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自由運動は計量の測地線

2026年10月22日10分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第10章 測地線
目次
  1. 運動エネルギーの計量
  2. ポテンシャルがあるとき
  3. 球面上の自由粒子
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第10章 §10.3 ★★★ 束縛された質点の自由運動は運動エネルギーの計量の測地線で、力はそこからのずれを生む

運動エネルギーの計量

第5章 §5.4 で見たように、一般化座標 qiq^i で書いた運動エネルギーは速度の2次式になる。

T=12gij(q) q˙iq˙j(10.14)T=\frac12g_{ij}(q)\,\dot q^i\dot q^j\tag{10.14}

係数 gijg_{ij} は対称で正定値なので、配位空間の計量とみなせる。質量はこの計量に含めておく。

ポテンシャルの無い系の Lagrangian は L=TL=T である。これは定理 10.5 の被積分関数 E\mathcal E と同じ形をしている。

定理 10.10(自由運動と測地線)

Lagrangian が L=T=12gijq˙iq˙jL=T=\frac12g_{ij}\dot q^i\dot q^j の系を考える。この系の運動は、計量 gg の測地線を、時刻をアフィン径数として走るものに限られる。運動エネルギー TT の保存は、命題 10.3 の速さの保存にあたる。

証明

作用 ∫L dt\int L\,\mathrm{d} t は、(10.5) のエネルギー汎関数 E[q]E[q] そのものである。定理 10.5 により、その Euler–Lagrange 方程式は測地線の方程式 q¨k+Γkijq˙iq˙j=0\ddot q^k+\Gamma^k{}_{ij}\dot q^i\dot q^j=0 と同値である。命題 10.3 により g(q˙,q˙)=2Tg(\dot q,\dot q)=2T は一定である。

この定理を逆向きに使うと、Christoffel 記号の計算が楽になる。公式 (10.1) の和を全部書くより、L=TL=T の Euler–Lagrange 方程式を書いて加速度について解く方が速い。解いた式の q˙iq˙j\dot q^i\dot q^j の係数が、Christoffel 記号の符号を変えたものになる。係数を読むときは、i≠ji\ne j の項に Γkij+Γkji\Gamma^k{}_{ij}+\Gamma^k{}_{ji} の2つが寄与することに注意する(例題 10.1 の係数2)。

ポテンシャルがあるとき

Lagrangian が L=T−V(q)L=T-V(q) のとき、Euler–Lagrange 方程式の左辺は定理 10.5 と同じで、右辺に −∂kV-\partial_kV が加わる。glkg^{lk} で添字を上げると次の形になる。

q¨k+Γkij q˙iq˙j=−gkl∂lV(10.15)\ddot q^k+\Gamma^k{}_{ij}\,\dot q^i\dot q^j=-g^{kl}\partial_lV\tag{10.15}

右辺は、第5章 §5.2 で計量を使って1形式 dV\mathrm{d} V をベクトルに直した −grad⁡V-\operatorname{grad}V である。左辺は (10.2) の Dq˙k/dtD\dot q^k/\mathrm{d} t にあたる。

(10.15) は「共変な加速度=力(を質量を含む計量で割ったもの)」という Newton の法則の形をしている。力がなければ質点は測地線に沿って進み、力はそこからのずれを生む原因になる。左辺の Christoffel 記号の項は、曲線座標で現れる遠心力や Coriolis 力の形の項を含む。計量 gg を書けば、これらの項は自動的に出てくる。

球面上の自由粒子

重力の無い所で、半径 aa の滑らかな球面に束縛された質量 mm の質点を考える。運動エネルギーは次のとおりである。

T=12ma2(θ˙2+sin⁡2θ φ˙2)T=\frac12ma^2\left(\dot\theta^2+\sin^2\theta\,\dot\varphi^2\right)

これは球面の計量の ma2ma^2 倍である。定数倍は Christoffel 記号を変えないので、質点は大円の上を一定の速さ vv で回る。1周にかかる時間は 2πa/v2\pi a/v である。

