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取り出すモードと物質のモデル:弱いプローブ光と1個の原子の吸収線

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第24章 分光の線幅
目次
  1. 定常解と吸収の断面積
  2. 線の形・幅・面積
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第24章 §24.1 ★★★ 光 Bloch 方程式の定常解から、1個の静止した原子の吸収の断面積は半値全幅 2γ⊥2\gamma_\perp の Lorentz 型になる。自然放出だけなら幅は Γ\Gamma、ピークは 3λ2/2π3\lambda^2/2\pi で、線の面積は幅によらない

第18章から第21章(第18章〜第21章)では、2準位原子を光で揺らすときの運動を、回転波近似の Hamiltonian と光 Bloch 方程式で書いた。第22章と第23章(第22章・第23章)では、レーザーの光そのものの周波数の幅と、周波数の目盛りを作る光周波数コムを扱った。周波数の細い光が手に入ると、次に問題になるのは原子の側の線の幅である。原子の遷移の周波数を細かく読むことが分光であり、原子時計(第28章)もレーザー冷却(第26章)も、この線の幅の上に組み立てる。

この章で取り出すモードは、原子の気体を通る弱いプローブ光の平面波1本と、必要に応じて逆向きに進む強いポンプ光の平面波1本である。物質のモデルは、遷移角周波数 ω0\omega_0 の2準位原子 ∣g⟩| g \rangle, ∣e⟩| e \rangle の集まりで、上の準位は自然放出によって率 Γ\Gamma で下へ落ちる。原子は気体の中を Maxwell 分布の速度で動いている。結合は双極子相互作用で、回転波近似の後の Hamiltonian H^=−ℏΔ2σz−ℏΩ2σx\hat H=-\frac{\hbar\Delta}{2}\sigma_z-\frac{\hbar\Omega}{2}\sigma_x(Δ=ωL−ω0\Delta=\omega_{\mathrm L}-\omega_0 はレーザーと原子の離調、Ω\Omega は Rabi 周波数)を使う。

線の幅は2種類に分かれる。すべての原子が同じ形の線を持ち、その線そのものが太い場合を均一な広がりと呼ぶ。原子ごとに線の中心がずれていて、ずれの分布が全体の線の形を決める場合を不均一な広がりと呼ぶ。24.1節で光 Bloch 方程式の定常解から1個の原子の吸収の断面積を出し、自然幅と衝突による広がりがどちらも均一な Lorentz 型であることを示す。24.2節では、原子の運動による Doppler 効果が不均一な Gauss 型の広がりを与え、室温の気体では自然幅の100倍近くになることを示す。24.3節では、強い光で原子を飽和させると、不均一な線の中に均一な幅の穴が開くことを使い、逆向きの2本の光で Doppler 幅の下にある線を取り出す(飽和吸収分光)。24.4節では、線の幅を時間の側から読み、測る時間 tt の逆数より細い線は見えないことと、時間を2つに分けて干渉させる Ramsey の方法、周波数を掃引して不均一な集団をまとめて反転させる断熱急速通過を扱う。24.5節で置いた近似と測る量を述べ、24.6節で学部の授業の線形関数 g(ν)g(\nu) の書き方と並べる。

この章では、時間の因子を記法の正本どおり e−iωt\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t} にとる。温度 TT が出てくるので、時間の長さには TT を使わず、パルスの長さを τp\tau_{\mathrm p}、自由な時間を tft_{\mathrm f} と書く。上の準位の寿命は τ=1/Γ\tau=1/\Gamma である。

定常解と吸収の断面積

静止した2準位原子に、角周波数 ωL\omega_{\mathrm L}、電場の振幅 E0E_0 の平面波を当てる。双極子の行列要素 deg\bm{d}_{eg} が電場の向きにそろっているとし、その大きさを dd と書くと、Rabi 周波数は Ω=dE0/ℏ\Omega=dE_0/\hbar である(第18章)。密度行列 ρ^\hat\rho は、回転座標で次の光 Bloch 方程式に従う(第19章):

dρ^dt=1iℏ[H^, ρ^]+Γ(σ−ρ^σ+−12{σ+σ−,ρ^}+)+γϕ2(σzρ^σz−ρ^).(24.1)\frac{\mathrm{d} \hat\rho}{\mathrm{d} t}=\frac{1}{\mathrm{i}\hbar}\left[\hat H,\,\hat\rho\right]+\Gamma\Bigl(\sigma_-\hat\rho\sigma_+-\tfrac12\{\sigma_+\sigma_-,\hat\rho\}_{+}\Bigr)+\frac{\gamma_\phi}{2}\bigl(\sigma_z\hat\rho\sigma_z-\hat\rho\bigr).\tag{24.1}

第2項は自然放出で、上の準位の占有を率 Γ\Gamma で減らし、同時に ρeg\rho_{eg} を率 Γ/2\Gamma/2 で減らす。第3項は、気体の中の原子どうしの衝突のように、占有を変えずに ∣e⟩| e \rangle と ∣g⟩| g \rangle の相対的な位相だけを乱す過程を率 γϕ\gamma_\phi で入れたものである。コヒーレンス ρeg\rho_{eg} が減る率をまとめて

