tecktom.com

出てくるもの(3):運動量の積分は分かれる

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第3章 カノニカル分布と Z=∫e^(-β H) dΓ
目次
  1. 運動量と位置の分離
  2. 磁場があっても運動量の積分は分かれる(Bohr–van Leeuwen の定理)
  3. 位置の分布と独立な部分
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第3部 第3章 §3.3.5 ★★ 運動エネルギーが運動量の2次式なら、運動量の分布は相互作用によらず Maxwell 分布。位置の分布は e−βV\mathrm{e}^{-\beta V}

運動量と位置の分離

Hamiltonian (3.3.1) は、運動量だけの項と位置だけの項の和になっている。指数関数は和を積に変えるので、分配関数は運動量の積分と位置の積分の積に分かれる。

Z=1h3NN!∏j=1N∫e−β∣pj∣2/(2m) d3pj ×∫e−βV(r1,…,rN) d3Nr=QNN! λT3N,QN=∫e−βV(r1,…,rN) d3Nr.\begin{align*}Z&=\frac{1}{h^{3N}N!}\prod_{j=1}^N\int\mathrm{e}^{-\beta\lvert \bm{p}_j\rvert ^2/(2m)}\,\mathrm{d}^3p_j\ \times\int\mathrm{e}^{-\beta V(\bm{r}_1,\dots,\bm{r}_N)}\,\mathrm{d}^{3N}r =\frac{Q_N}{N!\,\lambda_T^{3N}},\tag{3.3.18}\\Q_N&=\int\mathrm{e}^{-\beta V(\bm{r}_1,\dots,\bm{r}_N)}\,\mathrm{d}^{3N}r .\end{align*}

QNQ_N を配置積分と呼ぶ。相互作用の難しさはすべて QNQ_N に入り、運動量の部分はどんな V(⋯ )V(\cdots) でも同じ Gauss 積分になる。確率密度も同じく積に分かれるので、粒子 jj の運動量の分布は他の粒子や位置と独立で

ρ(pj) d3pj=(β2πm)3/2e−β∣pj∣2/(2m) d3pj(3.3.19)\rho(\bm{p}_j)\,\mathrm{d}^3p_j=\Bigl(\frac{\beta}{2\pi m}\Bigr)^{3/2}\mathrm{e}^{-\beta\lvert \bm{p}_j\rvert ^2/(2m)}\,\mathrm{d}^3p_j\tag{3.3.19}

となる。pj=mvj\bm{p}_j=m\bm{v}_j として速さ v=∣vj∣v=\lvert \bm{v}_j\rvert の分布に直すと、球殻の体積 4πv2 dv4\pi v^2\,\mathrm{d} v が掛かって

f(v) dv=4π(m2πkBT)3/2v2 e−mv2/(2kBT) dv(3.3.20)f(v)\,\mathrm{d} v=4\pi\Bigl(\frac{m}{2\pi k_{\mathrm B} T}\Bigr)^{3/2}v^2\,\mathrm{e}^{-mv^2/(2 k_{\mathrm B} T)}\,\mathrm{d} v\tag{3.3.20}

になる。これが Maxwell の速度分布で、気体だけでなく、相互作用の強い液体や固体の中の古典粒子にもそのまま当てはまる。液体の中でも粒子の速さの分布が気体と同じになることは、分配関数が積に分かれることから直接読み取ることができる。

図

図 3.3.3 窒素分子(m=28.0134 um=28.0134\,\mathrm u)の速さの Maxwell 分布 (3.3.20)(厳密な式なので点線。青 300 K300\,\mathrm K、赤 600 K600\,\mathrm K)。温度を上げると山は低く広くなり、山の位置 2kBT/m\sqrt{2 k_{\mathrm B} T/m} は 2\sqrt2 倍になる

磁場があっても運動量の積分は分かれる(Bohr–van Leeuwen の定理)

磁場の中では Hamiltonian が正準運動量 pj\bm{p}_j と位置の和に分かれず、pj−qA(rj)\bm{p}_j-q\bm{A}(\bm{r}_j) の形で両方が混ざる(第2部第2章)。それでも、位置を止めてから運動量を積分すれば、同じ分離ができる。

