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当てる道具:光のパルスは物質波のビームスプリッタと鏡

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第29章 原子干渉計
目次
  1. パルスの行列
  2. Mach–Zehnder 型の干渉計
  3. 真ん中の パルスの役割
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第29章 §29.2 ★★★ π/2\pi/2 パルスは原子の波束を2つの運動量に等分するビームスプリッタ、π\pi パルスは運動量を入れ替える鏡になる。パルスごとに光の位相が波束に写し取られ、π/2\pi/2–π\pi–π/2\pi/2 の干渉計の出口の確率は ϕ1−2ϕ2+ϕ3\phi_1-2\phi_2+\phi_3 だけで決まる

パルスの行列

有効な2準位系に、2光子の共鳴(δ=0\delta=0)で、長さ τ\tau の一定の強さのパルスを当てる。光の位相を ϕ\phi とすると、回転座標の Hamiltonian は −ℏΩeff2(eiϕσ++e−iϕσ−)-\frac{\hbar\Omega_{\mathrm{eff}}}{2}(\mathrm{e}^{\mathrm{i}\phi}\sigma_++\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\phi}\sigma_-)(σ+=∣s⟩⟨g∣\sigma_+=| s \rangle \langle g |)である。括弧の中の演算子は2乗すると単位行列になるので、時間発展の演算子は

U^(Θ,ϕ)=cos⁡Θ2 1^+isin⁡Θ2 (eiϕ∣s⟩⟨g∣+e−iϕ∣g⟩⟨s∣),Θ=Ωeffτ(29.4)\hat U(\Theta,\phi)=\cos\frac\Theta2\,\hat 1+\mathrm{i}\sin\frac\Theta2\,\bigl(\mathrm{e}^{\mathrm{i}\phi}| s \rangle \langle g |+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\phi}| g \rangle \langle s |\bigr),\qquad \Theta=\Omega_{\mathrm{eff}}\tau\tag{29.4}

になる。Θ\Theta は第19章のパルスの面積である。この式の読み方は2つある。1つは、∣g⟩| g \rangle から ∣s⟩| s \rangle へ移る振幅が ieiϕsin⁡(Θ/2)\mathrm{i}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\phi}\sin(\Theta/2)、逆に ∣s⟩| s \rangle から ∣g⟩| g \rangle へ移る振幅が ie−iϕsin⁡(Θ/2)\mathrm{i}\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\phi}\sin(\Theta/2) だということで、光子を吸収する向きの遷移には光の位相 ϕ\phi が、放出する向きには −ϕ-\phi が付く。もう1つは、運動量の言葉で、∣s⟩| s \rangle へ移った波束は運動量 ℏkeff\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}} をもらって速度を変え、∣g⟩| g \rangle に残った波束は速度を変えないということである。

光の位相 ϕ\phi は、パルスの時刻 tit_i に原子がいる位置 r\bm{r} での、2本の光の位相の差である。2本の光の位相の差は keff⋅r−Φ(t)\bm{k}_{\mathrm{eff}}\cdot\bm{r}-\Phi(t) と書ける(Φ(t)\Phi(t) は周波数の差 ω1−ω2\omega_1-\omega_2 を時間で積分した位相を、共鳴の周波数で回る基準から測ったもの)。したがって

ϕi=keff⋅r(ti)−Φ(ti)+ϕi(0)(29.5)\phi_i=\bm{k}_{\mathrm{eff}}\cdot\bm{r}(t_i)-\Phi(t_i)+\phi_i^{(0)}\tag{29.5}

で、ϕi(0)\phi_i^{(0)} は実験者が光の位相変調器で加えられる位相である。原子の位置が光の波長 2π/keff≈390 nm2\pi/k_{\mathrm{eff}}\approx390\,\mathrm{nm} だけ動くと、写し取られる位相は 2π2\pi 変わる。原子干渉計が位置と加速度に敏感なのは、この写し取りのためである。

