自由運動は計量の測地線
AI 生成・木下が未勉強
物理のための微分幾何入門 第10章 §10.3 ★★★ 束縛された質点の自由運動は運動エネルギーの計量の測地線で、力はそこからのずれを生む
運動エネルギーの計量
第5章 §5.4 で見たように、一般化座標 で書いた運動エネルギーは速度の2次式になる。
係数 は対称で正定値なので、配位空間の計量とみなせる。質量はこの計量に含めておく。
ポテンシャルの無い系の Lagrangian は である。これは定理 10.5 の被積分関数 と同じ形をしている。
定理 10.10(自由運動と測地線)
Lagrangian が の系を考える。この系の運動は、計量 の測地線を、時刻をアフィン径数として走るものに限られる。運動エネルギー の保存は、命題 10.3 の速さの保存にあたる。
証明
作用 は、(10.5) のエネルギー汎関数 そのものである。定理 10.5 により、その Euler–Lagrange 方程式は測地線の方程式 と同値である。命題 10.3 により は一定である。
この定理を逆向きに使うと、Christoffel 記号の計算が楽になる。公式 (10.1) の和を全部書くより、 の Euler–Lagrange 方程式を書いて加速度について解く方が速い。解いた式の の係数が、Christoffel 記号の符号を変えたものになる。係数を読むときは、 の項に の2つが寄与することに注意する(例題 10.1 の係数2)。
ポテンシャルがあるとき
Lagrangian が のとき、Euler–Lagrange 方程式の左辺は定理 10.5 と同じで、右辺に が加わる。 で添字を上げると次の形になる。
右辺は、第5章 §5.2 で計量を使って1形式 をベクトルに直した である。左辺は (10.2) の にあたる。
(10.15) は「共変な加速度=力(を質量を含む計量で割ったもの)」という Newton の法則の形をしている。力がなければ質点は測地線に沿って進み、力はそこからのずれを生む原因になる。左辺の Christoffel 記号の項は、曲線座標で現れる遠心力や Coriolis 力の形の項を含む。計量 を書けば、これらの項は自動的に出てくる。
球面上の自由粒子
重力の無い所で、半径 の滑らかな球面に束縛された質量 の質点を考える。運動エネルギーは次のとおりである。
これは球面の計量の 倍である。定数倍は Christoffel 記号を変えないので、質点は大円の上を一定の速さ で回る。1周にかかる時間は である。
大円の空間曲線としての曲率は で、主法線は球の中心を向く。第6章 §6.4 の加速度の分解によると、加速度は法線成分 だけを持つ。したがって球面は質点を大きさ の力で中心へ押している。この抗力は曲面に垂直なので、曲面の中から見た加速度 には寄与しない。
自由な剛体
外力の無い剛体の向きは回転群 SO(3) の点で表される。剛体の運動エネルギーは角速度の2次式なので、慣性テンソルで決まる計量が SO(3) の上に入る。
定理 10.10 により、自由な剛体の運動はこの計量の測地線である。Euler の方程式がこの測地線の方程式の書き換えになっていることは V. I. Arnold が示した。ここでは主張だけを書く。
例題 10.3 二重振り子の計量と Christoffel 記号 ★★★
オリジナル長さ の軽い棒2本と質量 のおもり2つでできた二重振り子を、重力の無い場所で考える。棒が鉛直下向きとなす角を とすると、運動エネルギーは次のとおりである。
- 配位空間(トーラス)の計量 を書き、正定値であることを確かめよ。
- の Euler–Lagrange 方程式から、0でない Christoffel 記号をすべて求めよ。
- 座標基底 と は直交しているか。
解答
- とおく。 と見比べると、計量は次のとおりである。
対角成分は正で、行列式は なので正定値である。2. 共通の因子 は Christoffel 記号に影響しないので、外して計算する。、 と書く。 についての Euler–Lagrange 方程式は次のようになる。
整理すると である。 についても同様に計算する。
整理すると である。2本をまとめると、行列の形の式になる。
逆行列 を掛けて について解く。
と見比べると、0でない成分は次の4つである。
の項が無いので、 である。3. 内積は で、 のとき以外は0でない。座標基底は一般には直交しない。
二重振り子の配位空間は第1章で見たトーラスだが、この計量は第7章の「空間に置いたドーナツ」の第一基本形式とは別物である。どの計量を使うかは運動エネルギーが決める。
確認テスト
オリジナル
10.3-1 円柱座標の質点の Lagrangian は である。Euler–Lagrange 方程式から、0でない Christoffel 記号を読み取れ。
10.3-2 重力の無い所で、半径 の滑らかな円柱面に質点が束縛されている。この質点を、軸と の角をなす向きに速さ で打ち出す。
- (a) 軌道が螺旋になることを示し、ピッチ(1周で軸方向に進む距離)を求めよ。
- (b) この螺旋の空間曲線としての曲率を求めよ。
10.3-3 長さ の球面振り子の位置を、鉛直下向きからの角と方位角の組 で表す。単位質量あたりの位置エネルギーは である。
- (a) (10.15) の形で運動方程式を書け。
- (b) を保つ円錐振り子の角速度を求めよ。 での周期を数値で求めよ。重力加速度は とする。
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