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多様体と座標変換

2026年10月15日19分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第8章 曲がった時空の幾何
目次
  1. なぜ一般の座標が要るか
  2. 多様体
  3. 座標変換と Jacobi 行列
  4. 接ベクトル(反変ベクトル)
  5. 余接ベクトル(共変ベクトル)
  6. テンソル
  7. 偏微分はテンソルにならない
  8. 確認テスト
  9. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第8章 §8.1 ★★ ベクトルとテンソルを「座標変換でどう変わるか」で定義し直す。第4章の Lorentz 変換は、その中の線形の場合にあたる

第7章では、重力の場の中でも、自由落下する十分に小さな実験室の中では特殊相対論がそのまま成り立つこと(等価原理)を見た。その実験室の座標が局所慣性系である。しかし地球のまわりで落下する2つの実験室を比べると、それぞれの「まっすぐ」の向きは互いに少しずつずれていて、全体を1つの慣性系でおおうことはできない。重力の場があるときには、時空の全体に Minkowski 座標を1枚だけ敷くという特殊相対論の前提が成り立たない。

この状況は、地球の表面に地図を描くときの状況とよく似ている。地表の小さな範囲は平面の地図で正確に描くことができるが、地球全体を1枚の平面の地図に歪みなく描くことはできない。

そこで、座標の取り方を自由にし、各点の近くで長さを測る規則(計量)を座標ごとに書き表すことにする。この章では、そのための幾何の道具を作る。特殊相対論の第4章の文法(添字・総和規約・テンソル)を、線形とは限らない一般の座標変換へ広げることが目標である。

章の流れは次のとおりである。

  1. §8.1 では、多様体と一般の座標変換を定義し、ベクトルとテンソルを変換則で定め直す。
  2. §8.2 では、計量テンソルを導入し、平面の極座標・球面・一様に加速する座標を例に計算する。各点で計量を Minkowski 計量に、その1階微分を0にできる(局所平坦性)こと、そして2階微分は一般には消せないことを数え上げで示す。
  3. §8.3 では、偏微分がテンソルにならないことを補う Christoffel 記号と共変微分を作る。
  4. §8.4 では、共変微分を曲線に沿って使い、ベクトルを「向きを変えずに」運ぶ平行移動を定義する。球面上で1周したベクトルが元の向きに戻らないという結果は、第10章で曲率を定義するときの出発点になる。

第9章では、接ベクトルを平行移動しつづける曲線として測地線を定義し、自由落下する粒子の運動方程式を得る。第10章では、平行移動の経路依存性から Riemann テンソルを作る。第11章では、特殊相対論の式に次の置き換えをほどこして、物質と電磁場の方程式を曲がった時空へ移す。

∂μ → ∇μ,ημν → gμν\partial_\mu\ \to\ \nabla_\mu,\qquad \eta_{\mu\nu}\ \to\ g_{\mu\nu}

この章の内容を作用の言葉で整理した道筋は、虎の巻『解析力学から様々な理論分野を組み立てる』第2部第13章にある。

なぜ一般の座標が要るか

第4章で4元ベクトルを定義したときに許した座標変換は、Lorentz 変換 x′μ=Λμνxνx'^\mu=\Lambda^\mu{}_\nu x^\nu だけであった。この変換は線形で、係数 Λμν\Lambda^\mu{}_\nu は時空のどの点でも同じである。そのため、2点の座標の差 Δxμ\Delta x^\mu も、座標そのもの xμx^\mu も、同じ規則で変換した。

重力の場があるときには、全体をおおう慣性系が無いので、時空を1枚の Minkowski 座標で表すことができない。重力の無い平らな時空でも、回転する系や加速する系の座標を使えば、変換は線形でなくなる。さらに、平らな2次元の平面でさえ、極座標 (r,φ)(r,\varphi) への変換

x=rcos⁡φ,y=rsin⁡φx=r\cos\varphi,\qquad y=r\sin\varphi

は線形でない。

一般相対論では、こうした線形でない座標変換を区別なく許し、物理法則をどの座標でも同じ形に書くことを目指す。この要請を一般共変性と呼ぶ。

多様体

座標を自由に取り替えるには、「点の集まり」と「点に付ける番号(座標)」とを分けて考える必要がある。その枠組みが多様体である。

定義 8.1(多様体)

