数理統計 第2章 §2.2 ★★ 規格化条件で定数を決め、密度を積分して確率と分布関数を出す。ハザード関数から分布を戻す操作も扱う
確率関数
定義 2.5(確率関数)
X が離散型で、値を取りうる点が x1,x2,… のとき、
p(x):=P(X=x)
を X の確率関数と呼ぶ。p(x)>0 となる点の集合を、この確率変数の台と呼ぶ。
確率関数は p(x)≥0 と ∑kp(xk)=1 を満たす。逆に、この2条件を満たす関数は確率関数になる。分布関数とは次の式で互いに書き換えることができる。
F(x)=xk≤x∑p(xk),p(xk)=F(xk)−F(xk−)
例えば成功確率 p の試行を独立に繰り返し、初めて成功するまでの回数を X とする。この回数は
P(X=k)=p(1−p)k−1(k=1,2,…)(2.4)
に従う。k−1 回失敗したあと成功する確率なので、独立性から各回の確率の積になる。等比級数の和から
k≥1∑p(1−p)k−1=1−(1−p)p=1
で、確率関数の条件を満たす。これを幾何分布と呼ぶ(失敗の回数 X−1 を幾何分布と呼ぶ流儀もあるので、答案では台を明記する)。
確率密度関数
定義 2.6(確率密度関数)
非負の関数 f が、すべての x について
F(x)=∫−∞xf(t)dt(2.5)
を満たすとき、f を X の確率密度関数(密度)と呼ぶ。f(x)>0 となる点の集合を台と呼ぶ。
密度は次の2条件を満たす。逆に、この2条件を満たす関数は密度になる。
f≥0,∫−∞∞f(x)dx=1
第2の条件を規格化条件と呼ぶ。密度が f(x)=Cg(x) の形で与えられ、定数 C が未知のときは、規格化条件から
C=1/∫g(x)dx
と決まる。1級ではこの計算が大問の最初の小問として繰り返し出る。
式 (2.5) から、f が連続な点では微分積分学の基本定理により F′(x)=f(x) である。区間の確率は
P(a<X≤b)=F(b)−F(a)=∫abf(x)dx
である。分布関数は連続なので1点の確率は0で、区間の端を含むかどうかで確率は変わらない。
密度の値 f(x) 自体は確率ではなく、1を超えることもある。これは「点 x の近くの短い区間に入る確率が、およそ密度×区間の長さ」という意味の確率の密度で、次のように読む。
P(x<X≤x+h)=f(x)h+o(h)
密度は分布によって一意には決まらない。有限個の点で値を変えても積分は変わらないからである。このため「密度が x=0 で何の値か」を問う意味は無い。答案では台の内部で密度を書き、台の外を0とすれば十分である。
台を書き落とさない
密度 f(x)=λe−λx は x>0 でだけこの式であり、それ以外では0である。台を書き落とすと、規格化条件の積分範囲や、変数変換(§2.5)で変換後の台を誤る。台が母数に依存する分布(例えば (0,θ) 上の一様分布)では、台を書き落とすと第6章の最尤推定や十分統計量の議論が成り立たなくなる。密度は f(x)=λe−λx1{x>0} のように指示関数を付けて書くと、台を落とさずにすむ。
ハザード関数
寿命の分布を表すとき、密度の代わりに次の関数を使うことがある。
定義 2.7(ハザード関数)
非負の確率変数 X が密度 f を持つとする。分布関数を F とする。Fˉ(x):=1−F(x) を生存関数、
h(x):=Fˉ(x)f(x)(Fˉ(x)>0)(2.6)
をハザード関数(瞬間故障率)と呼ぶ。
ハザード関数は「時刻 x まで生き残った条件の下で、直後の短い時間 Δ に故障する確率」を、その時間で割った極限である。実際、
P(x<X≤x+Δ∣X>x)=Fˉ(x)F(x+Δ)−F(x)=Fˉ(x)f(x)Δ+o(Δ)
である。Fˉ′(x)=−f(x) なので
h(x)=−dxdlogFˉ(x)
である。両辺を0から x まで積分し、Fˉ(0)=1 を使うと
Fˉ(x)=exp(−∫0xh(t)dt)(2.7)
を得る。ハザード関数から分布関数が戻るので、ハザード関数も分布を1つに決める。
ハザードが定数 λ のとき、式 (2.7) から Fˉ(x)=e−λx である。つまり X∼Ex(λ) である。このとき s,t>0 について
P(X>s+t∣X>s)=e−λse−λ(s+t)=e−λt=P(X>t)(2.8)
が成り立つ。すでに s だけ生き残ったという条件を付けても、その後の寿命の分布は変わらない。この性質を無記憶性と呼ぶ。
逆に、連続型で無記憶性を持つ分布は指数分布だけである。g(t)=Fˉ(t) とおくと、無記憶性は
g(s+t)=g(s)g(t)
と書ける。生存関数が単調で 0<g<1 なら、この関数方程式の解は g(t)=e−λt の形に限られるからである。離散型では幾何分布 (2.4) が同じ性質を持つ(確認テスト 2.2-4)。
例題 2.2 規格化定数と分布関数 ★★
オリジナル確率変数 X の密度が次で与えられている。
f(x)={Cx(1−x)20(0<x<1)(それ以外)
- 定数 C を求めよ。
- 分布関数 F(x) を求め、P(X>1/2) を計算せよ。
- 密度が最大になる x(最頻値)と、そのときの密度の値を求めよ。
解答
(1) x(1−x)2=x−2x2+x3 なので
∫01x(1−x)2dx=21−32+41=126−8+3=121.
規格化条件 C⋅121=1 から C=12。
(2) 0≤x≤1 で
F(x)=∫0x12(t−2t2+t3)dt=12(2x2−32x3+4x4)=6x2−8x3+3x4,
x<0 では0、x>1 では1である。F(1)=6−8+3=1 で、規格化と整合する。
F(1/2)=46−88+163=1611,P(X>1/2)=1−1611=165=0.3125.
(3) g(x)=x(1−x)2 を微分すると
g′(x)=(1−x)2−2x(1−x)=(1−x)(1−3x).
区間 (0,1) での導関数の符号は、点 1/3 より左で正、右で負である。よって最頻値は x=1/3 で、
f(1/3)=12⋅31⋅94=916=1.778.
密度の値は1を超えてよい。この分布は第3章のベータ分布 Beta(2,3) である。
確認テスト
オリジナル
- 2.2-1 p(k)=c/{k(k+1)}(k=1,2,…)が確率関数になるように、定数を定めよ。
- 2.2-2 密度 f(x)=C/(1+x)3(x>0)について、定数・分布関数・中央値を求めよ。
- 2.2-3 寿命 X≥0 のハザード関数が h(x)=2x である。分布関数と密度を求め、P(X>1) と P(X>2∣X>1) を計算せよ。無記憶性は成り立つか。
- 2.2-4 幾何分布 (2.4) について、正の整数 m,n に対し次を示せ。
P(X>m+n∣X>m)=P(X>n)
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