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計量テンソル

2026年10月15日21分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第8章 曲がった時空の幾何
目次
  1. 線素と計量
  2. 符号と体積要素
  3. 計量の例
  4. 平面の極座標。
  5. 2次元の球面。
  6. Minkowski 時空の球座標。
  7. 局所平坦性
  8. 確認テスト
  9. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第8章 §8.2 ★★★ 長さと時間を測る規則。重力の場は計量の成分として表され、以後のすべての計算は計量から始まる

線素と計量

多様体には、そのままでは長さや角度の概念が無い。座標は点に番号を付けるだけで、番号の差がどれだけの距離にあたるかは別に与える必要がある。特殊相対論では、不変間隔 ds2=ημνdxμdxν\mathrm{d} s^2=\eta_{\mu\nu}\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu がその規則であった。これを、点ごとに係数の変わる2次形式に広げる。

定義 8.6(計量)

各点に、対称な (0,2)(0,2) 型テンソル gμν=gνμg_{\mu\nu}=g_{\nu\mu} で、行列として逆行列を持つものが与えられているとき、これを計量テンソル(計量)と呼ぶ。隣り合う2点の間の線素を

ds2=gμν(x) dxμdxν(8.11)\mathrm{d} s^2=g_{\mu\nu}(x)\,\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu\tag{8.11}

で定める。2次元の曲面のように gμνg_{\mu\nu} が正定値のものを Riemann 計量、時空のように対角化したとき符号が (+,−,−,−)(+,-,-,-) になるものを Lorentz 計量と呼ぶ。

gμνg_{\mu\nu} を対称にとってよい理由は、反対称な部分 Aμν=−AνμA_{\mu\nu}=-A_{\nu\mu} が線素に寄与しないことにある(確認テスト 8.2-1)。実際、

Aμνdxμdxν=0A_{\mu\nu}\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu=0

となる。線素 ds2\mathrm{d} s^2 は2点の間の「間隔」で、座標の取り方によらない量として定める。ds′2=ds2\mathrm{d} s'^2=\mathrm{d} s^2 が任意の dxμ\mathrm{d} x^\mu で成り立つことを要求すると、(8.2) から

gμν′dx′μdx′ν=gμν′∂x′μ∂xα∂x′ν∂xβdxαdxβ=gαβdxαdxβg'_{\mu\nu}\mathrm{d} x'^\mu\mathrm{d} x'^\nu=g'_{\mu\nu}\frac{\partial x'^\mu}{\partial x^\alpha}\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta}\mathrm{d} x^\alpha\mathrm{d} x^\beta=g_{\alpha\beta}\mathrm{d} x^\alpha\mathrm{d} x^\beta

となる。両辺の係数は α,β\alpha,\beta について対称なので、任意の dx\mathrm{d} x で等しいことから係数どうしが等しい。これを g′g' について解くと

gμν′=∂xα∂x′μ∂xβ∂x′ν gαβ(8.12)g'_{\mu\nu}=\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\nu}\,g_{\alpha\beta}\tag{8.12}

を得る。これは (0,2)(0,2) 型テンソルの変換則 (8.9) にほかならない。行列 Jαμ=∂xα/∂x′μJ^\alpha{}_\mu=\partial x^\alpha/\partial x'^\mu を使うと、g′=JTgJg'=J^{\mathsf T}gJ と書くこともできる。

計量の逆行列を gμνg^{\mu\nu} と書く。

gμλgλν=δμν.(8.13)g^{\mu\lambda}g_{\lambda\nu}=\delta^\mu{}_\nu .\tag{8.13}

gμνg^{\mu\nu} は (2,0)(2,0) 型のテンソルである。第4章と同じく、計量で添字を下げ Vμ=gμνVνV_\mu=g_{\mu\nu}V^\nu、逆計量で添字を上げる ωμ=gμνων\omega^\mu=g^{\mu\nu}\omega_\nu。2つの接ベクトルの内積は gμνUμVν=UμVμg_{\mu\nu}U^\mu V^\nu=U_\mu V^\mu で、座標によらない。曲線 xμ(λ)x^\mu(\lambda) の長さ(時空では固有時に cc を掛けたもの)は

