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出てくるもの1:Cramér–Rao の不等式

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第7章 Fisher 情報と Cramér–Rao
目次
  1. 推定量と不偏性
  2. 等号が成り立つとき
  3. 多パラメータの場合
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第7章 §1.7.3 ★★★ どんな不偏推定量の分散も 1/J1/J より小さくすることはできない。証明は Cauchy–Schwarz の不等式1本

推定量と不偏性

XX の値から θ\theta を当てる関数 θ^(x)\hat\theta(x) を推定量と呼ぶ(帽子は演算子でなく推定量の印である)。平均がちょうど真の値になる、つまりすべての θ\theta で ⟨θ^⟩θ=θ\langle \hat\theta \rangle _\theta=\theta となる推定量を不偏推定量と呼ぶ。一般には ⟨θ^⟩θ=θ+b(θ)\langle \hat\theta \rangle _\theta=\theta+b(\theta) と書き、b(θ)b(\theta) を偏りと呼ぶ。

定理 1.7.3(Cramér–Rao の不等式 ★★★)

正則な族と、分散が有限な推定量 θ^\hat\theta について

Varθ(θ^)≥(1+b′(θ))2J(θ)(1.7.10)\mathrm{Var}_\theta(\hat\theta)\ge\frac{\bigl(1+b'(\theta)\bigr)^2}{J(\theta)}\tag{1.7.10}

が成り立つ。特に不偏推定量では

Varθ(θ^)≥1J(θ)(1.7.11)\mathrm{Var}_\theta(\hat\theta)\ge\frac{1}{J(\theta)}\tag{1.7.11}

であり、独立な nn 回の観測から作った不偏推定量では右辺が 1/(nJ(θ))1/(nJ(\theta)) になる。

証明

⟨θ^⟩θ=∑xθ^(x)p(x;θ)=θ+b(θ)\langle \hat\theta \rangle _\theta=\sum_x\hat\theta(x)p(x;\theta)=\theta+b(\theta) を θ\theta で微分すると、∂θp=p sθ\partial_\theta p=p\,s_\theta より

1+b′(θ)=∑xθ^(x) sθ(x) p(x;θ)=⟨θ^ sθ⟩θ=⟨(θ^−⟨θ^⟩θ) sθ⟩θ1+b'(\theta)=\sum_x\hat\theta(x)\,s_\theta(x)\,p(x;\theta)=\langle \hat\theta\,s_\theta \rangle _\theta=\langle (\hat\theta-\langle \hat\theta \rangle _\theta)\,s_\theta \rangle _\theta

となる。最後の等号は ⟨sθ⟩θ=0\langle s_\theta \rangle _\theta=0 による。右辺は2つの確率変数 θ^−⟨θ^⟩θ\hat\theta-\langle \hat\theta \rangle _\theta と sθs_\theta の共分散なので、Cauchy–Schwarz の不等式から

(1+b′(θ))2≤⟨(θ^−⟨θ^⟩θ)2⟩θ ⟨sθ2⟩θ=Varθ(θ^) J(θ)\bigl(1+b'(\theta)\bigr)^2\le\langle (\hat\theta-\langle \hat\theta \rangle _\theta)^2 \rangle _\theta\,\langle s_\theta^2 \rangle _\theta=\mathrm{Var}_\theta(\hat\theta)\,J(\theta)

を得る。J>0J>0 で割れば式 (1.7.10) である。nn 回の観測では式 (1.7.7) で JJ を nJnJ に置き換える。

不等式は C. R. Rao(C. R. Rao (1945), Bull. Calcutta Math. Soc. 37, 81–91)と H. Cramér(H. Cramér (1946), Mathematical Methods of Statistics, Princeton University Press)がそれぞれ示した。

等号が成り立つとき

Cauchy–Schwarz の等号は、2つの確率変数が比例するときに成り立つ。不偏推定量で等号が成り立つのは、ある関数 k(θ)k(\theta) があってsθ(x)=k(θ)(θ^(x)−θ)s_\theta(x)=k(\theta)\bigl(\hat\theta(x)-\theta\bigr) がすべての xx で成り立つときである。両辺に θ^−θ\hat\theta-\theta を掛けて平均をとると1=k(θ)Varθ(θ^)1=k(\theta)\mathrm{Var}_\theta(\hat\theta)、両辺を2乗して平均をとると J=k2Varθ(θ^)J=k^2\mathrm{Var}_\theta(\hat\theta) なので k(θ)=J(θ)k(\theta)=J(\theta) である。すなわち等号の条件は

∂∂θln⁡p(x;θ)=J(θ)(θ^(x)−θ)(1.7.12)\frac{\partial }{\partial \theta}\ln p(x;\theta)=J(\theta)\bigl(\hat\theta(x)-\theta\bigr)\tag{1.7.12}

であり、これを θ\theta で積分すると ln⁡p(x;θ)=A(θ)θ^(x)−B(θ)+c(x)\ln p(x;\theta)=A(\theta)\hat\theta(x)-B(\theta)+c(x) の形になる。等号に達する推定量(有効推定量)が存在するのは、分布が θ^(x)\hat\theta(x) を十分統計量とする指数型分布族p(x;θ)=h(x)exp⁡[A(θ)θ^(x)−B(θ)]p(x;\theta)=h(x)\exp\bigl[A(\theta)\hat\theta(x)-B(\theta)\bigr] のときに限られ、しかもパラメータとして θ^\hat\theta の平均そのものを選んだときに限られる。正規分布の平均・Poisson 分布の平均・Bernoulli 分布の確率は、どれも標本平均が有効推定量になる。

