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出てくるもの(1):Doppler 幅は不均一な広がり

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第24章 分光の線幅
目次
  1. 速度の組ごとの離調
  2. 2つの極限
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第24章 §24.2 ★★★ 速度 vzv_z の原子は光を Δ−kvz\Delta-kv_z の離調で見る。Maxwell 分布で平均すると、線は Lorentz 型と Gauss 型の畳み込み(Voigt 型)になり、室温の Rb では Gauss 型の幅が自然幅の84倍になる

速度の組ごとの離調

気体の原子は動いている。+z+z 向きに進む波数 k=ωL/ck=\omega_{\mathrm L}/c の光を、速度の zz 成分が vzv_z の原子が見ると、原子の静止系での光の角周波数は Doppler 効果で ωL−kvz\omega_{\mathrm L}-kv_z にずれる(vz≪cv_z\ll c の1次)。原子の側から見た離調は Δ−kvz\Delta-kv_z である。そこで u≔kvzu\coloneqq kv_z と置き、速度の組 uu ごとに静止した原子の断面積をずらして使う。温度 TT の気体の vzv_z は Maxwell 分布に従うので、uu の分布は

f(u)=12π ωDexp⁡(−u22ωD2),ωD=kkBTm=ω0kBTmc2(24.8)f(u)=\frac{1}{\sqrt{2\pi}\,\omega_{\mathrm D}}\exp\Bigl(-\frac{u^2}{2\omega_{\mathrm D}^2}\Bigr),\qquad \omega_{\mathrm D}=k\sqrt{\frac{ k_{\mathrm B} T}{m}}=\omega_0\sqrt{\frac{ k_{\mathrm B} T}{mc^2}}\tag{24.8}

の Gauss 分布になる(mm は原子の質量)。気体全体の断面積は、速度の組ごとの断面積の平均

σˉ(Δ)=∫−∞∞f(u) σ(Δ−u) du(24.9)\bar\sigma(\Delta)=\int_{-\infty}^{\infty}f(u)\,\sigma(\Delta-u)\,\mathrm{d} u\tag{24.9}

で、Lorentz 型 σ\sigma と Gauss 型 ff の畳み込みになる。この形を Voigt 型と呼ぶ。

2つの極限

ωD≫γ⊥\omega_{\mathrm D}\gg\gamma_\perp のとき、σ(Δ−u)\sigma(\Delta-u) は u=Δu=\Delta の近くの幅 γ⊥\gamma_\perp の範囲にしか値を持たないので、f(u)f(u) をその点の値で置き換えて

σˉ(Δ)≈f(Δ)∫σ dΔ=3λ2Γ4 f(Δ)(24.10)\bar\sigma(\Delta)\approx f(\Delta)\int\sigma\,\mathrm{d}\Delta=\frac{3\lambda^2\Gamma}{4}\,f(\Delta)\tag{24.10}

となる。線は Gauss 型で、半値全幅は

ΓD=22ln⁡2 ωD=ω08ln⁡2 kBTmc2(24.11)\Gamma_{\mathrm D}=2\sqrt{2\ln2}\,\omega_{\mathrm D}=\omega_0\sqrt{\frac{8\ln2\, k_{\mathrm B} T}{mc^2}}\tag{24.11}

である。これを Doppler 幅と呼ぶ。第20章(第20章)の δωD\delta\omega_{\mathrm D}、第22章(第22章)の 2πΔνD2\pi\Delta\nu_{\mathrm D} と同じ量である。式 (24.10) の係数は式 (24.7) の線の面積そのもので、Doppler 効果も衝突と同じく線の面積を変えない。ピークの断面積は σ0⋅(πΓ/2)f(0)=σ0π/8 Γ/ωD\sigma_0\cdot(\pi\Gamma/2)f(0)=\sigma_0\sqrt{\pi/8}\,\Gamma/\omega_{\mathrm D}(自然幅だけのとき)に下がる。

Gauss 型の中心では Gauss 型が、遠い裾では Lorentz 型が残る。Gauss 型は exp⁡(−Δ2/2ωD2)\exp(-\Delta^2/2\omega_{\mathrm D}^2) で速く減るが、Lorentz 型は Δ−2\Delta^{-2} でしか減らないので、十分遠い離調では Lorentz 型の裾が必ず上に出る(図 24.2)。この裾は、静止系で遠く離調した光を、ほとんどの原子が自分の Lorentz 型の裾で弱く吸収したものである。

Doppler 幅と自然幅の違いは、広がりの意味にある。Doppler 幅の中のある周波数の光を吸収するのは、その周波数に共鳴する速度の組の原子だけで、ほかの原子はその光をほとんど感じない。原子1個の線は幅 Γ\Gamma のままで、線の中心が原子ごとにずれている。この区別は 24.3節で使う。

図

図 24.2 ωD=5Γ\omega_{\mathrm D}=5\Gamma の気体の吸収の断面積(自然幅だけ、縦軸は対数)。黒の点線は式 (24.9) の Voigt 型を数値積分した厳密な値、青の実線は式 (24.10) の Gauss 型の近似、赤の点線は静止した原子の Lorentz 型。中心の近くでは Gauss 型の近似がよく合い、Δ≳15Γ\Delta\gtrsim15\Gamma では Voigt 型は Lorentz 型の裾に乗る

例題 24.2 室温の Rb の Doppler 幅 ★★★

オリジナル例題 24.1 の 87Rb{}^{87}\mathrm{Rb}(質量 m=86.909 um=86.909\,\mathrm u)の気体が T=300 KT=300\,\mathrm K にあるとする。

  1. (1) Doppler 幅 ΓD/2π\Gamma_{\mathrm D}/2\pi を求め、自然幅と比べよ。
  2. (2) 自然幅だけの線について、気体のピークの断面積を σ0\sigma_0 を単位として、式 (24.10) の近似で求めよ。
  3. (3) Doppler 幅が自然幅 Γ\Gamma と等しくなる温度を求めよ。
解答

(1) ωD/2π=(c/λ)kBT/mc2=217 MHz\omega_{\mathrm D}/2\pi=(c/\lambda)\sqrt{ k_{\mathrm B} T/mc^2}=217\,\mathrm{MHz} で、ΓD/2π=22ln⁡2×217=511 MHz\Gamma_{\mathrm D}/2\pi=2\sqrt{2\ln2}\times217=511\,\mathrm{MHz} である。自然幅 6.07 MHz6.07\,\mathrm{MHz} の84.3倍になる。室温の気体で吸収線を測ると、見える幅は原子の寿命ではなく原子の速さで決まっている。

(2) Γ/ωD=6.07/217=0.0279\Gamma/\omega_{\mathrm D}=6.07/217=0.0279 なので、ピークは σ0π/8×0.0279=0.0175 σ0\sigma_0\sqrt{\pi/8}\times0.0279=0.0175\,\sigma_0 である(式 (24.9) を数値で積分した Voigt 型の値は 0.0173 σ00.0173\,\sigma_0 で、差は Γ/ωD\Gamma/\omega_{\mathrm D} の程度)。Doppler 幅に広がったぶん、ピークはおよそ Γ/ΓD\Gamma/\Gamma_{\mathrm D} の割合に下がる。

(3) ΓD∝T\Gamma_{\mathrm D}\propto\sqrt T なので、T=300 K×(1/84.3)2=42.2 mKT=300\,\mathrm K\times(1/84.3)^2=42.2\,\mathrm{mK} である。気体のままで線の幅を自然幅まで細くするには、原子をこの程度まで冷やす必要がある。光で原子を冷やす方法は第26章(第26章)で扱う。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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