L=∫∣gμνdxμdλdxνdλ∣ dλ(8.14)L=\int\sqrt{\left\vert g_{\mu\nu}\frac{d x^\mu}{d \lambda}\frac{d x^\nu}{d \lambda}\right\vert }\,\mathrm{d}\lambda\tag{8.14}

で、パラメータの付け替え λ→λ′(λ)\lambda\to\lambda'(\lambda) でも値を変えない。

符号と体積要素

計量の行列は対称なので、各点で直交行列によって対角化できる。さらに座標の線形な取り替えで対角成分の大きさを1にそろえることができる。このとき残る対角成分の正負の個数は、変換 g′=JTgJg'=J^{\mathsf T}gJ で変わらない(Sylvester の慣性法則)。

したがって「時空の計量の符号は (+,−,−,−)(+,-,-,-)」という言明は座標によらない意味を持つ。正の固有値が1つの計量では、時間的・空間的・光的の区別が各点の接空間で第3章と同じように定まる。

面積や体積を測るには、座標の微小な箱 dnx=dx1⋯dxn\mathrm{d}^nx=\mathrm{d} x^1\cdots\mathrm{d} x^n にどれだけの大きさを割り当てるかを決める必要がある。g=det⁡gμνg=\det g_{\mu\nu} と書く。計量の変換と積分の変数変換は、それぞれ

g′=(det⁡J)2g((8.12) の行列式をとった)dnx′=∣det⁡(∂x′/∂x)∣ dnx=∣det⁡J∣−1dnx(積分の変数変換)\begin{aligned}g'&=(\det J)^2g &&\text{((8.12) の行列式をとった)}\\ \mathrm{d}^nx'&=\left\vert \det(\partial x'/\partial x)\right\vert \,\mathrm{d}^nx=\left\vert \det J\right\vert ^{-1}\mathrm{d}^nx &&\text{(積分の変数変換)}\end{aligned}

となる。この2つを掛け合わせると

∣g′∣ dnx′=∣det⁡J∣∣g∣⋅∣det⁡J∣−1dnx=∣g∣ dnx(8.15)\sqrt{\left\vert g'\right\vert }\,\mathrm{d}^nx'=\left\vert \det J\right\vert \sqrt{\left\vert g\right\vert }\cdot\left\vert \det J\right\vert ^{-1}\mathrm{d}^nx=\sqrt{\left\vert g\right\vert }\,\mathrm{d}^nx\tag{8.15}

となり、∣g∣ dnx\sqrt{\left\vert g\right\vert }\,\mathrm{d}^nx は座標によらない。これを体積要素と呼ぶ。時空では g<0g<0 なので −g d4x\sqrt{-g}\,\mathrm{d}^4x と書く。

計量の例

平面の極座標。

Euclid 平面の計量は直交座標で ds2=dx2+dy2\mathrm{d} s^2=\mathrm{d} x^2+\mathrm{d} y^2、すなわち gμν=δμνg_{\mu\nu}=\delta_{\mu\nu} である。例題 8.1 の Jacobi 行列 JJ を使うと g′=JTJg'=J^{\mathsf T}J である。JJ の2つの列ベクトル

(cos⁡φ, sin⁡φ),(−rsin⁡φ, rcos⁡φ)(\cos\varphi,\ \sin\varphi),\qquad (-r\sin\varphi,\ r\cos\varphi)

どうしの内積を並べればよい。結果は

ds2=dr2+r2dφ2,grr=1,gφφ=r2,grφ=0(8.16)\mathrm{d} s^2=\mathrm{d} r^2+r^2\mathrm{d}\varphi^2,\qquad g_{rr}=1,\quad g_{\varphi\varphi}=r^2,\quad g_{r\varphi}=0\tag{8.16}

