mathrm{d}\tau=\Bigl(1+\frac{\Phi}{c^2}\Bigr)\mathrm{d} t\tag{7.17}

で進む(∣Φ∣≪c2\left\vert \Phi\right\vert \ll c^2 での1次の式)。Φ<0\Phi<0 なので、重力源の近くの時計ほど遅れる。これを重力の時間の遅れと呼ぶ。

ここまでの導出では、一様な場 gg を使った。一様でない場でも、高さの差 dz\mathrm{d} z の小さな区間ごとに場を一様とみなし、各区間の振動数の比 1−g(z) dz/c21-g(z)\,\mathrm{d} z/c^2 を掛け合わせれば

ln⁡fBfA=−∫ABg(z)c2 dz=−ΦB−ΦAc2\ln\frac{f_{\mathrm B}}{f_{\mathrm A}}=-\int_{\mathrm A}^{\mathrm B}\frac{g(z)}{c^2}\,\mathrm{d} z=-\frac{\Phi_{\mathrm B}-\Phi_{\mathrm A}}{c^2}

となり、1次の範囲で (7.16) が一般の場でも成り立つ。ここで g(z)=dΦ/dzg(z)=\mathrm{d}\Phi/\mathrm{d} z を使った。

時計が速さ uu で動いていれば、第3章 §3.3 の時間の遅れ dτ=1−u2/c2 dt\mathrm{d}\tau=\sqrt{1-u^2/c^2}\,\mathrm{d} t も加わる。等価原理によれば、時計の位置の局所慣性系では特殊相対論の時間の遅れがそのまま成り立つので、1/c21/c^2 の1次の範囲では2つの効果が足し合わされて

dτdt≃1+Φc2−u22c2(7.18)\frac{\mathrm{d}\tau}{\mathrm{d} t}\simeq1+\frac{\Phi}{c^2}-\frac{u^2}{2c^2}\tag{7.18}

となる。2つの補正の積は 1/c41/c^4 の程度なので、この精度では無視できる。1/c41/c^4 の項まで正しく扱うには計量が必要になり、第9章 §9.2 と第12章 §12.4 でそれを行う。

Pound–Rebka の実験

地上の高さの差による赤方偏移は非常に小さい。高さ h=22.5 mh=22.5\,\mathrm m では gh/c2=9.81×22.5/(2.998×108)2=2.46×10−15gh/c^2=9.81\times22.5/(2.998\times10^8)^2=2.46\times10^{-15} である。1960 年、R. V. Pound と G. A. Rebka は、塔の上下に 57Fe^{57}\mathrm{Fe} の放射源と吸収体を置き、この差を測った。使ったのは 14.4 keV14.4\,\mathrm{keV} の γ\gamma 線である。

  • 反跳のない γ\gamma 線の放出と吸収(Mössbauer 効果)を使うと、線の幅は振動数の相対値で 10−1310^{-13} の程度まで狭くなる。
  • 放射源を毎秒 μm\mu\mathrm m の程度の速さで動かし、Doppler 効果でずれを打ち消す速さを探す。2.46×10−152.46\times10^{-15} を打ち消す速さは c×2.46×10−15=0.74 μm/sc\times2.46\times10^{-15}=0.74\,\mu\mathrm{m/s} である。
  • 放射源と吸収体の上下を入れ替えて測ると、赤方偏移と青方偏移の差 2gh/c2=4.9×10−152gh/c^2=4.9\times10^{-15} が得られ、装置の系統的なずれを打ち消すことができる。

測定値と予言の比は 1.05±0.101.05\pm0.10 で、その後の改良で精度は約 1%1\% になった。現在は、光学領域の原子時計を使って、高さ数十 cm の違いによる時計の進みの差まで測られている。

例題 7.4 GPS 衛星の時計の補正 ★★★

オリジナルGPS 衛星は、地球の自転の周期(恒星日 86164 s86164\,\mathrm s)のちょうど半分の周期で円軌道を回る。数値は次を使う。

GM⊕=3.986×1014 m3/s2,R⊕=6.371×106 m,c=2.998×108 m/sGM_\oplus=3.986\times10^{14}\,\mathrm{m^3/s^2},\qquad R_\oplus=6.371\times10^6\,\mathrm m,\qquad c=2.998\times10^8\,\mathrm{m/s}

  1. (1) 軌道半径 rr と軌道の速さ uu を求めよ。
  2. (2) 地表に静止した時計(自転の速さは無視する)と比べて、衛星の時計が1日(86400 s86400\,\mathrm s)あたりどれだけ進むかを、重力による部分と速さによる部分に分けて求めよ。
  3. (3) 補正をしないと、1日で測位の距離にどれだけの誤差がたまるか。
解答

