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ベクトル場と積分曲線

2026年10月22日12分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第2章 接ベクトルとベクトル場
目次
  1. ベクトル場
  2. 積分曲線と流れ
  3. 物理の流れ:流体の速度場と相空間の流れ
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第2章 §2.3 ★★★ ベクトル場・積分曲線・流れの3つを結び、相空間の時間発展を流れとして読む

ベクトル場

各点に1つずつ接ベクトルを置いたものがベクトル場である。流体の各点の速度や、相空間の各点での状態の変化の速さが典型例である。

定義 2.11(ベクトル場)

多様体の各点 pp に接ベクトル Xp∈TpMX_p\in T_pM を1つずつ対応させたものを、ベクトル場と呼ぶ。どのチャートでも、成分を使って

X=∑i=1nXi(q) ∂∂qi(2.14)X=\sum_{i=1}^n X^i(q)\,\frac{\partial }{\partial q^i}\tag{2.14}

と書いたときに成分が滑らかなら、滑らかなベクトル場と呼ぶ。関数 ff に対して、各点で値 Xp(f)X_p(f) をとった関数を考える。この関数を XfXf と書く。

変換則 (2.8) は点ごとに成り立つ。したがって、ベクトル場の成分は各点で X′j=∑i(∂q′j/∂qi)XiX'^j=\sum_i(\partial q'^j/\partial q^i)X^i と変わる。1つのチャートで成分が滑らかなら、重なりの上で別のチャートの成分も滑らかである。

平面の回転のベクトル場

平面のベクトル場 X=−y ∂x+x ∂yX=-y\,\partial_x+x\,\partial_y は、各点で原点の周りを反時計回りに回る向きを持つ。極座標に移すと、確認テスト 2.2-2 の式から X=∂θX=\partial_\theta となる。原点を除いた平面では、このベクトル場は1つの座標の座標基底そのものになっている。

積分曲線と流れ

定義 2.12(積分曲線)

曲線の各時刻の接ベクトルが、その点でのベクトル場の値に等しいとき、曲線をベクトル場の積分曲線と呼ぶ。式で書けば次のとおりである。

γ˙(t)=Xγ(t)⟺dqidt=Xi(q(t))(i=1,…,n).(2.15)\dot\gamma(t)=X_{\gamma(t)}\qquad\Longleftrightarrow\qquad \frac{d q^i}{d t}=X^i\bigl(q(t)\bigr)\quad(i=1,\dots,n).\tag{2.15}

ここで γ˙(t)\dot\gamma(t) は、曲線を時刻 tt で見た接ベクトルである。すなわち、ずらした曲線 τ↦γ(t+τ)\tau\mapsto\gamma(t+\tau) の速度である。

積分曲線を求めることは、1階の常微分方程式の連立系 (2.15) を解くことと同じである。解の存在と一意性は、常微分方程式の基本定理が保証する。

定理 2.13(積分曲線の存在と一意性)

滑らかなベクトル場 XX と点 pp をとる。このとき、00 を含む開区間の上で定義され、γ(0)=p\gamma(0)=p を満たす積分曲線がある。2本の積分曲線が同じ時刻に同じ点を通るなら、2本は共通の定義域で一致する。さらに、解は初期点について滑らかに変わる。

証明の筋

座標で書くと (2.15) は、ユークリッド空間の常微分方程式 q˙=X(q)\dot q=X(q) である。成分は滑らかなので、初期点の近くで Lipschitz 条件を満たす。

∣X(q)−X(q~)∣≤K∣q−q~∣.\left\vert X(q)-X(\tilde q)\right\vert \le K\left\vert q-\tilde q\right\vert .

積分方程式 q(t)=a+∫0tX(q(τ)) dτq(t)=a+\int_0^tX(q(\tau))\,\mathrm{d}\tau の右辺を、曲線から曲線への写像とみる。十分短い時間の区間では、この写像は縮小写像になる。縮小写像の不動点として、解が1つだけ得られる(Picard の逐次近似)。

一意性は、2つの解の差に Gronwall の不等式を使うと示せる。初期点への滑らかな依存も、同じ枠組みで示せる。完全な証明は常微分方程式の本に譲る。

点 pp を通る積分曲線の、時刻 tt での点を考える。この点を Φt(p)\Phi_t(p) と書き、写像 Φt\Phi_t をベクトル場の流れと呼ぶ。流れを生むベクトル場 XX を明示したいときは ΦtX\Phi^X_t と書く。すべての時刻とすべての点で流れが定まるとき、ベクトル場は完備であるという。

定理 2.14(流れは1パラメータ変換群)

完備なベクトル場の流れ Φt\Phi_t は、すべての実数 t,st,s について次の式を満たす。

Φ0=id,Φt∘Φs=Φt+s.(2.16)\Phi_0=\mathrm{id},\qquad \Phi_t\circ\Phi_s=\Phi_{t+s}.\tag{2.16}

特に、各 Φt\Phi_t は逆写像 Φ−t\Phi_{-t} を持つ全単射である。

証明

式 Φ0(p)=p\Phi_0(p)=p は定義そのものである。時刻 ss と点 pp を固定し、次の2本の曲線を比べる。

α(t)=Φt+s(p),β(t)=Φt(Φs(p)).\alpha(t)=\Phi_{t+s}(p),\qquad \beta(t)=\Phi_t\bigl(\Phi_s(p)\bigr).