である。成分 gφφg_{\varphi\varphi} が位置によって変わるが、空間は平らなままである。計量の成分が定数でないことは、空間が曲がっていることを意味しない。

2次元の球面。

半径 aa の球面を3次元空間に置き、点を X=(asin⁡θcos⁡φ, asin⁡θsin⁡φ, acos⁡θ)\bm{X}=(a\sin\theta\cos\varphi,\,a\sin\theta\sin\varphi,\,a\cos\theta) と表す。球面の上の2点の距離は、3次元空間の距離 dX⋅dX\mathrm{d}\bm{X}\cdot\mathrm{d}\bm{X} で測る。dX=∂θX dθ+∂φX dφ\mathrm{d}\bm{X}=\partial_\theta\bm{X}\,\mathrm{d}\theta+\partial_\varphi\bm{X}\,\mathrm{d}\varphi で、

∂θX⋅∂θX=a2,∂φX⋅∂φX=a2sin⁡2θ,∂θX⋅∂φX=0\partial_\theta\bm{X}\cdot\partial_\theta\bm{X}=a^2,\qquad \partial_\varphi\bm{X}\cdot\partial_\varphi\bm{X}=a^2\sin^2\theta,\qquad \partial_\theta\bm{X}\cdot\partial_\varphi\bm{X}=0

であるから、

ds2=a2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)(8.17)\mathrm{d} s^2=a^2\left(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2\right)\tag{8.17}

を得る。g=a2sin⁡θ\sqrt g=a^2\sin\theta なので、面積は

∫02π ⁣ ⁣∫0πa2sin⁡θ dθ dφ=4πa2\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^\pi a^2\sin\theta\,\mathrm{d}\theta\,\mathrm{d}\varphi=4\pi a^2

である。

こうして得た計量は、球面の上の住人が球面の中だけで距離を測った結果と同じであり、3次元空間を使わずに球面の幾何を書き表している。この「中から測った幾何」が一般相対論で必要になる考え方である。時空を外から眺める高い次元の空間は、物理的には存在しなくてよい。

Minkowski 時空の球座標。

特殊相対論の時空でも、空間を球座標で書けば

ds2=c2dt2−dr2−r2(dθ2+sin⁡2θ dφ2)(8.18)\mathrm{d} s^2=c^2\mathrm{d} t^2-\mathrm{d} r^2-r^2\left(\mathrm{d}\theta^2+\sin^2\theta\,\mathrm{d}\varphi^2\right)\tag{8.18}

となる(確認テスト 8.2-2 の空間部分に時間を足したもの)。第12章の Schwarzschild 計量は、この形の c2dt2c^2\mathrm{d} t^2 と dr2\mathrm{d} r^2 の係数を動径の関数に置き換えたものである。

局所平坦性

極座標の例が示すように、計量の成分が場所によって変わっても、座標をうまく選べば定数にできることがある。では、球面のように本当に曲がった空間では、どこまで計量を簡単にできるだろうか。答えは次の定理である。

定理 8.7(局所平坦性)

nn 次元の多様体の任意の点 pp で、次の2つを満たす座標をとることができる。

  1. 点 pp での計量 gμν′(p)g'_{\mu\nu}(p) は対角である。対角成分は ±1\pm1 で、時空では

gμν′(p)=ημν.g'_{\mu\nu}(p)=\eta_{\mu\nu}. 2. 計量の1階微分がすべて点 pp で0になる。

∂λ′gμν′(p)=0.\partial'_\lambda g'_{\mu\nu}(p)=0.

