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取り出すモードと物質のモデル:向かい合う2本の光と運動量でラベルした2準位

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第29章 原子干渉計
目次
  1. なぜ2光子の遷移を使うか
  2. 有効な2準位系
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第29章 §29.1 ★★★ 向かい合う2本の光で2光子 Raman 遷移を起こすと、原子は内部状態を ∣g⟩| g \rangle から ∣s⟩| s \rangle へ変えると同時に運動量 ℏkeff≈2ℏk\hbar k_{\mathrm{eff}}\approx2\hbar k をもらう。内部状態と運動量を組にした2準位系が、この章のすべての計算の土台になる

第26章(第26章)では、光で原子を数 μK\mu\mathrm K まで冷やした。冷えた原子は遅く、その de Broglie 波長は数十 nm\mathrm{nm} になり、原子の雲を数百ミリ秒のあいだ自由に飛ばしておける。第24章(第24章)の Ramsey の方法は、2つの π/2\pi/2 パルスの間に原子の内部状態の位相を進めて干渉させ、遷移の周波数を読むものだった。この章では、同じ Ramsey の考え方を、原子の内部状態だけでなく重心の運動にも当てはめる。光子を吸収した原子は運動量 ℏk\hbar k をもらって動きを変えるので、光のパルスは原子の波束を2つの運動量の重ね合わせに分ける。2つに分かれた波束を別の経路で飛ばし、再び重ねて干渉させるのが原子干渉計である。

この章で取り出すモードは、互いに逆向きに進む2本の光で、その周波数の差が原子の2つの基底状態の間隔に合わせてある。物質のモデルは、2つの長寿命の基底状態 ∣g⟩| g \rangle, ∣s⟩| s \rangle と、光の励起状態 ∣e⟩| e \rangle を持つ Λ 型の3準位原子で、その重心が自由に(重力の中で)動く。結合は第18章(第18章)の双極子相互作用で、励起状態を消去すると、内部状態と運動量を組にした2準位系 {∣g,p⟩,∣s,p+ℏkeff⟩}\{| g,\bm{p} \rangle ,| s,\bm{p}+\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}} \rangle \} の Rabi 振動になる。29.1節でこの有効な2準位系を作り、29.2節で光のパルスが物質波のビームスプリッタと鏡になること、3つのパルスで Mach–Zehnder 型の干渉計を組むと出口の確率が光の位相の組み合わせ ϕ1−2ϕ2+ϕ3\phi_1-2\phi_2+\phi_3 だけで決まることを示す。29.3節でこの組み合わせが重力加速度 g\bm{g} を測ることを示し、経路積分の位相の3つの寄与(伝搬・光・分離)に分けて同じ答えを確かめる。29.4節で回転を入れ、Coriolis 力による位相が物質波の Sagnac 効果になることを示す。29.5節で置いた近似と測る量(干渉縞と感度)を述べ、29.6節で光の Mach–Zehnder 干渉計・中性子の重力干渉・Coriolis 力と並べる。

離調は記法の正本どおり Δ=ωL−ω0\Delta=\omega_{\mathrm L}-\omega_0(レーザーから原子を引いた差)と書き、2光子の離調を δ\delta と書く。数値の例には 87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} を使う。D2 線の波長 λ=780.24 nm\lambda=780.24\,\mathrm{nm}、自然幅 Γ/2π=6.07 MHz\Gamma/2\pi=6.07\,\mathrm{MHz}、質量 m=1.443×10−25 kgm=1.443\times10^{-25}\,\mathrm{kg}、基底状態の超微細構造の間隔 6.834 682 610 904 GHz6.834\,682\,610\,904\,\mathrm{GHz} は D. A. Steck, Rubidium 87 D Line Data による。重力加速度は g=9.81 m s−2g=9.81\,\mathrm{m\,s^{-2}}、地球の自転の角速度は ΩE=7.292×10−5 rad s−1\Omega_{\mathrm E}=7.292\times10^{-5}\,\mathrm{rad\,s^{-1}} とする。

なぜ2光子の遷移を使うか

光子1個を吸収させて原子の波束を分けると、分かれた片方は光の励起状態にいて、寿命 1/Γ1/\Gamma(87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} で 26 ns26\,\mathrm{ns})のうちに自然放出で向きのでたらめな反跳を受ける。反跳を受けた波束はもう一方と干渉しない。数百ミリ秒のあいだ2本の経路を保つには、分かれた両方の内部状態が長寿命でなければならない。

