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物理の計量

2026年10月22日13分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第5章 計量
目次
  1. 運動エネルギーが決める計量
  2. 二重振り子:座標基底が直交しない配位空間
  3. Minkowski 計量と不定値の計量
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第5章 §5.4 ★★★ 運動エネルギーの係数は配位空間の計量で、座標基底は直交とは限らない。時空の Minkowski 計量は非退化だが正定値でない

運動エネルギーが決める計量

質点が NN 個あり、それぞれの質量を mam_a とする。各質点の位置は、一般化座標 q1,…,qnq^1,\dots,q^n の関数 xa(q)\bm{x}_a(q) と書けるとする。拘束は時間に陽に依存しないとする。速度は x˙a=∂xa∂qiq˙i\dot{\bm{x}}_a=\frac{\partial \bm{x}_a}{\partial q^i}\dot q^i なので、運動エネルギーは

T=12∑ama∣x˙a∣2=12 gij(q) q˙iq˙j,gij=∑ama ∂xa∂qi⋅∂xa∂qj(5.16)T=\frac12\sum_am_a\left\vert \dot{\bm{x}}_a\right\vert ^2=\frac12\,g_{ij}(q)\,\dot q^i\dot q^j,\qquad g_{ij}=\sum_am_a\,\frac{\partial \bm{x}_a}{\partial q^i}\cdot\frac{\partial \bm{x}_a}{\partial q^j}\tag{5.16}

となる。速度の2次形式になることの導出は、虎の巻『解析力学から様々な理論分野を組み立てる』第1部第2章にある。

(5.16) の gijg_{ij} は配位空間の計量である。質量で重みを付けた 3N3N 次元の Euclid 計量 ∑ama∣dxa∣2\sum_am_a\left\vert \mathrm{d}\bm{x}_a\right\vert ^2 を、位置を与える写像で引き戻したものになっている。引き戻し f∗f^* の一般の定義は第12章で扱う。

命題 5.12(運動エネルギーの計量は正定値)

すべての質量は正とする。(5.16) の計量は対称である。位置を与える写像 q↦(x1,…,xN)q\mapsto(\bm{x}_1,\dots,\bm{x}_N) のヤコビ行列の階数が nn の点では、この計量は正定値になる。

証明

対称性は、内積の対称性から従う。接ベクトル v=vi∂iv=v^i\partial_i を入れると

g(v,v)=∑ama∣∂xa∂qivi∣2≥0g(v,v)=\sum_am_a\Bigl|\frac{\partial \bm{x}_a}{\partial q^i}v^i\Bigr|^2\ge0

である。

等号が成り立つのは、すべての aa について ∂xa∂qivi=0\frac{\partial \bm{x}_a}{\partial q^i}v^i=0 のときに限る。これは、ヤコビ行列が vv を0に写すことである。階数が nn ならヤコビ行列は単射なので、等号は v=0v=0 のときだけになる。

運動エネルギーは座標の取り方によらない量である。このことは、gg が (0,2)(0,2) 型テンソルとして変換することと同じ内容である。Lagrangian L=12gijq˙iq˙j−V(q)L=\tfrac12g_{ij}\dot q^i\dot q^j-V(q) の Euler–Lagrange 方程式には、計量の微分が Christoffel 記号(第8章)の形で入る。ポテンシャルが0の自由運動は、この計量の測地線になる(第10章 §10.3)。

二重振り子:座標基底が直交しない配位空間

長さ l1l_1 の棒の先に質量 m1m_1 の質点を付ける。その先に、長さ l2l_2 の棒と質量 m2m_2 の質点をつなぐ。この平面の二重振り子で、鉛直下向きから測った角を θ1, θ2\theta_1,\ \theta_2 とする。

角の差を Δ=θ1−θ2\Delta=\theta_1-\theta_2 と書く。配位空間はトーラスである(第1章 §1.3)。

質点の位置は

x1=l1(sin⁡θ1, −cos⁡θ1),x2=x1+l2(sin⁡θ2, −cos⁡θ2)\bm{x}_1=l_1(\sin\theta_1,\ -\cos\theta_1),\qquad \bm{x}_2=\bm{x}_1+l_2(\sin\theta_2,\ -\cos\theta_2)