一方、計量の2階微分 ∂λ′∂κ′gμν′(p)\partial'_\lambda\partial'_\kappa g'_{\mu\nu}(p) については、次の数の組み合わせが、座標をどう選んでも一般には0にすることができない。

n2(n2−1)12\frac{n^2(n^2-1)}{12}

証明

点 pp を原点とする座標 x′x' を、もとの座標の Taylor 展開

xμ=xpμ+Aμαx′α+12Bμαβx′αx′β+16Cμαβγx′αx′βx′γ+⋯(8.19)x^\mu=x^\mu_p+A^\mu{}_\alpha x'^\alpha+\frac12B^\mu{}_{\alpha\beta}x'^\alpha x'^\beta+\frac16C^\mu{}_{\alpha\beta\gamma}x'^\alpha x'^\beta x'^\gamma+\cdots\tag{8.19}

で決める。係数 BB は下の2つの添字について、CC は下の3つの添字について対称にとることができる。変換則 (8.12) の右辺

∂xα∂x′μ∂xβ∂x′ν gαβ(x)\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\nu}\,g_{\alpha\beta}(x)

を x′x' で展開する。すると、各次数に現れる係数は次のとおりで、それぞれの次数で新しく現れる係数について1次式になる。

  • g′(p)g'(p) には AA だけが現れる。
  • ∂′g′(p)\partial'g'(p) には A,BA,B が現れる。
  • ∂′∂′g′(p)\partial'\partial'g'(p) には A,B,CA,B,C が現れる。

そこで、各次数で「満たしたい条件の数」と「自由に選べる係数の数」を比べる。

0階  g′(p)=ATg(p)Ag'(p)=A^{\mathsf T}g(p)A である。g(p)g(p) は対称行列なので、AA を次の行列に選べば1つ目の条件が満たされる。直交行列で対角化してから、各軸を 1/∣固有値∣1/\sqrt{\left\vert \text{固有値}\right\vert } 倍する行列である。数を比べると次のようになる。

A の成分n2 個対称行列 g′(p) の条件n(n+1)/2 個残り(1つ目の条件を保ったまま自由に選べる)n2−n(n+1)/2=n(n−1)/2 個\begin{aligned}&{A}\text{ の成分} && n^2\ \text{個}\\ &\text{対称行列 }{g'(p)}\text{ の条件} && n(n+1)/2\ \text{個}\\ &\text{残り(1つ目の条件を保ったまま自由に選べる)} && n^2-n(n+1)/2=n(n-1)/2\ \text{個}\end{aligned}

n=4n=4 では残りが6個で、ημν\eta_{\mu\nu} を保つ変換(3つの回転と3つのブースト)の数に等しい。

1階  条件と選べる係数の数は次のとおりである。

条件 ∂λ′gμν′(p)λ が n 通り×対称な (μ,ν) が n(n+1)/2 通り係数 Bμαβ上の添字 n 通り×対称な下の組 n(n+1)/2 通り\begin{aligned}&\text{条件 $\partial'_\lambda g'_{\mu\nu}(p)$}&& \lambda\ \text{が}\ n\ \text{通り}\times\text{対称な}\ (\mu,\nu)\ \text{が}\ n(n+1)/2\ \text{通り}\\ &\text{係数 $B^\mu{}_{\alpha\beta}$}&& \text{上の添字}\ n\ \text{通り}\times\text{対称な下の組}\ n(n+1)/2\ \text{通り}\end{aligned}

どちらも n⋅n(n+1)/2n\cdot n(n+1)/2 個で、数がちょうど一致する。実際にすべての1階微分を0にする BB が1組存在する。その具体的な形は §8.3 の式 (8.25) で与える。

2階  条件と選べる係数の数は次のとおりである。

条件 ∂λ′∂κ′gμν′(p)対称な (λ,κ) と対称な (μ,ν) の組で [n(n+1)/2]2 個係数 Cμαβγ上の添字 n 通り×下の3つの対称な組 n(n+1)(n+2)/6 通り\begin{aligned}&\text{条件 $\partial'_\lambda\partial'_\kappa g'_{\mu\nu}(p)$}&& \text{対称な}\ (\lambda,\kappa)\ \text{と対称な}\ (\mu,\nu)\ \text{の組で}\ [n(n+1)/2]^2\ \text{個}\\ &\text{係数 $C^\mu{}_{\alpha\beta\gamma}$}&& \text{上の添字}\ n\ \text{通り}\times\text{下の3つの対称な組}\ n(n+1)(n+2)/6\ \text{通り}\end{aligned}

