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写像の微分

2026年10月22日11分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第2章 接ベクトルとベクトル場
目次
  1. 押し出しの定義
  2. ヤコビ行列と連鎖律の幾何
  3. ベクトル場の押し出しと流れの対応
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第2章 §2.4 ★★★ 写像が接ベクトルを運ぶ規則(押し出し)を定め、連鎖律がその合成則であることを示す

押し出しの定義

多様体の間の滑らかな写像 f:M→Nf:M\to N は、始めの多様体の曲線を行き先の多様体の曲線へ送る。したがって、接ベクトルも行き先の接ベクトルへ送られるはずである。方向微分の見方では、この送り方は次のように書ける。

定義 2.15(押し出し)

滑らかな写像 f:M→Nf:M\to N と、接ベクトル v∈TpMv\in T_pM をとる。行き先の点での接ベクトル f∗vf_*v を、次の式で定める。

(f∗v)(g)=v(g∘f)(g∈C∞(N)).(2.18)(f_*v)(g)=v(g\circ f)\qquad(g\in C^\infty(N)).\tag{2.18}

これで定まる線形写像 f∗:TpM→Tf(p)Nf_*:T_pM\to T_{f(p)}N を、写像の微分または押し出しと呼ぶ。記号 dfp\mathrm{d} f_p と書く本もある。

押し出した f∗vf_*v が行き先の点での微分であることは、合成 g↦g∘fg\mapsto g\circ f が積を保つことから従う。もとの接ベクトルに Leibniz 則を使うと

(f∗v)(gh)=v((g∘f)(h∘f))=g(f(p)) (f∗v)(h)+h(f(p)) (f∗v)(g)(f_*v)(gh)=v\bigl((g\circ f)(h\circ f)\bigr)=g(f(p))\,(f_*v)(h)+h(f(p))\,(f_*v)(g)

となる。

曲線の見方では、押し出しは曲線を写像で送ることに当たる。接ベクトルが曲線の同値類 [γ][\gamma] なら、定義 (2.3) から

(f∗v)(g)=ddtg(f(γ(t)))∣t=0=vf∘γ(g)(f_*v)(g)=\frac{d }{d t}g\bigl(f(\gamma(t))\bigr)\Big|_{t=0}=v_{f\circ\gamma}(g)

となる。したがって f∗[γ]=[f∘γ]f_*[\gamma]=[f\circ\gamma] で、送った曲線の速度が送った接ベクトルになる。

ヤコビ行列と連鎖律の幾何

始めの多様体の座標を xix^i とし、その次元を mm とする。行き先の多様体の座標を yay^a とし、その次元を nn とする。写像を座標で ya=fa(x)y^a=f^a(x) と書き、座標基底の押し出しを計算する。行き先の関数 gg について、連鎖律から

(f∗∂∂xi)(g)=∂(g∘f)∂xi=∑a=1n∂fa∂xi ∂g∂ya\Bigl(f_*\frac{\partial }{\partial x^i}\Bigr)(g)=\frac{\partial (g\circ f)}{\partial x^i}=\sum_{a=1}^n\frac{\partial f^a}{\partial x^i}\,\frac{\partial g}{\partial y^a}

となる。したがって

f∗∂∂xi=∑a=1n∂fa∂xi ∂∂ya,(f∗v)a=∑i=1m∂fa∂xi vi.(2.19)f_*\frac{\partial }{\partial x^i}=\sum_{a=1}^n\frac{\partial f^a}{\partial x^i}\,\frac{\partial }{\partial y^a},\qquad (f_*v)^a=\sum_{i=1}^m\frac{\partial f^a}{\partial x^i}\,v^i.\tag{2.19}

成分で見ると、押し出しはヤコビ行列 Df=(∂fa/∂xi)Df=(\partial f^a/\partial x^i) を掛けることである。座標の取り替えの変換則 (2.8) は、(2.19) で写像を座標の取り替えとしたものに当たる。ただし、2つは見方が違う。座標の取り替えでは点を動かさずに名前を付け替え、押し出しでは点そのものを送る。

定理 2.16(連鎖律)

滑らかな写像 f:M→Nf:M\to N と h:N→Ph:N\to P をとる。各点で次の式が成り立つ。

(h∘f)∗=h∗∘f∗.(2.20)(h\circ f)_*=h_*\circ f_*.\tag{2.20}

座標で書くと、合成のヤコビ行列はヤコビ行列の積 Dh⋅DfDh\cdot Df である。恒等写像の押し出しは恒等写像である。

証明

接ベクトル v∈TpMv\in T_pM と、最後の多様体の関数 kk をとる。定義 (2.18) を2回使うと

(h∗(f∗v))(k)=(f∗v)(k∘h)=v(k∘h∘f)=((h∘f)∗v)(k)\bigl(h_*(f_*v)\bigr)(k)=(f_*v)(k\circ h)=v(k\circ h\circ f)=\bigl((h\circ f)_*v\bigr)(k)

