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曲線座標の勾配・発散・ラプラシアン

2026年10月22日14分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第5章 計量
目次
  1. 発散を流束から定める
  2. 座標基底と正規直交枠
  3. 正規直交枠は座標基底とは限らない
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第5章 §5.3 ★★★ 発散とラプラシアンの一般の公式 1g∂i(g gij∂jf)\frac{1}{\sqrt g}\partial_i(\sqrt g\,g^{ij}\partial_jf) を計量から導く。スケール因子の公式はその特別な場合

発散を流束から定める

ベクトル場 VV の発散は、小さな領域から外へ出る流束を、その領域の体積で割った極限である。この定義は座標を使わない。座標の小さな箱を領域にとって極限を計算すると、計量を使った公式が得られる。

流束を計量で表すには、補題 5.4 を使う。面 x1=cx^1=c の小さな片をとり、その辺を Δx2∂2,…,Δxn∂n\Delta x^2\partial_2,\dots,\Delta x^n\partial_n とする。短い時間 Δτ\Delta\tau の間に、流れがこの片を通って運ぶ体積を考える。それは、辺 VΔτV\Delta\tau とこの片の辺が張る平行体の体積である。

補題の行列 MM の第1列は VΔτV\Delta\tau の成分である。残りの列は Δxa∂a\Delta x^a\partial_a の成分になる。したがって det⁡M=V1Δτ Δx2⋯Δxn\det M=V^1\Delta\tau\,\Delta x^2\cdots\Delta x^n である。単位時間あたりに直すと、面の片を x1x^1 の増える向きへ通る流束は

Φ1=g V1 Δx2⋯Δxn(5.11)\Phi_1=\sqrt g\,V^1\,\Delta x^2\cdots\Delta x^n\tag{5.11}

となる。V1<0V^1<0 なら負の値になり、逆向きに通ることを表す。

定理 5.9(発散とラプラシアンの一般形)

Riemann 計量のもとで、ベクトル場 VV の発散と関数 ff のラプラシアンは

div⁡V=1g ∂i(g Vi),Δf=div⁡grad⁡f=1g ∂i(g gij∂jf)\begin{gather*}\operatorname{div}V=\frac{1}{\sqrt g}\,\partial_i\bigl(\sqrt g\,V^i\bigr),\tag{5.12}\\\Delta f=\operatorname{div}\operatorname{grad}f=\frac{1}{\sqrt g}\,\partial_i\bigl(\sqrt g\,g^{ij}\partial_jf\bigr)\tag{5.13}\end{gather*}

である。

証明

点 xx を頂点とし、辺が Δx1,…,Δxn\Delta x^1,\dots,\Delta x^n の座標の箱をとる。x1x^1 方向に向かい合う2つの面を通って外へ出る流束は、(5.11) から

[g V1]x1+Δx1Δx2⋯Δxn−[g V1]x1Δx2⋯Δxn=∂1(g V1)Δx1⋯Δxn+O(Δn+1)\Bigl[\sqrt g\,V^1\Bigr]_{x^1+\Delta x^1}\Delta x^2\cdots\Delta x^n-\Bigl[\sqrt g\,V^1\Bigr]_{x^1}\Delta x^2\cdots\Delta x^n =\partial_1\bigl(\sqrt g\,V^1\bigr)\Delta x^1\cdots\Delta x^n+\mathcal{O}(\Delta^{n+1})

である。ここで O(Δn+1)\mathcal{O}(\Delta^{n+1}) は、箱の辺について n+1n+1 次以上の項を表す。

ほかの方向の面の組も同じように計算して、すべてを足す。外へ出る流束の合計は ∂i(g Vi) Δx1⋯Δxn\partial_i(\sqrt g\,V^i)\,\Delta x^1\cdots\Delta x^n になる。箱の体積は g Δx1⋯Δxn\sqrt g\,\Delta x^1\cdots\Delta x^n なので、比をとって箱を小さくすると (5.12) を得る。(5.13) は、(5.12) に勾配の成分 (5.10) を代入した式である。

直交座標の Euclid 空間では、g=1\sqrt g=1 で逆計量は単位行列である。このとき (5.12) は ∂iVi\partial_iV^i に戻り、(5.13) は ∑i∂i2f\sum_i\partial_i^2f に戻る。第9章で共変微分を定義すると、(5.12) は ∇iVi\nabla_iV^i と同じ式であることが示せる。相対論入門 第8章でも、同じ公式を Christoffel 記号から導いている。

