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仮説検定と Stein の補題

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第8章 大偏差・Sanov・Stein の補題
目次
  1. 2つの仮説と2種類の誤り
  2. Stein の補題
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

相対エントロピーから情報と物理を組み立てる 第1部 第8章 §1.8.5 ★★★ 2つの分布を見分ける検定の第2種の誤りは e−nD(p0∥p1)\mathrm{e}^{-nD(p_0\|p_1)} で減る。DD の非対称性の意味

2つの仮説と2種類の誤り

データ X1,…,XnX_1,\dots,X_n が独立同分布で、その分布が p0p_0 か p1p_1 のどちらかだと分かっているとする。p0p_0 だとする仮説を H0\mathrm H_0、p1p_1 だとする仮説を H1\mathrm H_1 と書く。検定とは、系列の集合 AnA_n を決め、xn∈Anx^n\in A_n なら H0\mathrm H_0 を採る(受容する)と決める規則である。誤りは2種類ある。

αn=p0n(Anc)(第1種の誤り),βn=p1n(An)(第2種の誤り).(1.8.16)\alpha_n=p_0^n(A_n^{\mathrm c})\quad(\text{第1種の誤り}),\qquad\beta_n=p_1^n(A_n)\quad(\text{第2種の誤り}).\tag{1.8.16}

両方を同時に 00 にはできないので、αn≤ϵ\alpha_n\le\epsilon という制約の下で βn\beta_n を最小にする。制約の下での最小値を βnϵ\beta_n^\epsilon と書く。

Neyman–Pearson の補題によれば、最適な検定は尤度比 ∏ip0(xi)/p1(xi)\prod_ip_0(x_i)/p_1(x_i) が閾値以上のとき H0\mathrm H_0 を採る形をとる。対数尤度比を nn で割ったものは型で書けて、

1n∑i=1nln⁡p0(xi)p1(xi)=∑apxn(a)ln⁡p0(a)p1(a)=D(pxn∥p1)−D(pxn∥p0)(1.8.17)\frac1n\sum_{i=1}^n\ln\frac{p_0(x_i)}{p_1(x_i)}=\sum_ap_{x^n}(a)\ln\frac{p_0(a)}{p_1(a)}=D(p_{x^n}\|p_1)-D(p_{x^n}\|p_0)\tag{1.8.17}

となる。尤度比検定は「経験分布が p1p_1 より p0p_0 に DD の意味で近いか」を比べる検定である。

Stein の補題

定理 1.8.8(Stein の補題 ★★★)

0<ϵ<10<\epsilon<1 を固定し、D(p0∥p1)<∞D(p_0\|p_1)<\infty とする。このとき

lim⁡n→∞−1nln⁡βnϵ=D(p0∥p1).(1.8.18)\lim_{n\to\infty}-\frac1n\ln\beta_n^\epsilon=D(p_0\|p_1).\tag{1.8.18}

証明

達成(βnϵ\beta_n^\epsilon をここまで小さくできる):δ>0\delta>0 を決め、対数尤度比 (1.8.17) が D(p0∥p1)−δD(p_0\|p_1)-\delta 以上の系列の集合を AnA_n とする。p0p_0 のもとで対数尤度比の平均はちょうど D(p0∥p1)D(p_0\|p_1) なので、大数の法則から αn=p0n(Anc)→0\alpha_n=p_0^n(A_n^{\mathrm c})\to0 で、十分大きな nn で αn≤ϵ\alpha_n\le\epsilon になる。AnA_n の上では p1n(xn)≤p0n(xn) e−n(D(p0∥p1)−δ)p_1^n(x^n)\le p_0^n(x^n)\,\mathrm{e}^{-n(D(p_0\|p_1)-\delta)} なので、βn=p1n(An)≤e−n(D(p0∥p1)−δ)p0n(An)≤e−n(D(p0∥p1)−δ)\beta_n=p_1^n(A_n)\le\mathrm{e}^{-n(D(p_0\|p_1)-\delta)}p_0^n(A_n)\le\mathrm{e}^{-n(D(p_0\|p_1)-\delta)}。

逆(これより小さくはできない):任意の検定 AnA_n を、系列 xnx^n を「AnA_n に入るか否か」の2値に写す通信路とみなす。データ処理不等式(第1部第4章)と D(p0n∥p1n)=nD(p0∥p1)D(p_0^n\|p_1^n)=nD(p_0\|p_1) から、2値の分布の相対エントロピーd(x∥y)=xln⁡xy+(1−x)ln⁡1−x1−yd(x\|y)=x\ln\frac xy+(1-x)\ln\frac{1-x}{1-y} について

nD(p0∥p1)≥d(1−αn ∥ βn)≥(1−αn)ln⁡1βn−hb(αn)≥(1−ϵ)ln⁡1βn−ln⁡2.(1.8.19)nD(p_0\|p_1)\ge d(1-\alpha_n\,\|\,\beta_n)\ge(1-\alpha_n)\ln\frac{1}{\beta_n}-h_{\mathrm b}(\alpha_n)\ge(1-\epsilon)\ln\frac1{\beta_n}-\ln2.\tag{1.8.19}