γ⊥=1T2=Γ2+γϕ,1T1=Γ(24.2)\gamma_\perp=\frac{1}{T_2}=\frac{\Gamma}{2}+\gamma_\phi,\qquad \frac{1}{T_1}=\Gamma\tag{24.2}

と書く。

式 (24.1) の左辺を 00 と置いて解くと、上の準位の占有の定常値は

ρee=Ω2γ⊥/(2Γ)Δ2+γ⊥2+Ω2γ⊥/Γ(24.3)\rho_{ee}=\frac{\Omega^2\gamma_\perp/(2\Gamma)}{\Delta^2+\gamma_\perp^2+\Omega^2\gamma_\perp/\Gamma}\tag{24.3}

になる。ρee\rho_{ee} の方程式 ρ˙ee=−Γρee+Ω Im⁡ρeg\dot\rho_{ee}=-\Gamma\rho_{ee}+\Omega\,\operatorname{Im}\rho_{eg} を使うと、ρeg\rho_{eg} の定常値が Ω(ρgg−ρee)\Omega(\rho_{gg}-\rho_{ee}) に比例し、比例係数の分母が γ⊥−iΔ\gamma_\perp-\mathrm{i}\Delta になることから、この形が出る。自然放出だけ(γϕ=0\gamma_\phi=0)のときは、飽和パラメータ s≔2Ω2/Γ2s\coloneqq2\Omega^2/\Gamma^2 を使って

ρee=s/21+s+4Δ2/Γ2(24.4)\rho_{ee}=\frac{s/2}{1+s+4\Delta^2/\Gamma^2}\tag{24.4}

と書ける。s→∞s\to\infty で ρee→1/2\rho_{ee}\to1/2 になり、どれだけ強く当てても半分より多くは上へ上がらない。これは第21章(第21章)で2準位では反転分布が作れないと述べたことの、定常解の側からの表現である。

原子が単位時間に吸収する光のエネルギーは、上の準位から単位時間に落ちる数 Γρee\Gamma\rho_{ee} に光子1個のエネルギー ℏωL\hbar\omega_{\mathrm L} を掛けたものである(定常状態では、吸収した光子の数と自然放出で出ていく光子の数がつり合う)。これを入射光の強度 I=12cε0E02I=\frac12c\varepsilon_0E_0^2 で割ったものを吸収の断面積 σ(Δ)\sigma(\Delta) と呼ぶ。光が弱い極限(Ω→0\Omega\to0)で、Γ=ω03d2/(3πε0ℏc3)\Gamma=\omega_0^3d^2/(3\pi\varepsilon_0\hbar c^3)(第20章)を使って dd を消すと、

σ(Δ)=3λ24π Γγ⊥Δ2+γ⊥2,λ=2πcω0(24.5)\sigma(\Delta)=\frac{3\lambda^2}{4\pi}\,\frac{\Gamma\gamma_\perp}{\Delta^2+\gamma_\perp^2},\qquad \lambda=\frac{2\pi c}{\omega_0}\tag{24.5}

を得る(ωL≈ω0\omega_{\mathrm L}\approx\omega_0 とした)。数密度 NaN_{\mathrm a} の原子の気体では、弱い光の強度は dIdz=−NaσI\frac{\mathrm{d} I}{\mathrm{d} z}=-N_{\mathrm a}\sigma I に従って減り、吸収係数は α=Naσ\alpha=N_{\mathrm a}\sigma である(Beer–Lambert の法則)。

線の形・幅・面積

式 (24.5) は Δ\Delta について Lorentz 型で、半値全幅は 2γ⊥=2/T22\gamma_\perp=2/T_2 である。この幅を均一幅と呼ぶ。自然放出だけなら γ⊥=Γ/2\gamma_\perp=\Gamma/2 で、半値全幅は

Γ=1τ,σ(0)=σ0=3λ22π(24.6)\Gamma=\frac{1}{\tau},\qquad \sigma(0)=\sigma_0=\frac{3\lambda^2}{2\pi}\tag{24.6}

になる。これを自然幅と呼ぶ。上の準位の寿命 τ\tau の逆数がそのまま線の幅になっている。

自然幅が Lorentz 型になる理由は、時間の側から見るとわかりやすい。上の準位へ一度上げた原子を放っておくと、Wigner と Weisskopf の扱い(第34章)では、双極子の振幅は e−iω0t−Γt/2\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_0t-\Gamma t/2} のように減衰しながら振動する。第9章(第9章)の Wiener–Khinchin の定理によれば、出てくる光のスペクトルはこの振幅の Fourier 変換の絶対値の2乗で、

∣∫0∞ei(ω−ω0)t−Γt/2 dt∣2=1(ω−ω0)2+Γ2/4\Bigl|\int_0^\infty\mathrm{e}^{\mathrm{i}(\omega-\omega_0)t-\Gamma t/2}\,\mathrm{d} t\Bigr|^2=\frac{1}{(\omega-\omega_0)^2+\Gamma^2/4}