座標基底と正規直交枠

計量が対角になる座標を直交座標系と呼ぶ(直線の格子とは限らない)。

g=diag(h12, h22,…,hn2),hi=∥∂i∥=giig=\mathrm{diag}\bigl(h_1^2,\ h_2^2,\dots,h_n^2\bigr),\qquad h_i=\left\Vert \partial_i\right\Vert =\sqrt{g_{ii}}

hih_i をスケール因子と呼ぶ。座標基底を長さ1にそろえた e^i=∂i/hi\hat{\bm{e}}_i=\partial_i/h_i を正規直交枠と呼ぶ。

物理の本でベクトルの「成分」と言うときは、多くの場合、正規直交枠での成分 Ai^A_{\hat i} を指す。座標基底での成分 AiA^i との関係は、A=Ai∂i=∑iAi^e^iA=A^i\partial_i=\sum_iA_{\hat i}\hat{\bm{e}}_i から決まる。答えは Ai^=hiAiA_{\hat i}=h_iA^i(和をとらない)である。これを定理 5.9 に代入すると、直交座標系での公式が出る。

系 5.10(スケール因子の公式)

3次元の直交座標系で、h=h1h2h3h=h_1h_2h_3 と書く。このとき

∇f=∑i1hi∂f∂xi e^i,∇⋅A=1h∑i∂∂xi(hhiAi^),∇2f=1h∑i∂∂xi(hhi2∂f∂xi)\begin{gather*}\nabla f=\sum_i\frac{1}{h_i}\frac{\partial f}{\partial x^i}\,\hat{\bm{e}}_i,\qquad \nabla\cdot\bm{A}=\frac1h\sum_i\frac{\partial }{\partial x^i}\Bigl(\frac{h}{h_i}A_{\hat i}\Bigr),\tag{5.14}\\\nabla^2f=\frac1h\sum_i\frac{\partial }{\partial x^i}\Bigl(\frac{h}{h_i^2}\frac{\partial f}{\partial x^i}\Bigr)\tag{5.15}\end{gather*}

が成り立つ。

証明

対角の計量では g=h\sqrt g=h で、逆計量は gii=1/hi2g^{ii}=1/h_i^2 である。勾配の座標基底の成分は (grad⁡f)i=hi−2∂if(\operatorname{grad}f)^i=h_i^{-2}\partial_if である。正規直交枠の成分はその hih_i 倍で、hi−1∂ifh_i^{-1}\partial_if になる。

発散は、(5.12) に Ai=Ai^/hiA^i=A_{\hat i}/h_i を入れて得られる。ラプラシアンは、(5.13) に gii=1/hi2g^{ii}=1/h_i^2 を入れれば得られる。

電磁気学入門 第1章 §1.4 の曲線座標の公式は、この系の円柱座標と球座標の場合である。球座標のスケール因子は (hr,hθ,hφ)=(1, r, rsin⁡θ)(h_r,h_\theta,h_\varphi)=(1,\ r,\ r\sin\theta) である。

図

図 5.3 平面の極座標の座標基底。どの点でも ∂r\partial_r と ∂θ\partial_\theta は直交するが、∂θ\partial_\theta の長さは rr で、原点から離れるほど長い(図では全体を 0.6 倍して描いた)。r=1r=1 では ∂θ\partial_\theta は長さ1だが、r=2.2r=2.2 では長さ 2.22.2 で、長さ1の e^θ\hat{\bm{e}}_\theta(破線)とは異なる。極座標の座標基底は直交するが、正規ではない。

正規直交枠は座標基底とは限らない

正規直交枠は、どの点でも Gram–Schmidt の方法で作れる。しかし、それが何かの座標の座標基底になっているとは限らない。

命題 5.11(極座標の正規直交枠は座標基底でない)

平面の極座標の正規直交枠を e^r=∂r, e^θ=∂θ/r\hat{\bm{e}}_r=\partial_r,\ \hat{\bm{e}}_\theta=\partial_\theta/r とする。この2つがある座標 (u,w)(u,w) の座標基底 ∂u, ∂w\partial_u,\ \partial_w になることはない。これは原点を含まないどんな開集合の上でも成り立つ。

証明

そのような座標があったとする。双対基底は du, dw\mathrm{d} u,\ \mathrm{d} w である。一方、正規直交枠の双対基底は dr, r dθ\mathrm{d} r,\ r\,\mathrm{d}\theta である。双対基底は基底から一通りに決まるので、dw=r dθ\mathrm{d} w=r\,\mathrm{d}\theta でなければならない。

