統計学の復習 第16章 §16.3 ★★★ 検出力の条件 Δn−zα≥zβ を n について解くと、必要な標本の大きさ n≥{(zα+zβ)σ/δ}2 が出る
必要な標本の大きさ
実験を計画するときは、「平均が δ だけずれていたら、検出力 1−β 以上で見つけたい」という要求を先に決め、それを満たす n を求める。(16.4) で μ−μ0=δ>0 とすると、検出力が 1−β 以上になる条件は
Φ(σnδ−zα)≥1−β
である。Φ(zβ)=1−β(zβ は上側 100β% 点)で、Φ は増加関数なので、この条件は nδ/σ−zα≥zβ と同値である。n について解いて2乗する。
定理 16.6(片側 z 検定で必要な標本の大きさ)
片側 z 検定(有意水準 α)が、差 δ>0 を検出力 1−β 以上で検出するための条件は
n≥{δ(zα+zβ)σ}2(16.6)
で、これを満たす最小の整数(右辺の切り上げ)が必要な標本の大きさである。両側検定では、(16.5) の第2項を無視する近似のもとで zα を zα/2 に替える。
(16.6) から、必要な n について次のことを読み取ることができる。n は (σ/δ)2 に比例するので、検出したい差を半分にすると n は4倍になる。α や β を小さくすると zα+zβ が大きくなり、n が増える。よく使う値は z0.05=1.645、z0.025=1.960、z0.2=0.8416(検出力 0.8)、z0.1=1.2816(検出力 0.9)である。
注意
σ が未知で t 検定を使うときは、H1 のもとでの検定統計量の分布が t 分布からずれた分布(非心 t 分布)になり、(16.4) は近似になる。2級では σ を既知とした (16.6) で見当をつければ十分である。非心分布による正確な計算は1級の範囲である(数理統計の解説 第9章 §9.2 では、F 検定の検出力を同じ考え方の非心 χ2 分布で扱う)。
2群の比較
独立な2群(各群 n 個、共通の既知の分散 σ2)の平均の差を比べるときは、Xˉ−Yˉ の分散が 2σ2/n である(第10章 §10.5)。1標本の式で σ2 を 2σ2 に置き換えればよく、
n≥2{δ(zα+zβ)σ}2(各群)(16.7)
となる。2群を比べるには、1群の平均を既知の値と比べるときの各群2倍、合計4倍の個体が要る。§16.1 の対応のある比較なら、差の分散が 2σ2(1−ρ) なので、必要な対の数は (16.7) の (1−ρ) 倍になる。
母比率の検定の検出力
母比率の検定 H0:p=p0、H1:p>p0 では、第8章の二項分布の正規近似を使う。H0 のもとで p^≈N(p0,p0q0/n)(q0=1−p0)なので、棄却域は p^≥c、c=p0+zαp0q0/n である。真の値が p1>p0 のとき p^≈N(p1,p1q1/n) で、標準偏差が H0 のもとと違うことに注意が要る。
1−β=P(p^≥c)≈Φ(p1q1/np1−c)=Φ(p1q1n(p1−p0)−zαp0q0).(16.8)
これが 1−β 以上になる条件 {n(p1−p0)−zαp0q0}/p1q1≥zβ を解いて
n≥{p1−p0zαp0q0+zβp1q1}2(16.9)
を得る。母平均の場合と違い、zα には H0 のもとの標準偏差、zβ には H1 のもとの標準偏差が掛かる。
例題 16.3 必要な標本の大きさを逆算する ★★★
オリジナル
- 例題 16.2 の充填量の検査(σ=10、片側、有意水準 5%)で、平均が 5 mL 上にずれたとき検出力 0.8 以上で検出したい。必要な本数を求めよ。
- 同じ σ で、両側検定(有意水準 5%)で δ=5 を検出力 0.9 以上で検出するには何本要るか。
- ある広告の反応率は従来 p0=0.5 である。新しい広告で反応率が p1=0.6 に上がっていたら、片側有意水準 5%、検出力 0.8 で検出したい。何人に見せればよいか。
解答
(1) (16.6) で z0.05=1.645、z0.2=0.8416、σ/δ=2 とすると
n≥{(1.645+0.8416)×2}2=4.97302=24.73
なので 25 本である。例題 16.2 (3) で n=25 の検出力が 0.804 だったことと合っている。
(2) z0.025=1.960、z0.1=1.2816 で
n≥{(1.960+1.2816)×2}2=6.48322=42.03
なので 43 本である。n=43 のとき (16.5) の第2項は Φ(−0.543−1.960)=Φ(−5.24) で、10−7 程度なので無視してよい。
(3) p0q0=0.25=0.5、p1q1=0.24=0.4899 を (16.9) に入れると
n≥(0.11.645×0.5+0.8416×0.4899)2=(0.10.8224+0.4123)2=12.3472=152.46
なので 153 人である。比率の差 0.1 は、標準偏差 0.5 に比べて効果量 0.2 程度の小さな差なので、百数十人の規模が要る。
確認テスト
オリジナル
- 16.3-1 (16.4) から (16.6) を導け。また、検出したい差 δ を 1/3 にすると必要な n は何倍になるかを答えよ。
- 16.3-2 σ=8 の正規母集団で、両側検定(有意水準 1%)が差 δ=3 を検出力 0.9 以上で検出するのに必要な n を求めよ(z0.005=2.576)。
- 16.3-3 2つの製法の平均強度を比べる。各群同数で σ=10 は共通かつ既知とする。両側有意水準 5% で差 5 を検出力 0.8 以上で検出するには、各群何個要るか。
- 16.3-4 不良率 p0=0.2 の工程が改悪されて p1=0.3 になったことを、片側有意水準 5%、検出力 0.9 で検出したい。何個を検査すればよいか。
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