である。(5.16) に入れて内積を計算すると、計量は

(gij)=((m1+m2)l12m2l1l2cos⁡Δm2l1l2cos⁡Δm2l22)(5.17)(g_{ij})=\begin{pmatrix}(m_1+m_2)l_1^2 & m_2l_1l_2\cos\Delta\\ m_2l_1l_2\cos\Delta & m_2l_2^2\end{pmatrix}\tag{5.17}

となる。

非対角の成分は、Δ=±π/2\Delta=\pm\pi/2 以外では0でない。θ2\theta_2 を固定して θ1\theta_1 だけを変えると、上の棒が回るので下の質点も一緒に動く。このときの下の質点の速度と、θ2\theta_2 だけを変えたときの下の質点の速度は、一般には垂直にならない。これが非対角の成分の物理的な由来である。

(5.5) から、2つの座標基底 ∂θ1, ∂θ2\partial_{\theta_1},\ \partial_{\theta_2} のなす角 φ\varphi は

cos⁡φ=m2l1l2cos⁡Δ(m1+m2)l12m2l22=m2m1+m2 cos⁡Δ(5.18)\cos\varphi=\frac{m_2l_1l_2\cos\Delta}{\sqrt{(m_1+m_2)l_1^2}\sqrt{m_2l_2^2}}=\sqrt{\frac{m_2}{m_1+m_2}}\,\cos\Delta\tag{5.18}

である。

棒の長さは約分されて消える。2つの質量が等しく、Δ=0\Delta=0 なら、cos⁡φ=1/2\cos\varphi=1/\sqrt2 である。このとき、なす角は 45∘45^\circ になる。行列式は次のとおり正なので、命題 5.12 のとおり計量は正定値である。

det⁡g=m2l12l22(m1+m2sin⁡2Δ)>0\det g=m_2l_1^2l_2^2\bigl(m_1+m_2\sin^2\Delta\bigr)>0

図図

図 5.4 左:平面の二重振り子と角 θ1\theta_1、θ2\theta_2。右:配位空間の座標基底 ∂θ1\partial_{\theta_1} と ∂θ2\partial_{\theta_2} が運動エネルギーの計量について成す角 φ\varphi を、(5.18) から計算したもの。実線は m1=m2m_1=m_2、破線は m1=3m2m_1=3m_2 である。φ=90∘\varphi=90^\circ(灰色の線)になるのは Δ=±π/2\Delta=\pm\pi/2 のときだけで、それ以外では座標基底は直交しない。

例題 5.6 二重振り子の運動エネルギーと交差項 ★★

オリジナル質量は m1=m2=1.0 kgm_1=m_2=1.0\,\mathrm{kg}、棒の長さは l1=l2=0.50 ml_1=l_2=0.50\,\mathrm{m} とする。この二重振り子が、Δ=0\Delta=0 の瞬間に次の角速度で動いている。

θ˙1=2.0 rad/s,θ˙2=−1.0 rad/s\dot\theta_1=2.0\,\mathrm{rad/s},\qquad \dot\theta_2=-1.0\,\mathrm{rad/s}

  1. 計量 (5.17) の成分を数値で書き、運動エネルギーを求めよ。
  2. 非対角の成分を無視して(座標基底が直交するとみなして)計算した値と比べよ。
  3. 同じ瞬間の m2m_2 の速度を直接求め、(1) の値を確かめよ。
解答

(1) 成分は次のとおりである(単位は kg m2\mathrm{kg\,m^2})。

g11=(m1+m2)l12=0.50,g12=m2l1l2cos⁡0=0.25,g22=m2l22=0.25g_{11}=(m_1+m_2)l_1^2=0.50,\qquad g_{12}=m_2l_1l_2\cos0=0.25,\qquad g_{22}=m_2l_2^2=0.25

