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発展的事項

2026年10月15日12分で読めますAI生成教科書『資格試験』第6章 統計的推定
目次
  1. Fisher 情報行列
  2. Kullback–Leibler 情報量
  3. AIC の導出
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

数理統計 第6章 §6.4 ★★ 多パラメータの Fisher 情報行列と、Kullback–Leibler 情報量から導く AIC

本の「発展的事項」の節に当たるこの節では、1級の範囲に入る話題として、パラメータが複数あるときの Fisher 情報行列と、最尤法をモデル選択へ広げる AIC を扱う。AIC は 2025年 統計数理 問1 の題材(区分定数型の密度での最尤推定と AIC の導出)でも問われた。

Fisher 情報行列

パラメータがベクトル θ=(θ1,…,θk)⊤\theta=(\theta_1,\dots,\theta_k)^\top のとき、スコアはベクトル s=∂log⁡f/∂θ\bm{s}=\partial\log f/\partial\theta になる。Fisher 情報量は次の k×kk\times k 行列

I(θ)jl=Eθ[sjsl]=−Eθ[∂2log⁡f(X;θ)∂θj∂θl](6.10)I(\theta)_{jl}=E_\theta[s_js_l]=-E_\theta\Bigl[\frac{\partial^2\log f(X;\theta)}{\partial\theta_j\partial\theta_l}\Bigr]\tag{6.10}

になる。2つ目の等号は、補題 6.12 の証明を偏微分で繰り返せば同じように示せる。

定理 6.16(多パラメータの Cramér–Rao の不等式 ★★)

正則条件のもとで Eθ[T]=g(θ)E_\theta[T]=g(\theta) とし、勾配を

∇g=(∂g∂θ1,…,∂g∂θk)⊤\nabla g=\Bigl(\frac{\partial g}{\partial \theta_1},\dots,\frac{\partial g}{\partial \theta_k}\Bigr)^\top

と書く。このとき

Vθ[T]≥1n∇g⊤I(θ)−1∇g.V_\theta[T]\ge\frac1n\nabla g^\top I(\theta)^{-1}\nabla g.

証明

定理 6.13 の証明と同じく、次の2つが成り立つ(後者は行列)。

Cov(T,∂ℓ∂θj)=∂g∂θj,V[∂ℓ∂θ]=nI(θ)\mathrm{Cov}\Bigl(T,\frac{\partial \ell}{\partial \theta_j}\Bigr)=\frac{\partial g}{\partial \theta_j},\qquad V\Bigl[\frac{\partial \ell}{\partial \theta}\Bigr]=nI(\theta)

任意のベクトル a\bm{a} について、Cauchy–Schwarz から

(a⊤∇g)2=Cov(T,a⊤∂ℓ∂θ)2≤V[T]⋅n a⊤Ia\bigl(\bm{a}^\top\nabla g\bigr)^2=\mathrm{Cov}\Bigl(T,\bm{a}^\top\frac{\partial \ell}{\partial \theta}\Bigr)^2\le V[T]\cdot n\,\bm{a}^\top I\bm{a}

である。a=I−1∇g\bm{a}=I^{-1}\nabla g とおくと

(∇g⊤I−1∇g)2≤V[T]⋅n ∇g⊤I−1∇g(\nabla g^\top I^{-1}\nabla g)^2\le V[T]\cdot n\,\nabla g^\top I^{-1}\nabla g

となる。両辺を正の数 n∇g⊤I−1∇gn\nabla g^\top I^{-1}\nabla g で割ればよい。

定理 6.14 も同じ形で拡張され、n(θ^n−θ)→dNk(0,I(θ)−1)\sqrt n(\hat\theta_n-\theta)\xrightarrow{d}\mathrm{N}_k\bigl(\bm 0,I(\theta)^{-1}\bigr) となる。1つの成分の漸近分散は (I−1)11(I^{-1})_{11} であって、1/I111/I_{11} ではない。ほかのパラメータが未知であることで推定が難しくなる分が、逆行列を取る操作に入っている。

正規分布の Fisher 情報行列

θ=(μ,v)\theta=(\mu,v)、v=σ2v=\sigma^2 とする。log⁡f=−12log⁡(2πv)−(x−μ)22v\log f=-\frac12\log(2\pi v)-\frac{(x-\mu)^2}{2v} の2階偏導関数は

∂2log⁡f∂μ2=−1v,∂2log⁡f∂μ ∂v=−x−μv2,∂2log⁡f∂v2=12v2−(x−μ)2v3.\frac{\partial^2\log f}{\partial\mu^2}=-\frac1v,\quad\frac{\partial^2\log f}{\partial\mu\,\partial v}=-\frac{x-\mu}{v^2},\quad \frac{\partial^2\log f}{\partial v^2}=\frac{1}{2v^2}-\frac{(x-\mu)^2}{v^3}.