成分で書くと ∂w/∂r=0\partial w/\partial r=0 と ∂w/∂θ=r\partial w/\partial\theta=r である。2つ目の式を rr で微分すると、混合偏微分 ∂2w/∂r∂θ\partial^2w/\partial r\partial\theta は1になる。1つ目の式を θ\theta で微分すると、同じ混合偏微分は0になる。滑らかな関数の2階偏微分は順序によらないので、これは矛盾である。

座標基底は正規直交か

座標 xix^i の座標基底 ∂i\partial_i について、次の3つが成り立つ。

  1. 座標基底が直交するのは、計量の非対角の成分がすべて0のときだけである。斜交座標や二重振り子の配位空間では直交しない。
  2. 座標基底が正規直交になるのは、gij=δijg_{ij}=\delta_{ij} のときだけである。極座標は直交だが、∥∂θ∥=r\left\Vert \partial_\theta\right\Vert =r なので正規でない。
  3. 正規直交枠はいつでも作れる。しかし命題 5.11 のように、一般には座標基底にならない。

ある領域で gij=δijg_{ij}=\delta_{ij} となる座標が存在するのは、その領域が平坦なときに限る(第11章の Riemann テンソルが0)。球面では第8章の驚異の定理から曲率が0でない。そのため、正規直交な座標基底を持つ座標はどこにも無い。

Lie 括弧で言い直す

命題 5.11 の証明は、第13章の Lie 括弧を使うと短く書ける。

  • 座標基底どうしは、偏微分の順序交換から [∂i,∂j]=0[\partial_i,\partial_j]=0 を満たす。
  • 一方、正規直交枠の括弧は [∂r, r−1∂θ]=−r−2∂θ[\partial_r,\,r^{-1}\partial_\theta]=-r^{-2}\partial_\theta で、0でない。
  • したがって、正規直交枠はどの座標の座標基底にもならない。

例題 5.4 球座標のラプラシアンと一様に帯電した球 ★★★

オリジナル3次元の球座標 (r,θ,φ)(r,\theta,\varphi) を考える。

  1. 一般形 (5.13) から、球座標のラプラシアンを書け。
  2. r>0r>0 で、関数 1/r, r21/r,\ r^2 のラプラシアンを求めよ。
  3. 半径 RR で一様に帯電した球(電荷密度 ρ\rho)の内部の電位を、次の形とおく。

ϕ=ϕ0−ρr26ε0\phi=\phi_0-\frac{\rho r^2}{6\varepsilon_0}

この電位が Poisson 方程式 ∇2ϕ=−ρ/ε0\nabla^2\phi=-\rho/\varepsilon_0 を満たすことを確かめよ。

解答

(1) 計量は diag(1,r2,r2sin⁡2θ)\mathrm{diag}(1,r^2,r^2\sin^2\theta) で、g=r2sin⁡θ\sqrt g=r^2\sin\theta である。逆計量を掛けると、g gij\sqrt g\,g^{ij} の対角成分は次のようになる。

g grr=r2sin⁡θ,g gθθ=sin⁡θ,g gφφ=1sin⁡θ\sqrt g\,g^{rr}=r^2\sin\theta,\qquad \sqrt g\,g^{\theta\theta}=\sin\theta,\qquad \sqrt g\,g^{\varphi\varphi}=\frac{1}{\sin\theta}

(5.13) に入れて g\sqrt g で割ると

∇2f=1r2∂∂r(r2∂f∂r)+1r2sin⁡θ∂∂θ(sin⁡θ∂f∂θ)+1r2sin⁡2θ∂2f∂φ2\nabla^2f=\frac{1}{r^2}\frac{\partial }{\partial r}\Bigl(r^2\frac{\partial f}{\partial r}\Bigr)+\frac{1}{r^2\sin\theta}\frac{\partial }{\partial \theta}\Bigl(\sin\theta\frac{\partial f}{\partial \theta}\Bigr)+\frac{1}{r^2\sin^2\theta}\frac{\partial^2f}{\partial\varphi^2}

を得る。

(2) どちらも rr だけの関数なので、第1項だけが残る。f=1/rf=1/r では r2∂rf=−1r^2\partial_rf=-1 が定数なので、ラプラシアンは0である。f=r2f=r^2 では r2∂rf=2r3r^2\partial_rf=2r^3 である。ラプラシアンは r−2∂r(2r3)=6r^{-2}\partial_r(2r^3)=6 になる。