集合 MM が nn 次元の多様体であるとは、次の2つが成り立つことをいう。

  1. MM は、いくつかの部分集合 U1,U2,…U_1,U_2,\dots でおおわれている。それぞれの UaU_a の点には、実数の組 xμ=(x1,…,xn)x^\mu=(x^1,\dots,x^n) を1対1に割り当てる規則(座標)が与えられている。
  2. 2つの座標の範囲が重なる所では、一方の座標から他方の座標への写像 x′μ=x′μ(x)x'^\mu=x'^\mu(x) が何回でも微分できる。さらに、その Jacobi 行列 ∂x′μ/∂xν\partial x'^\mu/\partial x^\nu の行列式が0にならない。

時空は4次元の多様体で、座標の添字を μ=0,1,2,3\mu=0,1,2,3 と書く。曲面などの例では n=2n=2 である。そのときは添字を1、2と書くか、座標の名前(r,φr,\varphi や θ,φ\theta,\varphi)をそのまま添字に使う。

定義の1つ目の条件で、1枚の座標で全体をおおうことは要求していない。たとえば半径 aa の球面に極角と方位角 (θ,φ)(\theta,\varphi) を使うと、次の2か所で座標がうまく働かない。

  • 北極と南極では、φ\varphi が決まらない。
  • φ=0\varphi=0 と φ=2π\varphi=2\pi の継ぎ目では、1対1でなくなる。

この座標の範囲から極と継ぎ目を除いておき、それらを含む別の座標(たとえば、軸を傾けた極座標)をもう1枚用意すれば、2枚で球面全体をおおうことができる。2つ目の条件は、重なる所で2枚の座標が滑らかに、かつ可逆につながることを要求している。物理の計算では、注目する範囲を1枚の座標でおおえることが多いので、以後は1枚の座標の中で考える。

座標変換と Jacobi 行列

座標 xμx^\mu から別の座標 x′μx'^\mu への変換と、その逆

x′μ=x′μ(x),xμ=xμ(x′)x'^\mu=x'^\mu(x),\qquad x^\mu=x^\mu(x')

を考える。合成関数の微分(連鎖律)から、2つの Jacobi 行列は互いに逆行列になる。

∂x′μ∂xλ ∂xλ∂x′ν=δμν,∂xμ∂x′λ ∂x′λ∂xν=δμν.(8.1)\frac{\partial x'^\mu}{\partial x^\lambda}\,\frac{\partial x^\lambda}{\partial x'^\nu}=\delta^\mu{}_\nu,\qquad \frac{\partial x^\mu}{\partial x'^\lambda}\,\frac{\partial x'^\lambda}{\partial x^\nu}=\delta^\mu{}_\nu .\tag{8.1}

左の式は、新しい座標 x′μx'^\mu を同じ新しい座標で偏微分すると δμν\delta^\mu{}_\nu になることを表す。途中で古い座標を経由して書いたものである。Lorentz 変換では、∂x′μ/∂xν=Λμν\partial x'^\mu/\partial x^\nu=\Lambda^\mu{}_\nu が定数であった。一般の変換では、Jacobi 行列は点ごとに違う値をとる。

接ベクトル(反変ベクトル)

座標そのもの xμx^\mu は、一般の変換ではもはやベクトルとして変換しない。x′μ(x)x'^\mu(x) が線形でないからである。ベクトルとして変換するのは、点の近くでの微小な変位 dxμ\mathrm{d} x^\mu である。連鎖律により

dx′μ=∂x′μ∂xν dxν(8.2)\mathrm{d} x'^\mu=\frac{\partial x'^\mu}{\partial x^\nu}\,\mathrm{d} x^\nu\tag{8.2}

が成り立ち、係数は変位の大きさによらずその点の Jacobi 行列で決まる。パラメータ λ\lambda で表した曲線 xμ(λ)x^\mu(\lambda) を考える。その接ベクトル dxμ/dλ\mathrm{d} x^\mu/\mathrm{d}\lambda も、(8.2) をパラメータの微小変化で割れば同じ規則で変換する。この規則をベクトルの定義に採用する。

