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出てくるもの(3):磁気光学トラップ

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第26章 レーザー冷却
目次
  1. 光の糖蜜は原子を閉じ込めない
  2. 1次元の模型
  3. 過減衰の振動子
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第26章 §26.4 ★★★ 磁場の勾配で Zeeman のずれを位置に比例させ、円偏光の向きを選ぶと、Doppler のずれと同じ形で位置に比例する復元力が加わる。原子は過減衰の調和振動子として中心に集まる

光の糖蜜は原子を閉じ込めない

式 (26.4) の力は速度だけに依存し、位置によらない。冷えた原子は止まるのでなく、でたらめな蹴りを受けて糖蜜の中を拡散し、いずれ光の外へ出ていく。原子を1か所に集めるには、位置に比例する復元力が要る。散乱力が光の強さに比例し、原子の内部状態が光の強さによらない限り、散乱力だけで安定な平衡点を作れないことが知られている(光の Earnshaw の定理。Ashkin と Gordon 1983、Opt. Lett. 8, 511)。この制約を外すために、原子の遷移周波数を位置で変える。

1次元の模型

基底状態が Jg=0J_g=0、励起状態が Je=1J_e=1(副準位 me=−1,0,+1m_e=-1,0,+1)の原子を考える。xx 軸に沿って B=bxB=bx の磁場をかけ(bb は勾配で、x=0x=0 で磁場が0)、xx 軸を量子化軸にとる。励起状態の副準位は Zeeman 効果で meμeffbxm_e\mu_{\mathrm{eff}}bx だけずれる(μeff=geμB\mu_{\mathrm{eff}}=g_e\mu_{\mathrm B} は励起状態の磁気モーメントで、geg_e は Landé の gg 因子)。+x+x 向きに進む光は Δm=+1\Delta m=+1 の遷移を、−x-x 向きに進む光は Δm=−1\Delta m=-1 の遷移を起こすように円偏光を選ぶ(どちらも +x+x 軸を量子化軸にとった σ+\sigma_+ と σ−\sigma_-)。

x>0x>0 では me=−1m_e=-1 の準位が下がり、∣g⟩→∣me=−1⟩| g \rangle \to| m_e=-1 \rangle の遷移周波数が ω0−μeffbx/ℏ\omega_0-\mu_{\mathrm{eff}}bx/\hbar に下がる。赤く離調した光にとってはこれが共鳴に近づくことで、−x-x 向きの光(Δm=−1\Delta m=-1)の離調は Δ+μeffbx/ℏ\Delta+\mu_{\mathrm{eff}}bx/\hbar になる。+x+x 向きの光(Δm=+1\Delta m=+1)は me=+1m_e=+1 との遷移を起こし、その離調は Δ−μeffbx/ℏ\Delta-\mu_{\mathrm{eff}}bx/\hbar になる。Doppler のずれも合わせると、力は

F=ℏk[Γsc(Δ−kv−μeffbxℏ)−Γsc(Δ+kv+μeffbxℏ)](26.14)F=\hbar k\Bigl[\Gamma_{\mathrm{sc}}\Bigl(\Delta-kv-\frac{\mu_{\mathrm{eff}}bx}{\hbar}\Bigr)-\Gamma_{\mathrm{sc}}\Bigl(\Delta+kv+\frac{\mu_{\mathrm{eff}}bx}{\hbar}\Bigr)\Bigr]\tag{26.14}

である。式 (26.3) の kvkv が kv+μeffbx/ℏkv+\mu_{\mathrm{eff}}bx/\hbar に置き換わっただけなので、同じ展開から

F≈−ηv−κx,κ=μeffbℏk η(26.15)F\approx-\eta v-\kappa x,\qquad \kappa=\frac{\mu_{\mathrm{eff}}b}{\hbar k}\,\eta\tag{26.15}

を得る。x>0x>0 にいる原子は −x-x 向きの光をよく散乱し、中心へ押し戻される。Zeeman のずれは位置に比例して離調を変え、Doppler のずれは速度に比例して離調を変える。2つが同じ形で式に入るので、力も同じ形で位置と速度の1次になる。

図

図 26.4 1次元の磁気光学トラップの準位(模式図)。勾配 bb の磁場で励起状態の副準位が位置に比例してずれる。赤く離調した光(破線)は、x>0x>0 では me=−1m_e=-1 と、x<0x<0 では me=+1m_e=+1 と共鳴に近い。−x-x 向きの光を σ−\sigma_-、+x+x 向きの光を σ+\sigma_+ に選ぶと、どちらの側でも原子は中心へ向かう光を多く散乱する

過減衰の振動子

式 (26.15) の運動方程式 mx¨+ηx˙+κx=0m\ddot x+\eta\dot x+\kappa x=0 は減衰振動子である。固有の角周波数は ωMOT=κ/m\omega_{\mathrm{MOT}}=\sqrt{\kappa/m}、減衰の速さは η/m\eta/m で、η/m>2ωMOT\eta/m>2\omega_{\mathrm{MOT}} なら振動せずに中心へ戻る(過減衰)。実際の磁気光学トラップはふつう過減衰で、その場合の遅いほうの緩和の速さはおよそ κ/η\kappa/\eta である。復元力が働く範囲は、Zeeman のずれが離調の程度になる距離 ℏ∣Δ∣/(μeffb)\hbar\lvert \Delta\rvert /(\mu_{\mathrm{eff}}b) までで、その外では原子はどちらの光とも共鳴から外れる。