運動エネルギーは

T=12(g11θ˙12+2g12θ˙1θ˙2+g22θ˙22)=12(0.50⋅4.0+2⋅0.25⋅(−2.0)+0.25⋅1.0)=0.625 JT=\tfrac12\bigl(g_{11}\dot\theta_1^2+2g_{12}\dot\theta_1\dot\theta_2+g_{22}\dot\theta_2^2\bigr) =\tfrac12\bigl(0.50\cdot4.0+2\cdot0.25\cdot(-2.0)+0.25\cdot1.0\bigr)=0.625\,\mathrm{J}

となる。

(2) 交差項 2g12θ˙1θ˙2=−1.02g_{12}\dot\theta_1\dot\theta_2=-1.0 を除くと、T=12(2.0+0.25)=1.125 JT=\tfrac12(2.0+0.25)=1.125\,\mathrm{J} になる。これは正しい値の1.8倍である。2本の棒が逆向きに回るので、m2m_2 の速度は打ち消し合う。この打ち消しを表すのが非対角の成分である。

(3) 角の差が0なので、2本の棒は同じ向きで、接線方向も同じである。m1m_1 の速さは l1θ˙1=1.0 m/sl_1\dot\theta_1=1.0\,\mathrm{m/s} である。m2m_2 の速度は、同じ接線方向に l1θ˙1+l2θ˙2=0.5 m/sl_1\dot\theta_1+l_2\dot\theta_2=0.5\,\mathrm{m/s} である。運動エネルギーは 12(1.0⋅1.02+1.0⋅0.52)=0.625 J\tfrac12(1.0\cdot1.0^2+1.0\cdot0.5^2)=0.625\,\mathrm{J} となり、(1) と一致する。

Minkowski 計量と不定値の計量

特殊相対論の時空は、座標 xμ=(ct,x,y,z)x^\mu=(ct,x,y,z) と次の計量で表される(相対論入門 第3章・第4章)。

ημν=diag(+1,−1,−1,−1),ds2=c2dt2−dx2−dy2−dz2(5.19)\eta_{\mu\nu}=\mathrm{diag}(+1,-1,-1,-1),\qquad \mathrm{d} s^2=c^2\mathrm{d} t^2-\mathrm{d} x^2-\mathrm{d} y^2-\mathrm{d} z^2\tag{5.19}

η\eta は非退化だが正定値でない擬 Riemann 計量である。

η(v,v)\eta(v,v) の符号でベクトルを分類する。正なら時間的、負なら空間的と呼ぶ。0でないのに η(v,v)=0\eta(v,v)=0 となるベクトルを、光的(ヌル)と呼ぶ。光的なベクトルは0でないのに長さが0なので、Cauchy–Schwarz の不等式も角の定義 (5.5) も、そのままでは使えない。

一方、非退化性しか使っていない結果はそのまま成り立つ。定理 5.6 の添字の上げ下げはその1つである。

vμ=ημνvν=(v0,−v1,−v2,−v3)v_\mu=\eta_{\mu\nu}v^\nu=(v^0,-v^1,-v^2,-v^3)

体積要素は、根号の中の絶対値をとって使う(定理 5.5)。曲がった時空の計量は、相対論入門 第8章が扱う。

座標を取り替えても、計量の正負の固有値の個数(符号数)は変わらない。

定理 5.13(Sylvester の慣性法則)

非退化な対称行列 gg と正則行列 JJ をとる。JTgJJ^{\mathsf T}gJ の正の固有値の個数は、gg の正の固有値の個数と等しい。

証明

g′=JTgJg'=J^{\mathsf T}gJ と書く。2つの行列の正の固有値の個数を、それぞれ pp と p′p' とする。もとの行列の正の固有値に属する固有ベクトルは、pp 次元の部分空間 W+W_+ を張る。その上では、0でない vv について vTgv>0v^{\mathsf T}gv>0 である。

g′g' の負の固有値に属する固有ベクトルは、n−p′n-p' 次元の部分空間を張る。この部分空間を W−′W'_- と書く。その上では、0でない uu について uTg′u<0u^{\mathsf T}g'u<0 である。

像 JW−′JW'_- も n−p′n-p' 次元の部分空間である。v=Juv=Ju と書くと、vTgv=uTg′u<0v^{\mathsf T}gv=u^{\mathsf T}g'u<0 となる。

p>p′p>p' と仮定すると、2つの部分空間の次元の和は nn を超える。そのため W+W_+ と JW−′JW'_- は、0でない共通のベクトルを持つ。そのベクトルでは2次形式の値が正かつ負となり、矛盾する。