大円の空間曲線としての曲率は 1/a1/a で、主法線は球の中心を向く。第6章 §6.4 の加速度の分解によると、加速度は法線成分 v2/av^2/a だけを持つ。したがって球面は質点を大きさ mv2/amv^2/a の力で中心へ押している。この抗力は曲面に垂直なので、曲面の中から見た加速度 Dq˙/dtD\dot q/\mathrm{d} t には寄与しない。

自由な剛体

外力の無い剛体の向きは回転群 SO(3) の点で表される。剛体の運動エネルギーは角速度の2次式なので、慣性テンソルで決まる計量が SO(3) の上に入る。

定理 10.10 により、自由な剛体の運動はこの計量の測地線である。Euler の方程式がこの測地線の方程式の書き換えになっていることは V. I. Arnold が示した。ここでは主張だけを書く。

例題 10.3 二重振り子の計量と Christoffel 記号 ★★★

オリジナル長さ ll の軽い棒2本と質量 mm のおもり2つでできた二重振り子を、重力の無い場所で考える。棒が鉛直下向きとなす角を θ1,θ2\theta_1,\theta_2 とすると、運動エネルギーは次のとおりである。

T=12ml2[2θ˙12+θ˙22+2cos⁡(θ1−θ2) θ˙1θ˙2]T=\frac12ml^2\left[2\dot\theta_1^2+\dot\theta_2^2+2\cos(\theta_1-\theta_2)\,\dot\theta_1\dot\theta_2\right]

  1. 配位空間(トーラス)の計量 gijg_{ij} を書き、正定値であることを確かめよ。
  2. L=TL=T の Euler–Lagrange 方程式から、0でない Christoffel 記号をすべて求めよ。
  3. 座標基底 ∂θ1\partial_{\theta_1} と ∂θ2\partial_{\theta_2} は直交しているか。
解答
  1. Δ=θ1−θ2\Delta=\theta_1-\theta_2 とおく。T=12gijθ˙iθ˙jT=\frac12g_{ij}\dot\theta^i\dot\theta^j と見比べると、計量は次のとおりである。

g=ml2(2cos⁡Δcos⁡Δ1)g=ml^2\begin{pmatrix}2&\cos\Delta\\ \cos\Delta&1\end{pmatrix}

対角成分は正で、行列式は (ml2)2(2−cos⁡2Δ)=(ml2)2(1+sin⁡2Δ)>0(ml^2)^2(2-\cos^2\Delta)=(ml^2)^2(1+\sin^2\Delta)>0 なので正定値である。2. 共通の因子 ml2ml^2 は Christoffel 記号に影響しないので、外して計算する。s=sin⁡Δs=\sin\Delta、c=cos⁡Δc=\cos\Delta と書く。θ1\theta_1 についての Euler–Lagrange 方程式は次のようになる。

ddt(2θ˙1+c θ˙2)+s θ˙1θ˙2=2θ¨1+c θ¨2−s(θ˙1−θ˙2)θ˙2+s θ˙1θ˙2=0\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t}\left(2\dot\theta_1+c\,\dot\theta_2\right)+s\,\dot\theta_1\dot\theta_2 =2\ddot\theta_1+c\,\ddot\theta_2-s(\dot\theta_1-\dot\theta_2)\dot\theta_2+s\,\dot\theta_1\dot\theta_2=0

整理すると 2θ¨1+c θ¨2+s θ˙22=02\ddot\theta_1+c\,\ddot\theta_2+s\,\dot\theta_2^2=0 である。θ2\theta_2 についても同様に計算する。

ddt(θ˙2+c θ˙1)−s θ˙1θ˙2=θ¨2+c θ¨1−s(θ˙1−θ˙2)θ˙1−s θ˙1θ˙2=0\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t}\left(\dot\theta_2+c\,\dot\theta_1\right)-s\,\dot\theta_1\dot\theta_2 =\ddot\theta_2+c\,\ddot\theta_1-s(\dot\theta_1-\dot\theta_2)\dot\theta_1-s\,\dot\theta_1\dot\theta_2=0