2つ目の不等号は d(x∥y)=−hb(x)+xln⁡1y+(1−x)ln⁡11−yd(x\|y)=-h_{\mathrm b}(x)+x\ln\frac1y+(1-x)\ln\frac1{1-y} の最後の項が非負であることによる。したがって−1nln⁡βn≤D(p0∥p1)+ln⁡2/n1−ϵ-\frac1n\ln\beta_n\le\frac{D(p_0\|p_1)+\ln2/n}{1-\epsilon}。ここから lim sup⁡−1nln⁡βnϵ≤D(p0∥p1)/(1−ϵ)\limsup-\frac1n\ln\beta_n^\epsilon\le D(p_0\|p_1)/(1-\epsilon) が出る。ϵ\epsilon によらず D(p0∥p1)D(p_0\|p_1) まで上界を下げるには、達成の側と似た集合 BnB_n(対数尤度比が D+δD+\delta 以下)を使い、βn≥p1n(An∩Bn)≥e−n(D+δ)p0n(An∩Bn)≥e−n(D+δ)(1−ϵ−p0n(Bnc))\beta_n\ge p_1^n(A_n\cap B_n)\ge\mathrm{e}^{-n(D+\delta)}p_0^n(A_n\cap B_n)\ge\mathrm{e}^{-n(D+\delta)}(1-\epsilon-p_0^n(B_n^{\mathrm c})) とする。大数の法則から p0n(Bnc)→0p_0^n(B_n^{\mathrm c})\to0 なので、lim sup⁡−1nln⁡βnϵ≤D(p0∥p1)+δ\limsup-\frac1n\ln\beta_n^\epsilon\le D(p_0\|p_1)+\delta で、δ\delta は任意である。

Stein の補題によって、相対エントロピーは「2つの分布を見分けるときの、誤りの減る速さ」という操作的な意味を持つ。式 (1.8.19) の形の逆の証明は、データ処理不等式が「どんな検定(データの加工)も DD を増やせない」と言っていることの直接の帰結で、見分ける力の上限は nD(p0∥p1)nD(p_0\|p_1) で決まる。

DD の非対称性

αn\alpha_n を小さく固定して βn\beta_n の指数を問うと D(p0∥p1)D(p_0\|p_1) が出て、役割を入れ替えると D(p1∥p0)D(p_1\|p_0) が出る。2つは一般に違う。D(p0∥p1)D(p_0\|p_1) は「p0p_0 から出たデータを p1p_1 だと見誤る」ことの難しさで、データが従う側の分布で平均をとる。両方の誤りを同じ速さで減らしたいとき(事前確率をつけて誤りの和を最小にするとき)の指数は Chernoff 情報

C(p0,p1)=−min⁡0≤s≤1ln⁡∑xp0(x)1−sp1(x)s(1.8.20)\mathcal C(p_0,p_1)=-\min_{0\le s\le1}\ln\sum_xp_0(x)^{1-s}p_1(x)^s\tag{1.8.20}

で、D(p0∥p1)D(p_0\|p_1) と D(p1∥p0)D(p_1\|p_0) のどちらよりも小さい。記号 C\mathcal C はこの節だけで使う(通信路容量 CC とは別)。

図

図 1.8.4 H0\mathrm H_0:表の確率 0.50.5、H1\mathrm H_1:表の確率 0.70.7 の検定で、αn≤0.05\alpha_n\le0.05 を満たす「表の回数が閾値以下なら H0\mathrm H_0」の検定の第2種の誤りの指数(二項分布から計算した厳密な値)。点線の D(p0∥p1)D(p_0\|p_1) への近づき方は O(1/n)\mathcal{O}(1/\sqrt n) で遅い。

例題 1.8.6 公平な硬貨と偏った硬貨を見分ける ★★

オリジナルH0\mathrm H_0:表の確率 0.50.5、H1\mathrm H_1:表の確率 0.70.7 とする。

  1. D(p0∥p1)D(p_0\|p_1) と D(p1∥p0)D(p_1\|p_0) を求めよ。
  2. αn≤0.05\alpha_n\le0.05 のもとで βn≈10−3\beta_n\approx10^{-3} にしたい。Stein の補題の指数で見積もると nn はおよそいくら要るか。
  3. Chernoff 情報 C(p0,p1)\mathcal C(p_0,p_1) を数値で求め、(1) の2つと比べよ。
解答

(1) D(p0∥p1)=0.5ln⁡0.50.7+0.5ln⁡0.50.3=0.0872D(p_0\|p_1)=0.5\ln\frac{0.5}{0.7}+0.5\ln\frac{0.5}{0.3}=0.0872、D(p1∥p0)=0.7ln⁡0.70.5+0.3ln⁡0.30.5=0.0823D(p_1\|p_0)=0.7\ln\frac{0.7}{0.5}+0.3\ln\frac{0.3}{0.5}=0.0823。値は近いが等しくない。

(2) e−n×0.0872=10−3\mathrm{e}^{-n\times0.0872}=10^{-3} から n=ln⁡1000/0.0872=79n=\ln1000/0.0872=79 程度。ただし図 1.8.4 のとおり、αn\alpha_n を 0.050.05 に固定した検定の指数は nn が数百から千でも DD の 66〜88 割にとどまるので、実際に要る nn はこれより大きい。Stein の補題は指数の極限についての主張で、有限の nn では多項式の因子と O(1/n)\mathcal{O}(1/\sqrt n) の補正が残る。

(3) g(s)=ln⁡(0.51−s0.7s+0.51−s0.3s)g(s)=\ln\bigl(0.5^{1-s}0.7^s+0.5^{1-s}0.3^s\bigr) を 0≤s≤10\le s\le1 で最小にすると s=0.493s=0.493 で、C=0.0213\mathcal C=0.0213。これは D(p0∥p1)D(p_0\|p_1) と D(p1∥p0)D(p_1\|p_0) のおよそ4分の1で、両方の誤りを同時に小さくするほうが、片方だけを小さくするよりずっと多くの標本を要する。

木下の勉強ステータス

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