は半値全幅 Γ\Gamma の Lorentz 型である。指数関数で減る振動の Fourier 変換が Lorentz 型になるので、自然幅は寿命の逆数になる。衝突は振動の位相をばらばらな時刻に乱すので、双極子の平均の振幅を e−γ⊥t\mathrm{e}^{-\gamma_\perp t} の速さで減らす。その分だけ Lorentz 型が太くなり、これが衝突による広がり(圧力による広がり)である。

式 (24.5) を Δ\Delta で積分すると

∫−∞∞σ(Δ) dΔ=3λ24π πΓ=3λ2Γ4(24.7)\int_{-\infty}^{\infty}\sigma(\Delta)\,\mathrm{d}\Delta=\frac{3\lambda^2}{4\pi}\,\pi\Gamma=\frac{3\lambda^2\Gamma}{4}\tag{24.7}

で、γ⊥\gamma_\perp によらない。衝突は線を太くするが、そのぶんピークを下げ、線の面積は変えない。面積を決めるのは自然放出の率 Γ\Gamma、つまり双極子の行列要素 dd の大きさだけである。これは、線の面積が Einstein の BB 係数(遷移の強さ)で決まり、線の形は原子がどう乱されるかで決まる、という分担の表れで、24.6節で授業の書き方と並べるときに使う。

図

図 24.1 静止した原子の吸収の断面積(式 (24.5)。どちらもこのモデルの厳密な定常解なので点線で示す)。赤は自然放出だけ(半値全幅 Γ\Gamma)、青は衝突で γ⊥=2Γ\gamma_\perp=2\Gamma に増えた場合(半値全幅 4Γ4\Gamma)。2本の曲線の下の面積は等しい

例題 24.1 Rb の D2 線の自然幅と断面積 ★★★

オリジナル87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} の D2 線(5S1/2→5P3/25\mathrm S_{1/2}\to5\mathrm P_{3/2})は波長 λ=780.241 nm\lambda=780.241\,\mathrm{nm}、上の準位の寿命 τ=26.2348 ns\tau=26.2348\,\mathrm{ns} である1D. A. Steck, Rubidium 87 D Line Data(steck.us/alkalidata に公開されている数値の表)。下の脚注へ。この遷移の1本の閉じた遷移(上へ上がった原子が必ず元の下の準位へ戻る組)を2準位原子とみなす。

  1. (1) 自然幅 Γ/2π\Gamma/2\pi と、線の鋭さ Q=ω0/ΓQ=\omega_0/\Gamma を求めよ。
  2. (2) ピークの断面積 σ0\sigma_0 を求め、Bohr 半径 a0a_0 の円の面積 πa02\pi a_0^2 と比べよ。
  3. (3) 式 (24.5) の導出と同じ関係 Γ=ω03d2/(3πε0ℏc3)\Gamma=\omega_0^3d^2/(3\pi\varepsilon_0\hbar c^3) から、双極子の行列要素 dd を ea0ea_0 を単位として求めよ。
解答

(1) Γ=1/τ=3.812×107 s−1\Gamma=1/\tau=3.812\times10^{7}\,\mathrm s^{-1} で、Γ/2π=6.07 MHz\Gamma/2\pi=6.07\,\mathrm{MHz} である。光の周波数は ω0/2π=c/λ=384 THz\omega_0/2\pi=c/\lambda=384\,\mathrm{THz} なので、Q=ω0/Γ=6.33×107Q=\omega_0/\Gamma=6.33\times10^7 になる。光の振動が 10810^8 回ほど続く間、原子は位相を保って振動している。

(2) σ0=3λ2/(2π)=2.91×10−13 m2\sigma_0=3\lambda^2/(2\pi)=2.91\times10^{-13}\,\mathrm m^2 で、πa02=8.80×10−21 m2\pi a_0^2=8.80\times10^{-21}\,\mathrm m^2 の 3.3×1073.3\times10^7 倍である。共鳴の光に対して、原子は自分の大きさよりはるかに大きい的として働く。断面積の大きさは原子の大きさでなく波長の2乗で決まり、共鳴の光を吸収する原子は、波長の程度の範囲の光を集めて吸収している。

(3) d=3πε0ℏc3Γ/ω03=2.53×10−29 C md=\sqrt{3\pi\varepsilon_0\hbar c^3\Gamma/\omega_0^3}=2.53\times10^{-29}\,\mathrm{C\,m} で、ea0=8.48×10−30 C mea_0=8.48\times10^{-30}\,\mathrm{C\,m} を単位として d=2.99 ea0d=2.99\,ea_0 になる。原子の大きさの程度の長さに電気素量を掛けたものという、双極子の行列要素として自然な大きさである。

1 D. A. Steck, Rubidium 87 D Line Data(steck.us/alkalidata に公開されている数値の表)。

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