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平行移動

2026年10月15日14分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第8章 曲がった時空の幾何
目次
  1. 曲線に沿った共変微分
  2. 平面での平行移動
  3. 球面の緯線に沿った平行移動
  4. 経路への依存と測地線
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対論入門 第8章 §8.4 ★★★ 曲がった空間で「向きを変えずにベクトルを運ぶ」操作。測地線(第9章)と曲率(第10章)はどちらもこの操作から定義する

曲線に沿った共変微分

平らな空間では、離れた2点のベクトルを比べるには、片方を平行に動かして重ねればよい。直交座標の成分を変えずに運ぶ操作がそれである。曲がった空間では「平行」の意味が自明でないので、共変微分を使って定義する。

ベクトル Vμ(λ)V^\mu(\lambda) が曲線 xμ(λ)x^\mu(\lambda) の上だけで与えられているとする。もし VV が曲線のまわりのベクトル場として広がっていれば、曲線の接ベクトル dxμ/dλ\mathrm{d} x^\mu/\mathrm{d}\lambda の方向の共変微分は

dxμdλ∇μVν=dxμdλ∂μVν+Γνμλ′dxμdλVλ′\frac{d x^\mu}{d \lambda}\nabla_\mu V^\nu=\frac{d x^\mu}{d \lambda}\partial_\mu V^\nu+\Gamma^\nu{}_{\mu\lambda'}\frac{d x^\mu}{d \lambda}V^{\lambda'}

である。第1項は連鎖律で dVν/dλ\mathrm{d} V^\nu/\mathrm{d}\lambda に等しく、曲線の上の値だけで決まる。そこで、曲線の上だけで定義されたベクトルに対しても

DVνdλ≔dVνdλ+Γνμκ dxμdλ Vκ(8.30)\frac{DV^\nu}{\mathrm{d}\lambda}\coloneqq\frac{d V^\nu}{d \lambda}+\Gamma^\nu{}_{\mu\kappa}\,\frac{d x^\mu}{d \lambda}\,V^\kappa\tag{8.30}

を定義する。これを曲線に沿った共変微分と呼ぶ。∇μVν\nabla_\mu V^\nu はテンソルで、dxμ/dλ\mathrm{d} x^\mu/\mathrm{d}\lambda はベクトルである。したがって曲線に沿った共変微分もベクトルとして変換する。

定義 8.9(平行移動)

曲線 xμ(λ)x^\mu(\lambda) に沿ったベクトル Vμ(λ)V^\mu(\lambda) が

DVνdλ=dVνdλ+Γνμκ dxμdλ Vκ=0(8.31)\frac{DV^\nu}{\mathrm{d}\lambda}=\frac{d V^\nu}{d \lambda}+\Gamma^\nu{}_{\mu\kappa}\,\frac{d x^\mu}{d \lambda}\,V^\kappa=0\tag{8.31}

を満たすとき、VV は曲線に沿って平行移動されているという。

(8.31) は Vν(λ)V^\nu(\lambda) についての1階の線形な常微分方程式である。曲線と始点のベクトル Vν(λ0)V^\nu(\lambda_0) を与えれば、解はただ1つに決まる。

局所慣性系で考えると意味がはっきりする。接続の係数が点 pp で0になる座標では、その点で dVν/dλ=0\mathrm{d} V^\nu/\mathrm{d}\lambda=0、つまり成分が変わらない。平行移動は、各点で局所慣性系の意味で「成分を変えずに」少しずつ運ぶことを積み重ねた操作である。

命題 8.10(平行移動は内積を保つ)

2つのベクトル UμU^\mu、VμV^\mu が同じ曲線に沿ってどちらも平行移動されているとする。このとき内積 gμνUμVνg_{\mu\nu}U^\mu V^\nu は曲線に沿って一定である。とくにベクトルの長さと、2つのベクトルのなす角は変わらない。

証明

スカラー gμνUμVνg_{\mu\nu}U^\mu V^\nu の λ\lambda 微分は、曲線に沿った共変微分に等しい。共変微分は積の微分の規則を満たすので

ddλ(gμνUμVν)=dxκdλ(∇κgμν)UμVν+gμνDUμdλVν+gμνUμDVνdλ.\frac{d }{d \lambda}\left(g_{\mu\nu}U^\mu V^\nu\right)=\frac{d x^\kappa}{d \lambda}(\nabla_\kappa g_{\mu\nu})U^\mu V^\nu+g_{\mu\nu}\frac{DU^\mu}{\mathrm{d}\lambda}V^\nu+g_{\mu\nu}U^\mu\frac{DV^\nu}{\mathrm{d}\lambda}.

