tecktom.com

C*代数:ノルムが代数で決まる代数

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第8部 第1章 観測量の代数から始める:C*代数と状態
目次
  1. 定義と例
  2. C*条件はノルムを代数で決める
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第8部 第1章 §8.1.2 ★★ 要請 (A1) の対象を定義する。C*条件のおかげでノルムは代数の演算から一意に決まる

定義と例

定義 8.1.2(C*代数)

複素数体の上の代数 A\mathfrak A が次の3つの構造をもつとき、A\mathfrak A を C*代数と呼ぶ。

  1. (i) 対合:写像 A↦A∗A\mapsto A^* で、(A∗)∗=A(A^*)^*=A、(AB)∗=B∗A∗(AB)^*=B^*A^*、(λA+B)∗=λ‾A∗+B∗(\lambda A+B)^*=\overline\lambda A^*+B^* を満たすもの。
  2. (ii) ノルム:∥AB∥≤∥A∥∥B∥\lVert AB\rVert \le\lVert A\rVert \lVert B\rVert を満たすノルムで、このノルムについて A\mathfrak A が完備であるもの(Banach 代数)。
  3. (iii) C*条件:すべての AA について

∥A∗A∥=∥A∥2.(8.1.3)\lVert A^*A\rVert =\lVert A\rVert ^2 .\tag{8.1.3}

この章では単位元 11(1A=A1=A1A=A1=A、∥1∥=1\lVert 1\rVert =1)をもつものだけを扱う。

代表的な例は3つある。1つ目はヒルベルト空間 H\mathcal{H} の上の有界演算子の全体 B(H)B(\mathcal{H}) で、A∗A^* はエルミート共役、ノルムは作用素ノルム ∥A∥=sup⁡∥ψ∥=1∥Aψ∥\lVert A\rVert =\sup_{\lVert \psi\rVert =1}\lVert A\psi\rVert である。C条件は∥Aψ∥2=⟨ψ∣A†A∣ψ⟩≤∥A†A∥\lVert A\psi\rVert ^2=\langle \psi | A^\dagger A | \psi \rangle \le\lVert A^\dagger A\rVert から ∥A∥2≤∥A†A∥\lVert A\rVert ^2\le\lVert A^\dagger A\rVert、逆向きは ∥A†A∥≤∥A†∥∥A∥=∥A∥2\lVert A^\dagger A\rVert \le\lVert A^\dagger\rVert \lVert A\rVert =\lVert A\rVert ^2 から出る。H=Cn\mathcal{H}=\mathbb{C}^n なら B(H)=Mn(C)B(\mathcal{H})=M_n(\mathbb{C}) である。2つ目は B(H)B(\mathcal{H}) の部分集合で、和・積・∗* について閉じ、ノルムについても閉じたもの(B(H)B(\mathcal{H}) の C部分代数)である。3つ目は、コンパクトな空間 XX の上の複素数値連続関数の全体 C(X)C(X) で、積は各点ごとの積、f∗=f‾f^*=\overline f、ノルムは最大値 ∥f∥=max⁡x∈X∣f(x)∣\lVert f\rVert =\max_{x\in X}\lvert f(x)\rvert である。∣f‾f∣=∣f∣2\lvert \overline ff\rvert =\lvert f\rvert ^2 なので C*条件は自明に成り立つ。C(X)C(X) は可換で、古典力学の観測量(相空間 XX の上の関数)の代数にあたる。

この3つで C*代数は尽きている。Gelfand と Naimark は1943年に、次の2つを示した1I. Gelfand and M. Neumark (1943), “On the imbedding of normed rings into the ring of operators in Hilbert space”, Mat. Sbornik 12(54), 197.下の脚注へ。

定理 8.1.3(Gelfand–Naimark の定理 ★★)

  1. (1) 単位元をもつ可換な C*代数は、あるコンパクト Hausdorff 空間 XX の C(X)C(X) と、ノルムまで込めて同型である。
  2. (2) 任意の C代数は、あるヒルベルト空間 H\mathcal{H} の B(H)B(\mathcal{H}) の C部分代数と、ノルムまで込めて同型である。

(1) は「可換な観測量の代数は古典の相空間の関数の代数と同じもの」と読める。(2) は「C*代数から出発しても、結局はどこかのヒルベルト空間の演算子として書ける」ことを言っており、その H\mathcal{H} を状態から具体的に作る手続きが次の章の GNS 構成である。この定理の証明はここでは書かず、使うときに結果だけ引く。

C*条件はノルムを代数で決める

C*条件 (8.1.3) は単なる技術的な条件ではない。この条件があると、ノルムは代数の演算(和・積・∗*)だけで決まる。まず元 AA のスペクトルを

σ(A)≔{λ∈C:A−λ1 が A の中に逆元をもたない}(8.1.4)\sigma(A)\coloneqq\{\lambda\in\mathbb{C} : A-\lambda1\ \text{が}\ \mathfrak A\ \text{の中に逆元をもたない}\}\tag{8.1.4}