定義 8.2(接ベクトル)

点 pp で、座標ごとに数の組 VμV^\mu が与えられているとする。座標を取り替えると

V′μ=∂x′μ∂xν∣p Vν(8.3)V'^\mu=\frac{\partial x'^\mu}{\partial x^\nu}\bigg|_p\,V^\nu\tag{8.3}

で変わるとき、VμV^\mu を点 pp の接ベクトル(反変ベクトル)の成分と呼ぶ。点 pp の接ベクトル全体を接空間と呼び、TpMT_pM と書く。各点に接ベクトルを1つずつ与えたものをベクトル場と呼ぶ。

接ベクトルを、成分と基底の組として書くこともできる。座標 xμx^\mu の基底として、微分演算子 ∂μ=∂/∂xμ\partial_\mu=\partial/\partial x^\mu を使う。これは「xμx^\mu だけを動かし、ほかの座標を固定した曲線の接ベクトル」を表す。基底は連鎖律から

∂μ′=∂xν∂x′μ ∂ν(8.4)\partial'_\mu=\frac{\partial x^\nu}{\partial x'^\mu}\,\partial_\nu\tag{8.4}

と変わる。(8.3) と (8.4) を組み合わせ、(8.1) を使うと

V′μ∂μ′=∂x′μ∂xαVα ∂xβ∂x′μ∂β=δβαVα∂β=Vβ∂β(8.5)V'^\mu\partial'_\mu=\frac{\partial x'^\mu}{\partial x^\alpha}V^\alpha\,\frac{\partial x^\beta}{\partial x'^\mu}\partial_\beta=\delta^\beta{}_\alpha V^\alpha\partial_\beta=V^\beta\partial_\beta\tag{8.5}

となる。ベクトルそのもの V=Vμ∂μV=V^\mu\partial_\mu は座標によらず、成分と基底が互いに逆の規則で変わって打ち消し合う。成分の変換則はこの事情を成分だけで書いたものである。

余接ベクトル(共変ベクトル)

スカラー場 ϕ\phi は、座標を取り替えても各点での値が変わらない関数で、ϕ′(x′)=ϕ(x)\phi'(x')=\phi(x) を満たす。その偏微分は連鎖律から

∂μ′ϕ′=∂xν∂x′μ ∂νϕ(8.6)\partial'_\mu\phi'=\frac{\partial x^\nu}{\partial x'^\mu}\,\partial_\nu\phi\tag{8.6}

と変わる。係数は (8.3) の Jacobi 行列の逆で、添字の並びも逆である。

定義 8.3(余接ベクトル)

座標ごとに nn 個の数 ωμ\omega_\mu が与えられ、

ωμ′=∂xν∂x′μ∣p ων(8.7)\omega'_\mu=\frac{\partial x^\nu}{\partial x'^\mu}\bigg|_p\,\omega_\nu\tag{8.7}

で変わるとき、ωμ\omega_\mu を点 pp の余接ベクトル(共変ベクトル)の成分と呼ぶ。

接ベクトル VμV^\mu と余接ベクトル ωμ\omega_\mu を縮約した量は、座標によらない。実際、

ωμ′V′μ=∂xα∂x′μωα ∂x′μ∂xβVβ=δαβ ωαVβ=ωαVα(8.8)\omega'_\mu V'^\mu=\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\omega_\alpha\,\frac{\partial x'^\mu}{\partial x^\beta}V^\beta=\delta^\alpha{}_\beta\,\omega_\alpha V^\beta=\omega_\alpha V^\alpha\tag{8.8}

である。2段目では (8.1) を使った。

例として、VμV^\mu を曲線の接ベクトル、ωμ=∂μϕ\omega_\mu=\partial_\mu\phi とする。このとき縮約は

ωμVμ=dϕdλ\omega_\mu V^\mu=\frac{\mathrm{d}\phi}{\mathrm{d}\lambda}

で、曲線に沿ったスカラー場の変化率である。座標によらないのは当然である。

テンソル

第4章 §4.3 と同じく、添字ごとに Jacobi 行列を1つずつ掛ける量をテンソルと呼ぶ。

定義 8.4(テンソル)

