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物理的直観の位置

2026年10月9日4分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第11章 終章:何がどこまで正当化されているか

AI 生成・木下が未勉強

近似の数理 第11章 §11.3 ★★ 第1章の問い (iii) への答え

第1章では、物理的直観は A 型では「良い部分空間を選ぶこと」、B 型では「小さいパラメータを見つけること」にあたると述べた。各章を通して、この対応はもう少し具体的になった。

A 型で直観が選ぶ部分空間は、真の解の特異性をどれだけ表せるかで良し悪しが決まる。原子軌道(Slater 型)は核のカスプを正しく表すので LCAO はよい出発点になるが、電子どうしのカスプは1電子軌道の積では表せないので、CI の収束は遅い(第4章)。直観が「電子は原子のまわりにいる」ことまでは捉えても、「電子どうしがぶつかる点で波動関数が尖る」ことは捉えにくい。

B 型で直観が見つける小さいパラメータには、それが小さいことが成り立たなくなる場所が付随する。Born–Oppenheimer 近似は電子状態のギャップが閉じる円錐交差で、境界層理論は剥離点で、流体近似は衝撃波の内部や壁近傍で破綻する(第7・8章)。これらはどれも、小さいパラメータの効果が局所的に増幅される場所である。物理の直観は大域的なパラメータの大きさを見積もるのは得意だが、局所的に近似が破れる場所は、方程式の構造(ギャップ・係数の符号・特異点)を調べて初めて分かることが多い。

講義のフントの規則(第10章)は、直観が誤った理由付けをする例だった。「平行スピンの電子は近寄らないので反発が減る」という説明は、三重項のエネルギーが低いという結論は正しく予測するが、精密な計算ではエネルギーが下がる仕組みが違う。結論が正しいことは、理由付けが正しいことを意味しない。近似を数学の側から見る価値は、結論だけでなく理由付けを検査できる点にある。

例題 11.3 小さいパラメータが局所的に大きくなる場所 ★★

オリジナル調和振動子 V(x)=12x2V(x)=\frac12x^2(ℏ=m=1\hbar=m=1)の準位 E=n+12E=n+\frac12 を WKB 近似で扱う。WKB 近似が使える条件は、局所的な波長 1/p(x)1/p(x) の変化が緩やかなこと、すなわち ∣d(1/p)/dx∣≪1\lvert \mathrm{d}(1/p)/\mathrm{d} x\rvert \ll1 である(第7章)。ここで p(x)=2E−x2p(x)=\sqrt{2E-x^2}、転回点は x=a≔2Ex=a\coloneqq\sqrt{2E}。

  • (1) d(1/p)/dx\mathrm{d}(1/p)/\mathrm{d} x を計算し、転回点に近づくと発散することを示せ。
  • (2) ∣d(1/p)/dx∣=1\lvert \mathrm{d}(1/p)/\mathrm{d} x\rvert =1 となる点 x∗x_* と転回点の距離 δ=a−x∗\delta=a-x_* が、EE が大きいとき δ≈12a−1/3\delta\approx\frac12a^{-1/3} となることを示せ。
  • (3) n=10n=10 で x∗x_* と δ\delta を数値で求め、古典的に許される領域 [−a,a][-a,a] のうち WKB が使えない部分の割合を求めよ。
解答

(1) ddx(2E−x2)−1/2=x(2E−x2)−3/2=x/p3\dfrac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x}(2E-x^2)^{-1/2}=x(2E-x^2)^{-3/2}=x/p^3。x→ax\to a で p→0p\to0 なので発散する。準位がどれほど高くても(1/E1/E がどれほど小さくても)転回点の近くでは条件が破れる。

(2) x=a−δx=a-\delta とおくと p2=(a−x)(a+x)≈2aδp^2=(a-x)(a+x)\approx2a\delta、分子の xx は aa で近似できるので、条件 x=p3x=p^3 は a≈(2aδ)3/2a\approx(2a\delta)^{3/2}。両辺を 2/32/3 乗して a2/3=2aδa^{2/3}=2a\delta、よって δ≈12a−1/3\delta\approx\frac12a^{-1/3}。

(3) E=10.5E=10.5、a=21=4.583a=\sqrt{21}=4.583。方程式 x=(21−x2)3/2x=(21-x^2)^{3/2} を数値で解くと x∗=4.285x_*=4.285、δ=0.298\delta=0.298 で、(2) の漸近形 12a−1/3=0.301\frac12a^{-1/3}=0.301 とよく合う(検算スクリプト)。両端を合わせて 2δ/(2a)=δ/a=0.0652\delta/(2a)=\delta/a=0.065、つまり許される領域の約 6.5% で WKB が使えない。大域的な小さいパラメータ 1/E≈0.11/E\approx0.1 を見ているだけでは、この局所的な破れは見えない。破れる場所は「p=0p=0」という方程式の構造から決まり、第7章でこの領域を Airy 関数でつなぐ必要があったのはこのためである。

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