前者は、点 pp を通る積分曲線を時刻 ss だけずらしたものである。したがって、各時刻で α˙(t)=Xα(t)\dot\alpha(t)=X_{\alpha(t)} を満たす。後者は、点 Φs(p)\Phi_s(p) を通る積分曲線である。

時刻 00 では、2本はともに点 Φs(p)\Phi_s(p) にある。2本は同じ時刻に同じ点を通る積分曲線である。定理 2.13 の一意性から、すべての時刻で2本は一致し、これが (2.16) である。時刻を s=−ts=-t とおけば Φt∘Φ−t=id\Phi_t\circ\Phi_{-t}=\mathrm{id} となり、逆写像が得られる。

逆に、(2.16) を満たす滑らかな写像の族 Φt\Phi_t(1パラメータ変換群)からは、ベクトル場が1つ決まる。各点で、次のように置けばよい。

Xp=ddtΦt(p)∣t=0.X_p=\frac{d }{d t}\Phi_t(p)\Big|_{t=0}.

群の性質から Φt+h(p)=Φh(Φt(p))\Phi_{t+h}(p)=\Phi_h(\Phi_t(p)) が成り立つ。これを小さな時刻 hh で微分すると、曲線 t↦Φt(p)t\mapsto\Phi_t(p) の各時刻の速度が、その点でのベクトル場の値に等しいことが分かる。

したがって、この曲線はこのベクトル場の積分曲線である。このベクトル場を、変換群の生成子と呼ぶ。

回転の流れ

回転のベクトル場の積分曲線の方程式は、x˙=−y\dot x=-y と y˙=x\dot y=x である。解は次の式で与えられる。

Φt(x,y)=(xcos⁡t−ysin⁡t, xsin⁡t+ycos⁡t).\Phi_t(x,y)=(x\cos t-y\sin t,\ x\sin t+y\cos t).

これは角 tt の回転で、回転の合成が角の和になることが (2.16) に当たる。回転のベクトル場は、回転群の生成子である。

完備でないベクトル場

積分曲線が、有限の時刻で無限遠へ去ることがある。直線上のベクトル場 X=x2 ∂xX=x^2\,\partial_x の積分曲線は、次の式で与えられる。

x(t)=x01−tx0.x(t)=\frac{x_0}{1-tx_0}.

初期値が正なら、時刻 t→1/x0t\to1/x_0 で発散する。このとき流れは一部の点でしか定まらず、(2.16) も定まる範囲でだけ成り立つ。コンパクトな多様体(円周・球面・トーラスなど)の上の滑らかなベクトル場は、いつも完備である。

物理の流れ:流体の速度場と相空間の流れ

定常な流体の速度場 u(x)\bm{u}(\bm{x}) は、空間の上のベクトル場である。その積分曲線は流体の粒子の軌跡で、流線と呼ぶ。流れ Φt\Phi_t は「はじめにある位置にあった粒子を、時刻 tt の位置へ送る写像」である。

時間に依る速度場 u(x,t)\bm{u}(\bm{x},t) は、空間の上の1つのベクトル場ではない。§2.2 のように時刻も座標に含めると、時空の上のベクトル場として扱える。

∂∂t+∑iui ∂∂xi.\frac{\partial }{\partial t}+\sum_iu^i\,\frac{\partial }{\partial x^i}.

このベクトル場の積分曲線は、粒子の世界線である。

1自由度の力学系の状態は、座標 qq と運動量 pp の組で決まる。Hamilton の運動方程式は、q˙=∂H/∂p\dot q=\partial H/\partial p と p˙=−∂H/∂q\dot p=-\partial H/\partial q である。これは、相空間の次のベクトル場の積分曲線の方程式である。

XH=∂H∂p ∂∂q−∂H∂q ∂∂p.(2.17)X_H=\frac{\partial H}{\partial p}\,\frac{\partial }{\partial q}-\frac{\partial H}{\partial q}\,\frac{\partial }{\partial p}.\tag{2.17}

このベクトル場を Hamilton ベクトル場と呼ぶ。正準2形式を使った定義と符号の確認は第14章 §14.2 で行う。

Hamilton ベクトル場をハミルトニアン自身に作用させると、次のように 00 になる。

XHH=∂H∂p∂H∂q−∂H∂q∂H∂p=0.X_HH=\frac{\partial H}{\partial p}\frac{\partial H}{\partial q}-\frac{\partial H}{\partial q}\frac{\partial H}{\partial p}=0.

