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出てくるもの(1):Doppler 冷却と Doppler 限界

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第26章 レーザー冷却
目次
  1. 摩擦だけなら温度は0になる
  2. 反跳による加熱
  3. つり合いの温度
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第26章 §26.2 ★★★ 摩擦は運動エネルギーを奪い、光子の吸収と放出のでたらめな反跳は加熱する。両者のつり合いの温度は kBT=Dp/ηk_{\mathrm B} T=D_p/\eta で、最も低くなる Δ=−Γ/2\Delta=-\Gamma/2 で ℏΓ/2\hbar\Gamma/2 になる

摩擦だけなら温度は0になる

式 (26.4) の摩擦だけが働くなら、運動方程式 mv˙=−ηvm\dot v=-\eta v から速度は e−ηt/m\mathrm{e}^{-\eta t/m} で減り、原子はいずれ止まる。減衰の速さ η/m\eta/m は、Δ=−Γ\Delta=-\Gamma, s=1s=1 の 87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} で 1.05×104 s−11.05\times10^{4}\,\mathrm{s^{-1}} で、およそ 0.1 ms0.1\,\mathrm{ms} で速度が 1/e1/\mathrm{e} になる。しかし散乱は1個ずつの光子の吸収と放出でできているので、平均の力のまわりに必ず揺らぎがある。この揺らぎが温度の下限を決める。

反跳による加熱

v=0v=0 の原子を考える。散乱は2本の光から同じ速さ Γsc(Δ)\Gamma_{\mathrm{sc}}(\Delta) で起こり、合わせて 2Γsc2\Gamma_{\mathrm{sc}} の速さで起こる。1回の散乱は2回の運動量の蹴りを含む。1回目は吸収で、どちらの光から吸収したかによって +ℏk+\hbar k か −ℏk-\hbar k になる。2回目は自然放出で、この節では1次元の模型として、放出の向きも ±x\pm x のどちらかが等しい確率で選ばれるとする。蹴りどうしは互いに独立なので、運動量の分散は蹴りの回数に比例して増える(酔歩)。1回の蹴りの分散は (ℏk)2(\hbar k)^2 で、1回の散乱で2回蹴られるので、

d⟨p2⟩dt∣加熱=2Γsc×2(ℏk)2≡2Dp,Dp=2(ℏk)2Γsc(Δ)(26.5)\left.\frac{\mathrm{d} \langle p^2 \rangle }{\mathrm{d} t}\right|_{\text{加熱}}=2\Gamma_{\mathrm{sc}}\times2(\hbar k)^2\equiv2D_p,\qquad D_p=2(\hbar k)^2\Gamma_{\mathrm{sc}}(\Delta)\tag{26.5}

となる。DpD_p を運動量の拡散係数と呼ぶ。分散の増え方を 2Dp2D_p と書くのは、拡散方程式の慣例に合わせたためである。

つり合いの温度

摩擦は d⟨p2⟩dt=2⟨pF⟩=−2ηm⟨p2⟩\frac{\mathrm{d} \langle p^2 \rangle }{\mathrm{d} t}=2\langle pF \rangle =-\frac{2\eta}{m}\langle p^2 \rangle の割合で運動量の分散を減らす。加熱と合わせると

d⟨p2⟩dt=−2ηm⟨p2⟩+2Dp(26.6)\frac{\mathrm{d} \langle p^2 \rangle }{\mathrm{d} t}=-\frac{2\eta}{m}\langle p^2 \rangle +2D_p\tag{26.6}

で、定常状態では ⟨p2⟩=mDp/η\langle p^2 \rangle =mD_p/\eta になる。1次元の等分配 ⟨p2⟩/(2m)=kBT/2\langle p^2 \rangle /(2m)= k_{\mathrm B} T/2 で温度を定義すると、

kBT=Dpη(26.7)k_{\mathrm B} T=\frac{D_p}{\eta}\tag{26.7}

を得る。揺らぎ(DpD_p)と散逸(η\eta)の比が温度になるという形は、Brown 運動の Einstein の関係と同じで、26.6節でもう一度並べる。式 (26.1), (26.4), (26.5) を入れると、ℏk2\hbar k^2 と ss が分子と分母で打ち消し合って

kBT=ℏΓ4 1+s+(2Δ/Γ)22∣Δ∣/Γ(Δ<0)(26.8)k_{\mathrm B} T=\frac{\hbar\Gamma}{4}\,\frac{1+s+(2\Delta/\Gamma)^2}{2\lvert \Delta\rvert /\Gamma}\qquad(\Delta<0)\tag{26.8}

