場の量子論入門 第1部 第4章 §1.4.2 ★★★ 適用1:エネルギーと運動量の定義そのものが並進対称性から出る
時空並進 xμ→xμ−aμ(aμ は無限小の定数ベクトル)を考える。場を新しい座標の関数として書き直すと
ϕ(x) ⟶ ϕ(x+a)=ϕ(x)+aν∂νϕ(x)+O(a2)
となる。aμ の4成分それぞれが独立なパラメータなので、ν でラベルされた4つの変換があると読み、Δνϕ=∂νϕ とする。
L 自身も x の関数として同じように動く。L が x に陽に依存しない(場を通してのみ x に依存する)なら
L ⟶ L+aν∂νL=L+aν∂μ(δ νμL)
なので、(1.4.1) と比べて J νμ=δ νμL である。(1.4.2) に代入すると、4本のカレント
T νμ=∂(∂μϕ)∂L∂νϕ−δ νμL
が得られる。添字を上げて
Tμν=∂(∂μϕ)∂L∂νϕ−ημνL,∂μTμν=0 (1.4.4)
とする。これをエネルギー運動量テンソルと呼ぶ。対応する4つの保存量は
Pν=∫d3xT0ν
である。
成分の意味を確かめる。ν=0 とすると
T00=∂ϕ˙∂Lϕ˙−L=πϕ˙−L=H
となり、第3.4節で定義した Hamiltonian 密度に一致する。つまりエネルギーとは、時間並進対称性に対応する Noether 電荷である。ν=i(空間成分)では η0i=0 なので
T0i=π∂iϕ=−π∂iϕ⟹P=−∫d3x π∇ϕ
となり、これが場の運ぶ運動量である。空間並進対称性から運動量が出るという、質点系と同じ構造が保たれている。
Klein–Gordon 場に適用すると、∂L/∂(∂μϕ)=∂μϕ なので
Tμν=∂μϕ∂νϕ−ημν[21∂ρϕ∂ρϕ−21m2ϕ2]
となる。00 成分は (1.3.7) と一致し、∂μTμ0=0 が運動方程式の上で成り立つことは検算スクリプトで確認済みである。この Tμν は対称(Tμν=Tνμ)でもあるが、スカラー場だから対称になったのであって、一般には成り立たない(前節の補足を見よ)。
例題 4.1(Klein–Gordon 場のエネルギー運動量テンソルと保存則)
オリジナルKlein–Gordon 場のラグランジアン (1.3.5) について答えよ。
- (1) T00 を場とその微分で書き下し、正定値であることを確認せよ。
- (2) ∂μTμ0=0 が運動方程式の上で成り立つことを直接の計算で示せ。
解答
(1) (1.4.4) で μ=ν=0 と置く。∂0ϕ=ϕ˙、η00=1 なので
T00=ϕ˙2−L=ϕ˙2−21[ϕ˙2−(∇ϕ)2−m2ϕ2]=21[ϕ˙2+(∇ϕ)2+m2ϕ2].
3項ともに実場の2乗なので T00≥0 であり、m2>0 なら ϕ=ϕ˙=0 のときだけゼロになる。
(2) μ について和を取った発散を計算する。Tμ0=∂μϕϕ˙−ημ0L なので
∂μTμ0=(□ϕ)ϕ˙+∂μϕ∂μϕ˙−∂tL.
第2項は ∂μϕ∂μϕ˙=21∂t(∂μϕ∂μϕ) と書ける(時間微分と μ についての縮約は順序を交換できる)。一方 ∂tL=21∂t(∂μϕ∂μϕ)−m2ϕϕ˙ なので、第2項と第3項の第1部分が打ち消し合って
∂μTμ0=(□ϕ)ϕ˙+m2ϕϕ˙=[(□+m2)ϕ]ϕ˙.
運動方程式 (1.3.6) より角括弧はゼロなので ∂μTμ0=0 である。保存則が運動方程式の上でのみ成り立つことが、計算の形からはっきり見える。なお、この結果は検算スクリプトで sympy により独立に確認してある。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com