直交座標で x2+y2+z2x^2+y^2+z^2 のラプラシアンを計算しても、2+2+2=62+2+2=6 で一致する。

(3) (2) の結果から、∇2ϕ=−ρ6ε0⋅6=−ρ/ε0\nabla^2\phi=-\frac{\rho}{6\varepsilon_0}\cdot6=-\rho/\varepsilon_0 となる。したがって Poisson 方程式を満たす。定数 ϕ0\phi_0 は、球の表面で外部の電位 ρR3/(3ε0r)\rho R^3/(3\varepsilon_0r) とつながるように選ぶ。値は ϕ0=ρR2/(2ε0)\phi_0=\rho R^2/(2\varepsilon_0) である。

例題 5.5 斜交座標のラプラシアン ★★

オリジナル角 α\alpha の斜交座標(§5.1)で、ラプラシアンを ∂1, ∂2\partial_1,\ \partial_2 で書け。得た式を f=(x1)2f=(x^1)^2 に使い、直交座標の計算と一致することを確かめよ。

解答

計量の行列とその逆行列は次のとおりで、行列式は sin⁡2α\sin^2\alpha である。

(gij)=(1cos⁡αcos⁡α1),(gij)=1sin⁡2α(1−cos⁡α−cos⁡α1)(g_{ij})=\begin{pmatrix}1&\cos\alpha\\ \cos\alpha&1\end{pmatrix},\qquad (g^{ij})=\frac{1}{\sin^2\alpha}\begin{pmatrix}1&-\cos\alpha\\ -\cos\alpha&1\end{pmatrix}

g=sin⁡α\sqrt g=\sin\alpha は定数なので、(5.13) の g\sqrt g は約分できる。

Δf=gij∂i∂jf=1sin⁡2α(∂12f−2cos⁡α ∂1∂2f+∂22f)\Delta f=g^{ij}\partial_i\partial_jf=\frac{1}{\sin^2\alpha}\Bigl(\partial_1^2f-2\cos\alpha\,\partial_1\partial_2f+\partial_2^2f\Bigr)

非対角の計量の成分から、混合偏微分の項が出る。

f=(x1)2f=(x^1)^2 を入れると Δf=2/sin⁡2α\Delta f=2/\sin^2\alpha である。直交座標で確かめる。a1=(1,0), a2=(cos⁡α,sin⁡α)\bm{a}_1=(1,0),\ \bm{a}_2=(\cos\alpha,\sin\alpha) とする。

x=x1+x2cos⁡α,y=x2sin⁡αx=x^1+x^2\cos\alpha,\qquad y=x^2\sin\alpha

これを解くと x1=x−ycot⁡αx^1=x-y\cot\alpha なので、f=(x−ycot⁡α)2f=(x-y\cot\alpha)^2 である。直交座標のラプラシアンは 2+2cot⁡2α=2/sin⁡2α2+2\cot^2\alpha=2/\sin^2\alpha となり、一致する。

確認テスト

オリジナル

  1. 5.3-1 平面の極座標の点 (r,θ)=(3,π/4)(r,\theta)=(3,\pi/4) で、ベクトル v=∂θv=\partial_\theta の長さを答えよ。正規直交枠での成分 vθ^v_{\hat\theta} も答えよ。
  2. 5.3-2 円柱座標(確認テスト 5.1-2)のラプラシアンを、一般形 (5.13) から書け。さらに、正の整数 mm について ρmcos⁡mϕ\rho^m\cos m\phi のラプラシアンが0になることを示せ。
  3. 5.3-3 3次元の球座標で、2つのベクトル場 V=∂r, W=r−2∂rV=\partial_r,\ W=r^{-2}\partial_r の発散を求めよ(原点を除く)。WW の発散が0になることを、原点を中心とする球面を通る流束の言葉で説明せよ。
  4. 5.3-4 2次元で、計量が ds2=h2(du2+dw2)\mathrm{d} s^2=h^2(\mathrm{d} u^2+\mathrm{d} w^2) の形(等角な座標)とする。ラプラシアンが h−2(∂u2+∂w2)h^{-2}(\partial_u^2+\partial_w^2) になることを示せ。これを平面の対数極座標 u=ln⁡r, w=θu=\ln r,\ w=\theta に使い、ラプラシアンが e−2u(∂u2+∂w2)\mathrm{e}^{-2u}(\partial_u^2+\partial_w^2) になることを導け。

木下の勉強ステータス

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