整理すると c θ¨1+θ¨2−s θ˙12=0c\,\ddot\theta_1+\ddot\theta_2-s\,\dot\theta_1^2=0 である。2本をまとめると、行列の形の式になる。

(2cc1)(θ¨1θ¨2)=(−s θ˙22s θ˙12)\begin{pmatrix}2&c\\ c&1\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\ddot\theta_1\\ \ddot\theta_2\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}-s\,\dot\theta_2^2\\ s\,\dot\theta_1^2\end{pmatrix}

逆行列 12−c2(1−c−c2)\frac{1}{2-c^2}\begin{pmatrix}1&-c\\ -c&2\end{pmatrix} を掛けて θ¨\ddot\theta について解く。

θ¨1=−cs θ˙12+s θ˙222−c2,θ¨2=2s θ˙12+cs θ˙222−c2\ddot\theta_1=-\frac{cs\,\dot\theta_1^2+s\,\dot\theta_2^2}{2-c^2},\qquad \ddot\theta_2=\frac{2s\,\dot\theta_1^2+cs\,\dot\theta_2^2}{2-c^2}

θ¨k=−Γkijθ˙iθ˙j\ddot\theta^k=-\Gamma^k{}_{ij}\dot\theta^i\dot\theta^j と見比べると、0でない成分は次の4つである。

Γ111=cs2−c2,Γ122=s2−c2,Γ211=−2s2−c2,Γ222=−cs2−c2\Gamma^1{}_{11}=\frac{cs}{2-c^2},\quad \Gamma^1{}_{22}=\frac{s}{2-c^2},\quad \Gamma^2{}_{11}=-\frac{2s}{2-c^2},\quad \Gamma^2{}_{22}=-\frac{cs}{2-c^2}

θ˙1θ˙2\dot\theta_1\dot\theta_2 の項が無いので、Γk12=Γk21=0\Gamma^k{}_{12}=\Gamma^k{}_{21}=0 である。3. 内積は g(∂θ1,∂θ2)=ml2cos⁡Δg(\partial_{\theta_1},\partial_{\theta_2})=ml^2\cos\Delta で、Δ=±π/2\Delta=\pm\pi/2 のとき以外は0でない。座標基底は一般には直交しない。

二重振り子の配位空間は第1章で見たトーラスだが、この計量は第7章の「空間に置いたドーナツ」の第一基本形式とは別物である。どの計量を使うかは運動エネルギーが決める。

確認テスト

オリジナル

  1. 10.3-1 円柱座標の質点の Lagrangian は L=m2(r˙2+r2φ˙2+z˙2)L=\frac m2(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2+\dot z^2) である。Euler–Lagrange 方程式から、0でない Christoffel 記号を読み取れ。

  2. 10.3-2 重力の無い所で、半径 R=0.10 mR=0.10\ \mathrm m の滑らかな円柱面に質点が束縛されている。この質点を、軸と 30∘30^\circ の角をなす向きに速さ 1.0 m/s1.0\ \mathrm{m/s} で打ち出す。

    1. (a) 軌道が螺旋になることを示し、ピッチ(1周で軸方向に進む距離)を求めよ。
    2. (b) この螺旋の空間曲線としての曲率を求めよ。
  3. 10.3-3 長さ ll の球面振り子の位置を、鉛直下向きからの角と方位角の組 (θ,φ)(\theta,\varphi) で表す。単位質量あたりの位置エネルギーは V=−glcos⁡θV=-gl\cos\theta である。

    1. (a) (10.15) の形で運動方程式を書け。
    2. (b) θ=θ0\theta=\theta_0 を保つ円錐振り子の角速度を求めよ。l=1.0 m, θ0=30∘l=1.0\ \mathrm m,\ \theta_0=30^\circ での周期を数値で求めよ。重力加速度は g=9.8 m/s2g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とする。
  4. 10.3-4 (10.15) に従う運動について、12gijq˙iq˙j+V\frac12g_{ij}\dot q^i\dot q^j+V が一定であることを、命題 10.3 の証明にならって示せ。

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