そこで2つの基底状態(87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} では超微細構造の F=1F=1 と F=2F=2)を使う。これを ∣g⟩| g \rangle と ∣s⟩| s \rangle と書く(第19章の電磁誘起透明化の節の Λ 型と同じ名前の付け方である。第19章)。角周波数 ω1\omega_1、波数ベクトル k1\bm{k}_1 の光で ∣g⟩→∣e⟩| g \rangle \to| e \rangle へ上げ、角周波数 ω2\omega_2、波数ベクトル k2\bm{k}_2 の光の誘導放出で ∣e⟩→∣s⟩| e \rangle \to| s \rangle へ下ろす。励起状態に実際に上がらないよう、どちらの光も ∣e⟩| e \rangle への共鳴から大きく離調 Δ\Delta だけずらしておく(図 29.1)。この2光子の過程を 誘導 Raman 遷移と呼ぶ。1回の遷移で原子は光子 ℏk1\hbar\bm{k}_1 を吸収し ℏk2\hbar\bm{k}_2 を放出するので、運動量の変化は

ℏkeff=ℏ(k1−k2)(29.1)\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}}=\hbar(\bm{k}_1-\bm{k}_2)\tag{29.1}

である。2本の光を向かい合わせる(k2≈−k1\bm{k}_2\approx-\bm{k}_1)と keff≈2kk_{\mathrm{eff}}\approx2k になり、運動量のやりとりが最大になる。同じ向きに進む2本では k1−k2\bm{k}_1-\bm{k}_2 がほとんど 00 で、内部状態は変わっても原子は動かない。これは第24章の Ramsey の方法(原子時計)の配置である。

図

図 29.1 2光子 Raman 遷移。光 1 で ∣g⟩| g \rangle から(励起状態 ∣e⟩| e \rangle より ∣Δ∣\lvert \Delta\rvert だけ下の)仮想の準位へ上げ、光 2 の誘導放出で ∣s⟩| s \rangle へ下ろす。2本の光を向かい合わせると、原子は内部状態を変えるたびに運動量 ℏkeff=ℏ(k1−k2)\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}}=\hbar(\bm{k}_1-\bm{k}_2) をもらう(右)。準位の間隔は誇張してある

有効な2準位系

第19章の Λ 型の Hamiltonian で、光 1 と光 2 の Rabi 周波数を Ω1\Omega_1, Ω2\Omega_2 とする。離調 ∣Δ∣\lvert \Delta\rvert が Ω1\Omega_1, Ω2\Omega_2, Γ\Gamma より十分大きいと、∣e⟩| e \rangle の振幅は小さく、∣g⟩| g \rangle と ∣s⟩| s \rangle の振幅に追従してゆっくり変わる。∣e⟩| e \rangle の振幅の時間微分を落として代数的に解き(断熱消去。第21章のコヒーレンスの断熱消去と同じ操作である。第21章)、∣g⟩| g \rangle, ∣s⟩| s \rangle の方程式に戻すと、∣g⟩| g \rangle と ∣s⟩| s \rangle を直接つなぐ行列要素 −ℏΩ1Ω2/(4Δ)-\hbar\Omega_1\Omega_2/(4\Delta) が残る。これを2準位の形 −ℏΩeff/2-\hbar\Omega_{\mathrm{eff}}/2 に書くと、有効な Rabi 周波数は

Ωeff=Ω1Ω22Δ(29.2)\Omega_{\mathrm{eff}}=\frac{\Omega_1\Omega_2}{2\Delta}\tag{29.2}

である(符号は光の位相の取り方に吸収できるので、この章では大きさだけを使う)。同じ消去で、∣g⟩| g \rangle と ∣s⟩| s \rangle のエネルギーはそれぞれ ℏΩ12/(4Δ)\hbar\Omega_1^2/(4\Delta), ℏΩ22/(4Δ)\hbar\Omega_2^2/(4\Delta) だけずれる。これは第18章の光シフトで、2光子の共鳴の条件をずらすが、2本の強さを選べば打ち消せる。

