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Nelson の要請と、平均の加速度の Newton の法則

2026年10月17日12分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第5章 確率過程量子化:Nelson の拡散から Schrödinger 方程式へ
目次
  1. 4つの要請
  2. Newton の法則を流体の言葉に展開する
  3. 同値性の定理
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第7部 第5章 §7.5.2 ★★★ この構成の出発点の要請と、そこから Madelung 方程式と Schrödinger 方程式を導く同値性の証明

4つの要請

Nelson の確率過程量子化の要請 ★★★

質量 mm の粒子が外力のポテンシャル VV の中にあるとする。

  1. (N1) 粒子の位置 X(t)X(t) は Markov の拡散過程 (7.5.1) に従い、拡散係数は

ν=ℏ2m(7.5.9)\nu=\frac{\hbar}{2m}\tag{7.5.9}

である。過程を逆向きに見ても拡散過程で、後ろ向きのドリフト b∗b_* を持つ。2. (N2) 前向きと後ろ向きの平均微分を対称に組んだ平均の加速度が Newton の法則に従う。

m a=−∇V,a≔12(D b∗+D∗ b).(7.5.10)m\,a=-\nabla V,\qquad a\coloneqq\frac12\bigl(\mathrm D\,b_*+\mathrm D_*\,b\bigr).\tag{7.5.10}

ここで D\mathrm D は (7.5.3)、D∗f=(∂t+b∗∂x−ν∂x2)f\mathrm D_*f=(\partial_t+b_*\partial_x-\nu\partial_x^2)f は後ろ向きの平均微分である。3. (N3) 多次元では、流れの速度が勾配 v=∇S/m\bm{v}=\nabla S/m で書ける(渦なし)。1次元では自動的に成り立つ。4. (N4) 外から熱浴や摩擦は入らない。拡散は粒子に備わったもので、時間を逆にしても同じ形の法則が成り立つ。

(N2) の加速度の作り方には説明が要る。拡散過程の道筋は微分できないので、速度 X˙\dot X も加速度 X¨\ddot X もそのままでは定義できない。代わりに使えるのは平均微分で、前向きには DX=b\mathrm DX=b、後ろ向きには D∗X=b∗\mathrm D_*X=b_* が「速度」に当たる。加速度は速度をもう一度平均微分したものだが、D\mathrm D と D∗\mathrm D_* のどちらで2回微分するかには4通りの選び方がある。Nelson(1966)は、時間反転で入れ替わる組 DD∗\mathrm D\mathrm D_* と D∗D\mathrm D_*\mathrm D の平均を取った。時間を逆にすると D↔−D∗\mathrm D\leftrightarrow-\mathrm D_*、b↔−b∗b\leftrightarrow-b_* と入れ替わるので、この組み合わせは時間反転で符号を変えず、Newton の法則と同じ対称性を持つ。DD\mathrm D\mathrm D だけを使った加速度は時間反転で D∗D∗\mathrm D_*\mathrm D_* の形に移り、法則が時間の向きによって変わってしまう。

Newton の法則を流体の言葉に展開する

(7.5.10) を uu, vv で書く。b∗=v−ub_*=v-u、b=v+ub=v+u を入れて展開すると

D b∗=∂t(v−u)+(v+u)(v−u)′+ν(v−u)′′,D∗ b=∂t(v+u)+(v−u)(v+u)′−ν(v+u)′′\begin{aligned}\mathrm D\,b_*&=\partial_t(v-u)+(v+u)(v-u)'+\nu(v-u)'',\\ \mathrm D_*\,b&=\partial_t(v+u)+(v-u)(v+u)'-\nu(v+u)''\end{aligned}

(′' は ∂x\partial_x)。半和を取ると ∂tu\partial_tu と νv′′\nu v'' が打ち消し合い、

a=∂tv+vv′−uu′−νu′′(7.5.11)a=\partial_tv+vv'-uu'-\nu u''\tag{7.5.11}

が残る。もう1本の式は密度の時間発展から出る。u=ν∂xln⁡ρu=\nu\partial_x\ln\rho を時間で微分し、連続の式 (7.5.8) の ∂tln⁡ρ=−v′−v ∂xln⁡ρ\partial_t\ln\rho=-v'-v\,\partial_x\ln\rho を使うと