となる。これが (2.20) である。成分の式は、(2.19) を2回使えば行列の積として出る。恒等写像では g∘id=gg\circ\mathrm{id}=g なので、押し出しは恒等写像である。

連鎖律の幾何の意味は、「曲線を2回続けて送ることと、合成写像で1回で送ることは同じ」である。曲線の見方では、これは結合則 (h∘f)∘γ=h∘(f∘γ)(h\circ f)\circ\gamma=h\circ(f\circ\gamma) にすぎない。微分積分学の連鎖律は、この結合則を速度で書いたものである。

系 2.17(微分同相写像の押し出し)

写像 ff が微分同相写像(滑らかな逆写像を持つ全単射)であるとする。このとき各点で押し出し f∗f_* は線形同型で、逆写像は (f−1)∗(f^{-1})_* である。特に、2つの多様体の次元は等しい。

証明

2つの恒等式 f−1∘f=idf^{-1}\circ f=\mathrm{id} と f∘f−1=idf\circ f^{-1}=\mathrm{id} に、連鎖律を使う。すると、2つの押し出しの合成がどちらの順でも恒等写像になる。互いに逆な線形写像があるので、2つの接空間の次元は等しい。

図

図 2.6 極座標の写像 F(r,θ)=(rcos⁡θ, rsin⁡θ)F(r,\theta)=(r\cos\theta,\ r\sin\theta) による押し出し。左の長方形の格子は右の扇形の格子へ送られる。点 (r,θ)=(1.5,π/4)(r,\theta)=(1.5,\pi/4) の ∂r\partial_r は動径の向きの長さ1のベクトルへ、∂θ\partial_\theta は円周の向きの長さ r=1.5r=1.5 のベクトルへ送られる(矢印は同じ縮尺の0.6倍で描いた)。

ベクトル場の押し出しと流れの対応

接ベクトルは点ごとに押し出せるが、ベクトル場はいつも押し出せるとは限らない。写像が単射でないと、行き先の1点に、始めの2点から別々の接ベクトルが届くことがある。写像が全射でないと、行き先の点の一部にはベクトルが届かない。写像が微分同相なら、行き先の各点 yy に次の接ベクトルを置いて、ベクトル場 f∗Xf_*X が定まる。

(f∗X)y=f∗(Xf−1(y)).(f_*X)_y=f_*\bigl(X_{f^{-1}(y)}\bigr).

命題 2.18(押し出したベクトル場の流れ)

写像 f:M→Nf:M\to N を微分同相写像とする。始めの多様体のベクトル場を XX とし、その流れを Φt\Phi_t とする。曲線 γ\gamma がもとのベクトル場の積分曲線なら、送った曲線 f∘γf\circ\gamma は押し出したベクトル場の積分曲線である。したがって、押し出したベクトル場の流れは f∘Φt∘f−1f\circ\Phi_t\circ f^{-1} である。

証明

各時刻で、規則 f∗[γ]=[f∘γ]f_*[\gamma]=[f\circ\gamma] から、送った曲線の速度は f∗γ˙(t)f_*\dot\gamma(t) である。積分曲線の条件 γ˙(t)=Xγ(t)\dot\gamma(t)=X_{\gamma(t)} を入れると、これは押し出したベクトル場の値に等しい。

行き先の点 yy を通る積分曲線は、点 f−1(y)f^{-1}(y) を通るもとの積分曲線を送ったものである。もとの積分曲線は Φt(f−1(y))\Phi_t(f^{-1}(y)) なので、送ると f(Φt(f−1(y)))f(\Phi_t(f^{-1}(y))) になる。したがって流れは f∘Φt∘f−1f\circ\Phi_t\circ f^{-1} となる。

この命題は、「座標を取り替えてから微分方程式を解いても、解いてから取り替えても同じ」を保証する。回転のベクトル場を極座標で書くと ∂θ\partial_\theta になり、流れは θ↦θ+t\theta\mapsto\theta+t と簡単になる。命題 2.18 により、この簡単な流れを直交座標に戻したものが回転の流れになる。ベクトル場を座標基底の1つに直す座標の作り方は、第13章 §13.5 で一般に扱う。

例題 2.5 極座標の写像と平面運動の速度 ★★

オリジナル極座標の写像 F(r,θ)=(rcos⁡θ, rsin⁡θ)F(r,\theta)=(r\cos\theta,\ r\sin\theta) を、動径が正の帯から平面への写像とみる。