運動量を入れると、∣g,p⟩| g,\bm{p} \rangle と結合するのは ∣s,p+ℏkeff⟩| s,\bm{p}+\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}} \rangle だけである。光の場の空間依存 eikeff⋅r\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{k}_{\mathrm{eff}}\cdot\bm{r}} が運動量を ℏkeff\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}} だけずらす演算子だからである。したがって、自由な原子の運動量の固有状態の組 {∣g,p⟩,∣s,p+ℏkeff⟩}\{| g,\bm{p} \rangle ,| s,\bm{p}+\hbar\bm{k}_{\mathrm{eff}} \rangle \} は閉じた2準位系になる。2つのエネルギーの差は、内部状態の間隔 ℏωsg\hbar\omega_{sg} に運動エネルギーの差を足したものなので、2光子の共鳴の条件は

δ≡(ω1−ω2)−(ωsg+keff⋅pm+ℏkeff22m)=0(29.3)\delta\equiv(\omega_1-\omega_2)-\Bigl(\omega_{sg}+\frac{\bm{k}_{\mathrm{eff}}\cdot\bm{p}}{m}+\frac{\hbar k_{\mathrm{eff}}^2}{2m}\Bigr)=0\tag{29.3}

になる(光シフトは打ち消してあるとする)。括弧の第2項は2光子の Doppler のずれ keff⋅v\bm{k}_{\mathrm{eff}}\cdot\bm{v}、第3項は2光子の反跳のずれである。2光子の離調 δ\delta が原子の速度に keffk_{\mathrm{eff}} の割合で依存するので、短いパルス(大きい Ωeff\Omega_{\mathrm{eff}})ほど広い速度の範囲の原子をまとめて遷移させ、長いパルスほど狭い速度の組だけを選ぶ。

この有効な2準位系は、第18章の回転座標の Hamiltonian −ℏδ2σz−ℏΩeff2σx-\frac{\hbar\delta}{2}\sigma_z-\frac{\hbar\Omega_{\mathrm{eff}}}{2}\sigma_x と同じ形をしている。違いは、σz\sigma_z の固有状態が内部状態と運動量の組だという点だけである。第19章の Bloch 球も、Rabi 振動も、パルスの面積も、そのまま使える。

例題 29.1 ルビジウムの Raman 遷移の大きさ ★★

オリジナル87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} の D2 線の近くで、向かい合う2本の光の Raman 遷移を使う。

  1. (1) keff=2kk_{\mathrm{eff}}=2k として、keffk_{\mathrm{eff}}、1回の遷移で変わる速度 ℏkeff/m\hbar k_{\mathrm{eff}}/m、2光子の反跳のずれ ℏkeff2/(2m)\hbar k_{\mathrm{eff}}^2/(2m) を周波数で求めよ。また 0.1 s0.1\,\mathrm s 後の2つの波束の間隔を求めよ。
  2. (2) 1光子の離調を Δ/2π=1 GHz\Delta/2\pi=1\,\mathrm{GHz}、Ω1=Ω2\Omega_1=\Omega_2 として Ωeff/2π=50 kHz\Omega_{\mathrm{eff}}/2\pi=50\,\mathrm{kHz} を得たい。Ω1/2π\Omega_1/2\pi と、π\pi パルスの長さを求めよ。
  3. (3) π\pi パルスの間に光の自然放出が起こる確率を、各光の散乱の速さ ΓΩi2/(4Δ2)\Gamma\Omega_i^2/(4\Delta^2) から求め、πΓ/Δ\pi\Gamma/\Delta に等しいことを示せ。
  4. (4) 温度 4.85 μK4.85\,\mu\mathrm K の雲(第26章の偏光勾配冷却の値)の速度の広がりと、2光子の Doppler のずれの広がり keffσv/2πk_{\mathrm{eff}}\sigma_v/2\pi を求め、(2) のパルスがすべての原子を遷移させるかを答えよ。
解答

(1) k=2π/λ=8.053×106 m−1k=2\pi/\lambda=8.053\times10^{6}\,\mathrm m^{-1} なので keff=1.61×107 m−1k_{\mathrm{eff}}=1.61\times10^{7}\,\mathrm m^{-1} である。速度の変化は

ℏkeffm=(1.0546×10−34)(1.6106×107)1.443×10−25 m s−1=11.8 mm s−1\frac{\hbar k_{\mathrm{eff}}}{m}=\frac{(1.0546\times10^{-34})(1.6106\times10^{7})}{1.443\times10^{-25}}\,\mathrm{m\,s^{-1}}=11.8\,\mathrm{mm\,s^{-1}}