第1項は計量と両立する条件 ∇g=0\nabla g=0 で、第2項と第3項は平行移動の条件 (8.31) で0になる。

平面での平行移動

平面の直交座標では Γ=0\Gamma=0 なので、(8.31) は dVν/dλ=0\mathrm{d} V^\nu/\mathrm{d}\lambda=0 で、成分を変えずに運ぶ通常の平行移動になる。同じことを極座標で確かめる。原点を中心とする半径 r0r_0 の円に沿って運ぶ。曲線とその接ベクトルは

r=r0,φ=λ,dxμdλ=(0,1)r=r_0,\quad \varphi=\lambda,\qquad \frac{d x^\mu}{d \lambda}=(0,1)

で、(8.29) から

dVrdφ−r0Vφ=0,dVφdφ+1r0Vr=0\frac{d V^r}{d \varphi}-r_0V^\varphi=0,\qquad \frac{d V^\varphi}{d \varphi}+\frac{1}{r_0}V^r=0

となる。φ=0\varphi=0 で V=(1,0)V=(1,0) から出発すると、解は

Vr=cos⁡φ,Vφ=−sin⁡φr0V^r=\cos\varphi,\qquad V^\varphi=-\frac{\sin\varphi}{r_0}

である。これは例題 8.1 の一定のベクトル場 ∂x\partial_x の成分そのもので、直交座標で見れば向きを変えていない。

1周して φ=2π\varphi=2\pi に戻ると、V=(1,0)V=(1,0) に戻る。平面では、閉じた曲線に沿って1周したベクトルは必ず元に戻る。

球面の緯線に沿った平行移動

球面で、極角 θ=θ0\theta=\theta_0 の緯線に沿って運ぶ。曲線とその接ベクトルは

θ=θ0,φ=λ,dxμdλ=(0,1)\theta=\theta_0,\quad \varphi=\lambda,\qquad \frac{d x^\mu}{d \lambda}=(0,1)

である。例題 8.4 の Christoffel 記号を (8.31) に入れると、μ=φ\mu=\varphi の項だけが残り

dVθdφ−sin⁡θ0cos⁡θ0 Vφ=0,dVφdφ+cot⁡θ0 Vθ=0(8.32)\frac{d V^\theta}{d \varphi}-\sin\theta_0\cos\theta_0\,V^\varphi=0,\qquad \frac{d V^\varphi}{d \varphi}+\cot\theta_0\,V^\theta=0\tag{8.32}

となる。1つ目をもう一度 φ\varphi で微分して2つ目を代入すると

d2Vθdφ2=sin⁡θ0cos⁡θ0 dVφdφ=−sin⁡θ0cos⁡θ0cot⁡θ0 Vθ=−cos⁡2θ0 Vθ\frac{\mathrm{d}^2V^\theta}{\mathrm{d}\varphi^2}=\sin\theta_0\cos\theta_0\,\frac{d V^\varphi}{d \varphi}=-\sin\theta_0\cos\theta_0\cot\theta_0\,V^\theta=-\cos^2\theta_0\,V^\theta

で、角振動数 cos⁡θ0\cos\theta_0 の単振動の式である。φ=0\varphi=0 で南を向いたベクトル (Vθ,Vφ)=(V0,0)(V^\theta,V^\varphi)=(V_0,0) から出発する。1つ目の式から残りの成分も決まり、

Vθ=V0cos⁡(φcos⁡θ0),Vφ=−V0sin⁡θ0sin⁡(φcos⁡θ0)(8.33)V^\theta=V_0\cos(\varphi\cos\theta_0),\qquad V^\varphi=-\frac{V_0}{\sin\theta_0}\sin(\varphi\cos\theta_0)\tag{8.33}

を得る。

この結果を、長さ1の基底に対する成分で読む。基底は

eθ^=∂θa (南向き),eφ^=∂φasin⁡θ0 (東向き)\bm{e}_{\hat\theta}=\frac{\partial_\theta}{a}\ \text{(南向き)},\qquad \bm{e}_{\hat\varphi}=\frac{\partial_\varphi}{a\sin\theta_0}\ \text{(東向き)}

で、成分は

Vθ^=aVθ=aV0cos⁡(φcos⁡θ0),Vφ^=asin⁡θ0 Vφ=−aV0sin⁡(φcos⁡θ0)V^{\hat\theta}=aV^\theta=aV_0\cos(\varphi\cos\theta_0),\qquad V^{\hat\varphi}=a\sin\theta_0\,V^\varphi=-aV_0\sin(\varphi\cos\theta_0)