期待値を取って符号を変えると、E[X−μ]=0E[X-\mu]=0、E[(X−μ)2]=vE[(X-\mu)^2]=v から

I(μ,v)=(1/σ2001/(2σ4)).I(\mu,v)=\begin{pmatrix}1/\sigma^2&0\\0&1/(2\sigma^4)\end{pmatrix}.

非対角成分が 0 なので、μ\mu の推定の精度は分散が既知か未知かによらない。σ^ML2\hat\sigma^2_{\mathrm{ML}} の漸近分散は 2σ4/n2\sigma^4/n である。

Kullback–Leibler 情報量

データが従う真の分布を g(x)g(x)、モデルを f(x;θ)f(x;\theta) とする。2つの分布の離れ具合を次の量で測る。

定義 6.17(Kullback–Leibler 情報量)

D(g ∥ f)=Eg[log⁡g(Z)f(Z)]=∫g(z)log⁡g(z)f(z) dz.(6.11)D(g\,\|\,f)=E_g\Bigl[\log\frac{g(Z)}{f(Z)}\Bigr]=\int g(z)\log\frac{g(z)}{f(z)}\,\mathrm{d} z.\tag{6.11}

命題 6.18(KL 情報量の非負性 ★★)

D(g ∥ f)≥0D(g\,\|\,f)\ge0 で、等号は f=gf=g(ほとんどいたるところ)のときに限る。

証明

log⁡\log は狭義凹関数なので、Jensen の不等式から−D(g ∥ f)=Eg[log⁡f(Z)g(Z)]≤log⁡Eg[f(Z)g(Z)]=log⁡∫g>0f(z) dz≤log⁡1=0-D(g\,\|\,f)=E_g\bigl[\log\frac{f(Z)}{g(Z)}\bigr]\le\log E_g\bigl[\frac{f(Z)}{g(Z)}\bigr]=\log\int_{g>0}f(z)\,\mathrm{d} z\le\log1=0。等号は f(Z)/g(Z)f(Z)/g(Z) が確率1で定数のとき、すなわち f=gf=g のときに限る。

KL 情報量は次の2項に分かれる。

D(g ∥ fθ)=Eg[log⁡g(Z)]−Eg[log⁡f(Z;θ)]D(g\,\|\,f_\theta)=E_g[\log g(Z)]-E_g[\log f(Z;\theta)]

第1項はパラメータによらない。よって DD を小さくすることは、平均対数尤度 Eg[log⁡f(Z;θ)]E_g[\log f(Z;\theta)] を大きくすることと同じである。最尤法は、この期待値を標本平均

1nℓ(θ)=1n∑ilog⁡f(Xi;θ)\frac1n\ell(\theta)=\frac1n\sum_i\log f(X_i;\theta)

で置き換えて最大化している。大数の法則で、標本平均は平均対数尤度に収束する。したがって最尤推定量は、D(g ∥ fθ)D(g\,\|\,f_\theta) を最小にするパラメータに近づく。

関連:型の方法と大偏差

虎の巻『相対エントロピーから情報と物理を組み立てる』第1部第8章「大偏差・Sanov・Stein の補題」は、経験分布(型)と真の分布の間の KL 情報量が、めったに起きない標本の確率を e−nD\mathrm e^{-nD} の速さで決めること、検定の第2種の誤りの減り方が DD で測られること(Stein の補題)を示す。DD を「分布の隔たり」と読む動機を知りたいときに、AIC の導出の前後で読むとよい。

AIC の導出

入れ子のモデルでは、パラメータを増やしても最大対数尤度 ℓ(θ^)\ell(\hat\theta) は減らない(小さいモデルの最大点が大きいモデルの候補に含まれる)。そのため最大対数尤度の大きさだけでモデルを比べると、いつもパラメータの多いモデルが選ばれる。

