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取り出すモードと物質のモデル:向かい合う2本の光と動く2準位原子

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第26章 レーザー冷却
目次
  1. 1本の光の散乱力
  2. 動く原子が見る周波数
  3. 2本の力を足す:光の糖蜜
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第26章 §26.1 ★★★ 動く原子には、向かってくる光が青い側へ、遠ざかる光が赤い側へずれて見える。赤く離調した2本の光の散乱力を足すと、遅い原子には速度に比例して逆向きの力が残る

第25章(第25章)では、止まっている2準位原子に光が及ぼす力を2つに分けた。光子を吸収しては自然放出する過程が運ぶ運動量の流れが散乱力で、光の強さの勾配の中で光シフトしたエネルギーが位置で変わることによる力が双極子力だった。この章では、原子が動いていることを入れる。動いている原子にとって光の周波数は Doppler 効果でずれるので、散乱力は原子の速度の関数になる。この速度依存性を使うと、光で原子の運動エネルギーを奪い、気体を室温からおよそ 100 μK100\,\mu\mathrm K まで冷やすことができる。

この章で取り出すモードは、同じ周波数 ωL\omega_{\mathrm L} を持ち、互いに逆向きに進む2本の平面波である。物質のモデルは、遷移角周波数 ω0\omega_0、励起状態の自然放出の速さ Γ\Gamma を持つ2準位原子で、その重心が速度 vv で動く。結合は第18章(第18章)の双極子相互作用で、その結果を第19章(第19章)の光 Bloch 方程式の定常解と第25章の散乱力の形で受け取る。26.1節で2本の光の散乱力を足し、遅い原子には速度に比例する摩擦力が働くことを示す。26.2節で、摩擦による冷却と、光子の吸収と放出のたびに受けるでたらめな反跳による加熱をつり合わせ、到達できる温度の下限(Doppler 限界)kBTD=ℏΓ/2k_{\mathrm B} T_{\mathrm D}=\hbar\Gamma/2 を出す。26.3節では、実際の原子の基底状態が縮退していることと光の偏光が場所で変わることを入れ、Doppler 限界より低い温度が出ること(偏光勾配冷却)と、それでも越えられない反跳限界を述べる。26.4節では、磁場の勾配を加えて摩擦に復元力を足し、磁気光学トラップを作る。26.5節で置いた近似と測る量(飛行時間法の温度)を述べ、26.6節で学部で習う放射圧・Langevin 方程式・減衰振動と並べる。

この章では、離調を記法の正本どおり Δ=ωL−ω0\Delta=\omega_{\mathrm L}-\omega_0(レーザーから原子を引いた差)と書き、Δ<0\Delta<0 を赤い離調と呼ぶ。光の波数を k=ωL/ck=\omega_{\mathrm L}/c、原子の質量を mm と書く。数値の例には、レーザー冷却で最もよく使われる 87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} の D2 線を使う。その値は波長 λ=780.24 nm\lambda=780.24\,\mathrm{nm}、自然幅 Γ/2π=6.07 MHz\Gamma/2\pi=6.07\,\mathrm{MHz}、質量 m=1.443×10−25 kgm=1.443\times10^{-25}\,\mathrm{kg} である(D. A. Steck, Rubidium 87 D Line Data による。ナトリウムの値は同じ著者の Sodium D Line Data による)。

1本の光の散乱力

第25章の結果を、この章で使う形に書いておく。波数ベクトル k\bm{k} の平面波の中に止まっている2準位原子は、単位時間に

Γsc(Δ)=Γ2 s1+s+(2Δ/Γ)2(26.1)\Gamma_{\mathrm{sc}}(\Delta)=\frac{\Gamma}{2}\,\frac{s}{1+s+(2\Delta/\Gamma)^2}\tag{26.1}

個の光子を散乱する。Γsc\Gamma_{\mathrm{sc}} は第25章(式 (25.21))と同じ散乱の速さである。ここで s=I/Isat=2Ω2/Γ2s=I/I_{\mathrm{sat}}=2\Omega^2/\Gamma^2 は飽和パラメータで、Ω\Omega は Rabi 周波数、IsatI_{\mathrm{sat}} は飽和強度である(第19章)。この章の ss は共鳴の値で、第19・25章の s0s_0 にあたる。吸収した光子はどれも運動量 ℏk\hbar\bm{k} を原子に渡す。自然放出の光子は向きがでたらめで、多くの回数を平均すると運動量を持ち去らない。したがって平均の力は