が残る。

命題 26.1(Doppler 限界 ★★★)

向かい合う2本の弱い光(s→0s\to0)による Doppler 冷却の温度 (26.8) は、Δ=−Γ/2\Delta=-\Gamma/2 で最小になり、その値は

kBTD=ℏΓ2(26.9)k_{\mathrm B} T_{\mathrm D}=\frac{\hbar\Gamma}{2}\tag{26.9}

である。これを Doppler 限界と呼ぶ。

証明

x=2∣Δ∣/Γ>0x=2\lvert \Delta\rvert /\Gamma>0 とおくと、s→0s\to0 で kBT=ℏΓ4 1+x2x=ℏΓ4(x+1x)k_{\mathrm B} T=\frac{\hbar\Gamma}{4}\,\frac{1+x^2}{x}=\frac{\hbar\Gamma}{4}\bigl(x+\frac1x\bigr) である。相加平均と相乗平均の不等式から x+1/x≥2x+1/x\ge2 で、等号は x=1x=1、すなわち ∣Δ∣=Γ/2\lvert \Delta\rvert =\Gamma/2 のときに限る。このとき kBT=ℏΓ/2k_{\mathrm B} T=\hbar\Gamma/2 となる。

Doppler 限界は、光の波長にも原子の質量にもよらず、励起状態の寿命だけで決まる。摩擦係数も拡散係数も ℏk2\hbar k^2 に比例し、その比を取ると kk が消えるからである。最小になる離調が −Γ/2-\Gamma/2 である理由は、次の兼ね合いにある。離調が小さすぎると、Doppler のずれで散乱の速さがほとんど変わらず(共鳴の頂上は平らで)摩擦が弱い。離調が大きすぎると、共鳴の裾にいて散乱そのものが減る。散乱の速さの傾きと散乱の速さそのものの比 Γsc′/Γsc\Gamma_{\mathrm{sc}}'/\Gamma_{\mathrm{sc}} が最大になるのが、Lorentz 形の半値の点 ∣Δ∣=Γ/2\lvert \Delta\rvert =\Gamma/2 である。光を強くする(ss を大きくする)と、飽和で摩擦が弱まる一方で加熱は減らないので、温度は上がる(図 26.2)。

図

図 26.2 Doppler 冷却の温度(式 (26.8))を Doppler 限界 TD=ℏΓ/(2kB)T_{\mathrm D}=\hbar\Gamma/(2 k_{\mathrm B}) で割ったもの。点線はどちらも式どおりの値で、青が弱い光の極限、赤が s=1s=1。弱い光では 2∣Δ∣/Γ=12\lvert \Delta\rvert /\Gamma=1 で T=TDT=T_{\mathrm D} になり、s=1s=1 では最小が 2 TD\sqrt2\,T_{\mathrm D} に上がって 2∣Δ∣/Γ=22\lvert \Delta\rvert /\Gamma=\sqrt2 へ移る

例題 26.2 ナトリウムとルビジウムの Doppler 限界 ★★

オリジナルナトリウムの D2 線は Γ/2π=9.79 MHz\Gamma/2\pi=9.79\,\mathrm{MHz}、87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} の D2 線は Γ/2π=6.07 MHz\Gamma/2\pi=6.07\,\mathrm{MHz} である。

  1. (1) それぞれの Doppler 限界の温度 TDT_{\mathrm D} を求めよ。
  2. (2) 87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} が TDT_{\mathrm D} にあるときの1方向の速度の標準偏差 kBTD/m\sqrt{ k_{\mathrm B} T_{\mathrm D}/m} を求め、反跳速度 vrecv_{\mathrm{rec}} の何倍か答えよ。
解答

