統計学の復習 第1章 §1.4 ★★ ジニ係数を面積の積分として定義し、平均差による表示と一致することを示す。密度で与えた分布にも同じ式で使う
ローレンツ曲線
所得のように非負の量が集団の中でどれだけ偏って分配されているかを図で示すのがローレンツ曲線である。所得 x1,…,xn≥0(総和 S=∑xi>0)を小さい順に並べて x(1)≤⋯≤x(n) とし、下位 k 人の所得の合計が全体に占める割合を
Lk=Sx(1)+⋯+x(k)(L0=0, Ln=1)
とおく。
定義 1.6(ローレンツ曲線)
点 (k/n,Lk)(k=0,1,…,n)を順に線分で結んだ折れ線をローレンツ曲線と呼ぶ。横軸は人数の累積比率、縦軸は所得の累積比率である。
k 番目の線分の傾きは 1/nLk−Lk−1=Snx(k)=xˉx(k) である。x(k) は k について単調非減少なので、傾きは右へ行くほど大きくなり、ローレンツ曲線は下に凸な折れ線になる。両端が (0,0) と (1,1) なので、下に凸な曲線は両端を結ぶ対角線 y=x より下にある(確認テスト 1.4-4)。全員の所得が等しければすべての傾きが 1 で、曲線は対角線に一致する。この対角線を完全平等線と呼ぶ。所得が偏るほど、曲線は右下の角に向かって垂れ下がる。
ジニ係数
垂れ下がりの大きさを1つの数で表すのがジニ係数である。
定義 1.7(ジニ係数)
完全平等線とローレンツ曲線に挟まれた部分の面積の2倍をジニ係数 G と呼ぶ。ローレンツ曲線の下の面積を A とすると、対角線の下の面積が 1/2 なので
G=2(21−A)=1−2A(1.5)
である。
ローレンツ曲線は折れ線なので、A は n 個の台形の面積の和である。k 番目の台形は幅 1/n、上底と下底が Lk−1 と Lk だから、
A=n1k=1∑n2Lk−1+Lk,G=1−n1k=1∑n(Lk−1+Lk).(1.6)
完全平等なら A=1/2 で G=0 である。1人が全所得を持ち他の n−1 人が 0 なら、L0=⋯=Ln−1=0、Ln=1 でA=n1⋅21、G=1−n1 になる。G の最大値は 1 でなく 1−1/n であり、n→∞ で 1 に近づく。
面積による定義は図の上で分かりやすいが、計算には次の表示が便利である。
定理 1.8(ジニ係数の平均差による表示)
xˉ=S/n とすると
G=2n2xˉ1i=1∑nj=1∑n∣xi−xj∣=nS2∑k=1nkx(k)−nn+1.(1.7)
証明
2つ目の等号を先に台形の式 (1.6) から導く。Lk=S1∑l≤kx(l) なので、∑k=1n(Lk−1+Lk) の中で x(l)/S が何回現れるかを数える。x(l) は Lk(k≥l)の n−l+1 個に含まれ、Lk−1(k−1≥l、すなわち k≥l+1)の n−l 個に含まれるので、合計 2n−2l+1 回現れる。よって
k=1∑n(Lk−1+Lk)=S1l=1∑n(2n−2l+1)x(l)=(2n+1)−S2l=1∑nlx(l)
となる(∑lx(l)=S を使った)。これを G=1−n1∑(Lk−1+Lk) に入れるとG=1−n2n+1+nS2∑lx(l)=nS2∑lx(l)−nn+1 を得る。
次に平均差の和を順位で書き直す。順序統計量で書くと ∑i∑j∣xi−xj∣=2∑k<l(x(l)−x(k)) である。x(l) は自分より順位の低い l−1 個との差で正の符号で現れ、順位の高い n−l 個との差で負の符号で現れるので
i,j∑∣xi−xj∣=2l=1∑n((l−1)−(n−l))x(l)=2l=1∑n(2l−n−1)x(l)=4l∑lx(l)−2(n+1)S
となる。両辺を 2n2xˉ=2nS で割ると nS2∑lx(l)−nn+1 となり、2つ目の表示に一致する。
平均差の表示から、ジニ係数は「無作為に2人を選んだときの所得の差の絶対値の平均を、平均所得の2倍で割ったもの」と読める。全員の所得を c 倍しても G は変わらない。一方、全員に同額 c>0 を足すと分子は変わらず分母が増えるので、G は小さくなる(確認テスト 1.4-2)。所得は比例尺度の量なので、原点をずらすと値が変わる指標を使ってよい。
例題 1.4 5世帯のジニ係数を2通りに計算する ★★
オリジナル5世帯の年間所得(百万円)が 2,3,5,10,20 である。
- 累積比率 Lk を求め、ローレンツ曲線の下の面積 A と G を台形の式で求めよ。
- 平均差の式 (1.7) で G を求め、(1) と一致することを確かめよ。
- 世帯数 5 のとき G がとりうる最大値を求めよ。
解答
(1) 総和は S=40 である。累積和 2,5,10,20,40 を 40 で割って L1,…,L5=0.05,0.125,0.25,0.5,1 となる。台形の上底と下底の和は順に 0.05, 0.175, 0.375, 0.75, 1.5 で、合計は 2.85 である。
A=51⋅22.85=0.285,G=1−2×0.285=0.43.