∂tu=−∂x(νv′+uv)(7.5.12)\partial_tu=-\partial_x\bigl(\nu v'+uv\bigr)\tag{7.5.12}

を得る。(7.5.8) と (7.5.12) は運動学(過程の定義)だけから出た式で、力学は (7.5.11) に入っている。

ここで、uu の項がちょうど第7部第1章の量子ポテンシャルになることを示す。

補題 7.5.2(浸透速度と量子ポテンシャル ★★★)

u=ν∂xln⁡ρu=\nu\partial_x\ln\rho、ν=ℏ/(2m)\nu=\hbar/(2m)、Q=−ℏ22m∂x2ρρQ=-\dfrac{\hbar^2}{2m}\dfrac{\partial_x^2\sqrt\rho}{\sqrt\rho} とすると

−Qm=u22+ν u′,uu′+νu′′=−1m ∂xQ.(7.5.13)-\frac{Q}{m}=\frac{u^2}{2}+\nu\,u',\qquad uu'+\nu u''=-\frac1m\,\partial_xQ .\tag{7.5.13}

証明

ℓ=ln⁡ρ\ell=\ln\rho と書くと ρ=eℓ/2\sqrt\rho=\mathrm{e}^{\ell/2}、∂x2eℓ/2/eℓ/2=12ℓ′′+14ℓ′2\partial_x^2\mathrm{e}^{\ell/2}/\mathrm{e}^{\ell/2}=\tfrac12\ell''+\tfrac14\ell'^2。ℏ2/(2m)=2mν2\hbar^2/(2m)=2m\nu^2 なので−Q/m=2ν2(12ℓ′′+14ℓ′2)=ν(νℓ′′)+12(νℓ′)2=νu′+12u2-Q/m=2\nu^2(\tfrac12\ell''+\tfrac14\ell'^2)=\nu(\nu\ell'')+\tfrac12(\nu\ell')^2=\nu u'+\tfrac12u^2。これを xx で微分すると第2式になる。多次元でも u=ν∇ln⁡ρ\bm{u}=\nu\nabla\ln\rho は勾配なので (u⋅∇)u=∇(∣u∣2/2)(\bm{u}\cdot\nabla)\bm{u}=\nabla(\lvert \bm{u}\rvert ^2/2) が成り立ち、同じ式 (u⋅∇)u+ν∇2u=−∇Q/m(\bm{u}\cdot\nabla)\bm{u}+\nu\nabla^2\bm{u}=-\nabla Q/m が出る。

補題を (7.5.11) に入れると、(N2) は

∂tv+vv′=−1m ∂x(V+Q)(7.5.14)\partial_tv+vv'=-\frac1m\,\partial_x(V+Q)\tag{7.5.14}

になる。これは第7部第1章の量子 Euler 方程式そのものである。浸透速度の非線形項と拡散の項は、まとめて量子ポテンシャルの力の項になる。多次元では (N3) の v=∇S/m\bm{v}=\nabla S/m を使うと (v⋅∇)v=∇(∣v∣2/2)(\bm{v}\cdot\nabla)\bm{v}=\nabla(\lvert \bm{v}\rvert ^2/2) なので、(7.5.14) の勾配を外して

∂tS+∣∇S∣22m+V+Q=0(7.5.15)\partial_tS+\frac{\lvert \nabla S\rvert ^2}{2m}+V+Q=0\tag{7.5.15}

(積分定数の tt の関数は SS に吸収する)という量子 Hamilton–Jacobi 方程式を得る。連続の式 (7.5.8) と合わせて、Madelung 方程式がそろった。

同値性の定理

定理 7.5.3(Nelson の過程と Schrödinger 方程式 ★★★)