Z=1h3NN!∫d3Nr e−βV∏j=1N∫d3pj exp⁡[−β∣pj−qA(rj)∣22m]=1h3NN!∫d3Nr e−βV∏j=1N∫d3pj′ e−β∣pj′∣2/(2m)(各 rj ごとに pj′=pj−qA(rj))\begin{aligned}Z&=\frac{1}{h^{3N}N!}\int\mathrm{d}^{3N}r\,\mathrm{e}^{-\beta V}\prod_{j=1}^N\int\mathrm{d}^3p_j\,\exp\Bigl[-\frac{\beta\lvert \bm{p}_j-q\bm{A}(\bm{r}_j)\rvert ^2}{2m}\Bigr]\\ &=\frac{1}{h^{3N}N!}\int\mathrm{d}^{3N}r\,\mathrm{e}^{-\beta V}\prod_{j=1}^N\int\mathrm{d}^3p'_j\,\mathrm{e}^{-\beta\lvert \bm{p}'_j\rvert ^2/(2m)} &&\text{(各 $\bm{r}_j$ ごとに $\bm{p}'_j=\bm{p}_j-q\bm{A}(\bm{r}_j)$)}\end{aligned}

2行目への変数変換は、位置を止めた運動量の空間での平行移動なので、d3pj′=d3pj\mathrm{d}^3p'_j=\mathrm{d}^3p_j で積分範囲も全空間のまま変わらない。2行目には A\bm{A} が残らないので、分配関数も自由エネルギー F=−kBTln⁡ZF=- k_{\mathrm B} T\ln Z も磁場によらない。磁化 −∂F/∂B-\partial F/\partial B は 00 である。

命題 3.3.3(Bohr–van Leeuwen の定理 ★★)

速度によらない VV と時刻によらない外部の磁場の中にある荷電粒子の集まりを古典統計力学で扱うと、熱平衡の分配関数は磁場によらず、磁化は 00 である。

この議論が使ったのは、正準運動量の測度 d3pj\mathrm{d}^3p_j が一様であることだけである。Liouville の定理で保たれるのが正準変数の体積なので、磁場があってもこの測度は正しい。章末の総合問題では、調和ポテンシャルの中の1粒子でこの計算を具体的に行い、量子の補正まで求める。

量子力学では同じ変数変換ができない。運動量の演算子は位置の演算子と交換しないので、位置を止めて運動量だけをずらす操作に意味が無いからである。位置の関数による位相のユニタリ変換 eiqΛ/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda/\hbar} はベクトルポテンシャルを A−∇Λ\bm{A}-\nabla\Lambda に変える。これで消せるのは回転の無いベクトルポテンシャルだけである。

一様な磁場では速度の成分が [v^x, v^y]=iℏqB/m2\left[\hat v_x,\,\hat v_y\right]=\mathrm{i}\hbar qB/m^2 を満たして交換せず、運動エネルギーの固有値は連続でなく Landau 準位に離散化する(第4部第6章)。その結果、自由電子の気体には Landau 反磁性が残る。

位置の分布と独立な部分

位置の分布は e−βV(⋯ )/QN\mathrm{e}^{-\beta V(\cdots)}/Q_N で、ポテンシャルの低い所ほど粒子が集まる。粒子どうしの相互作用が無く、外場だけがある場合は、V(⋯ )=∑ju(rj)V(\cdots)=\sum_ju(\bm{r}_j) と粒子ごとの和になり、各粒子の位置の密度は e−βu(r)\mathrm{e}^{-\beta u(\bm{r})} に比例する。一様な重力 u=mgzu=mgz の中では、数密度が

n(z)=n(0) e−mgz/(kBT)n(z)=n(0)\,\mathrm{e}^{-mgz/( k_{\mathrm B} T)}

と高さとともに指数関数的に減る(気圧の高度分布)。減り方の長さ ℓ0=kBT/(mg)\ell_0= k_{\mathrm B} T/(mg) をスケールハイトと呼ぶ。

