解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第1部 第13章 §1.13.4 ★★ 極座標で W が3つの和に分かれ、分離の定数が角運動量になる。軌道の式は ∂W/∂αφ=βφ から積分1つで出る
極座標での分離
質量 m の粒子が中心力のポテンシャル V(r) の中を運動する。球座標 (r,θ,φ) での Hamiltonian は
H=2m1(pr2+r2pθ2+r2sin2θpφ2)+V(r)
である。φ は H に現れない循環座標なので、W=Wr(r)+Wθ(θ)+αφφ と置く。時間に依らない Hamilton–Jacobi 方程式に 2mr2 を掛けて並べ替えると
r2(drdWr)2+2mr2(V(r)−E)=−(dθdWθ)2−sin2θαφ2
となる。左辺は r だけ、右辺は θ だけの関数なので、両辺は定数で、その値を −αθ2 と書くと
(dθdWθ)2+sin2θαφ2=αθ2,(drdWr)2+r2αθ2=2m(E−V(r))(1.13.14)
の2本の常微分方程式に分かれる。分離の定数の意味は、pφ=∂W/∂φ=αφ が角運動量の z 成分、pθ2+pφ2/sin2θ=αθ2 が角運動量の大きさの2乗である。分離の定数として、回転対称性に対応する保存量が現れた。
角運動量の向きを z 軸に選ぶと運動は θ=π/2 の平面に限られ、αθ=∣αφ∣ となる。以下は平面の極座標 (r,φ) で書き、αφ>0 とする。特性関数は
W(r,φ)=αφφ+∫r2m(E−V(r′))−r′2αφ2dr′(1.13.15)
である。根号の中の V(r)+αφ2/(2mr2) は、動径の運動だけを見たときの有効ポテンシャルにあたる。
軌道の式
Jacobi の定理を αφ に当てると、∂W/∂αφ=βφ から
φ−∫rr′22m(E−V(r′))−αφ2/r′2αφdr′=βφ(1.13.16)
を得る。時刻を含まない r と φ の関係なので、これが軌道の式である。時刻との関係は E についての式 ∂W/∂E=t+βE から出る。
Kepler 問題 V(r)=−k/r(k>0)では、u=1/r と置くと dr/r2=−du で、積分は
−∫rr′2⋯αφdr′=∫u2mE+2mku′−αφ2u′2αφdu′
となる。根号の中を平方完成するため
λ:=mkαφ2,e:=1+mk22Eαφ2(1.13.17)
と置くと、2mE+2mku−αφ2u2=(αφ/λ)2[e2−(λu−1)2] と書けるので
∫u2mE+2mku′−αφ2u′2αφdu′=∫ue2−(λu′−1)2λdu′=−arccoseλu−1+定数
となる。定数を βφ に含めると、式 (1.13.16) は φ−βφ=arccos((λ/r−1)/e)、すなわち
r=1+ecos(φ−βφ)λ(1.13.18)
になる。これは焦点を原点に置いた円錐曲線で、e は離心率、βφ は近点(r が最小の点)の方位角である。E<0 なら e<1 で楕円、E=0 で放物線、E>0 で双曲線になる。離心率の記号 e は電気素量と同じ字だが、この章には電荷が出ないのでそのまま使う。

図 1.13.2 例題 1.13.4 の軌道(m=k=1, E=−1/2, αφ=4/5)。点線は式 (1.13.18)(厳密)、白丸は近点 r=0.4 から出発して Hamilton 方程式を数値で積分した位置。黒丸は力の中心(焦点)。数値軌道と式の差は 10−10 程度で、周期 2π の後に出発点へ戻る
例題 1.13.4 Kepler の楕円の大きさを分離の定数で表す ★★
オリジナルm=k=1 の Kepler 問題で、E=−21, αφ=54 の軌道を考える。
- (1) 式 (1.13.17) の λ と e を求めよ。
- (2) 近点距離 rmin と遠点距離 rmax を求め、長半径 (rmin+rmax)/2 が −k/(2E) に等しいことを確かめよ。
- (3) 近点と遠点で、動径の運動量 pr=∂W/∂r が 0 になることを式 (1.13.15) から確かめよ。
解答
(1) λ=αφ2/(mk)=0.64。e=1+2(−21)(0.64)=0.36=0.6。
(2) 式 (1.13.18) で cos=1 のとき rmin=0.64/1.6=0.4、cos=−1 のとき rmax=0.64/0.4=1.6。長半径は (0.4+1.6)/2=1 で、−k/(2E)=1 と等しい。一般に rmin+rmax=λ/(1+e)+λ/(1−e)=2λ/(1−e2) で、1−e2=−2Eαφ2/(mk2) を入れると 2λ/(1−e2)=−k/E となり、長半径はエネルギーだけで決まる。
(3) pr2=2m(E+k/r)−αφ2/r2=−1+2/r−0.64/r2。r=0.4 で −1+5−4=0、r=1.6 で −1+1.25−0.25=0 となる。pr=0 の点が動径の運動の転回点で、Wr の積分の根号の符号はここで入れ替わる(1.13.3節の1次元の場合と同じ)。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com