Θ=π/2\Theta=\pi/2 のパルス(π/2\pi/2 パルス)は ∣g,p⟩| g,\bm{p} \rangle を ∣g,p⟩| g,\bm{p} \rangle と ∣s,p+ℏkeff⟩| s,\bm{p}+\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}} \rangle の等しい重ね合わせにする。2つの成分は速度が ℏkeff/m\hbar k_{\mathrm{eff}}/m だけ違うので、時間とともに空間で離れていく。これが物質波のビームスプリッタである。Θ=π\Theta=\pi のパルス(π\pi パルス)は ∣g⟩| g \rangle と ∣s⟩| s \rangle を入れ替える。∣g,p⟩| g,\bm{p} \rangle は運動量をもらって ∣s,p+ℏkeff⟩| s,\bm{p}+\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}} \rangle になり、∣s,p+ℏkeff⟩| s,\bm{p}+\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}} \rangle は運動量を返して ∣g,p⟩| g,\bm{p} \rangle になる。離れていく2つの波束の速度を入れ替えて、互いに近づかせるので、これが物質波の鏡である。

Mach–Zehnder 型の干渉計

時刻 00, TT, 2T2T に π/2\pi/2, π\pi, π/2\pi/2 のパルスを当てる(図 29.2)。はじめの状態を ∣g,p⟩| g,\bm{p} \rangle とし、最後に ∣s⟩| s \rangle にいる確率を求める。∣s⟩| s \rangle の出口へ至る経路は2本ある。上の経路は、時刻 00 で ∣s⟩| s \rangle へ移り(振幅 ieiϕ1/2\mathrm{i}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\phi_1}/\sqrt2)、時刻 TT で ∣g⟩| g \rangle へ戻され(ie−iϕ2\mathrm{i}\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\phi_2})、時刻 2T2T で再び ∣s⟩| s \rangle へ移る(ieiϕ3/2\mathrm{i}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\phi_3}/\sqrt2)。下の経路は、時刻 00 で ∣g⟩| g \rangle に残り(1/21/\sqrt2)、時刻 TT で ∣s⟩| s \rangle へ移り(ieiϕ2\mathrm{i}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\phi_2})、時刻 2T2T で ∣s⟩| s \rangle に残る(1/21/\sqrt2)。2本の振幅の和は

−i2ei(ϕ1−ϕ2+ϕ3)+i2eiϕ2=i2eiϕ2(1−eiΔϕ)-\frac{\mathrm{i}}{2}\mathrm{e}^{\mathrm{i}(\phi_1-\phi_2+\phi_3)}+\frac{\mathrm{i}}{2}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\phi_2}=\frac{\mathrm{i}}{2}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\phi_2}\bigl(1-\mathrm{e}^{\mathrm{i}\Delta\phi}\bigr)

で、その絶対値の2乗から

Ps=1−cos⁡Δϕ2,Δϕ=ϕ1−2ϕ2+ϕ3(29.6)P_s=\frac{1-\cos\Delta\phi}{2},\qquad \Delta\phi=\phi_1-2\phi_2+\phi_3\tag{29.6}

を得る。2本の経路は、どちらも時間 TT だけ ∣s⟩| s \rangle に、時間 TT だけ ∣g⟩| g \rangle にいるので、内部状態のエネルギーの差による位相(Ramsey の方法が読む位相)は打ち消し合い、残るのは光の位相の組み合わせだけである。

図

図 29.2 重力の中で落ちる原子の Mach–Zehnder 型の干渉計の時空図(keff\bm{k}_{\mathrm{eff}} は上向き、反跳の速さは誇張してある)。赤の実線が ∣s⟩| s \rangle(運動量を1つ多く持つ)、青の実線が ∣g⟩| g \rangle の波束。時刻 00 の π/2\pi/2 パルスで分かれ、時刻 TT の π\pi パルスで速度を入れ替え、時刻 2T2T の π/2\pi/2 パルスで重なる。一様な重力の中でも2本の経路は時刻 2T2T にちょうど同じ点で閉じる

