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演習 11.3:半無限区間の熱伝導

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第12章 応用:微分方程式と熱伝導
目次
  1. (1)  の満たす方程式と、その解
  2. (2)  を誤差関数で表す
  3. この答えは何を語っているか
  4. 一般化:伝導係数 を含む場合
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

応用数学入門 第12章 §12.3 ★★ 時間ラプラス →\to 空間 ODE →\to 逆変換で erf⁡(x/2t)\operatorname{erf}(x/2\sqrt t)。境界値問題の型。

半無限の棒 x∈(0,+∞)x\in(0,+\infty) 上の熱伝導方程式

∂tu(x,t)=∂x2u(x,t)\partial_t u(x,t)=\partial_x^2 u(x,t)

を、初期条件 u(x,0)=1u(x,0)=1、境界条件 u(0,t)=0, u(+∞,t)=1u(0,t)=0,\ u(+\infty,t)=1 のもとで解く。これは「温度 11 の棒の左端に、時刻 00 で温度 00 の熱浴をつないだ」ときの温度変化を表す。

(1)  U(x,s)U(x,s) の満たす方程式と、その解

uu の時間 tt に関するラプラス変換を

U(x,s)=∫0∞e−st u(x,t)  ⁣dtU(x,s)=\int_0^\infty \mathrm{e}^{-st}\,u(x,t)\,\mathop{}\!\mathrm{d} t

とする。方程式の両辺を tt について変換する。左辺は微分則(初期条件 u(x,0)=1u(x,0)=1 を使う):

L[∂tu]=sU(x,s)−u(x,0)=sU−1.\mathcal{L}[\partial_t u]=sU(x,s)-u(x,0)=sU-1.

右辺は xx 微分なので tt-積分と交換でき、L[∂x2u]=∂x2U\mathcal{L}[\partial_x^2 u]=\partial_x^2 U。等号でつないで

 ∂x2U−sU=−1 \boxed{\ \partial_x^2 U-sU=-1\ }

を得る。これは xx を変数、ss をパラメータとする定数係数の 2 階線形常微分方程式である。

解く.特解は右辺に合わせて定数 Up=1/sU_p=1/s(代入すると −s⋅1s=−1-s\cdot\frac1s=-1 で成立)。斉次方程式 U′′−sU=0U''-sU=0 の一般解は e±s x\mathrm{e}^{\pm\sqrt s\,x} の重ね合わせ。ゆえに

U(x,s)=1s+A e+s x+B e−s x.U(x,s)=\frac{1}{s}+A\,\mathrm{e}^{+\sqrt s\,x}+B\,\mathrm{e}^{-\sqrt s\,x}.

arg⁡s∈(−π/2,π/2)\arg s\in(-\pi/2,\pi/2) すなわち Re⁡s>0\operatorname{Re} s>0 では Re⁡s>0\operatorname{Re}\sqrt s>0 である。境界条件を課そう。

  • x→+∞x\to+\infty: u(+∞,t)=1u(+\infty,t)=1 より U(+∞,s)=L[1]=1/sU(+\infty,s)=\mathcal{L}[1]=1/s。e+s x\mathrm{e}^{+\sqrt s\,x} は発散するので係数を A=0A=0 とせねばならない。
  • x=0x=0: u(0,t)=0u(0,t)=0 より U(0,s)=0U(0,s)=0。上式で x=0x=0 とすると 1s+B=0\frac1s+B=0、よって B=−1sB=-\frac1s。

以上より

 U(x,s)=1s(1−e−s x). \boxed{\ U(x,s)=\frac{1}{s}\Bigl(1-\mathrm{e}^{-\sqrt s\,x}\Bigr).\ }

(2)  u(x,t)u(x,t) を誤差関数で表す

あとは U(x,s)U(x,s) を逆変換すればよい。第一項は L−1[1/s]=1\mathcal{L}^{-1}[1/s]=1。問題は第二項

v(x,t)≔L−1 ⁣[e−s xs](t)v(x,t)\coloneqq \mathcal{L}^{-1}\!\left[\frac{\mathrm{e}^{-\sqrt s\,x}}{s}\right](t)

である。ヒントに従い、積分則 (6) F(s)s=L ⁣[∫0tf(u) ⁣du]\dfrac{F(s)}{s}=\mathcal{L}\!\left[\int_0^t f(u)\mathop{}\!\mathrm{d} u\right] を用いる。まず付録 B で導く基本公式

L−1 ⁣[e−s x](τ)=x2π τ3/2 e−x2/4τ≕w(x,τ)(x>0)\mathcal{L}^{-1}\!\left[\mathrm{e}^{-\sqrt s\,x}\right](\tau)=\frac{x}{2\sqrt\pi\,\tau^{3/2}}\,\mathrm{e}^{-x^2/4\tau} \eqqcolon w(x,\tau)\qquad(x>0)

を認めると、積分則より vv はこれを時間 00 から tt まで積分したもの:

v(x,t)=∫0tw(x,τ)  ⁣dτ=∫0tx2π τ3/2 e−x2/4τ  ⁣dτ.v(x,t)=\int_0^t w(x,\tau)\,\mathop{}\!\mathrm{d}\tau =\int_0^t \frac{x}{2\sqrt\pi\,\tau^{3/2}}\,\mathrm{e}^{-x^2/4\tau}\,\mathop{}\!\mathrm{d}\tau.