係数は n2(n+1)(n+2)/6n^2(n+1)(n+2)/6 個しかない。差は

n2(n+1)24−n2(n+1)(n+2)6=n2(n+1)[3(n+1)−2(n+2)]12=n2(n+1)(n−1)12=n2(n2−1)12\frac{n^2(n+1)^2}{4}-\frac{n^2(n+1)(n+2)}{6}=\frac{n^2(n+1)\bigl[3(n+1)-2(n+2)\bigr]}{12}=\frac{n^2(n+1)(n-1)}{12}=\frac{n^2(n^2-1)}{12}

であり、少なくともこれだけの数の2階微分の組み合わせは CC を選んでも動かすことができない。これらは座標の取り方によらない、空間そのものの性質である。

数え上げの結果を表にしておく。

次元 nn2階微分の数 [n(n+1)/2]2[n(n+1)/2]^2係数 CC の数消せない数 n2(n2−1)/12n^2(n^2-1)/12
2981
336306
41008020

2次元では消せない量が1つだけで、これが曲面の Gauss 曲率にあたる。4次元の20個は、第10章で導入する Riemann テンソルの独立な成分の数に一致する。

定理 8.7 の座標は、第7章 §7.2 の局所慣性系の数学的な表現である。点 pp で計量は ημν\eta_{\mu\nu} に等しく、その1階微分は0である。そのため点 pp のごく近くでは、計量は Minkowski 計量からの2次のずれしか持たない。

第9章で見るように、自由落下の運動方程式に現れる重力の項は計量の1階微分で書かれるので、この座標では pp において重力が消える。消えずに残る2階微分は、第10章で潮汐力として現れる。等価原理が「十分に小さな」実験室に限られるのは、このためである。

例題 8.2 一様に加速する座標の計量 ★★

オリジナル2次元の Minkowski 時空 ds2=c2dt2−dx2\mathrm{d} s^2=c^2\mathrm{d} t^2-\mathrm{d} x^2 に、第7章 §7.4 の Rindler 座標 (T,ξ)(T,\xi) を

ct=(c2α+ξ)sinh⁡αTc,x=(c2α+ξ)cosh⁡αTc−c2αct=\left(\frac{c^2}{\alpha}+\xi\right)\sinh\frac{\alpha T}{c},\qquad x=\left(\frac{c^2}{\alpha}+\xi\right)\cosh\frac{\alpha T}{c}-\frac{c^2}{\alpha}

で入れる。範囲は ξ>−c2/α\xi>-c^2/\alpha で、α\alpha は原点の観測者の固有加速度である。第7章 §7.4 では、この座標での線素を微分の2乗の差から求めた。ここでは同じ線素を、テンソルの変換則の練習として求め直す。

  1. 計量の変換則 (8.12) を使って、(x′0,x′1)=(cT,ξ)(x'^0,x'^1)=(cT,\xi) での計量を求めよ。
  2. この座標で計量の成分は定数でないが、時空は平らなままである。そのことを1文で説明せよ。
解答
  1. 次のように略す。

Ξ=c2α+ξ,χ=αTc\Xi=\frac{c^2}{\alpha}+\xi,\qquad \chi=\frac{\alpha T}{c}

(η\eta は Minkowski 計量に使うので、ここでは χ\chi と書く。)cTcT で微分するときは ∂/∂(cT)=(1/c) ∂/∂T\partial/\partial(cT)=(1/c)\,\partial/\partial T に注意して、

∂(ct)∂(cT)=Ξαc2cosh⁡χ=Ncosh⁡χ,∂x∂(cT)=Nsinh⁡χ,∂(ct)∂ξ=sinh⁡χ,∂x∂ξ=cosh⁡χ.\begin{aligned}\frac{\partial (ct)}{\partial (cT)}&=\frac{\Xi\alpha}{c^2}\cosh\chi=N\cosh\chi,&\frac{\partial x}{\partial (cT)}&=N\sinh\chi,\\ \frac{\partial (ct)}{\partial \xi}&=\sinh\chi,&\frac{\partial x}{\partial \xi}&=\cosh\chi .\end{aligned}