したがって積分曲線の上でハミルトニアンは一定で、相空間の流れはエネルギーの等高線に沿う。

図

図 2.5 振り子 H=12p2−cos⁡qH=\frac12p^2-\cos q(m=ℓ=g=1m=\ell=g=1)の相空間の流れ。青の閉曲線は往復する振動、灰の曲線は回り続ける回転、赤は2つを分ける分離線 H=1H=1。矢印は Hamilton ベクトル場 (2.17) の向きで、p>0p>0 では qq が増える。q=±πq=\pm\pi は同じ点を指すので、相空間は円柱である。

例題 2.4 調和振動子の相空間の流れ ★★★

オリジナル調和振動子のハミルトニアンを考える。

H=p22m+12mω2q2.H=\frac{p^2}{2m}+\frac12m\omega^2q^2.

質量 mm と角振動数 ω\omega は正の定数とする。

  1. Hamilton ベクトル場を成分で書け。
  2. 流れ Φt(q0,p0)\Phi_t(q_0,p_0) を求めよ。
  3. 流れが (2.16) を満たすことを確かめよ。
  4. 流れが周期 2π/ω2\pi/\omega を持つことと、ハミルトニアンを保つことを確かめよ。
解答
  1. (2.17) に、偏微分 ∂H/∂p=p/m\partial H/\partial p=p/m と ∂H/∂q=mω2q\partial H/\partial q=m\omega^2q を入れる。

XH=pm ∂∂q−mω2q ∂∂p.X_H=\frac{p}{m}\,\frac{\partial }{\partial q}-m\omega^2q\,\frac{\partial }{\partial p}. 2. 積分曲線の方程式は、q˙=p/m\dot q=p/m と p˙=−mω2q\dot p=-m\omega^2q である。1つ目を微分して2つ目を入れると、q¨=−ω2q\ddot q=-\omega^2q となる。初期条件は q(0)=q0q(0)=q_0 と q˙(0)=p0/m\dot q(0)=p_0/m なので

Φt(q0,p0)=(q0cos⁡ωt+p0mωsin⁡ωt,  p0cos⁡ωt−mωq0sin⁡ωt).\Phi_t(q_0,p_0)=\Bigl(q_0\cos\omega t+\frac{p_0}{m\omega}\sin\omega t,\ \ p_0\cos\omega t-m\omega q_0\sin\omega t\Bigr). 3. 変数 Q=mωqQ=m\omega q を使うと、流れは平面 (Q,p)(Q,p) での時計回りの回転になる。

(Qp)↦(cos⁡ωtsin⁡ωt−sin⁡ωtcos⁡ωt)(Qp).\begin{pmatrix}Q\\ p\end{pmatrix}\mapsto \begin{pmatrix}\cos\omega t&\sin\omega t\\ -\sin\omega t&\cos\omega t\end{pmatrix} \begin{pmatrix}Q\\ p\end{pmatrix}.

角 ωt\omega t の回転と角 ωs\omega s の回転の積は、角の和の回転である。したがって Φt∘Φs=Φt+s\Phi_t\circ\Phi_s=\Phi_{t+s} が成り立つ。時刻 00 では単位行列で、Φ0=id\Phi_0=\mathrm{id} となる。4. 時刻 t=2π/ωt=2\pi/\omega では回転の角が 2π2\pi で、行列は単位行列に戻る。回転は Q2+p2Q^2+p^2 を保つので、ハミルトニアン H=(p2+Q2)/(2m)H=(p^2+Q^2)/(2m) も保たれる。この結果は、一般の XHH=0X_HH=0 の特別な場合である。

確認テスト

オリジナル

  1. 2.3-1 平面のベクトル場 X=x ∂x−y ∂yX=x\,\partial_x-y\,\partial_y を考える。点 (x0,y0)(x_0,y_0) を通る積分曲線を求めよ。関数 xyxy がその曲線の上で一定であることを、ベクトル場をこの関数に作用させて確かめよ。
  2. 2.3-2 直線上のベクトル場 X=x2 ∂xX=x^2\,\partial_x の流れは、次の式で与えられる。

Φt(x)=x1−tx.\Phi_t(x)=\frac{x}{1-tx}.

これが積分曲線の方程式を満たすことを確かめよ。群の性質 (2.16) が、定まる範囲で成り立つことも確かめよ。3. 2.3-3 せん断流 u=γy ∂x\bm{u}=\gamma y\,\partial_x の流れを求めよ(γ\gamma は定数)。流れの写像のヤコビ行列式を計算し、流体の面積が保たれることを確かめよ。4. 2.3-4 1自由度の Hamilton ベクトル場 (2.17) を、平面のベクトル場とみる。その発散 ∂qXq+∂pXp\partial_qX^q+\partial_pX^p が恒等的に 00 であることを示せ。

木下の勉強ステータス

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