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当てる道具:Hamilton–Jacobi 方程式と、相空間の曲線の上の密度

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第4部 第7章 WKB と Hamilton–Jacobi
目次
  1. 最低次:特性関数
  2. 次の次数:確率の流れの保存
  3. WKB の波は等エネルギーの曲線全体に対応する
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部 第7章 §4.7.2 ★★★ 位相 σ0\sigma_0 は特性関数 W(x,E)W(x,E)、振幅 ∣A∣2∝1/p\lvert A\rvert ^2\propto1/p は古典の粒子の滞在時間の密度。WKB の波は1本の軌道でなく、等エネルギーの曲線全体に対応する

最低次:特性関数

前節の最低次の式 (4.7.6) は、時間に依らない Hamilton–Jacobi 方程式であった。第1部第13章で示したように、Hamilton の主関数を S(x,t)=W(x,E)−EtS(x,t)=W(x,E)-Et と分離すると ∂S∂t=−E\frac{\partial S}{\partial t}=-E、∂S∂x=∂W∂x=p\frac{\partial S}{\partial x}=\frac{\partial W}{\partial x}=p となる。時間因子 e−iEt/ℏ\mathrm{e}^{-\mathrm{i} Et/\hbar} を戻すと、WKB の波の位相は

1ℏ(W(x,E)−Et)=S(x,t)ℏ\frac{1}{\hbar}\bigl(W(x,E)-Et\bigr)=\frac{S(x,t)}{\hbar}

で、主関数そのものである。位相が一定の面(1次元では点)は SS の等値面で、第1部第13章で見たとおり古典の軌道はこの面に直交して進む。波の位相速度と粒子の速度は違うが、波の「進む向き」は古典の運動量 p=∂W∂xp=\frac{\partial W}{\partial x} の向きと一致する。

次の次数:確率の流れの保存

式 (4.7.7) の意味は、σ1=ln⁡A\sigma_1=\ln A と書いて確率の流れを計算すると分かる。WKB の波 ψ=A eiW/ℏ\psi=A\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} W/\hbar}(A=p−1/2A=p^{-1/2})の確率の流れは

j=ℏmIm⁡(ψ∗ψ′)=∣A∣2m ∂W∂x=∣A∣2pmj=\frac{\hbar}{m}\operatorname{Im}\bigl(\psi^*\psi'\bigr)=\frac{\lvert A\rvert ^2}{m}\,\frac{\partial W}{\partial x}=\frac{\lvert A\rvert ^2p}{m}

で、式 (4.7.7) は (∣A∣2p)′=0(\lvert A\rvert ^2p)'=0、すなわち jj が一定であることと同じである(検算 scripts/verify_ch4-07.py)。第1部第13章で ψ=A eiS/ℏ\psi=A\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} から厳密に出した連続の式 ∂t∣A∣2+∂x(∣A∣2 ∂xS/m)=0\partial_t\lvert A\rvert ^2+\partial_x(\lvert A\rvert ^2\,\partial_xS/m)=0 の、定常な場合である。

∣A∣2∝1/p\lvert A\rvert ^2\propto1/p には古典的な意味がある。古典の粒子が位置 xx のまわりの幅 dx\mathrm{d} x を通過するのにかかる時間は dt=dx/∣x˙∣=m dx/p\mathrm{d} t=\mathrm{d} x/\lvert \dot x\rvert =m\,\mathrm{d} x/p である。束縛された運動で、周期 T(E)T(E) のあいだに粒子は各点を行きと帰りの2回通るので、時間で平均した古典の確率密度は

Pcl(x)=2T(E) mp(x)(4.7.10)P_{\mathrm{cl}}(x)=\frac{2}{T(E)}\,\frac{m}{p(x)}\tag{4.7.10}

になる。WKB の波の ∣ψ∣2\lvert \psi\rvert ^2 を、波長より長く束縛の幅より短い範囲で平均したもの(2つの枝の干渉の縞を均したもの)は、この PclP_{\mathrm{cl}} に比例する。振幅の p−1/2p^{-1/2} は、「遅く通る場所ほど見つかりやすい」という古典の滞在時間の平方根である。

多自由度に広げると、式 (4.7.7) は ∇⋅(∣A∣2∇S)=0\nabla\cdot(\lvert A\rvert ^2\nabla S)=0 になり、その解は第1部第13章の完全解 S(q,α,t)S(q,\alpha,t) を使って ∣A∣2∝∣det⁡(∂2S/∂qi∂αj)∣\lvert A\rvert ^2\propto\lvert \det\bigl(\partial^2S/\partial q_i\partial\alpha_j\bigr)\rvert と書ける(Van Vleck の行列式)。これは、初めの条件 α\alpha を少し変えた軌道の束が位置 qq でどれだけ密に詰まっているかを表す量で、1次元の 1/p1/p はその特別な場合である。軌道の束が1点に集まる所(火線)でこの行列式は発散し、WKB の振幅も発散する。1次元の転回点はその最も簡単な例で、次の節の主題である。