3次元では、互いに逆向きの電流を流した1対のコイル(反 Helmholtz の配置)で、中心で0になり、そのまわりで位置に比例する四重極の磁場を作る。∇⋅B=0\nabla\cdot\bm{B}=0 から、コイルの軸の方向の勾配は横方向の勾配の2倍で符号が逆になる。そこへ3対の円偏光の光を当てたものが磁気光学トラップ(MOT)で、Raab たち(1987、Phys. Rev. Lett. 59, 2631)が実現した。今日の冷却原子の実験の多くは、この装置で原子を集めることから始まる。

例題 26.5 ルビジウムの磁気光学トラップのばね定数 ★★

オリジナル87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} の閉じた遷移では、励起状態の磁気モーメントの実効値を μeff=μB\mu_{\mathrm{eff}}=\mu_{\mathrm B} とおいてよい。各光の s=1s=1、Δ=−Γ\Delta=-\Gamma、磁場の勾配 b=0.1 T m−1b=0.1\,\mathrm{T\,m^{-1}}(10 G cm−110\,\mathrm{G\,cm^{-1}})とする。1次元の式 (26.4), (26.15) を使う。

  1. (1) η\eta, κ\kappa, ωMOT/2π\omega_{\mathrm{MOT}}/2\pi を求め、過減衰かどうか判定せよ。
  2. (2) 復元力が働く範囲 ℏ∣Δ∣/(μeffb)\hbar\lvert \Delta\rvert /(\mu_{\mathrm{eff}}b) を求めよ。
  3. (3) 式 (26.8) の温度で等分配 κ⟨x2⟩=kBT\kappa\langle x^2 \rangle = k_{\mathrm B} T が成り立つとして、原子の雲の広がり ⟨x2⟩\sqrt{\langle x^2 \rangle } を求めよ。
解答

(1) ℏk2=(1.0546×10−34)(8.053×106)2=6.84×10−21 kg s−1\hbar k^2=(1.0546\times10^{-34})(8.053\times10^{6})^2=6.84\times10^{-21}\,\mathrm{kg\,s^{-1}} である。s=1s=1, Δ/Γ=−1\Delta/\Gamma=-1 では分母が (1+1+4)2=36(1+1+4)^2=36 なので

η=836ℏk2=1.52×10−21 kg s−1,ηm=1.05×104 s−1.\eta=\frac{8}{36}\hbar k^2=1.52\times10^{-21}\,\mathrm{kg\,s^{-1}},\qquad \frac{\eta}{m}=1.05\times10^{4}\,\mathrm{s^{-1}}.

ばね定数は κ=ημBb/(ℏk)=(1.52×10−21)(9.274×10−24)(0.1)/(8.49×10−28)=1.66×10−18 N m−1\kappa=\eta\mu_{\mathrm B}b/(\hbar k)=(1.52\times10^{-21})(9.274\times10^{-24})(0.1)/(8.49\times10^{-28})=1.66\times10^{-18}\,\mathrm{N\,m^{-1}}、ωMOT=κ/m=3.39×103 s−1\omega_{\mathrm{MOT}}=\sqrt{\kappa/m}=3.39\times10^{3}\,\mathrm{s^{-1}} で、ωMOT/2π=540 Hz\omega_{\mathrm{MOT}}/2\pi=540\,\mathrm{Hz} である。η/m=1.05×104 s−1\eta/m=1.05\times10^{4}\,\mathrm{s^{-1}} は 2ωMOT=6.78×103 s−12\omega_{\mathrm{MOT}}=6.78\times10^{3}\,\mathrm{s^{-1}} より大きいので過減衰である。

(2) ℏΓ/(μBb)=(1.0546×10−34)(3.81×107)/((9.274×10−24)(0.1)) m=4.33 mm\hbar\Gamma/(\mu_{\mathrm B}b)=(1.0546\times10^{-34})(3.81\times10^{7})/((9.274\times10^{-24})(0.1))\,\mathrm m=4.33\,\mathrm{mm} である。光のビームの太さ(数 mm から 1 cm)と同じ程度で、ビームの中に入った遅い原子はほぼすべて中心へ引き寄せられる。

(3) 式 (26.8) で s=1s=1, 2∣Δ∣/Γ=22\lvert \Delta\rvert /\Gamma=2 とすると kBT=ℏΓ4⋅62=34ℏΓk_{\mathrm B} T=\frac{\hbar\Gamma}{4}\cdot\frac{6}{2}=\frac34\hbar\Gamma、すなわち T=1.5 TD=218 μKT=1.5\,T_{\mathrm D}=218\,\mu\mathrm K である。⟨x2⟩=kBT/κ=(1.3806×10−23)(2.18×10−4)/(1.66×10−18) m=43 μm\sqrt{\langle x^2 \rangle }=\sqrt{ k_{\mathrm B} T/\kappa}=\sqrt{(1.3806\times10^{-23})(2.18\times10^{-4})/(1.66\times10^{-18})}\,\mathrm m=43\,\mu\mathrm m になる。実際の磁気光学トラップの雲はこれより大きく、原子の数が多いほど大きくなる。ある原子が出した蛍光の光子を別の原子が吸収することで、原子どうしが押し合うからである(Walker・Sesko・Wieman 1990、Phys. Rev. Lett. 64, 408)。1原子の模型の答え 43 μm43\,\mu\mathrm m は、原子が少ないときの下限の目安である。

木下の勉強ステータス

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