ガウス積分の形にまとめる.ヒントの指示どおり、被積分をガウス積分の形へ変数変換する。

η=x2τ⟹τ=x24η2, ⁣dτ=−x22 η3  ⁣dη,τ3/2=x38 η3.\eta=\frac{x}{2\sqrt\tau}\quad\Longrightarrow\quad \tau=\frac{x^2}{4\eta^2},\qquad \mathop{}\!\mathrm{d}\tau=-\frac{x^2}{2\,\eta^{3}}\,\mathop{}\!\mathrm{d}\eta,\qquad \tau^{3/2}=\frac{x^3}{8\,\eta^{3}}.

積分区間は τ:0→t\tau:0\to t に対して η:∞→x2t\eta:\infty\to \dfrac{x}{2\sqrt t}。代入すると、τ−3/2\tau^{-3/2} と ⁣dτ\mathop{}\!\mathrm{d}\tau の中の η3\eta^{3} が見事に相殺して

v(x,t)=∫∞x/2tx2π⋅8η3x3 e−η2(−x22η3) ⁣dη=2π∫x/2t∞e−η2  ⁣dη=erfc⁡ ⁣(x2t).v(x,t)=\int_{\infty}^{x/2\sqrt t} \frac{x}{2\sqrt\pi}\cdot\frac{8\eta^3}{x^3}\,\mathrm{e}^{-\eta^2} \left(-\frac{x^2}{2\eta^3}\right)\mathop{}\!\mathrm{d}\eta =\frac{2}{\sqrt\pi}\int_{x/2\sqrt t}^{\infty}\mathrm{e}^{-\eta^2}\,\mathop{}\!\mathrm{d}\eta =\operatorname{erfc}\!\left(\frac{x}{2\sqrt t}\right).

ここで相補誤差関数 erfc⁡(z)=2π∫z∞e−η2 ⁣dη=1−erf⁡(z)\operatorname{erfc}(z)=\dfrac{2}{\sqrt\pi}\displaystyle\int_z^\infty \mathrm{e}^{-\eta^2}\mathop{}\!\mathrm{d}\eta=1-\operatorname{erf}(z) を用いた。したがって

u(x,t)=1−v(x,t)=1−erfc⁡ ⁣(x2t),u(x,t)=1-v(x,t)=1-\operatorname{erfc}\!\left(\frac{x}{2\sqrt t}\right),

すなわち

 u(x,t)=erf⁡ ⁣(x2t). \boxed{\ u(x,t)=\operatorname{erf}\!\left(\frac{x}{2\sqrt t}\right).\ }

落とし穴

答えの吟味.

  • x=0x=0 で erf⁡(0)=0\operatorname{erf}(0)=0:左端は常に温度 00。境界条件 u(0,t)=0u(0,t)=0 を満たす。
  • x→∞x\to\infty で erf⁡(∞)=1\operatorname{erf}(\infty)=1:遠方は温度 11 のまま。u(∞,t)=1u(\infty,t)=1 を満たす。
  • 任意の x>0x>0 を固定して t→0+t\to0^+ とすると x2t→∞\dfrac{x}{2\sqrt t}\to\infty なので u→1u\to1:初期条件 u(x,0)=1u(x,0)=1 を満たす。
  • 温度分布は相似変数 ξ=x/2t\xi=x/2\sqrt t のみに依存する。冷却の影響が棒に染み込む深さが t\sqrt t に比例する(拡散の特徴)ことを表している。

唯一 (x,t)=(0,0)(x,t)=(0,0) だけは ξ\xi の極限が定まらず特異だが、これは初期の不連続性がt>0t>0 で直ちに解消される(erf⁡\operatorname{erf} が滑らかにつなぐ)ことに対応する。

この答えは何を語っているか

u(x,t)=erf⁡(x/2t)u(x,t)=\operatorname{erf}\bigl(x/2\sqrt t\bigr) という簡潔な式には、拡散という現象の本質がほとんどすべて詰まっている。順に読み解いておきたい。

(a) 空間分布なのにガウス積分が現れる. erf⁡\operatorname{erf} はもともと「ガウス関数を積分したもの」、すなわちガウス分布の累積分布である。熱の担い手である分子はランダムに動き回っており(乱歩)、その到達位置の分布はガウス的になる。だから温度プロファイルが、その累積分布そのものの形をとる。ミクロなランダム運動が、マクロな温度分布の erf⁡\operatorname{erf} 形へと立ち上がっているわけである。