台がパラメータによる族では成り立たない

一様分布 p(x;θ)=1/θp(x;\theta)=1/\theta(0≤x≤θ0\le x\le\theta)では台が θ\theta によるので、正則条件の第一が崩れる。形式的に sθ=−1/θs_\theta=-1/\theta とすると J=1/θ2J=1/\theta^2 で、式 (1.7.11) は nn 回の観測で Var≥θ2/n\mathrm{Var}\ge\theta^2/n を主張する。しかし最大値 M=max⁡iXiM=\max_iX_i を使った不偏推定量 n+1nM\frac{n+1}{n}M の分散は θ2/(n(n+2))\theta^2/\bigl(n(n+2)\bigr) で、どの nn でもこの「下限」を下回る。証明の最初の一歩(⟨θ^⟩θ\langle \hat\theta \rangle _\theta の微分を和の中へ入れる)で、和の上端 θ\theta の微分から出る項を落としたことが原因である。台の端の位置を推定する問題では、誤差は 1/n1/\sqrt n でなく 1/n1/n で減る。

多パラメータの場合

パラメータが θ=(θ1,…,θk)\theta=(\theta_1,\dots,\theta_k) と複数あるときは、D(pθ ∥ pθ+δ)=12∑i,jJij(θ)δiδj+O(∣δ∣3)D(p_\theta\,\|\,p_{\theta+\delta})=\frac12\sum_{i,j}J_{ij}(\theta)\delta_i\delta_j+\mathcal{O}(\lvert \delta\rvert ^3) の係数

Jij(θ)=⟨∂θiln⁡p  ∂θjln⁡p⟩θ(1.7.13)J_{ij}(\theta)=\langle \partial_{\theta_i}\ln p\;\partial_{\theta_j}\ln p \rangle _\theta\tag{1.7.13}

を Fisher 情報行列と呼ぶ。不偏推定量の共分散行列 Σij=Covθ(θ^i,θ^j)\Sigma_{ij}=\mathrm{Cov}_\theta(\hat\theta_i,\hat\theta_j) について、行列の不等式Σ≥J−1\Sigma\ge J^{-1}(差が半正定値)が成り立つ。証明は1パラメータの場合と同じで、任意の実ベクトル uu、vv についてCov(u⋅θ^, v⋅s)=u⋅v\mathrm{Cov}(u\cdot\hat\theta,\,v\cdot s)=u\cdot v に Cauchy–Schwarz を当て、v=J−1uv=J^{-1}u と選ぶ。1つの θ1\theta_1 だけを知りたいときでも、ほかのパラメータが未知だと下限は (J−1)11≥1/J11(J^{-1})_{11}\ge1/J_{11} に上がる。等号は J1j=0J_{1j}=0(j≠1j\ne1)のときに限るので、ほかのパラメータとスコアが相関していると、それを知らないぶん θ1\theta_1 の推定の精度が下がる。

例題 1.7.3 Poisson 分布の平均は標本平均が下限に達する ★★

オリジナル単位時間に検出器へ入る光子の数 XX が平均 θ\theta の Poisson 分布 p(x;θ)=θxe−θ/x!p(x;\theta)=\theta^x\mathrm{e}^{-\theta}/x! に従う。nn 回の独立な計数 X1,…,XnX_1,\dots,X_n から θ\theta を推定する。

  1. J(θ)J(\theta) を求めよ。
  2. 標本平均 Xˉ=1n∑iXi\bar X=\frac1n\sum_iX_i が不偏で、分散が Cramér–Rao の下限に一致することを示せ。
  3. 等号の条件 (1.7.12) が成り立っていることを確かめよ。
  4. θ=100\theta=100 のとき、相対誤差 Var(Xˉ)/θ\sqrt{\mathrm{Var}(\bar X)}/\theta を1%以下にするには何回の計数が要るか。
解答

(1) ln⁡p=xln⁡θ−θ−ln⁡x!\ln p=x\ln\theta-\theta-\ln x! より sθ=x/θ−1s_\theta=x/\theta-1、∂θsθ=−x/θ2\partial_\theta s_\theta=-x/\theta^2 である。J=−⟨∂θsθ⟩=⟨X⟩/θ2=1/θJ=-\langle \partial_\theta s_\theta \rangle =\langle X \rangle /\theta^2=1/\theta。

(2) ⟨Xˉ⟩=θ\langle \bar X \rangle =\theta で不偏であり、Poisson 分布の分散は平均に等しいので Var(Xˉ)=θ/n\mathrm{Var}(\bar X)=\theta/n である。下限は 1/(nJ)=θ/n1/(nJ)=\theta/n で一致する。

(3) nn 回の観測の対数尤度は ∑i(xiln⁡θ−θ)+const\sum_i(x_i\ln\theta-\theta)+\text{const} で、その θ\theta 微分は ∑ixi/θ−n=nθ(xˉ−θ)\sum_ix_i/\theta-n=\frac{n}{\theta}(\bar x-\theta) となる。nn 回分の Fisher 情報は nJ=n/θnJ=n/\theta なので、これは nJ(θ)(xˉ−θ)nJ(\theta)(\bar x-\theta) の形で、式 (1.7.12) の等号の条件そのものである。

(4) θ/n/θ=1/nθ≤0.01\sqrt{\theta/n}/\theta=1/\sqrt{n\theta}\le0.01 より nθ≥104n\theta\ge10^4、n≥100n\ge100 である。合計 10410^4 個の光子を数えれば相対誤差が1%になる。光子数の揺らぎ(ショット雑音)で決まるこの精度は、どんな推定量を使っても、これより良くすることはできない。

木下の勉強ステータス

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