で、1光子の反跳速度(第26章の 5.88 mm s−15.88\,\mathrm{mm\,s^{-1}})の2倍である。反跳のずれは ℏkeff2/(2m)/2π=15.1 kHz\hbar k_{\mathrm{eff}}^2/(2m)/2\pi=15.1\,\mathrm{kHz} で、1光子の反跳の周波数の4倍になる。0.1 s0.1\,\mathrm s 後の間隔は 11.8 mm s−1×0.1 s=1.18 mm11.8\,\mathrm{mm\,s^{-1}}\times0.1\,\mathrm s=1.18\,\mathrm{mm} である。原子1個の波束が、肉眼で見える距離だけ離れた2か所に同時にある。

(2) 式 (29.2) で Ω1=Ω2\Omega_1=\Omega_2 とおくと Ω12=2ΔΩeff\Omega_1^2=2\Delta\Omega_{\mathrm{eff}} である。周波数で書くと (Ω1/2π)2=2×109×5×104 Hz2=1014 Hz2(\Omega_1/2\pi)^2=2\times10^{9}\times5\times10^{4}\,\mathrm{Hz^2}=10^{14}\,\mathrm{Hz^2} で、Ω1/2π=10 MHz\Omega_1/2\pi=10\,\mathrm{MHz} になる。π\pi パルスの長さは π/Ωeff=1/(2×5×104 Hz)=10 μs\pi/\Omega_{\mathrm{eff}}=1/(2\times5\times10^{4}\,\mathrm{Hz})=10\,\mu\mathrm s である。

(3) 1本の光の散乱の速さは、第26章の散乱の速さで ∣Δ∣≫Γ,Ωi\lvert \Delta\rvert \gg\Gamma,\Omega_i とした ΓΩi2/(4Δ2)\Gamma\Omega_i^2/(4\Delta^2) で、数値は (3.81×107 s−1)×(107/109)2/4=953 s−1(3.81\times10^{7}\,\mathrm s^{-1})\times(10^{7}/10^{9})^2/4=953\,\mathrm s^{-1} である。2本ぶんを π\pi パルスの時間だけ足すと 2×953×10−5=0.01912\times953\times10^{-5}=0.0191 になる。式で書くと、Ωi2=2ΔΩeff\Omega_i^2=2\Delta\Omega_{\mathrm{eff}} を入れて

2⋅ΓΩ124Δ2⋅πΩeff=Γ⋅2ΔΩeff2Δ2⋅πΩeff=πΓΔ2\cdot\frac{\Gamma\Omega_1^2}{4\Delta^2}\cdot\frac{\pi}{\Omega_{\mathrm{eff}}}=\frac{\Gamma\cdot2\Delta\Omega_{\mathrm{eff}}}{2\Delta^2}\cdot\frac{\pi}{\Omega_{\mathrm{eff}}}=\frac{\pi\Gamma}{\Delta}

で、π×6.07 MHz/1 GHz=0.0191\pi\times6.07\,\mathrm{MHz}/1\,\mathrm{GHz}=0.0191 と一致する。Raman 遷移の速さを決めたまま自然放出を減らすには、離調 Δ\Delta を大きくし、その分だけ光を強くする。

(4) 速度の広がりは σv=kBT/m=2.15 cm s−1\sigma_v=\sqrt{ k_{\mathrm B} T/m}=2.15\,\mathrm{cm\,s^{-1}} で、2光子の Doppler のずれの広がりは keffσv/2π=55.2 kHzk_{\mathrm{eff}}\sigma_v/2\pi=55.2\,\mathrm{kHz} である。これは Ωeff/2π=50 kHz\Omega_{\mathrm{eff}}/2\pi=50\,\mathrm{kHz} と同じ程度なので、雲の中心の速度の原子は π\pi パルスで遷移するが、速度が σv\sigma_v ずれた原子は離調 δ=keffσv=1.10 Ωeff\delta=k_{\mathrm{eff}}\sigma_v=1.10\,\Omega_{\mathrm{eff}} を受け、第24章の Rabi の線の式で P=0.23P=0.23 しか遷移しない。すべての原子を遷移させるには、Ωeff\Omega_{\mathrm{eff}} をこの広がりの数倍にする(パルスを短くする)か、雲をさらに冷やす。

木下の勉強ステータス

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