(b) 相似則:解は ξ=x/2t\xi=x/2\sqrt t ただ一つで決まる. xx と tt が独立に現れるのではなく、必ず x/tx/\sqrt t という組でしか現れない。つまり時刻を 44 倍にした温度分布は、空間を 22 倍に引き伸ばしただけの同じ曲線である。これは冷却の染み込む深さが t\sqrt t に比例することを意味する。波動なら影響は x∝tx\propto t で伝わり、静的なら広がらない。拡散はそのどちらでもない、t\sqrt t という中間的な広がり方をする。その刻印がこの相似則である。

(c) 不連続が一瞬でなめらかになる. t=0t=0 では左端に 1→01\to0 の跳び(階段)があったのに、t>0t>0 ではどれほど小さい tt をとってもerf⁡\operatorname{erf} が滑らかにつないでしまう。これは熱伝導方程式(放物型方程式)の際立った性質で、初期の不連続を瞬時になめらか化すること、裏を返せば影響の伝播速度が形式上無限大であることを示している。上の注意で「(0,0)(0,0) だけ数学的に微妙」と述べたのは、この瞬間平滑化の現れである。

(d) 変換の代数構造が、そのまま物理に翻訳される. U(x,s)=1s(1−e−s x)U(x,s)=\frac1s(1-\mathrm{e}^{-\sqrt s\,x}) に現れたss の平方根が、逆変換を経てtt の平方根による相似則を生んでいる。s\sqrt s が分岐点をつくること(付録 B)と、拡散が t\sqrt t で広がることは、同じ事実の二つの顔なのである。

要するに、ランダムウォークのガウス性・t\sqrt t 相似則・瞬間平滑化という拡散の三大特徴が、erf⁡(x/2t)\operatorname{erf}(x/2\sqrt t) というひとつの式に凝縮されている。同じ相似変数は、粘性の拡散(ストークスの流れ(板が急に動き出す問題))、濃度拡散、さらには金融の Black–Scholes 方程式にまで顔を出す。

一般化:伝導係数 cc を含む場合

実際の熱伝導方程式には熱拡散率(伝導係数)c>0c>0 が入り、∂tu=c ∂x2u\partial_t u=c\,\partial_x^2 u となる。境界条件・初期条件は同じままとして解いておこう。時間について変換すると、右辺が L[c ∂x2u]=c U′′\mathcal{L}[c\,\partial_x^2 u]=c\,U'' となるだけなので

c U′′−sU=−1⟺U′′−sc U=−1c.c\,U''-sU=-1 \qquad\Longleftrightarrow\qquad U''-\frac{s}{c}\,U=-\frac{1}{c}.

特解は Up=1/sU_p=1/s(代入すると −sc⋅1s=−1c-\frac{s}{c}\cdot\frac1s=-\frac1c で成立)、斉次解は e±s/c x\mathrm{e}^{\pm\sqrt{s/c}\,x}。まったく同じ議論で x→∞x\to\infty の条件が発散項を落とし、x=0x=0 の条件が係数を決めて

U(x,s)=1s(1−e−s/c x).U(x,s)=\frac{1}{s}\left(1-\mathrm{e}^{-\sqrt{s/c}\,x}\right).

e−s/c x=e−s (x/c)\mathrm{e}^{-\sqrt{s/c}\,x}=\mathrm{e}^{-\sqrt s\,(x/\sqrt c)} と読めば、付録 B の基本公式でa=x/ca=x/\sqrt c とするだけでよく、相似変数が x2t→x2c t\dfrac{x}{2\sqrt t}\to\dfrac{x}{2\sqrt{c\,t}} に置き換わって

 u(x,t)=erf⁡ ⁣(x2c t). \boxed{\ u(x,t)=\operatorname{erf}\!\left(\frac{x}{2\sqrt{c\,t}}\right).\ }

落とし穴

スケーリングで一発.そもそも cc は次元をそろえる定数にすぎない。t~=ct\tilde t=ct と時間を測り直せば方程式は ∂t~u=∂x2u\partial_{\tilde t}u=\partial_x^2 u という c=1c=1 の形に戻るので、解も erf⁡(x/2t~)=erf⁡(x/2ct)\operatorname{erf}(x/2\sqrt{\tilde t})=\operatorname{erf}(x/2\sqrt{ct}) でなければならない。物理的には染み込む深さが t\sqrt t ではなく c t\sqrt{c\,t} に比例する、すなわち cc が大きいほど速く冷えるということである。境界条件・初期条件を満たすことは c=1c=1 の場合とまったく同様に確かめられる。

別解:符号関数のヒントを使う

問題文のもう一つのヒント(§2.6)

2i P1p=∫−∞∞ ⁣dy eipy sgn⁡(y)2\mathrm{i}\,\mathrm{P}\frac1p=\int_{-\infty}^{\infty}\mathop{}\!\mathrm{d} y\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} p y}\,\operatorname{sgn}(y)

を使うと、L−1[e−s x]\mathcal{L}^{-1}[\mathrm{e}^{-\sqrt s\,x}] をブロムウィッチ積分から直接ガウス積分に帰着させて評価することもできる。いずれの道でも、最終的に被積分がe−η2\mathrm{e}^{-\eta^2} のガウス型に整い、誤差関数が現れる点は共通である。

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