量子力学の様々な構成方法 第3部 第5章 §3.5.3 ★★ 3次元で A⋅x˙ を含む作用を展開すると、中点で評価したときだけ (p^−qA)2/(2m) が出る。反磁性の A2 の項は位相の2次から出る
作用と1区間の核
電荷 q の粒子が電磁ポテンシャル (ϕ,A) の中を動くとき、Lagrangian は
L=2m∣x˙∣2+qx˙⋅A(x,t)−qϕ(x,t)(3.5.13)
である。1区間の変位を η=xk+1−xk とすると、作用の1区間分は 2ϵm∣η∣2+qη⋅A(xˉ)−ϵqϕ で、xˉ=xk+λη が A の評価点である。第3部第2章は1次元でこの評価点 λ の問題を扱い、結果だけを引いて展開の手順をこの章に送った。ここで3次元の場合を導く。
3次元の核のモーメントは、各成分が独立な1次元の核の積であることから
⟨ηi⟩=0,⟨ηiηj⟩=miℏϵδij,⟨ηiηjηl⟩=0,⟨ηiηjηlηn⟩=O(ϵ2)(3.5.14)
である(前因子は (m/(2πiℏϵ))3/2)。
展開
後の点を x に固定すると、前の点は x−η、評価点は xˉ=x−(1−λ)η である。ψ(x,t+ϵ) の被積分関数のうち、A を含む位相を η の2次まで展開する。η⋅A(xˉ)=η⋅A−(1−λ)∑i,jηiηj∂jAi+O(η3) なので(右辺の A とその微分は x での値)
eiqη⋅A(xˉ)/ℏ=1+ℏiqη⋅A−ℏiq(1−λ)i,j∑ηiηj∂jAi−2ℏ2q2(η⋅A)2+O(η3)(3.5.15)
である。これに e−iϵqϕ/ℏ=1−ℏiϵqϕ+O(ϵ2) と ψ(x−η)=ψ−η⋅∇ψ+21∑i,jηiηj∂i∂jψ+O(η3) を掛け、式 (3.5.14) で平均する。ϵ の1次に残る項は次の5つである。
| 出どころ | 平均した値 | 演算子で書くと |
| 21ηiηj∂i∂jψ | 2miℏϵ∇2ψ | 運動エネルギー |
| ℏiq(η⋅A)(−η⋅∇ψ) | mqϵA⋅∇ψ | 交差項 A⋅p^ |
| −ℏiq(1−λ)ηiηj∂jAiψ | mqϵ(1−λ)(∇⋅A)ψ | 評価点に依存する項 |
| −2ℏ2q2(η⋅A)2ψ | −2mℏiϵq2∣A∣2ψ | 反磁性の項 |
| −ℏiϵqϕψ | −ℏiϵqϕψ | スカラーポテンシャル |
これらを足して iℏ/ϵ を掛けると
iℏ∂t∂ψ=−2mℏ2∇2ψ+miℏqA⋅∇ψ+miℏq(1−λ)(∇⋅A)ψ+2mq2∣A∣2ψ+qϕψ(3.5.16)
を得る。一方、p^=−iℏ∇ として (p^−qA)2ψ=−ℏ2∇2ψ+iℏq(2A⋅∇ψ+(∇⋅A)ψ)+q2∣A∣2ψ だから、式 (3.5.16) は
iℏ∂t∂ψ=[2m(p^−qA)2+qϕ+(1−2λ)2miℏq∇⋅A]ψ(3.5.17)
と書ける。1次元で a=qAx とすれば第3部第2章の式と一致する。最後の項は反エルミートで、中点 λ=1/2 のときだけ消える。Coulomb ゲージ ∇⋅A=0 を選べば評価点はどこでもよいが、それはゲージの選び方に頼った偶然で、どのゲージでも正しい答えを出すのは中点である。
ゲージ変換と中点
ゲージ変換 A→A+∇Λ、ϕ→ϕ−∂tΛ で Lagrangian は全微分 qdΛ/dt だけ変わる。経路積分の側では、各区間の作用がqη⋅∇Λ(xˉ) だけ変わる。中点で評価すると、Taylor 展開の偶数次が打ち消し合って
Λ(xk+1)−Λ(xk)=η⋅∇Λ(2xk+xk+1)+O(η3)(3.5.18)
が成り立つ(1次元では差が 24η3Λ′′′)。η3 は ϵ3/2 の大きさで、N 区間で足しても ϵ1/2→0 なので、区間ごとの変化の和は端の差 Λ(xf)−Λ(xi) になる。したがって伝播関数は K→eiq[Λ(xf,t)−Λ(xi,0)]/ℏK と変わり、波動関数のゲージ変換 ψ→eiqΛ/ℏψ と整合する。左端で評価すると差は 2η2Λ′′ で、η2∼iℏϵ/m の和が有限の実数の因子を残し、ゲージを変えただけで確率が変わってしまう。この点は第3部第2章の例題で1次元について確かめた。
例題 3.5.3 反磁性の項は位相の2次から出る ★★
オリジナル式 (3.5.16) の 2mq2∣A∣2 の項について考える。
- (1) 作用の中で A は変位 η に1次でしか現れないのに、方程式に ∣A∣2 の項が現れる理由を、式 (3.5.15) のどの項から出たかで説明せよ。
- (2) 電子(q=−e)が一様な磁場 B=1T の中にあり、対称ゲージ A=21B×x で軸から r=10nm の位置にあるとき、2mq2∣A∣2 を J と μeV で求めよ。
- (3) 同じ位置で ϵ=10−18s の1区間の位相 q∣A∣ℏϵ/m/ℏ の大きさを求め、その2乗が ϵ の1次の量になることを確かめよ。
解答
(1) 位相 eiqη⋅A/ℏ を2次まで展開した −2ℏ2q2(η⋅A)2 の項から出る。(η⋅A)2=∑i,jAiAjηiηj を式 (3.5.14) で平均するとmiℏϵ∣A∣2 になり、−2ℏ2q2⋅miℏϵ∣A∣2=−ℏiϵ⋅2mq2∣A∣2 である。η が ϵ でなく ϵ の大きさを持つので、位相の1次の量 qη⋅A/ℏ の2乗が ϵ の1次まで上がってくる。滑らかな経路なら η≈x˙ϵ でこの項は ϵ2 になり、落ちてしまう。
(2) ∣A∣=Br/2=5.0×10−9Tm で、2me2∣A∣2=2×9.11×10−31(1.602×10−19)2×(5.0×10−9)2J=3.52×10−25J、すなわち 2.20μeV である。
(3) ℏϵ/m=1.08×10−11m なので、位相は e∣A∣ℏϵ/m/ℏ=1.602×10−19×5.0×10−9×1.08×10−11/(1.055×10−34)=8.2×10−5 である。その2乗の半分 3.3×10−9 は、(2) のエネルギーと ϵ の積を ℏ で割った 3.52×10−25×10−18/(1.055×10−34)=3.3×10−9 に等しく、確かに ϵ の1次の量である。
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