したがって p≤p′p\le p' である。逆行列について同じ議論をすると、p′≤pp'\le p も成り立つ。

変換則 (5.3) は g′=JTgJg'=J^{\mathsf T}gJ の形なので、符号数は座標によらない。時空の符号数 (+,−,−,−)(+,-,-,-) は、座標の選び方で正定値に変えることはできない。

例題 5.7 Minkowski 計量でのベクトルの分類と固有時間 ★★

オリジナル2次元の Minkowski 計量 ds2=c2dt2−dx2\mathrm{d} s^2=c^2\mathrm{d} t^2-\mathrm{d} x^2 を、成分 (c dt, dx)(c\,\mathrm{d} t,\ \mathrm{d} x) で考える。

  1. 次の3つのベクトルを、時間的・空間的・光的に分類せよ。

u=(1, 0.6),w=(1, 1),z=(0.5, 1)u=(1,\ 0.6),\qquad w=(1,\ 1),\qquad z=(0.5,\ 1) 2. ww の添字を下げた成分を求め、wμwμ=0w_\mu w^\mu=0 を確かめよ。3. 速さ 0.6c0.6c で動く時計の世界線に沿った固有時間を考える。座標時間で10年進む間に、この時計は何年進むか。

解答

(1) η(u,u)=1−0.36=0.64\eta(u,u)=1-0.36=0.64 は正なので、uu は時間的である。η(w,w)=1−1=0\eta(w,w)=1-1=0 なので、ww は光的である。η(z,z)=0.25−1=−0.75\eta(z,z)=0.25-1=-0.75 は負なので、zz は空間的である。

(2) wμ=ημνwν=(1, −1)w_\mu=\eta_{\mu\nu}w^\nu=(1,\,-1) である。縮約は 1⋅1+(−1)⋅1=01\cdot1+(-1)\cdot1=0 となる。

(3) 時計の世界線の変位は (c dt, 0.6c dt)(c\,\mathrm{d} t,\ 0.6c\,\mathrm{d} t) である。その長さは ds=c dt1−0.36=0.8 c dt\mathrm{d} s=c\,\mathrm{d} t\sqrt{1-0.36}=0.8\,c\,\mathrm{d} t である。これを cc で割ったものが固有時間 dτ\mathrm{d}\tau である。

座標時間10年の間に、時計は 0.8×10=80.8\times10=8 年進む。これは、曲線の長さ (5.4) を時間的な曲線に使った結果である。

確認テスト

オリジナル

  1. 5.4-1 4次元の Minkowski 計量 (5.19) が Riemann 計量でないことを、具体的なベクトルを1つ挙げて示せ。
  2. 5.4-2 円柱座標 (ρ,ϕ,z)(\rho,\phi,z) を使う。質量 mm の質点が、円錐面 z=kρ (k>0)z=k\rho\ (k>0) の上に拘束されている。座標 (ρ,ϕ)(\rho,\phi) で運動エネルギーの計量を求め、g\sqrt g を書け。
  3. 5.4-3 m1=3m2m_1=3m_2 の二重振り子で、2つの座標基底のなす角の最小値を求めよ。また、m2≪m1m_2\ll m_1 の極限で、どの Δ\Delta でも座標基底がほぼ直交する理由を述べよ。
  4. 5.4-4 2次元の Minkowski 計量 ds2=c2dt2−dx2\mathrm{d} s^2=c^2\mathrm{d} t^2-\mathrm{d} x^2 で、光円錐座標 u=ct−x, w=ct+xu=ct-x,\ w=ct+x を使う。計量が ds2=du dw\mathrm{d} s^2=\mathrm{d} u\,\mathrm{d} w となることを示せ。座標基底 ∂u, ∂w\partial_u,\ \partial_w がどちらも光的であることと、η(∂u,∂w)=1/2\eta(\partial_u,\partial_w)=1/2 を確かめよ。

木下の勉強ステータス

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