となる。長さ aV0aV_0 は一定で(命題 8.10)、向きは南から測って西の側へ角度 φcos⁡θ0\varphi\cos\theta_0 だけ回っている。緯線を1周(φ=2π\varphi=2\pi)すると、基底は元に戻るのに、ベクトルは

Δψ=−2πcos⁡θ0≡2π(1−cos⁡θ0)(mod2π)(8.34)\Delta\psi=-2\pi\cos\theta_0\equiv2\pi(1-\cos\theta_0)\pmod{2\pi}\tag{8.34}

だけ回っている。右辺は、緯線が囲む北の極冠の面積 2πa2(1−cos⁡θ0)2\pi a^2(1-\cos\theta_0) を a2a^2 で割ったもの、すなわち極冠の立体角に等しい。

  • 赤道(θ0=π/2\theta_0=\pi/2)では、回転は0である。
  • 小さな極冠(θ0→0\theta_0\to0)でも、回転は0に近づく。

後者は、球面の小さな範囲が平面と区別できないこと(局所平坦性)の表れである。

図図

図 8.3 球面上の平行移動。青の矢印が運ばれていくベクトル、赤の矢印が1周後のベクトル(薄い矢印は球の裏側)。(a) 極角 θ0=60∘\theta_0=60^\circ の緯線を東向きに1周すると、南を向いていたベクトルが北を向く(回転 2π(1−cos⁡60∘)=π2\pi(1-\cos60^\circ)=\pi)。(b) 北極 N から子午線に沿って赤道の A へ、赤道に沿って 90∘90^\circ 離れた B へ、子午線に沿って N へ戻ると、ベクトルは 90∘90^\circ 回る。これは三角形の面積 πa2/2\pi a^2/2 を a2a^2 で割った値に等しい。

経路への依存と測地線

図 8.3(b) の三角形の場合を確かめる。北極で A の方向(φ=0\varphi=0 の子午線の南向き)を向いたベクトルから出発する。

子午線は大円で、その接ベクトルは子午線に沿って平行移動される(次の段落と確認テスト 8.4-4 で確かめる)。命題 8.10 により、平行移動されるベクトルと接ベクトルのなす角は一定である。3つの辺を順にたどる。

  1. N→A(子午線)。ベクトルが接ベクトルに一致しているので、A に着いたとき南を向いている。
  2. A→B(赤道)。ベクトルは接ベクトル(東向き)と直角を保ち、B でも南を向いている。
  3. B→N(子午線)。北へ進むので、ベクトル(南向き)は接ベクトルと逆向きを保つ。北極に着いたときには、B の子午線(φ=π/2\varphi=\pi/2)の南向きを向く。

出発時の向きから 90∘90^\circ 回った。

同じ北極から同じ北極へ運んだのに、通った道によって結果が違う。平面ではこのようなことは起こらない。平行移動の結果が経路に依存することが、空間が曲がっていることの、座標によらない表れである。

第10章では、小さな閉曲線を1周したときの回転を計算して Riemann テンソルを定義する。回転の角が囲んだ面積に比例するという、ここで見た2つの例に共通する性質が、その出発点になる。

最後に、曲線自身の接ベクトル uμ=dxμ/dλu^\mu=\mathrm{d} x^\mu/\mathrm{d}\lambda を平行移動することを考える。V=uV=u とおいた (8.31) は

d2xνdλ2+Γνμκ dxμdλdxκdλ=0(8.35)\frac{\mathrm{d}^2x^\nu}{\mathrm{d}\lambda^2}+\Gamma^\nu{}_{\mu\kappa}\,\frac{d x^\mu}{d \lambda}\frac{d x^\kappa}{d \lambda}=0\tag{8.35}

となる。これは「向きを変えずにまっすぐ進む」曲線の方程式で、平面では直線、球面では大円になる。

緯線 θ=θ0\theta=\theta_0 では u=(0,1)u=(0,1) で、

Duθdφ=Γθφφ=−sin⁡θ0cos⁡θ0\frac{Du^\theta}{\mathrm{d}\varphi}=\Gamma^\theta{}_{\varphi\varphi}=-\sin\theta_0\cos\theta_0

となる。これは赤道以外では0にならない(確認テスト 8.4-4)。緯線は、赤道を除いて「曲がっている」曲線である。第9章では、(8.35) を測地線の方程式と呼び、パラメータを固有時に選んで自由落下する粒子の運動方程式として読む。