上付きの添字を rr 個、下付きの添字を ss 個持つ数の組を考える。それが座標を取り替えると

T′μ1⋯μrν1⋯νs=∂x′μ1∂xα1⋯∂x′μr∂xαr ∂xβ1∂x′ν1⋯∂xβs∂x′νs Tα1⋯αrβ1⋯βs(8.9)T'^{\mu_1\cdots\mu_r}{}_{\nu_1\cdots\nu_s} =\frac{\partial x'^{\mu_1}}{\partial x^{\alpha_1}}\cdots\frac{\partial x'^{\mu_r}}{\partial x^{\alpha_r}}\, \frac{\partial x^{\beta_1}}{\partial x'^{\nu_1}}\cdots\frac{\partial x^{\beta_s}}{\partial x'^{\nu_s}}\, T^{\alpha_1\cdots\alpha_r}{}_{\beta_1\cdots\beta_s}\tag{8.9}

で変わるとき、(r,s)(r,s) 型のテンソルと呼ぶ。

  • スカラーは (0,0)(0,0) 型である。
  • 接ベクトルは (1,0)(1,0) 型、余接ベクトルは (0,1)(0,1) 型である。

Lorentz 変換では Jacobi 行列が定数 Λμν\Lambda^\mu{}_\nu と、その逆 (Λ−1)νμ=Λμν(\Lambda^{-1})^\nu{}_\mu=\Lambda_\mu{}^\nu になるので、(8.9) は第4章の変換則に戻る。第4章で示した性質のうち、線形結合・積・縮約でテンソルからテンソルを作ることができるという性質は、各点ごとの線形代数だけで示されるので、一般の座標変換でもそのまま成り立つ。次の定理は、一般共変性の議論の基礎になる。

定理 8.5(テンソルの0は座標によらない)

テンソルの成分が、ある座標で点 pp においてすべて0なら、どの座標でも点 pp においてすべて0である。したがって、2つの同じ型のテンソルが1つの座標で等しければ、すべての座標で等しい。

証明

(8.9) の右辺は、もとの成分 Tα1⋯β1⋯T^{\alpha_1\cdots}{}_{\beta_1\cdots} の線形結合である。もとの成分がすべて0なら、右辺はどの係数を掛けても0になる。2つ目の主張は、差 T−ST-S もテンソルであること(同じ型のテンソルの線形結合はテンソル)に1つ目の主張を当てはめればよい。

この定理から、物理法則を「テンソル == テンソル」の形に書いておけば、ある座標で正しいことを確かめるだけで、すべての座標で正しいことが保証される。第11章では、局所慣性系で特殊相対論の式が成り立つことと、この定理とを組み合わせて、曲がった時空の物理法則を書く。

偏微分はテンソルにならない

ベクトル場の偏微分 ∂μVν\partial_\mu V^\nu を作ってみる。∂μ′V′ν\partial'_\mu V'^\nu を、(8.4) と (8.3) を使って計算すると、積の微分により

∂μ′V′ν=∂xα∂x′μ ∂α ⁣(∂x′ν∂xβVβ)=∂xα∂x′μ∂x′ν∂xβ ∂αVβ+∂xα∂x′μ ∂2x′ν∂xα∂xβ Vβ\begin{align*}\partial'_\mu V'^\nu &=\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\,\partial_\alpha\!\left(\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta}V^\beta\right)\\&=\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\frac{\partial x'^\nu}{\partial x^\beta}\,\partial_\alpha V^\beta +\frac{\partial x^\alpha}{\partial x'^\mu}\,\frac{\partial^2x'^\nu}{\partial x^\alpha\partial x^\beta}\,V^\beta\tag{8.10}\end{align*}

となる。第1項は (1,1)(1,1) 型のテンソルの変換則 (8.9) そのものである。第2項は Jacobi 行列の微分から出る余分な項で、変換が線形でない限り0にならない。

したがって、∂μVν\partial_\mu V^\nu はテンソルではない。第4章では変換が線形だったので第2項が消え、∂μ\partial_\mu を付けてもテンソルのままであった。