そこで、推定したモデル f(⋅;θ^)f(\cdot;\hat\theta) が「新しいデータ」をどれだけうまく説明するかを表す量

nEZ[log⁡f(Z;θ^)](Z は X と独立に g に従う)n E_Z[\log f(Z;\hat\theta)]\qquad(\text{$Z$ は $\bm{X}$ と独立に $g$ に従う})

を比べる。ℓ(θ^)\ell(\hat\theta) は、同じデータでパラメータを合わせたうえで同じデータを評価している。そのため、この量を大きめに見積もる。その偏りを求める。

命題 6.19(AIC の偏り補正 ★★)

真の分布がモデルに含まれる(g=f(⋅;θ0)g=f(\cdot;\theta_0))とする。パラメータの次元が kk で、正則条件が成り立つとき、標本の大きさを無限大にすると

E[ℓ(θ^)−nEZ[log⁡f(Z;θ^)]]→k.(6.12)E\Bigl[\ell(\hat\theta)-nE_Z\bigl[\log f(Z;\hat\theta)\bigr]\Bigr]\to k.\tag{6.12}

導出

θ^−θ0=δ\hat\theta-\theta_0=\bm\delta とおき、I=I(θ0)I=I(\theta_0) と書く。偏りを ℓ(θ0)\ell(\theta_0) と nEZlog⁡f(Z;θ0)nE_Z\log f(Z;\theta_0) を経由して3つに分ける。

(a) ℓ(θ0)\ell(\theta_0) を最尤推定量の周りで展開する。そこでは1階導関数が 0 なので

ℓ(θ0)≈ℓ(θ^)+12δ⊤ℓ′′(θ^)δ≈ℓ(θ^)−n2δ⊤Iδ(−ℓ′′/n→I を使った)\begin{aligned}\ell(\theta_0)&\approx\ell(\hat\theta)+\frac12\bm\delta^\top\ell''(\hat\theta)\bm\delta\\ &\approx\ell(\hat\theta)-\frac n2\bm\delta^\top I\bm\delta&&\text{(}{-\ell''/n\to I}\text{ を使った)}\end{aligned}

である。よって ℓ(θ^)−ℓ(θ0)≈n2δ⊤Iδ\ell(\hat\theta)-\ell(\theta_0)\approx\frac n2\bm\delta^\top I\bm\delta となる。

(b) 平均対数尤度を φ(θ)=EZ[log⁡f(Z;θ)]\varphi(\theta)=E_Z[\log f(Z;\theta)] とおく。これは θ0\theta_0 で最大になる(命題 6.18)。よって勾配は 0 で、2階導関数は −I-I である。したがって

nφ(θ^)≈nφ(θ0)−n2δ⊤Iδn\varphi(\hat\theta)\approx n\varphi(\theta_0)-\frac n2\bm\delta^\top I\bm\delta

となる。

(c) E[ℓ(θ0)]=nE[log⁡f(X1;θ0)]=nφ(θ0)E[\ell(\theta_0)]=nE[\log f(X_1;\theta_0)]=n\varphi(\theta_0)。

3つを合わせると

ℓ(θ^)−nφ(θ^)≈{ℓ(θ0)−nφ(θ0)}+n δ⊤Iδ.\ell(\hat\theta)-n\varphi(\hat\theta)\approx\bigl\{\ell(\theta_0)-n\varphi(\theta_0)\bigr\}+n\,\bm\delta^\top I\bm\delta.

右辺第1項の期待値は (c) から 0 である。第2項については、多パラメータの漸近正規性から

n I1/2δ→dNk(0,Ek)\sqrt n\,I^{1/2}\bm\delta\xrightarrow{d}\mathrm{N}_k(\bm0,E_k)

が成り立つ。よって nδ⊤Iδ=∥nI1/2δ∥2n\bm\delta^\top I\bm\delta=\lVert \sqrt nI^{1/2}\bm\delta\rVert ^2 は χk2\chi^2_k に分布収束し、その期待値は次元に等しい。(期待値の収束には一様可積分性が要るが、試験の導出ではこの段を認めてよい。)

そこで ℓ(θ^)−k\ell(\hat\theta)-k を「新しいデータでの対数尤度」の推定値に使い、−2-2 倍した

AIC=−2ℓ(θ^)+2k(6.13)\mathrm{AIC}=-2\ell(\hat\theta)+2k\tag{6.13}

を AIC(赤池情報量規準)と呼ぶ。候補のモデルそれぞれで AIC を計算し、最小のモデルを選ぶ。第1項はデータへの当てはまりの良さ、第2項はパラメータの個数に対する罰則で、パラメータを1個増やすなら最大対数尤度が 11 以上増えなければ選ばれない。回帰モデルの変数選択での使い方は第9章 §9.3 で扱う。