F=ℏk Γsc(Δ)(26.2)\bm{F}=\hbar\bm{k}\,\Gamma_{\mathrm{sc}}(\Delta)\tag{26.2}

であり、これが散乱力である。強い光(s→∞s\to\infty)では Γsc→Γ/2\Gamma_{\mathrm{sc}}\to\Gamma/2 で飽和し、力の大きさは ℏkΓ/2\hbar k\Gamma/2 を超えない。励起状態にいる確率が最大で 1/21/2 で、そこから速さ Γ\Gamma で光子が出ていくからである。

動く原子が見る周波数

原子が xx 軸に沿って速度 vv で動いているとする。+x+x 向きに進む光の位相は kx−ωLtkx-\omega_{\mathrm L}t で、原子の位置 x=x0+vtx=x_0+vt ではkx0−(ωL−kv)tkx_0-(\omega_{\mathrm L}-kv)t になる。原子にとって光の角周波数は ωL−kv\omega_{\mathrm L}-kv であり、離調は Δ−kv\Delta-kv になる。同じように −x-x 向きに進む光の離調は Δ+kv\Delta+kv になる。v>0v>0 の原子にとって、正面から来る −x-x 向きの光は周波数が上がって(青い側へずれて)見え、背中から追う +x+x 向きの光は下がって見える。v≪cv\ll c なので、Doppler のずれは1次の kvkv だけを残せばよい。

2本の力を足す:光の糖蜜

同じ強さ(飽和パラメータ ss)の2本の光を +x+x 向きと −x-x 向きに当てる。光が弱いとき(s≪1s\ll1)は、2本の光による散乱を別々に数えて足してよい(この扱いの前提は 26.5節で述べる)。原子に働く力は

F(v)=ℏk[Γsc(Δ−kv)−Γsc(Δ+kv)](26.3)F(v)=\hbar k\bigl[\Gamma_{\mathrm{sc}}(\Delta-kv)-\Gamma_{\mathrm{sc}}(\Delta+kv)\bigr]\tag{26.3}

である。v=0v=0 では2本の力が打ち消し合う。kvkv が Γ\Gamma と ∣Δ∣\lvert \Delta\rvert より小さい遅い原子では、kvkv の1次まで展開してF≈−2ℏk2v Γsc′(Δ)F\approx-2\hbar k^2v\,\Gamma_{\mathrm{sc}}'(\Delta) となる。Γsc′(Δ)=−Γ2s 8Δ/Γ2(1+s+(2Δ/Γ)2)2\Gamma_{\mathrm{sc}}'(\Delta)=-\frac{\Gamma}{2}s\,\frac{8\Delta/\Gamma^2}{(1+s+(2\Delta/\Gamma)^2)^2} を入れると

F≈−ηv,η=8ℏk2 (−Δ/Γ) s(1+s+(2Δ/Γ)2)2(26.4)F\approx-\eta v,\qquad \eta=8\hbar k^2\,\frac{(-\Delta/\Gamma)\,s}{\bigl(1+s+(2\Delta/\Gamma)^2\bigr)^2}\tag{26.4}

を得る。赤い離調 Δ<0\Delta<0 では η>0\eta>0 で、力は速度と逆を向く。これは速度に比例する摩擦力で、粘い液体の中の運動と同じ形なので、この配置を光の糖蜜(optical molasses)と呼ぶ。

摩擦が出る理由は、Doppler のずれの向きにある。赤く離調した光は、原子が止まっていれば共鳴より低い周波数にある。原子が光に向かって動くと、その光は青い側へずれて共鳴に近づき、よく散乱される。原子が光から遠ざかると、その光はさらに赤い側へずれて散乱が減る。したがって原子はいつも、自分が向かっていく側の光から多く押し返される。離調を青い側(Δ>0\Delta>0)にとると向きが逆になり、原子は加速される。

図

図 26.1 向かい合う2本の光(Δ=−Γ\Delta=-\Gamma, s=0.5s=0.5)が速度 vv の原子に及ぼす力。灰色の破線がそれぞれの光の散乱力、青の点線がその和(式 (26.3))、赤の実線が v=0v=0 のまわりの1次の近似 −ηv-\eta v(式 (26.4))。力が速度と逆向きになる範囲は k∣v∣≲∣Δ∣k\lvert v\rvert \lesssim\lvert \Delta\rvert の程度に限られる

図 26.1 のとおり、摩擦として振る舞うのは k∣v∣k\lvert v\rvert が ∣Δ∣\lvert \Delta\rvert の程度までで、それより速い原子はどちらの光とも共鳴から外れ、ほとんど力を受けない。87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} で Δ=−Γ\Delta=-\Gamma なら、この速度の目安は Γ/k=4.7 m s−1\Gamma/k=4.7\,\mathrm{m\,s^{-1}} である。室温の気体の原子の速さは数百 m s−1\mathrm{m\,s^{-1}} なので、光の糖蜜が直接つかまえられるのは、速度分布のごく遅い裾の原子だけである。