ここで N=Ξα/c2=1+αξ/c2N=\Xi\alpha/c^2=1+\alpha\xi/c^2 とおいた。g′=JTηJg'=J^{\mathsf T}\eta J で η=diag(1,−1)\eta=\mathrm{diag}(1,-1) なので、

g00′=(Ncosh⁡χ)2−(Nsinh⁡χ)2=N2,g11′=sinh⁡2χ−cosh⁡2χ=−1,g'_{00}=(N\cosh\chi)^2-(N\sinh\chi)^2=N^2,\qquad g'_{11}=\sinh^2\chi-\cosh^2\chi=-1,

g01′=Ncosh⁡χsinh⁡χ−Nsinh⁡χcosh⁡χ=0.g'_{01}=N\cosh\chi\sinh\chi-N\sinh\chi\cosh\chi=0 .

したがって

ds2=(1+αξc2)2c2dT2−dξ2.\mathrm{d} s^2=\left(1+\frac{\alpha\xi}{c^2}\right)^2c^2\mathrm{d} T^2-\mathrm{d}\xi^2 .

これは第7章 §7.4 の Rindler 座標の線素(y,zy,z を省いたもの)と一致する。Ξ,χ\Xi,\chi は、第7章 §7.4 で別の文字(ρ,θ\rho,\theta)で書いた量である。この章では2つの文字を球面上の距離と極角に使うので、文字を替えた。2. 計量はもとの座標 (ct,x)(ct,x) で ημν\eta_{\mu\nu} という定数であり、変換則 (8.12) で座標を取り替えただけなので、同じ平らな時空を別の番号付けで表したにすぎない。曲がっているかどうかは、定理 8.7 の消せない2階微分(第10章の Riemann テンソル)が0かどうかで判定する。

次の3点は第7章 §7.4 で調べた。

  • ξ=0\xi=0 の世界線は双曲線運動である。
  • TT はその上の固有時である。
  • g00=(1+αξ/c2)2g_{00}=(1+\alpha\xi/c^2)^2 は重力の時間の遅れと同じ形をしている。

例題 8.3 地表に描いた円の周の長さ ★★★

オリジナル地球を半径 a=6371 kma=6371\ \mathrm{km} の球とみなす。北極から地表に沿って測った距離(子午線に沿った距離)が ρ\rho の点の集まりは円になる。

  1. この円の周の長さ C(ρ)C(\rho) を、球面の計量 (8.17) から求めよ。
  2. ρ≪a\rho\ll a で C(ρ)C(\rho) を展開せよ。平面での値 2πρ2\pi\rho からの不足を、ρ\rho の最低次で求めよ。
  3. ρ=1000 km\rho=1000\ \mathrm{km} のとき、周の長さ、不足 2πρ−C2\pi\rho-C、相対的な不足を数値で求めよ。
解答
  1. 子午線(φ=\varphi= 一定)の上では ds=a dθ\mathrm{d} s=a\,\mathrm{d}\theta である。したがって北極からの距離 ρ\rho の点は θ=ρ/a\theta=\rho/a にある。円の上では dθ=0\mathrm{d}\theta=0 で ds=asin⁡θ dφ\mathrm{d} s=a\sin\theta\,\mathrm{d}\varphi。方位角を1周分積分して

C(ρ)=∫02πasin⁡ρa dφ=2πasin⁡ρa.C(\rho)=\int_0^{2\pi}a\sin\frac{\rho}{a}\,\mathrm{d}\varphi=2\pi a\sin\frac{\rho}{a}. 2. sin⁡u=u−u3/6+O(u5)\sin u=u-u^3/6+\mathcal{O}(u^5) を使うと

C(ρ)=2πa[ρa−16ρ3a3+O ⁣(ρ5a5)]=2πρ−πρ33a2+O ⁣(ρ5a4).C(\rho)=2\pi a\left[\frac{\rho}{a}-\frac{1}{6}\frac{\rho^3}{a^3}+\mathcal{O}\!\left(\frac{\rho^5}{a^5}\right)\right] =2\pi\rho-\frac{\pi\rho^3}{3a^2}+\mathcal{O}\!\left(\frac{\rho^5}{a^4}\right).