ν=ℏ/(2m)\nu=\hbar/(2m) とする。

  1. (i) (基準から過程へ)ψ=ρ eiS/ℏ\psi=\sqrt\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} が Schrödinger 方程式 iℏ∂tψ=−ℏ22m∇2ψ+Vψ\mathrm{i}\hbar\partial_t\psi=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2\psi+V\psi の解で、ρ>0\rho>0 が滑らかとする。前向きのドリフトを

b=∇Sm+ν∇ln⁡ρ(7.5.16)\bm{b}=\frac{\nabla S}{m}+\nu\nabla\ln\rho\tag{7.5.16}

とした拡散過程を、初めの位置が ∣ψ(⋅,0)∣2\lvert \psi(\cdot,0)\rvert ^2 に従うように始めると、すべての時刻で X(t)X(t) の密度は ∣ψ(⋅,t)∣2\lvert \psi(\cdot,t)\rvert ^2 で、過程は (N1)〜(N4) を満たす。2. (ii) (過程から基準へ)(N1)〜(N4) を満たす過程の密度 ρ\rho と位相 SS は Madelung 方程式 (7.5.8)・(7.5.15) を満たす。さらに閉じた輪 CC について循環の量子化 ∮C∇S⋅dl∈2πℏZ\oint_C\nabla S\cdot\mathrm{d}\bm{l}\in2\pi\hbar\mathbb{Z} が成り立つとき、そしてそのときに限り、ψ=ρ eiS/ℏ\psi=\sqrt\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} は1価なSchrödinger 方程式の解になる。

証明

(i) 第7部第1章の Madelung 変換で、ρ\rho と SS は連続の式と量子 Hamilton–Jacobi 方程式を満たす。ドリフト (7.5.16) の Fokker–Planck 方程式は∂tp=−∇⋅(bp)+ν∇2p\partial_tp=-\nabla\cdot(\bm{b}p)+\nu\nabla^2p で、p=ρp=\rho を入れると νρ∇ln⁡ρ=ν∇ρ\nu\rho\nabla\ln\rho=\nu\nabla\rho により拡散の項が消え、連続の式 ∂tρ+∇⋅(ρ∇S/m)=0\partial_t\rho+\nabla\cdot(\rho\nabla S/m)=0 に帰着する。したがって p=ρp=\rho は Fokker–Planck 方程式の解で、初めに一致していれば(解の一意性により)ずっと一致する。命題 7.5.1 から u=ν∇ln⁡ρ\bm{u}=\nu\nabla\ln\rho、v=∇S/m\bm{v}=\nabla S/m で、(N3) が成り立つ。量子 Hamilton–Jacobi 方程式の勾配を取れば量子 Euler 方程式、補題 7.5.2 で逆にたどれば (7.5.11) の aa が −∇V/m-\nabla V/m に等しく、(N2) が成り立つ。

(ii) 前の小節の計算そのものである。最後の主張は、第7部第1章の同値性の定理(Madelung 方程式から ψ\psi を作り直せるのは循環の量子化があるときに限る)をそのまま当てはめる。

定理の (ii) の後半の条件は、Nelson の要請からは出てこない。T. C. Wallstrom は、確率過程量子化が Schrödinger 方程式と同値になるには、流れの速度の循環を h/mh/m の整数倍に限るという追加の条件が要ることを指摘した(T. C. Wallstrom (1989), Foundations of Physics Letters 2, 113–126;同 (1994), Physical Review A 49, 1613)。第7部第1章で流体について見た事情が、そのまま過程にも当てはまる。もう1つの技術的な問題は、ψ\psi の節で ρ=0\rho=0 となり、ドリフト ν∇ln⁡ρ\nu\nabla\ln\rho が発散することである。E. A. Carlen は、運動エネルギーが有限な場合に、このように特異なドリフトでも (i) の過程が存在することを証明した(E. A. Carlen (1984), Communications in Mathematical Physics 94, 293–315)。