(1) 周期は T=86164/2 s=43082 sT=86164/2\,\mathrm s=43082\,\mathrm s である。円軌道では重力が向心力になるので

u2r=GM⊕r2,u=2πrT∴ r3=GM⊕T24π2\begin{aligned}\frac{u^2}{r}&=\frac{GM_\oplus}{r^2}, \qquad u=\frac{2\pi r}{T}\\ \therefore\ r^3&=\frac{GM_\oplus T^2}{4\pi^2}\end{aligned}

である。数値を入れると

r=(3.986×1014×4308224π2)1/3m=2.656×107 m,u=GM⊕r=3.874×103 m/s.r=\Bigl(\frac{3.986\times10^{14}\times43082^2}{4\pi^2}\Bigr)^{1/3}\mathrm m=2.656\times10^7\,\mathrm m,\qquad u=\sqrt{\frac{GM_\oplus}{r}}=3.874\times10^3\,\mathrm{m/s}.

軌道半径は地球の半径の約 4.24.2 倍である。

(2) (7.18) を次の2つの時計に当てはめ、差をとる。

  • 衛星の時計:Φ=−GM⊕/r\Phi=-GM_\oplus/r、速さ uu。
  • 地上の時計:Φ=−GM⊕/R⊕\Phi=-GM_\oplus/R_\oplus、速さ0。

dτ衛星−dτ地上dt=GM⊕c2(1R⊕−1r)⏟重力−u22c2⏟速さ.\frac{\mathrm{d}\tau_{\text{衛星}}-\mathrm{d}\tau_{\text{地上}}}{\mathrm{d} t}=\underbrace{\frac{GM_\oplus}{c^2}\Bigl(\frac{1}{R_\oplus}-\frac1r\Bigr)}_{\text{重力}}-\underbrace{\frac{u^2}{2c^2}}_{\text{速さ}} .

重力の部分は

3.986×1014(2.998×108)2(16.371×106−12.656×107)=5.29×10−10\frac{3.986\times10^{14}}{(2.998\times10^8)^2}\Bigl(\frac{1}{6.371\times10^6}-\frac{1}{2.656\times10^7}\Bigr)=5.29\times10^{-10}

で、1日あたり 5.29×10−10×86400 s=45.7 μs5.29\times10^{-10}\times86400\,\mathrm s=45.7\,\mu\mathrm s 進む。速さの部分は

u22c2=(3.874×103)22×(2.998×108)2=8.35×10−11\frac{u^2}{2c^2}=\frac{(3.874\times10^3)^2}{2\times(2.998\times10^8)^2}=8.35\times10^{-11}

で、1日あたり 7.2 μs7.2\,\mu\mathrm s 遅れる(第1章の例題で求めた値と同じ)。差し引きで、衛星の時計は1日あたり

45.7 μs−7.2 μs=38.5 μs45.7\,\mu\mathrm s-7.2\,\mu\mathrm s=38.5\,\mu\mathrm s

進む。相対的な進みの率は 4.46×10−104.46\times10^{-10} である。

(3) 測位では電波の伝わる時間に cc を掛けて距離を出すので、時計のずれ 38.5 μs38.5\,\mu\mathrm s は距離の誤差

c×38.5×10−6 s=1.15×104 m≈11.5 kmc\times38.5\times10^{-6}\,\mathrm s=1.15\times10^4\,\mathrm m\approx11.5\,\mathrm{km}

にあたる。実際の衛星では、地上で時計の基準の振動数を 4.46×10−104.46\times10^{-10} だけ低く設定してから打ち上げることで、この効果を前もって打ち消している。重力の効果が速さの効果の6倍以上あり、重力の時間の遅れを入れずには GPS は運用できない。

確認テスト

オリジナル

  1. 7.3-1 同じ型の2つの原子時計を、1つは山頂、1つはふもとに置いて長時間動かす。どちらの読みが進むか。理由を1文で答えよ。
  2. 7.3-2 富士山頂(ふもととの高さの差 3776 m3776\,\mathrm m)の時計は、ふもとの時計に比べて1日あたり何 ns 進むか。g=9.80 m/s2g=9.80\,\mathrm{m/s^2} を一定とする。
  3. 7.3-3 国際宇宙ステーション(高さ 420 km420\,\mathrm{km} の円軌道)の時計は、地上に静止した時計(自転は無視する)に比べて、1日あたりどれだけ進むか遅れるか。定数は例題 7.4 と同じとする。
  4. 7.3-4 円軌道を回る衛星の時計と地上に静止した時計(自転は無視する)の進みが (7.18) の範囲で等しくなる軌道半径を、地球の半径 R⊕R_\oplus を使って求めよ。
  5. 7.3-5 (7.14) の導出で、光が天井に届くまでに天井が進む距離 12gt2\frac12gt^2 を入れて到着時刻を求め直し、振動数の比の補正が (gh/c2)2(gh/c^2)^2 の程度であることを示せ。

木下の勉強ステータス

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