(2) i<j の組の差を順位の小さい方から数えると、2 との差が 1,3,8,18(計 30)、3 との差が 2,7,17(計 26)、5 との差が 5,15(計 20)、10 との差が 10 である。合計は 86 で、i>j の組も同じだけあるので ∑i,j∣xi−xj∣=172 となる。xˉ=8 だから G=172/(2×25×8)=172/400=0.43 で、(1) と一致する。順位の式でも ∑kx(k)=2+6+15+40+100=163 から G=5×402×163−56=1.63−1.2=0.43 となる。
(3) 1世帯が全所得を持つときで、G=1−1/5=0.8 である。

図 1.2 例題 1.4 のローレンツ曲線。塗った部分の面積が 1/2−A=0.215 で、その2倍がジニ係数 0.43 である。
密度で与えた分布のローレンツ曲線
所得の分布を密度 f、累積分布関数 F で表すモデル(第4章以降で扱う連続型の分布)にも、同じ考え方でローレンツ曲線を定義することができる。F が連続で狭義単調増加なら逆関数 Q=F−1(分位点関数)がある。下位の割合 p の人がちょうど所得 Q(p) 以下の人にあたり、離散の場合の和 n1∑k≤npx(k) は積分 ∫0pQ(u)du に置き換わる。平均 μ=∫01Q(u)du で割って
L(p)=μ1∫0pQ(u)du,G=1−2∫01L(p)dp(1.8)
と定める。離散の場合 (1.7) の平均差の表示は、独立に同じ分布に従う X1,X2 を使って
G=2μE∣X1−X2∣(1.9)
になる。U を (0,1) 上の一様分布に従う確率変数とすると P(Q(U)≤x)=P(U≤F(x))=F(x) なので、X=Q(U) と書くことができる。これを使うと E∣X1−X2∣=2∫01Q(u)(2u−1)du となり、(1.8) の G と一致することが積分の順序の入れ替えで示せる(第7章で2変数の期待値を扱ったあとで確かめるとよい)。
例題 1.5 一様分布の所得のジニ係数 ★
オリジナル所得 X が区間 (0,1) 上の一様分布に従うとする。
- ローレンツ曲線 L(p) を求め、ジニ係数を求めよ。
- 所得が区間 (a,a+1)(a≥0)上の一様分布に従うときのジニ係数を、平均差の式 (1.9) と E∣X1−X2∣=1/3(幅 1 の一様分布)から求め、a を大きくするとどうなるかを述べよ。
解答
(1) F(x)=x(0<x<1)なので Q(u)=u、μ=1/2 である。
L(p)=1/21∫0pudu=p2,∫01p2dp=31,G=1−32=31.
(2) 区間をずらしても2人の差の分布は変わらないので E∣X1−X2∣=1/3 のままで、平均は a+1/2 になる。
G=2(a+1/2)1/3=3(2a+1)1.
a=0 で (1) の 1/3 に一致し、a を大きくすると 0 に近づく。全員に同額を足すと格差の指標が小さくなることの、連続な分布での例である。
確認テスト
オリジナル
- 1.4-1 4人の所得が (a) 1,1,1,1、(b) 0,0,0,8 のとき、台形の式でジニ係数を求めよ。
- 1.4-2 平均差の表示 (1.7) を使い、全員の所得を c 倍(c>0)しても G が変わらないこと、全員に c>0 を足すと G が xˉ/(xˉ+c) 倍になることを示せ。例題 1.4 の所得に 4 を足したときの G を求めよ。
- 1.4-3 所得 X の密度が f(x)=2x(0<x<1)のとき、ローレンツ曲線 L(p) とジニ係数を求めよ。
- 1.4-4 ローレンツ曲線が下に凸な折れ線であることから、0≤p≤1 で L(p)≤p(曲線が完全平等線より下にある)ことを示せ。
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