例題 6.6 2群のポアソンモデルを AIC で比べる ★★

オリジナルある部品の欠陥数を、工程 A の製品 1010 個と工程 B の製品 1010 個で数えた。工程 A の合計は 3030、工程 B の合計は 5050 だった。各製品の欠陥数は独立にポアソン分布に従うとして、次の2つのモデルを AIC で比べよ。

  • モデル1:A・B とも同じ平均 λ\lambda(k=1k=1)。
  • モデル2:工程ごとの平均 λA,λB\lambda_A,\lambda_B(k=2k=2)。
解答

観測値を xijx_{ij} と書く(前の添字が工程、後ろの添字が製品の番号)。ポアソン分布の対数尤度は∑i,j(xijlog⁡λi−λi−log⁡xij!)\sum_{i,j}\bigl(x_{ij}\log\lambda_i-\lambda_i-\log x_{ij}!\bigr) で、最後の項 C=∑log⁡xij!C=\sum\log x_{ij}! は2つのモデルで共通なので、AIC の差には現れない。

モデル1:λ^=80/20=4\hat\lambda=80/20=4。ℓ1=80log⁡4−20⋅4−C=80log⁡4−80−C\ell_1=80\log4-20\cdot4-C=80\log4-80-C。

モデル2:λ^A=30/10=3\hat\lambda_A=30/10=3、λ^B=50/10=5\hat\lambda_B=50/10=5。ℓ2=30log⁡3−30+50log⁡5−50−C\ell_2=30\log3-30+50\log5-50-C。

差を取ると −80-80 と −30−50-30-50 が打ち消し、

ℓ2−ℓ1=30log⁡3+50log⁡5−80log⁡4=32.958+80.472−110.904=2.527.\ell_2-\ell_1=30\log3+50\log5-80\log4=32.958+80.472-110.904=2.527.

したがって

AIC1−AIC2=(−2ℓ1+2)−(−2ℓ2+4)=2(ℓ2−ℓ1)−2=3.05>0\mathrm{AIC}_1-\mathrm{AIC}_2=(-2\ell_1+2)-(-2\ell_2+4)=2(\ell_2-\ell_1)-2=3.05>0

で、AIC が小さいのはモデル2である。工程ごとに平均が違うとするモデルが選ばれる。パラメータを1個増やしたことで、最大対数尤度が 2.53 増えた。これが罰則の増分 1(AIC では 2)を上回った。

確認テスト

オリジナル

  1. 6.4-1 分散が共通の2つの正規分布

g=N(μ1,σ2),f=N(μ2,σ2)g=\mathrm{N}(\mu_1,\sigma^2),\qquad f=\mathrm{N}(\mu_2,\sigma^2)

について D(g ∥ f)D(g\,\|\,f) を求めよ。2. 6.4-2 正規分布を θ=(μ,σ)\theta=(\mu,\sigma)(分散でなく標準偏差)でパラメータ付けしたときの Fisher 情報行列を求め、σ^ML\hat\sigma_{\mathrm{ML}} の漸近分散を書け。σ^ML2\hat\sigma^2_{\mathrm{ML}} の漸近分散 2σ4/n2\sigma^4/n からデルタ法で求めた値と一致することを確かめよ。3. 6.4-3 例題 6.6 で、工程 A の合計が 3636、工程 B の合計が 4444 だったとき、どちらのモデルが選ばれるか。4. 6.4-4 n=100n=100 回のベルヌーイ試行で成功が xx 回だった。次の2つのモデルを比べる。

  • モデル0は p=1/2p=1/2 とする(k=0k=0)。
  • モデル1は pp を自由とする(k=1k=1)。

(a) x=60x=60 のときどちらが選ばれるか。(b) x>50x>50 の範囲で、モデル1が選ばれる最小の xx を求めよ。5. 6.4-5 命題 6.19 の導出で「nδ⊤Iδn\bm\delta^\top I\bm\delta の極限分布は χk2\chi^2_k」を使った。これを n(θ^−θ0)→dNk(0,I−1)\sqrt n(\hat\theta-\theta_0)\xrightarrow{d}\mathrm{N}_k(\bm0,I^{-1}) から示せ。

木下の勉強ステータス

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