一般に、HH が互いに独立な変数の組の項の和 H=H1(Γ1)+H2(Γ2)H=H_1(\Gamma_1)+H_2(\Gamma_2) に分かれていれば、Z=Z1Z2Z=Z_1Z_2、ln⁡Z=ln⁡Z1+ln⁡Z2\ln Z=\ln Z_1+\ln Z_2 で、FF・UU・SS はすべて各部分の和になる。3.3.2節の掛け算の性質を、分配関数の側から見たものである。

HH が正準運動量 p\bm{p} の2次式で、測度 (3.3.2) が正準変数の体積なので、運動量の積分は Gauss 積分になった。磁場の中の荷電粒子では HH は p\bm{p} でなく p−eA(r)\bm{p}-e\bm{A}(\bm{r}) の2次式になり(第2部第2章)、運動量と位置が混ざる。それでも、r\bm{r} を止めて p\bm{p} の積分の変数をずらせば同じ Gauss 積分になる。この結果、古典統計力学では磁場が熱平衡の性質に現れないことになる(章末の総合問題)。

例題 3.3.5 窒素の速さと大気のスケールハイト ★★

オリジナル窒素分子(m=28.0134 um=28.0134\,\mathrm u)の T=300 KT=300\,\mathrm K の気体を考える。

  1. Maxwell 分布 (3.3.20) から、最も確率の高い速さ vpv_{\mathrm p}、平均の速さ ⟨v⟩\langle v \rangle、2乗平均の平方根 ⟨v2⟩\sqrt{\langle v^2 \rangle } を求めよ。
  2. 一様な重力(g=9.81 m s−2g=9.81\,\mathrm{m\,s^{-2}})の中の等温大気のスケールハイト ℓ0=kBT/(mg)\ell_0= k_{\mathrm B} T/(mg) を求めよ。
解答

(1) a=m/(2kBT)a=m/(2 k_{\mathrm B} T) とおくと f(v)∝v2e−av2f(v)\propto v^2\mathrm{e}^{-av^2}。ddv(v2e−av2)=(2v−2av3)e−av2=0\frac{\mathrm{d} }{\mathrm{d} v}(v^2\mathrm{e}^{-av^2})=(2v-2av^3)\mathrm{e}^{-av^2}=0 から vp=2kBT/mv_{\mathrm p}=\sqrt{2 k_{\mathrm B} T/m}。平均は ∫0∞v3e−av2dv=1/(2a2)\int_0^\infty v^3\mathrm{e}^{-av^2}\mathrm{d} v=1/(2a^2) と規格化 4π(a/π)3/24\pi(a/\pi)^{3/2} から ⟨v⟩=8kBT/(πm)\langle v \rangle =\sqrt{8 k_{\mathrm B} T/(\pi m)}。⟨v2⟩\langle v^2 \rangle は式 (3.3.19) の各成分の分散 kBT/mk_{\mathrm B} T/m を3倍して 3kBT/m3 k_{\mathrm B} T/m。数値を入れると

vp=422 m s−1,⟨v⟩=476 m s−1,⟨v2⟩=517 m s−1.v_{\mathrm p}=422\,\mathrm{m\,s^{-1}},\qquad\langle v \rangle =476\,\mathrm{m\,s^{-1}},\qquad\sqrt{\langle v^2 \rangle }=517\,\mathrm{m\,s^{-1}} .

分布の右側の裾が長いので、3つの値はこの順に大きい。

(2) ℓ0=1.381×10−23×30028.0134×1.661×10−27×9.81 m=9.08×103 m\ell_0=\dfrac{1.381\times10^{-23}\times300}{28.0134\times1.661\times10^{-27}\times9.81}\,\mathrm m=9.08\times10^3\,\mathrm m、すなわち約 9.1 km9.1\,\mathrm{km}。実際の大気は高さとともに温度が下がるので等温ではないが、圧力が高さ約 9 km9\,\mathrm{km} で 1/e1/\mathrm{e} 程度に減るという大きさは、この式で見積もることができる。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