余分な項が出る理由は、偏微分の定義に戻ると分かる。∂μVν\partial_\mu V^\nu は、隣り合う2点での成分の差を変位で割ったものである。

∂μVν ∼ Vν(x+dx)−Vν(x)dxμ\partial_\mu V^\nu\ \sim\ \frac{V^\nu(x+\mathrm{d} x)-V^\nu(x)}{\mathrm{d} x^\mu}

ところが、2つの点の成分は、それぞれの点の基底 ∂ν\partial_\nu に対する成分であり、一般の座標では基底そのものが点ごとに向きや長さを変える。成分の差には、ベクトルの変化と基底の変化の両方が混ざってしまう。この混ざった分を取り除いてテンソルにする操作が、§8.3 の共変微分である。

図

図 8.1 平面の極座標の基底 ∂r\partial_r(青)と ∂φ\partial_\varphi(赤)。∂r\partial_r は長さ 11 で、向きが場所ごとに変わる。∂φ\partial_\varphi は長さが rr に比例する(図では長さを 0.30.3 倍して描いた)。基底が点ごとに変わるので、一定のベクトル場でも成分は場所ごとに変わる。

例題 8.1 極座標での成分と縮約 ★★

オリジナル平面の直交座標 (x,y)(x,y) から極座標 x′μ=(r,φ)x'^\mu=(r,\varphi) への変換を考える。

  1. 2つの Jacobi 行列 ∂x′μ/∂xν\partial x'^\mu/\partial x^\nu と ∂xν/∂x′μ\partial x^\nu/\partial x'^\mu を求めよ。
  2. 一定のベクトル場 V=∂xV=\partial_x を考える。直交座標の成分は (Vx,Vy)=(1,0)(V^x,V^y)=(1,0) である。極座標の成分 (Vr,Vφ)(V^r,V^\varphi) を求めよ。
  3. 余接ベクトル場 ωμ=∂μx\omega_\mu=\partial_\mu x を考える。直交座標の成分は (1,0)(1,0) である。極座標の成分を求め、縮約 ωμVμ\omega_\mu V^\mu が両方の座標で同じ値になることを確かめよ。
  4. ∂rVφ\partial_r V^\varphi を計算し、一定のベクトル場なのに0にならないことを確かめよ。
解答
  1. x=rcos⁡φx=r\cos\varphi、y=rsin⁡φy=r\sin\varphi を極座標で微分して

∂xν∂x′μ:(∂x/∂r∂x/∂φ∂y/∂r∂y/∂φ)=(cos⁡φ−rsin⁡φsin⁡φrcos⁡φ).\frac{\partial x^\nu}{\partial x'^\mu}:\quad \begin{pmatrix}\partial x/\partial r&\partial x/\partial\varphi\\ \partial y/\partial r&\partial y/\partial\varphi\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}\cos\varphi&-r\sin\varphi\\ \sin\varphi&r\cos\varphi\end{pmatrix}.

行列式は rr である。逆行列をとると

∂x′μ∂xν:(∂r/∂x∂r/∂y∂φ/∂x∂φ/∂y)=(cos⁡φsin⁡φ−sin⁡φ/rcos⁡φ/r).\frac{\partial x'^\mu}{\partial x^\nu}:\quad \begin{pmatrix}\partial r/\partial x&\partial r/\partial y\\ \partial\varphi/\partial x&\partial\varphi/\partial y\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}\cos\varphi&\sin\varphi\\ -\sin\varphi/r&\cos\varphi/r\end{pmatrix}.