  1. ヤコビ行列を書き、2つの座標基底 ∂r\partial_r と ∂θ\partial_\theta の押し出しを求めよ。
  2. 平面運動の速度 r˙ ∂r+θ˙ ∂θ\dot r\,\partial_r+\dot\theta\,\partial_\theta を押し出し、直交座標の成分で書け。その大きさの2乗が r˙2+r2θ˙2\dot r^2+r^2\dot\theta^2 になることを確かめよ。
  3. 動径が r=2.0 mr=2.0\,\mathrm{m} で、r˙=1.0 m/s\dot r=1.0\,\mathrm{m/s} とする。角速度が θ˙=0.50 rad/s\dot\theta=0.50\,\mathrm{rad/s} のとき、粒子の速さを求めよ。
解答
  1. ヤコビ行列は次の行列である。

DF=(∂x/∂r∂x/∂θ∂y/∂r∂y/∂θ)=(cos⁡θ−rsin⁡θsin⁡θrcos⁡θ).DF=\begin{pmatrix}\partial x/\partial r&\partial x/\partial\theta\\ \partial y/\partial r&\partial y/\partial\theta\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}\cos\theta&-r\sin\theta\\ \sin\theta&r\cos\theta\end{pmatrix}.

(2.19) から、その列が押し出しの成分になる。

F∗∂r=cos⁡θ ∂x+sin⁡θ ∂y,F∗∂θ=−rsin⁡θ ∂x+rcos⁡θ ∂y.F_*\partial_r=\cos\theta\,\partial_x+\sin\theta\,\partial_y,\qquad F_*\partial_\theta=-r\sin\theta\,\partial_x+r\cos\theta\,\partial_y. 2. 線形性から、押し出した速度は次のようになる。

F∗(r˙ ∂r+θ˙ ∂θ)=(r˙cos⁡θ−rθ˙sin⁡θ) ∂x+(r˙sin⁡θ+rθ˙cos⁡θ) ∂y.F_*(\dot r\,\partial_r+\dot\theta\,\partial_\theta)=(\dot r\cos\theta-r\dot\theta\sin\theta)\,\partial_x+(\dot r\sin\theta+r\dot\theta\cos\theta)\,\partial_y.

成分の2乗の和をとると、交差項 ±2rr˙θ˙sin⁡θcos⁡θ\pm2r\dot r\dot\theta\sin\theta\cos\theta が打ち消し合う。

(r˙cos⁡θ−rθ˙sin⁡θ)2+(r˙sin⁡θ+rθ˙cos⁡θ)2=r˙2+r2θ˙2.(\dot r\cos\theta-r\dot\theta\sin\theta)^2+(\dot r\sin\theta+r\dot\theta\cos\theta)^2=\dot r^2+r^2\dot\theta^2. 3. 値を入れると、速さは次のようになる。

1.02+2.02×0.502 m/s=2 m/s≈1.4 m/s.\sqrt{1.0^2+2.0^2\times0.50^2}\,\mathrm{m/s}=\sqrt2\,\mathrm{m/s}\approx1.4\,\mathrm{m/s}.

質量を掛けて2で割れば運動エネルギー T=12m(r˙2+r2θ˙2)T=\frac12m(\dot r^2+r^2\dot\theta^2) になる。その係数が、第5章 §5.4 の計量になる。

確認テスト

オリジナル

  1. 2.4-1 例題 2.5 の写像を考える。点 (r,θ)=(2,π/2)(r,\theta)=(2,\pi/2) での F∗∂θF_*\partial_\theta を、直交座標の成分で書け。
  2. 2.4-2 写像 F(u,v)=(u+v, uv)F(u,v)=(u+v,\ uv) と関数 G(x,y)=x2−2yG(x,y)=x^2-2y を考える。点 (u,v)=(1,2)(u,v)=(1,2) で、合成のヤコビ行列を直接計算する。それが積 DG⋅DFDG\cdot DF と一致することを確かめよ。
  3. 2.4-3 長さ ℓ\ell の振り子の配位空間(角度 qq)から平面への写像を考える。

ι(q)=(ℓsin⁡q, −ℓcos⁡q).\iota(q)=(\ell\sin q,\ -\ell\cos q).

振り子の速度 q˙ ∂q\dot q\,\partial_q を押し出し、おもりの速さが ℓ∣q˙∣\ell\left\vert \dot q\right\vert であることを示せ。質量 mm のおもりの運動エネルギーを、角度と角速度で書け。4. 2.4-4 直線上のベクトル場 X=∂xX=\partial_x と、微分同相写像 f(x)=exf(x)=\mathrm{e}^x を考える。写像は実数の全体から正の実数の全体への全単射である。押し出し f∗Xf_*X を、座標 y=exy=\mathrm{e}^x で書け。その流れが、もとの流れ Φt(x)=x+t\Phi_t(x)=x+t から作った f∘Φt∘f−1f\circ\Phi_t\circ f^{-1} と一致することを確かめよ。

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