WKB の波は等エネルギーの曲線全体に対応する

WKB の波 (4.7.9) を相空間で見ると、上の枝 p=+p(x)p=+p(x) と下の枝 p=−p(x)p=-p(x) の2つの波の和で、2つの枝はつながって等エネルギーの曲線 ΛE={(x,p) ∣ H(x,p)=E}\Lambda_E=\{(x,p)\,|\,H(x,p)=E\} を作っている。WKB の波は、1本の軌道の上の1つの点でなく、ΛE\Lambda_E 全体に、その上を一様な速さで(角変数 θ\theta が一様に増える速さで)回る粒子の集団に対応している。これは第1部第14章の作用角変数の絵そのもので、ΛE\Lambda_E は作用変数 JJ が一定の曲線、∣A∣2 dx∝dt∝dθ\lvert A\rvert ^2\,\mathrm{d} x\propto\mathrm{d} t\propto\mathrm{d}\theta は角変数についての一様な密度である。多自由度で可積分なら ΛE\Lambda_E は不変トーラスになり、このように「p=∇Wp=\nabla W で与えられる相空間の部分集合」を Lagrange 部分多様体と呼ぶ。

2つの古典極限

第4部第1章では、波束の中心の期待値 ⟨x^⟩\langle \hat x \rangle, ⟨p^⟩\langle \hat p \rangle が Ehrenfest の定理によって古典の運動方程式に(2次以下のポテンシャルでは厳密に)従うことを見た。これは「1つの軌道」の古典極限である。WKB はそれと別の古典極限で、定常状態は1本の軌道でなく、エネルギー EE の曲線全体に一様に広がった粒子の集団(相空間の分布)に対応する。どちらも ℏ→0\hbar\to0 の極限だが、前者は時間に依存する狭い波束、後者はエネルギーの固有状態という別の対象についての極限である。

例題 4.7.2 調和振動子の古典の密度と n=20n=20 の固有状態 ★★

オリジナル調和振動子 V=12mω2x2V=\frac12m\omega^2x^2 のエネルギー EE の古典運動の振幅を xmax=2E/(mω2)x_{\mathrm{max}}=\sqrt{2E/(m\omega^2)} とする。

  1. (1) 式 (4.7.10) から古典の確率密度 Pcl(x)P_{\mathrm{cl}}(x) を求め、∫−xmaxxmaxPcl dx=1\int_{-x_{\mathrm{max}}}^{x_{\mathrm{max}}}P_{\mathrm{cl}}\,\mathrm{d} x=1 を確かめよ。
  2. (2) 粒子が ∣x∣<xmax/2\lvert x\rvert <x_{\mathrm{max}}/2 に見つかる古典の確率を求めよ。
  3. (3) 量子の第 nn 準位 En=(n+12)ℏωE_n=(n+\frac12)\hbar\omega について、同じエネルギーの古典の振幅 xmaxx_{\mathrm{max}} を使って ∣x∣<xmax/2\lvert x\rvert <x_{\mathrm{max}}/2 に見つかる確率を n=20n=20 で数値的に求めると 0.3440.344 になる。(2) と比べて何が言えるか。
解答

(1) p=mωxmax2−x2p=m\omega\sqrt{x_{\mathrm{max}}^2-x^2}、T=2π/ωT=2\pi/\omega なので

Pcl(x)=22π/ω mmωxmax2−x2=1πxmax2−x2.P_{\mathrm{cl}}(x)=\frac{2}{2\pi/\omega}\,\frac{m}{m\omega\sqrt{x_{\mathrm{max}}^2-x^2}}=\frac{1}{\pi\sqrt{x_{\mathrm{max}}^2-x^2}}.

x=xmaxsin⁡ux=x_{\mathrm{max}}\sin u と置くと ∫Pcl dx=1π∫−π/2π/2du=1\int P_{\mathrm{cl}}\,\mathrm{d} x=\frac1\pi\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\mathrm{d} u=1。密度は転回点 x=±xmaxx=\pm x_{\mathrm{max}} で発散するが、積分は有限である。

(2) ∫−xmax/2xmax/2Pcl dx=2πarcsin⁡12=13\int_{-x_{\mathrm{max}}/2}^{x_{\mathrm{max}}/2}P_{\mathrm{cl}}\,\mathrm{d} x=\frac{2}{\pi}\arcsin\frac12=\frac13。

(3) 量子の確率 0.3440.344 は古典の 1/31/3 に 3% の差で近い(検算 scripts/verify_ch4-07.py。Hermite 関数を数値積分した)。∣ψ20∣2\lvert \psi_{20}\rvert ^2 は xx について細かく振動しているが、その振動を均した包絡は PclP_{\mathrm{cl}} に近づいていく。残る差は、干渉の縞が積分の端で打ち消し切れない分と、転回点の近く(ℏ2/3\hbar^{2/3} の層)で WKB が使えない分である。量子数が大きいほど差は小さくなる。定常状態の古典極限が、1本の軌道でなく、軌道の上で時間平均した分布であることを示す例になっている。

木下の勉強ステータス

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