これは r=x2+y2r=\sqrt{x^2+y^2}、φ=arctan⁡(y/x)\varphi=\arctan(y/x) を直接微分した結果と一致する。たとえば

∂r∂x=xr,∂φ∂x=−yr2\frac{\partial r}{\partial x}=\frac{x}{r},\qquad \frac{\partial \varphi}{\partial x}=-\frac{y}{r^2}

である。2. (8.3) により、2つ目の行列を (Vx,Vy)=(1,0)(V^x,V^y)=(1,0) に掛ける。

Vr=cos⁡φ⋅1+sin⁡φ⋅0=cos⁡φ,Vφ=−sin⁡φr⋅1+cos⁡φr⋅0=−sin⁡φr.V^r=\cos\varphi\cdot1+\sin\varphi\cdot0=\cos\varphi,\qquad V^\varphi=-\frac{\sin\varphi}{r}\cdot1+\frac{\cos\varphi}{r}\cdot0=-\frac{\sin\varphi}{r}. 3. (8.7) により、1つ目の行列の転置を (ωx,ωy)=(1,0)(\omega_x,\omega_y)=(1,0) に掛ける。

ωr=∂x∂r⋅1+∂y∂r⋅0=cos⁡φ,ωφ=∂x∂φ⋅1+∂y∂φ⋅0=−rsin⁡φ.\omega_r=\frac{\partial x}{\partial r}\cdot1+\frac{\partial y}{\partial r}\cdot0=\cos\varphi,\qquad \omega_\varphi=\frac{\partial x}{\partial \varphi}\cdot1+\frac{\partial y}{\partial \varphi}\cdot0=-r\sin\varphi .

縮約は、直交座標では ωxVx+ωyVy=1\omega_xV^x+\omega_yV^y=1。極座標では

ωrVr+ωφVφ=cos⁡φ⋅cos⁡φ+(−rsin⁡φ)⋅(−sin⁡φr)=cos⁡2φ+sin⁡2φ=1\omega_rV^r+\omega_\varphi V^\varphi=\cos\varphi\cdot\cos\varphi+(-r\sin\varphi)\cdot\left(-\frac{\sin\varphi}{r}\right)=\cos^2\varphi+\sin^2\varphi=1

で、同じ値になる。この値は V=∂xV=\partial_x に沿った xx の変化率で、座標によらず1である。4. Vφ=−sin⁡φ/rV^\varphi=-\sin\varphi/r を rr で微分すると

∂rVφ=sin⁡φr2\partial_rV^\varphi=\frac{\sin\varphi}{r^2}

で、φ≠0,π\varphi\ne0,\pi では0でない。直交座標では ∂μVν=0\partial_\mu V^\nu=0 である。もしこれがテンソルなら、定理 8.5 によって極座標でも0のはずである。0にならないことが、偏微分がテンソルでないことの具体例になっている。

原因は図 8.1 にある。基底 ∂φ\partial_\varphi の長さは rr とともに増える。そのため、同じベクトルを表す成分 VφV^\varphi は 1/r1/r で減る。

確認テスト

オリジナル

  1. 8.1-1 座標 xμx^\mu そのものは、一般の座標変換で接ベクトルとして変換しない。平面の直交座標から極座標への変換で、点 (x,y)=(0,1)(x,y)=(0,1) を例にこのことを示せ。
  2. 8.1-2 平面のベクトル場 V=−y ∂x+x ∂yV=-y\,\partial_x+x\,\partial_y の極座標の成分を求めよ。また、スカラー場 ϕ=x2+y2\phi=x^2+y^2 の勾配 ∂μϕ\partial_\mu\phi の極座標の成分を求めよ。さらに、縮約 Vμ∂μϕV^\mu\partial_\mu\phi の値とその意味を述べよ。
  3. 8.1-3 3次元の直交座標から球座標 (r,θ,φ)(r,\theta,\varphi) への変換

x=rsin⁡θcos⁡φ,y=rsin⁡θsin⁡φ,z=rcos⁡θx=r\sin\theta\cos\varphi,\qquad y=r\sin\theta\sin\varphi,\qquad z=r\cos\theta

で、一定のベクトル場 ∂z\partial_z の球座標の成分を求めよ。4. 8.1-4 余接ベクトル場 ωμ\omega_\mu から次の量を作る。

Fμν=∂μων−∂νωμF_{\mu\nu}=\partial_\mu\omega_\nu-\partial_\nu\omega_\mu

∂μων\partial_\mu\omega_\nu そのものはテンソルでない。それにもかかわらず、FμνF_{\mu\nu} が (0,2)(0,2) 型のテンソルになることを証明せよ。

木下の勉強ステータス

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