光子1個の吸収で原子の速度が変わる量を反跳速度と呼び、vrec=ℏk/mv_{\mathrm{rec}}=\hbar k/m と書く(第25章と同じ)。87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} では vrec=5.88 mm s−1v_{\mathrm{rec}}=5.88\,\mathrm{mm\,s^{-1}} である。数百 m s−1\mathrm{m\,s^{-1}} の原子を止めるには数万個の光子を散乱させる必要があり、1回の散乱にかかる時間はおよそ 2/Γ2/\Gamma なので、止めるのに数ミリ秒かかる。

レーザーの散乱力で原子の気体を冷やすことは、Hänsch と Schawlow(1975、Opt. Commun. 13, 68)が中性原子について、Wineland と Dehmelt(1975、Bull. Am. Phys. Soc. 20, 637)がイオンについて独立に提案した。3次元の光の糖蜜は Chu たち(1985、Phys. Rev. Lett. 55, 48)がナトリウム原子で実現した。

例題 26.1 原子線を1本の光で止める ★★

オリジナル速さ v0=300 m s−1v_0=300\,\mathrm{m\,s^{-1}} の 87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} の原子線に、正面から共鳴の光を当てて止めたい。光は十分強く(s≫1s\gg1)、散乱は飽和しているとする。

  1. (1) 最大の減速度 amax⁡a_{\max} を求め、重力加速度 g=9.81 m s−2g=9.81\,\mathrm{m\,s^{-2}} と比べよ。
  2. (2) 原子が止まるまでに走る距離 LL、かかる時間、散乱する光子の数を求めよ。
  3. (3) 減速の途中で原子が見る光の周波数はどれだけ変わるか。Γ/2π\Gamma/2\pi と比べ、周波数を固定した光では原子を止められないことを示せ。
解答

(1) 飽和した散乱の速さは Γ/2\Gamma/2 なので、力は ℏkΓ/2\hbar k\Gamma/2、減速度は

amax⁡=ℏkΓ2m=vrecΓ2=(5.88×10−3 m s−1)(3.81×107 s−1)2=1.12×105 m s−2a_{\max}=\frac{\hbar k\Gamma}{2m}=\frac{v_{\mathrm{rec}}\Gamma}{2}=\frac{(5.88\times10^{-3}\,\mathrm{m\,s^{-1}})(3.81\times10^{7}\,\mathrm{s^{-1}})}{2}=1.12\times10^{5}\,\mathrm{m\,s^{-2}}

である。これは重力加速度の 1.14×1041.14\times10^{4} 倍にあたる。光子1個の運動量は小さいが、1秒間に 10710^7 個の割合で散乱が起こるので、原子の質量に比べて大きな力になる。

(2) 一定の減速度で止まるまでの距離は

L=v022amax⁡=(300)22×1.12×105 m=0.401 m,L=\frac{v_0^2}{2a_{\max}}=\frac{(300)^2}{2\times1.12\times10^{5}}\,\mathrm m=0.401\,\mathrm m,

時間は v0/amax⁡=2.67 msv_0/a_{\max}=2.67\,\mathrm{ms} である。光子の数は運動量の比で決まり、mv0/(ℏk)=v0/vrec=5.10×104mv_0/(\hbar k)=v_0/v_{\mathrm{rec}}=5.10\times10^{4} 個である。

(3) 原子が見る離調は Δ+kv\Delta+kv で、vv が v0v_0 から 00 まで変わると kv/2π=v/λkv/2\pi=v/\lambda が 384 MHz384\,\mathrm{MHz} から 00 まで変わる。これは自然幅 Γ/2π=6.07 MHz\Gamma/2\pi=6.07\,\mathrm{MHz} の約 6363 倍である。最初の速度で共鳴するように光の周波数を合わせると、原子が Γ/k=4.7 m s−1\Gamma/k=4.7\,\mathrm{m\,s^{-1}} の程度減速したところで共鳴から外れ、それ以上は減速しない。原子を止め切るには、減速につれて共鳴の条件を保つ工夫が要る。場所で変わる磁場で原子の遷移周波数を Zeeman 効果でずらしていく装置(Zeeman 減速器、Phillips と Metcalf 1982、Phys. Rev. Lett. 48, 596)がその代表で、総合問題で設計する。

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