(1) TD=ℏΓ/(2kB)T_{\mathrm D}=\hbar\Gamma/(2 k_{\mathrm B}) に入れる。ナトリウムでは

TD=(1.0546×10−34)(2π×9.79×106)2×1.3806×10−23 K=235 μK,T_{\mathrm D}=\frac{(1.0546\times10^{-34})(2\pi\times9.79\times10^{6})}{2\times1.3806\times10^{-23}}\,\mathrm K=235\,\mu\mathrm K,

87Rb{}^{87}\mathrm{Rb} では Γ\Gamma の比だけ小さく 146 μK146\,\mu\mathrm K になる。どちらも質量と波長によらないので、自然幅の比 9.79/6.079.79/6.07 がそのまま温度の比になる。

(2) kBTD/m=(1.3806×10−23)(1.456×10−4)/(1.443×10−25) m s−1=0.118 m s−1\sqrt{ k_{\mathrm B} T_{\mathrm D}/m}=\sqrt{(1.3806\times10^{-23})(1.456\times10^{-4})/(1.443\times10^{-25})}\,\mathrm{m\,s^{-1}}=0.118\,\mathrm{m\,s^{-1}} で、vrec=5.88 mm s−1v_{\mathrm{rec}}=5.88\,\mathrm{mm\,s^{-1}} の 20.120.1 倍である。Doppler 限界では、原子の運動量の揺らぎはまだ光子数十個分あり、光子1個の反跳よりはるかに大きい。この余裕が、次の節の偏光勾配冷却がさらに温度を下げられる余地になる。

例題 26.3 3次元の光の糖蜜でも限界は同じ ★★

オリジナル±x\pm x, ±y\pm y, ±z\pm z の6本の弱い光(どれも飽和パラメータ ss、離調 Δ\Delta)で原子を冷やす。光どうしの干渉は無視し、自然放出の向きは全立体角に一様に分布するとする。xx 方向の運動量の拡散係数 Dp(x)D_p^{(x)} を求め、xx 方向の温度が1次元の式 (26.8) と同じになることを示せ。

解答

xx 方向の摩擦は ±x\pm x の2本の光だけから来るので、摩擦係数は1次元と同じ η\eta である。

加熱には2つの寄与がある。吸収の蹴りが xx 方向に入るのは ±x\pm x の2本からの散乱だけで、その速さは 2Γsc2\Gamma_{\mathrm{sc}}、1回の分散は (ℏk)2(\hbar k)^2 なので、分散の増え方は 2Γsc(ℏk)22\Gamma_{\mathrm{sc}}(\hbar k)^2 である。放出の蹴りは6本すべての散乱で起こり、その速さは 6Γsc6\Gamma_{\mathrm{sc}} である。向きが一様なとき、放出の運動量の xx 成分の2乗の平均は (ℏk)2⟨cos⁡2ϑ⟩=(ℏk)2/3(\hbar k)^2\langle \cos^2\vartheta \rangle =(\hbar k)^2/3 なので、分散の増え方は 6Γsc×(ℏk)2/3=2Γsc(ℏk)26\Gamma_{\mathrm{sc}}\times(\hbar k)^2/3=2\Gamma_{\mathrm{sc}}(\hbar k)^2 である。合わせて

2Dp(x)=2Γsc(ℏk)2+2Γsc(ℏk)2=4Γsc(ℏk)22D_p^{(x)}=2\Gamma_{\mathrm{sc}}(\hbar k)^2+2\Gamma_{\mathrm{sc}}(\hbar k)^2=4\Gamma_{\mathrm{sc}}(\hbar k)^2

となり、1次元の式 (26.5) と一致する。η\eta も DpD_p も同じなので、温度 Dp/ηD_p/\eta も同じで、Doppler 限界は3次元でも ℏΓ/2\hbar\Gamma/2 である。1次元の模型で放出の向きを ±x\pm x に限ったのは粗い仮定に見えるが、6本の光では放出の向きを1方向あたり3倍の回数で割り振るので、ちょうど同じ値になる。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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