真ん中の π\pi パルスの役割

2つの π/2\pi/2 パルスだけを時間 TT 離して当てると(第24章の Ramsey の方法と同じ順序)、同じ計算で Ps=(1+cos⁡(ϕ1−ϕ2))/2P_s=(1+\cos(\phi_1-\phi_2))/2 になる。光の位相の差 ϕ1−ϕ2=keff⋅(r(0)−r(T))\phi_1-\phi_2=\bm{k}_{\mathrm{eff}}\cdot(\bm{r}(0)-\bm{r}(T)) には、原子のはじめの速度 v0\bm{v}_0 が −keff⋅v0T-\bm{k}_{\mathrm{eff}}\cdot\bm{v}_0T の形で入る。雲の中の原子は速度がばらばらなので、縞の位相も原子ごとにばらばらになり、平均すると縞が消える。Mach–Zehnder 型の組み合わせでは、等速の運動 r(t)=r0+v0t\bm{r}(t)=\bm{r}_0+\bm{v}_0t に対して

r(0)−2r(T)+r(2T)=0\bm{r}(0)-2\bm{r}(T)+\bm{r}(2T)=\bm{0}

なので、はじめの位置と速度が位相から消える。残るのは2階差分で拾われる加速度だけである。真ん中の π\pi パルスは、第19章のスピンエコーで不均一な広がりによる位相のずれを打ち消した π\pi パルスと同じ働きをしている。エコーが周波数のばらつきを打ち消したように、原子干渉計の π\pi パルスは速度のばらつきを打ち消す。

例題 29.2 Raman の Ramsey の縞が消える理由 ★★

オリジナル温度 4.85 μK4.85\,\mu\mathrm K の 87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} の雲に、向かい合う Raman の光で π/2\pi/2 パルスを2つ、時間 T=1 msT=1\,\mathrm{ms} 離して当てる。

  1. (1) 縞の位相 ϕ1−ϕ2\phi_1-\phi_2 のうち、原子の速度 vv(keff\bm{k}_{\mathrm{eff}} の向きの成分)で決まる部分を書き、Gauss 分布の速度で平均した縞のコントラストを求めよ。
  2. (2) 同じことを波束の重なりで説明せよ。2つの出口の波束の間隔と、熱的 de Broglie 波長 λth=h/2πmkBTc\lambda_{\mathrm{th}}=h/\sqrt{2\pi m k_{\mathrm B} T_{\mathrm c}}(TcT_{\mathrm c} は雲の温度)を比べよ。
  3. (3) π/2\pi/2–π\pi–π/2\pi/2 では、時刻 2T2T に2本の経路の波束の間隔がいくらになるか。
解答

(1) ϕ1−ϕ2=keff(z(0)−z(T))=−keffvT\phi_1-\phi_2=k_{\mathrm{eff}}(z(0)-z(T))=-k_{\mathrm{eff}}vT(重力の分を除く)なので、速度の分布が平均 00、広がり σv\sigma_v の Gauss 分布なら

⟨cos⁡(keffvT)⟩=e−(keffσvT)2/2\Bigl\langle\cos(k_{\mathrm{eff}}vT)\Bigr\rangle=\mathrm{e}^{-(k_{\mathrm{eff}}\sigma_vT)^2/2}

である。keffσvT=(1.61×107)(2.15×10−2)(10−3)=347k_{\mathrm{eff}}\sigma_vT=(1.61\times10^{7})(2.15\times10^{-2})(10^{-3})=347 なので、コントラストは e−3472/2\mathrm{e}^{-347^2/2} で実質的に 00 である。

(2) 時刻 00 で ∣s⟩| s \rangle へ移った成分は、時刻 TT までに ∣g⟩| g \rangle に残った成分より ℏkeffT/m=11.8 μm\hbar k_{\mathrm{eff}}T/m=11.8\,\mu\mathrm m だけ先へ進む。時刻 TT の π/2\pi/2 パルスの後、出口 ∣s⟩| s \rangle には「時刻 00 に移った成分」と「時刻 TT に移った成分」があり、両者は位置が 11.8 μm11.8\,\mu\mathrm m ずれている。一方、温度 Tc=4.85 μKT_{\mathrm c}=4.85\,\mu\mathrm K の原子の波束が干渉できる長さの目安は λth=85 nm\lambda_{\mathrm{th}}=85\,\mathrm{nm} である。ずれはその約 140140 倍なので、2つの成分は重ならず干渉しない。(1) の速度の平均で縞が消えることと、波束が重ならないことは、同じ事実を運動量の表示と位置の表示で見たものである。

(3) 図 29.2 のとおり、時刻 TT の π\pi パルスで2つの成分の速度が入れ替わり、時刻 2T2T に間隔はちょうど 00 に戻る。重力が一様なら、この閉じ方は重力に影響されない(29.3節)。

木下の勉強ステータス

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