応用数学入門 第11章 §11.1 ★★★ F(s)=∫0∞e−stfdt。片側化+減衰つきフーリエ変換という見方。
フーリエ変換は強力だが、(i) 関数が無限遠で減衰しないと積分が収束しない、(ii) 初期値 f(0) を自然に取り込めない、という弱点がある。ラプラス変換はこの二つを一挙に解決する。鍵は「片側だけを見て、減衰因子を掛ける」ことである。
定義
定義 (ラプラス変換 ★★★)
t∈[0,∞) で定義された関数 f(t) のラプラス変換 F(s) を
F(s)=L[f](s)=∫0∞e−stf(t)dt
で定義する。s は複素変数である。
これがフーリエ変換とどう繋がるかを見よう。s=σ+iτ(σ=Res, τ=Ims)とし、
g(t):=f(t)Θ(t)e−σt
という補助関数を作る。Θ(t) で t<0 を切り落とし、e−σt で無限遠での減衰を保証する。この g のフーリエ変換を計算すると、
g^(τ)=∫−∞∞g(t)e−iτtdt=∫0∞f(t)e−σte−iτtdt=∫0∞f(t)e−(σ+iτ)tdt=F(s).
つまり
F(s)=g^(Ims)(g(t)=f(t)Θ(t)e−(Res)t).
落とし穴
見方.ラプラス変換とは、「片側化 Θ」と「減衰 e−σt」を施したうえでのフーリエ変換にほかならない。だからフーリエ変換で成り立った性質(微分・畳み込み・反転)は、形を変えてラプラス変換にも受け継がれる。
他の流儀との対照(信号処理との橋渡し)
★ 同じ内容を別の記号で習うので、混ぜると符号と係数を落とす。橋渡し式を1本持っておく
同じ積分変換を、数学と信号処理では別々の流儀で書く。記号も規約も違うので、一方の公式をそのまま他方へ持ち込むと係数 2π や虚数単位の書き方でつまずく。両者の対応を一度だけ表にして、以後は「どちらの流儀で書いているか」を意識して使い分ければよい。
| 項目 | 数学・本書 | 数学・対称規約 | 信号処理 |
| 虚数単位 | i | i | (j。i は電流に使うため) |
| フーリエ順変換 | ∫fe−iωtdt(前係数なし) | 2π1∫fe−ikxdx(対称) | ∫xe−ωtdt(前係数なし) |
| フーリエ逆変換 | 2π1∫ | 2π1∫ | 2π1∫ |
| 畳み込み定理 | F[f∗g]=F[f]F[g] | F[f∗g]=2πFG | F[x∗h]=XH |
| ラプラス変換 | 片側 ∫0∞fe−stdt | 片側(同左) | 両側 ∫−∞∞he−stdt |
| 主な使い道 | 初期値問題(微分則が f(0) を式へ入れる) | 同左 | 伝達関数 H(s)・BIBO 安定性(極が Res<0 か) |
| 離散版 | 扱わない | 扱わない | z 変換 ∑nx[n]z−n(両側。単位円 z=eΩ が周波数軸) |
規約の差のうち計算結果を実際に変えるのは、片側か両側かの一点である。信号処理では両側ラプラス変換を採るのは、そこでの主役がシステムのインパルス応答 h(t)であって、h が t<0 で 0 になるかどうか(因果性)自体を判定の対象にするからである。因果的な系では h(t)=0 (t<0) なので両側の積分は自動的に ∫0∞ に一致し、数学の片側ラプラス変換と同じ式になる。一方 数学の主役は初期値問題で、最初から t≥0 しか考えないため片側で足りる(そのかわり、微分則L[f′]=sF−f(0) に f(0) が現れて初期条件を自動的に取り込む)。
定理
命題 (二つの変換を結ぶ橋渡し式 ★)
f を t≥0 で定義された関数、Fsym を対称規約(Fsym[u](ω)=2π1∫ue−iωtdt)のフーリエ変換とする。s=σ+iω に対して
L[f](σ+iω)=2πFsym[f(t)e−σtΘ(t)](ω)
が成り立つ。本書の非対称規約 F を使うなら前係数は 1 になり、L[f](σ+iω)=F[fe−σtΘ](ω) である。
導出
定義に代入するだけで出る。g(t):=f(t)Θ(t)e−σt とおくと、Θ が t<0 を切り落とすので
Fsym[g](ω)=2π1∫−∞∞g(t)e−iωtdt=2π1∫0∞f(t)e−(σ+iω)tdt=2π1L[f](σ+iω).
両辺に 2π を掛ければ主張を得る。(検算スクリプト の項目 M で、f(t)=e−3t/2、σ=0.4、ω=1.1 を数値積分して両辺の一致を確認した。)
この一本の式は、ラプラス変換の収束領域がなぜ右半平面になるのかも同時に説明する。右辺のフーリエ変換が意味をもつためには f(t)e−σt が可積分でなければならず、f が eγt 程度で増大するなら σ>γ が要る。この条件がそのままRes>γ、すなわち収束の横座標より右という条件になる(§3.2 で改めて扱う)。逆に σ を固定して ω だけ動かすことは、s 平面の縦線をなぞることであり、これがブロムウィッチ路の正体である。
反転公式(ブロムウィッチ積分)
★★ 逆変換の原理。実務は部分分数だが、e−sx 型はこれで攻める。
F(s)=g^(τ) にフーリエの反転公式を適用すれば、ラプラス変換の逆変換が得られる。g(t)=f(t)e−σt(t>0)だから
f(t)e−σt=2π1∫−∞∞F(σ+iτ)eiτtdτ.
両辺に eσt を掛け、積分変数を s=σ+iτ(ds=idτ)に取り替えると、σ=c を固定した縦線上の積分になる。
定義
定義 (ブロムウィッチ積分(逆ラプラス変換) ★★)
f(t)=L−1[F](t)=2πi1∫c−i∞c+i∞estF(s)ds
c は F(s) のすべての特異点 s∗ が Res∗<c を満たすように選んだ実定数である。積分路は虚軸に平行な縦線(ブロムウィッチ路)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com