何が新しく、何が同じか

(i) と (ii) を合わせると、1粒子の Nelson の過程は、ある時刻の位置の分布について基準とまったく同じ予言をする。新しく加わったのは、各点の流れに拡散 ν=ℏ/(2m)\nu=\hbar/(2m) と浸透速度 uu を重ねた「粒子の道筋の確率法則」で、これは位置の分布からは読み取れない。Bohm の力学(第7部第4章)が同じ流体の上に決定論的な軌道を載せたのに対し、Nelson は確率的な道筋を載せた。どちらの道筋を載せても、1時刻の分布は ∣ψ∣2\lvert \psi\rvert ^2 のままである。

例題 7.5.2 運動エネルギーを流れと浸透に分ける ★★

オリジナル1次元の波動関数 ψ=ρ eiS/ℏ\psi=\sqrt\rho\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} について、次を示せ。

  1. 運動量の2乗の期待値は ⟨p^2⟩=m2∫ρ (v2+u2) dx\langle \hat p^2 \rangle =m^2\int\rho\,(v^2+u^2)\,\mathrm{d} x で、∫ρQ dx=m2∫ρu2 dx\int\rho Q\,\mathrm{d} x=\frac m2\int\rho u^2\,\mathrm{d} x である。
  2. 幅 σ\sigma の実のガウス波束では m2⟨u2⟩=ℏ2/(4σ2)m^2\langle u^2 \rangle =\hbar^2/(4\sigma^2) で、これは不確定性関係が許す運動量の分散の最小値に等しい。
解答

(1) ψ′=(12ℓ′+iS′/ℏ)ψ\psi'=(\tfrac12\ell'+\mathrm{i} S'/\hbar)\psi(ℓ=ln⁡ρ\ell=\ln\rho)なので ∣ψ′∣2=ρ(14ℓ′2+S′2/ℏ2)\lvert \psi'\rvert ^2=\rho(\tfrac14\ell'^2+S'^2/\hbar^2)。⟨p^2⟩=ℏ2∫∣ψ′∣2\langle \hat p^2 \rangle =\hbar^2\int\lvert \psi'\rvert ^2 に入れ、S′=mvS'=mv、ℏℓ′/2=m⋅2νℓ′/2=mu\hbar\ell'/2=m\cdot2\nu\ell'/2=mu を使うと ⟨p^2⟩=∫ρ(m2v2+m2u2)\langle \hat p^2 \rangle =\int\rho(m^2v^2+m^2u^2)。次に補題 7.5.2 から ∫ρQ=−m∫ρ(12u2+νu′)\int\rho Q=-m\int\rho(\tfrac12u^2+\nu u')。ρu=νρ′\rho u=\nu\rho' なので部分積分で ∫ρνu′=−ν∫ρ′u=−∫ρu2\int\rho\nu u'=-\nu\int\rho'u=-\int\rho u^2、よって ∫ρQ=−m(12−1)∫ρu2=m2∫ρu2\int\rho Q=-m(\tfrac12-1)\int\rho u^2=\tfrac m2\int\rho u^2。運動エネルギーは流れの m2⟨v2⟩\tfrac m2\langle v^2 \rangle と浸透の m2⟨u2⟩\tfrac m2\langle u^2 \rangle の和になる。

(2) ρ∝e−x2/(2σ2)\rho\propto\mathrm{e}^{-x^2/(2\sigma^2)} で u=−νx/σ2u=-\nu x/\sigma^2、m2⟨u2⟩=m2ν2/σ2=ℏ2/(4σ2)m^2\langle u^2 \rangle =m^2\nu^2/\sigma^2=\hbar^2/(4\sigma^2)。実のガウス波束では v=0v=0 なので ⟨p^2⟩=ℏ2/(4σ2)\langle \hat p^2 \rangle =\hbar^2/(4\sigma^2) で、ΔxΔp=σ⋅ℏ/(2σ)=ℏ/2\Delta x\Delta p=\sigma\cdot\hbar/(2\sigma)=\hbar/2 の等号の場合である。運動量の広がりは、Nelson の言葉では浸透速度の広がりとして現れる。

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