変数の尺度
AI 生成・木下が未勉強
統計学の復習 第1章 §1.1 ★★ 4つの尺度は「どの変換で意味が変わらないか」で区別する。尺度ごとに使える代表値が決まる
この章は、対策本の第1章(データの集計と表現方法)・第2章(データの分布)・第4章(箱ひげ図)に当たる。
データを集めたあと最初に行う作業は、数値を要約する前に「そのデータで何をしてよいか」を決めることと、分布の形を目で見られる形に直すことである。前者を決めるのが変数の尺度で、後者の道具が度数分布表・ヒストグラム・累積相対度数の折れ線・ローレンツ曲線・箱ひげ図である。2級ではこれらを「表を読んで数値を出す」形で問うが、この章では各道具を式で定義し直し、なぜその手順で数値が出るのかを積分と和の計算で確かめる。
1級との関係は2つある。第一に、度数分布の累積を連続な関数として扱う見方は、そのまま経験分布関数と順序統計量の話になる(数理統計の解説 第5章 §5.4 で扱う)。第二に、分位点(四分位数・パーセント点)を「累積分布関数がその値に達する点」として定義する考え方は、以後の章で や を引くときの考え方と同じである。この章では、ジニ係数と箱ひげ図の外れ値基準を、離散のデータだけでなく密度で与えた分布に対しても計算し、第4章以降の期待値の計算へつなぐ。
質的変数と量的変数
調査や実験で記録する項目を変数と呼ぶ。変数は、値が分類の名札にすぎない質的変数(カテゴリカル変数)と、値が数量を表す量的変数に分かれる。量的変数はさらに、人数や件数のようにとびとびの値しかとらない離散変数と、身長や時間のように区間内の任意の値をとりうる連続変数に分かれる。質的変数に番号を振って記録することはよくあるが、番号を振っただけで量的変数になるわけではない。番号の大小や差に意味があるかどうかは、次の尺度の区別で判断する。
4つの尺度と許される変換
尺度の区別は「データにどんな変換を施しても、データの持つ情報が変わらないか」で定義すると、使える統計量との対応が明確になる。
定義 1.1(変数の尺度)
変数の値の付け方を変換 で付け替えることを考える。
- 名義尺度:値は区別のための名札で、任意の一対一の付け替え を施しても情報が変わらない(例:血液型、郵便番号、背番号)。
- 順序尺度:値の大小に意味があり、狭義単調増加の で付け替えても情報が変わらない(例:5段階の満足度、徒競走の着順)。
- 間隔尺度:値の差に意味があり、()で付け替えても情報が変わらない(例:摂氏温度、西暦年)。
- 比例尺度(比尺度):値の比にも意味があり、()で付け替えても情報が変わらない(例:身長、体重、所得、絶対温度)。
名義・順序尺度の変数が質的変数、間隔・比例尺度の変数が量的変数に当たる。
下の尺度ほど許される変換が少なく、そのぶんデータに含まれる情報が多い。間隔尺度と比例尺度の違いは原点が意味を持つかである。摂氏の ℃は水の凝固点を便宜的に と置いただけで「温度が無い」状態ではないので、原点をずらす変換 が許される。所得の 円は「所得が無い」状態を表すので、原点は動かせず、単位の取り替え だけが許される。
統計量が尺度の上で意味を持つかどうかは、次の性質で判定する。統計量 が変換 と可換であるとは、データ を で付け替えてから を計算しても、 を計算してから を施しても同じ値になること、すなわち が成り立つことをいう。尺度で許される変換すべてと可換な統計量は、値の付け方によらず同じ対象を指すので、その尺度で使ってよい。
命題 1.2(代表値と変換の可換性)
データの個数 を奇数とする。
- 最頻値は任意の一対一の変換と可換である。
- 中央値は任意の狭義単調増加の変換と可換である。
- 平均 は一次変換 と可換であるが、一般の単調増加の変換とは可換でない。
証明
(1) 一対一の変換は値の重複の個数を変えないので、最も多く現れる値は付け替えたあとも最も多く現れる。
(2) 小さい順に並べた値を と書き、 とおくと中央値は である。 が狭義単調増加なら なので、付け替えたデータを小さい順に並べると となり、その 番目は である。
(3) 和の線形性から となる。単調増加の ()と では、2乗の平均は で、平均の2乗は だから一致しない。
この命題から、尺度と代表値の対応が出る。名義尺度で使えるのは最頻値だけで、順序尺度では中央値まで、間隔尺度では平均まで使える。比例尺度では、比 や、第2章で扱う変動係数(標準偏差を平均で割った量)のように、原点を基準にした量も意味を持つ。 が偶数のとき中央値は中央の2つの値の平均で定義するので、単調変換との可換性は一般に崩れる(確認テスト 1.1-3)。それでも順序尺度で中央値を使うのは、2つの値の間のどの値を代表に選んでも順序の上では同じ位置を指すからである。
順序尺度に平均を使うと何が起きるか
5段階の満足度を と符号化して平均を比べることは実務でよく行われる。しかし という間隔は便宜的に決めたもので、 を に付け替えても順序の情報は同じである。付け替えによって2つの群の平均の大小が入れ替わる例が作れる(確認テスト 1.1-4)。順序尺度で平均を比べて得た結論は、符号化の仕方に依存する。
例題 1.1 温度の比と、変換で変わる代表値 ★★
オリジナル
- 2日の最高気温が ℃と ℃であった。「2日目は1日目の2倍暑い」という言い方が意味を持たないことを、華氏 に付け替えて示せ。絶対温度 に付け替えた場合の比も求めよ。
- データ を で付け替える。中央値と平均のそれぞれについて、 と可換かどうかを数値で確かめよ。
解答
(1) 華氏では 、 となり、比は である。摂氏では比が だったので、同じ2日について比の値が単位の選び方で変わる。摂氏から華氏への変換は ()の形で、間隔尺度では許される変換なので、比はこの尺度の上で意味を持たない。差については で、差の比(「2日間の差は別の2日間の差の何倍か」)は変換で変わらない。絶対温度では 、 で比は である。絶対温度は原点が物理的に決まる比例尺度なので、この比は「熱運動のエネルギーの比」として意味を持つ。
(2) 付け替えたデータは である。中央値は元のデータで 、付け替えたデータで となり、 と可換である(命題 1.2 (2) の例)。平均は元のデータで 、付け替えたデータで となり、 と一致しない。平均は単調変換と可換でないので、順序尺度の代表値として使うことはできない。
確認テスト
オリジナル
- 1.1-1 次の変数の尺度を答えよ。(a) 血液型 (b) 摂氏の気温 (c) 体重 (d) 成績の5段階評価 (e) 西暦年 (f) 郵便番号
- 1.1-2 4つの値 ()について、差の比 は一次変換 ()で変わらないことを示せ。比 は一次変換で変わりうることを例で示せ。
- 1.1-3 が偶数のとき中央値を中央の2値の平均で定める。データ と で、中央値が と可換でないことを示せ。
- 1.1-4 満足度を 〜 で符号化した2つの群 、 がある。(a) 平均と中央値の大小を比べよ。(b) 符号 を に付け替えた(順序は保たれる)とき、平均と中央値の大小を比べ直し、何が言えるかを述べよ。
木下の勉強ステータス
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