不足は πρ3/(3a2)\pi\rho^3/(3a^2)、相対的な不足は (πρ3/3a2)/(2πρ)=ρ2/(6a2)(\pi\rho^3/3a^2)/(2\pi\rho)=\rho^2/(6a^2) である。3. ρ/a=1000/6371=0.15696\rho/a=1000/6371=0.15696 で sin⁡(0.15696)=0.15632\sin(0.15696)=0.15632。

C=2π×6371×0.15632 km=6257.4 km,2πρ=6283.2 km.C=2\pi\times6371\times0.15632\ \mathrm{km}=6257.4\ \mathrm{km},\qquad 2\pi\rho=6283.2\ \mathrm{km}.

不足は 25.8 km25.8\ \mathrm{km} で、近似式 πρ3/(3a2)=π×109/(3×4.059×107) km=25.8 km\pi\rho^3/(3a^2)=\pi\times10^9/(3\times4.059\times10^7)\ \mathrm{km}=25.8\ \mathrm{km} と一致する。相対的な不足は ρ2/(6a2)=4.1×10−3\rho^2/(6a^2)=4.1\times10^{-3} である。

相対的な不足が ρ\rho の1次でなく2次で始まることが、定理 8.7 の内容である。北極を原点とする座標で計量の1階微分が0なので、平面からのずれは2次から現れる。

その係数 1/(6a2)1/(6a^2) は曲がり具合 1/a21/a^2 を表す。第10章でこれを球面のスカラー曲率 2/a22/a^2 と結びつける。図 8.2 に比 C/(2πρ)C/(2\pi\rho) を示す。

図

図 8.2 球面上で北極から距離 ρ\rho の円の周の長さと、平面での値 2πρ2\pi\rho との比(実線)。破線は2次までの近似。ρ→0\rho\to0 で比は 11 に近づき、ずれは ρ2\rho^2 に比例して始まる。ρ=πa/2\rho=\pi a/2(赤道)で 2/π2/\pi、ρ=πa\rho=\pi a(南極)で 00 になる。

確認テスト

オリジナル

  1. 8.2-1 線素 ds2=gμνdxμdxν\mathrm{d} s^2=g_{\mu\nu}\mathrm{d} x^\mu\mathrm{d} x^\nu で、計量の反対称な部分が線素に寄与しないことを示せ。
  2. 8.2-2 3次元の Euclid 空間の計量 dx2+dy2+dz2\mathrm{d} x^2+\mathrm{d} y^2+\mathrm{d} z^2 を球座標に変換し、g\sqrt g を求めよ。それを使って半径 RR の球の体積を計算せよ。
  3. 8.2-3 球面の計量 (8.17) で、θ\theta の代わりに u=cos⁡θu=\cos\theta を座標に使うと、計量はどう書けるか。そのとき g\sqrt g が定数になることを示し、北緯 30∘30^\circ より北の部分の面積が球面全体の何分の1かを求めよ。
  4. 8.2-4 Jαμ=∂xα/∂x′μJ^\alpha{}_\mu=\partial x^\alpha/\partial x'^\mu とする。座標変換で det⁡g′=(det⁡J)2det⁡g\det g'=(\det J)^2\det g となることを示し、それを使って ∣g∣ dnx\sqrt{\left\vert g\right\vert }\,\mathrm{d}^nx が座標によらないことを証明せよ。
  5. 8.2-5 3次元の空間で、計量の2階微分の数と、座標の3次の係数 CμαβγC^\mu{}_{\alpha\beta\gamma} の数を数え、消せない組み合わせの数が6になることを確かめよ。

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