例題 8.5 Foucault の振り子と平行移動 ★★

オリジナル地球の自転により、北緯 φL\varphi_{\mathrm L} の地点は、慣性系から見て1恒星日(23.93 h23.93\ \mathrm h)で緯線を東向きに1周する。振り子の振動面は、鉛直方向に垂直な面内で、地面の回転に引きずられずに平行移動されると考える(下の注意を参照)。

  1. 地面に固定した南北・東西の向きに対して、振動面が1恒星日にどれだけ、どちら向きに回るかを求めよ。
  2. 北緯 35.7∘35.7^\circ の地点で、1恒星日に回る角度と、振動面が1周するのにかかる時間を求めよ。
解答
  1. 極角は θ0=90∘−φL\theta_0=90^\circ-\varphi_{\mathrm L} で、cos⁡θ0=sin⁡φL\cos\theta_0=\sin\varphi_{\mathrm L} である。(8.33) によれば、緯線を角度 φ\varphi だけ進んだとき、平行移動されたベクトルは南から西の側へ φcos⁡θ0\varphi\cos\theta_0 だけ回っている。ここで向きは長さ1の基底 (eθ^,eφ^)(\bm{e}_{\hat\theta},\bm{e}_{\hat\varphi})(南と東)に対して測る。この基底は地面に固定された南と東の向きそのものである。1恒星日で φ=2π\varphi=2\pi なので、地面から見た振動面は

Δψ=2πcos⁡θ0=2πsin⁡φL\Delta\psi=2\pi\cos\theta_0=2\pi\sin\varphi_{\mathrm L}

だけ回る。向きは南から西、つまり上から見て時計回りである(北を上、東を右にした地図の上で、下から左へ回る向き)。2. sin⁡35.7∘=0.5835\sin35.7^\circ=0.5835 なので、1恒星日に 360∘×0.5835=210∘360^\circ\times0.5835=210^\circ 回る。振動面が 360∘360^\circ 回るのにかかる時間は

23.93 hsin⁡35.7∘=23.93 h0.5835=41.0 h\frac{23.93\ \mathrm h}{\sin35.7^\circ}=\frac{23.93\ \mathrm h}{0.5835}=41.0\ \mathrm h

である。北極(φL=90∘\varphi_{\mathrm L}=90^\circ)では1恒星日でちょうど1周し、赤道では回らない。

振動面を平行移動とみなす根拠

  • 振り子のおもりに水平方向にはたらく力は、糸の張力の水平成分だけで、これは振動面の中を向く。振動面を水平面内で回そうとする力は無い。
  • 振り子の周期(数秒)は地球の自転の周期よりはるかに短いので、地点が緯線に沿って運ばれる間、振動面はその時々の水平面の中で「向きを変えずに」運ばれる。これが球面上の平行移動にあたる。
  • 回転系での Coriolis 力から運動方程式を解いても、振動面の回転の角速度は Ωsin⁡φL\Omega\sin\varphi_{\mathrm L}(Ω\Omega は自転の角速度)となり、ここでの結果と一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 8.4-1 2つのベクトルを同じ曲線に沿って平行移動するとき、それらのなす角が変わらないのはなぜか。接続のどの性質を使うかを挙げて1文で答えよ。

  2. 8.4-2 球面上で、次の三角形をたどる(0<Φ<π0<\Phi<\pi)。

    1. (i) 赤道上の点 A(φ=0\varphi=0)から赤道に沿って東へ、点 B(φ=Φ\varphi=\Phi)まで進む。
    2. (ii) 子午線に沿って北極 N へ進む。
    3. (iii) φ=0\varphi=0 の子午線に沿って A へ戻る。

A で北を向いたベクトルを平行移動すると、1周したあと何度回っているか。それが三角形の面積を a2a^2 で割ったものに等しいことを示せ。3. 8.4-3 極角 θ0=60∘\theta_0=60^\circ の緯線を1周したとき、ベクトルの向きが逆になることを (8.33) から確かめよ。また、1周でちょうど 90∘90^\circ 回る緯線の極角をすべて求めよ。4. 8.4-4 球面の緯線 θ=θ0\theta=\theta_0、φ=λ\varphi=\lambda を考える。接ベクトル uμ=(0,1)u^\mu=(0,1) の曲線に沿った共変微分 Duμ/dλDu^\mu/\mathrm{d}\lambda を計算し、平行移動されるのが赤道だけであることを示せ。θ0=45∘\theta_0=45^\circ での値も求めよ。5. 8.4-5 北緯 60∘60^\circ の地点で、Foucault の振り子の振動面が1恒星日(23.93 h23.93\ \mathrm h)に回る角度と、1周にかかる時間を求めよ。

木下の勉強ステータス

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