で定義する。これは「逆元があるか」という代数の言葉だけで書かれている。行列なら σ(A)\sigma(A) は固有値の集合である。スペクトル半径 r(A)≔max⁡λ∈σ(A)∣λ∣r(A)\coloneqq\max_{\lambda\in\sigma(A)}\lvert \lambda\rvert は、Banach 代数で一般にr(A)=lim⁡n→∞∥An∥1/nr(A)=\lim_{n\to\infty}\lVert A^n\rVert ^{1/n}(Gelfand の公式)を満たす。

命題 8.1.4(自己共役な元のノルム ★★)

C*代数の自己共役な元 AA について ∥A∥=r(A)\lVert A\rVert =r(A) が成り立つ。任意の元 BB について ∥B∥=r(B∗B)\lVert B\rVert =\sqrt{r(B^*B)} である。

証明

A∗=AA^*=A なら C*条件から ∥A2∥=∥A∗A∥=∥A∥2\lVert A^2\rVert =\lVert A^*A\rVert =\lVert A\rVert ^2。A2A^2 も自己共役なので同じことを繰り返すと∥A2k∥=∥A∥2k\lVert A^{2^k}\rVert =\lVert A\rVert ^{2^k} がすべての kk で成り立つ。Gelfand の公式で部分列 n=2kn=2^k をとるとr(A)=lim⁡k∥A2k∥2−k=∥A∥r(A)=\lim_k\lVert A^{2^k}\rVert ^{2^{-k}}=\lVert A\rVert。任意の BB については B∗BB^*B が自己共役なので∥B∥2=∥B∗B∥=r(B∗B)\lVert B\rVert ^2=\lVert B^*B\rVert =r(B^*B)。

右辺の r(B∗B)r(B^*B) はスペクトルだけで決まり、スペクトルは逆元の有無という代数の性質だけで決まる。したがって、同じ代数に C*条件を満たすノルムを2通り入れることはできない。量子力学の観測量の「大きさ」は、観測量どうしの代数関係から一意に決まっていることになる。BB が自己共役でないとき、∥B∥\lVert B\rVert と r(B)r(B) は一般に違う。N=(0100)N=\bigl(\begin{smallmatrix}0&1\\0&0\end{smallmatrix}\bigr) では固有値が 00 だけなので r(N)=0r(N)=0 だが、N∗N=(0001)N^*N=\bigl(\begin{smallmatrix}0&0\\0&1\end{smallmatrix}\bigr)の固有値は 0,10,1 なので ∥N∥=1\lVert N\rVert =1 である。

例題 8.1.2 行列のノルムを代数から出す ★★

オリジナルA=(1201)∈M2(C)A=\begin{pmatrix}1&2\\0&1\end{pmatrix}\in M_2(\mathbb{C}) とする。

  1. (1) スペクトル σ(A)\sigma(A) とスペクトル半径 r(A)r(A) を求めよ。
  2. (2) 命題 8.1.4 を使って作用素ノルム ∥A∥\lVert A\rVert を求めよ。
  3. (3) 行列の Frobenius ノルム ∥A∥F=(∑ij∣Aij∣2)1/2\lVert A\rVert _{\mathrm F}=\bigl(\sum_{ij}\lvert A_{ij}\rvert ^2\bigr)^{1/2} は積について ∥AB∥F≤∥A∥F∥B∥F\lVert AB\rVert _{\mathrm F}\le\lVert A\rVert _{\mathrm F}\lVert B\rVert _{\mathrm F} を満たす。これが C*条件を満たさないことを、この AA で確かめよ。
解答

(1) 上三角行列なので固有値は対角成分の 11(重解)。σ(A)={1}\sigma(A)=\{1\}、r(A)=1r(A)=1 である。

(2) A∗A=(1021)(1201)=(1225)A^*A=\begin{pmatrix}1&0\\2&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1&2\\0&1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1&2\\2&5\end{pmatrix}。固有方程式 λ2−6λ+1=0\lambda^2-6\lambda+1=0 から固有値は 3±223\pm2\sqrt2 で、r(A∗A)=3+22r(A^*A)=3+2\sqrt2。したがって ∥A∥=3+22=1+2≈2.414\lVert A\rVert =\sqrt{3+2\sqrt2}=1+\sqrt2\approx2.414((1+2)2=3+22(1+\sqrt2)^2=3+2\sqrt2 による)。AA は自己共役でなく、単位ベクトル ψ\psi を最大で 1+21+\sqrt2 倍に引き伸ばすので、∥A∥\lVert A\rVert は r(A)=1r(A)=1 より大きくなる。

(3) ∥A∥F2=1+4+0+1=6\lVert A\rVert _{\mathrm F}^2=1+4+0+1=6。一方 ∥A∗A∥F=1+4+4+25=34≈5.83\lVert A^*A\rVert _{\mathrm F}=\sqrt{1+4+4+25}=\sqrt{34}\approx5.83 で、66 と一致しない。Frobenius ノルムは Banach 代数のノルムにはなるが C条件を満たさないので、M2(C)M_2(\mathbb{C}) を C代数にするノルムは作用素ノルムに限られる。

1 I. Gelfand and M. Neumark (1943), “On the imbedding of normed rings into the ring of operators in Hilbert space”, Mat. Sbornik 12(54), 197.

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