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Jacobi 計量と Maupertuis の原理

2026年10月22日13分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第10章 測地線
目次
  1. 共形な計量の Christoffel 記号
  2. Jacobi の定理
  3. Maupertuis の原理
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第10章 §10.4 ★★ エネルギーを決めると、ポテンシャルのある運動の軌道も別の計量の測地線になる

共形な計量の Christoffel 記号

ポテンシャルがあると、(10.15) の解は計量 gg の測地線ではない。ところがエネルギー EE を1つに決めると、軌道の形(径数を忘れた曲線)は、gg を点ごとに伸び縮みさせた別の計量の測地線になる。この節ではそれを示す。準備として、計量に正の関数を掛けたとき Christoffel 記号がどう変わるかを計算する。

補題 10.11(共形変換の公式)

滑らかな関数 σ\sigma を使って g~ij=e2σgij\tilde g_{ij}=\mathrm{e}^{2\sigma}g_{ij} とおく。g~\tilde g の Christoffel 記号は次のようになる。

Γ~kij=Γkij+δki ∂jσ+δkj ∂iσ−gij gkl∂lσ(10.16)\tilde\Gamma^k{}_{ij}=\Gamma^k{}_{ij}+\delta^k{}_i\,\partial_j\sigma+\delta^k{}_j\,\partial_i\sigma-g_{ij}\,g^{kl}\partial_l\sigma\tag{10.16}

証明

逆行列は g~kl=e−2σgkl\tilde g^{kl}=\mathrm{e}^{-2\sigma}g^{kl} である。g~\tilde g の微分は、積の微分から次のようになる。

∂ig~lj=e2σ(∂iglj+2 ∂iσ glj)\partial_i\tilde g_{lj}=\mathrm{e}^{2\sigma}\left(\partial_ig_{lj}+2\,\partial_i\sigma\,g_{lj}\right)

これを (10.1) に入れると、e±2σ\mathrm{e}^{\pm2\sigma} は打ち消し合う。∂σ\partial\sigma を含まない部分は Γkij\Gamma^k{}_{ij} である。∂σ\partial\sigma を含む部分は次のとおりである。

12gkl⋅2(∂iσ glj+∂jσ gli−∂lσ gij)=δkj ∂iσ+δki ∂jσ−gij gkl∂lσ\frac12g^{kl}\cdot2\left(\partial_i\sigma\,g_{lj}+\partial_j\sigma\,g_{li}-\partial_l\sigma\,g_{ij}\right) =\delta^k{}_j\,\partial_i\sigma+\delta^k{}_i\,\partial_j\sigma-g_{ij}\,g^{kl}\partial_l\sigma

二つを足せば (10.16) である。

Jacobi の定理

定理 10.12(Jacobi 計量)

Lagrangian L=12gijq˙iq˙j−V(q)L=\frac12g_{ij}\dot q^i\dot q^j-V(q) の運動で、エネルギーが EE のものを考える。V<EV<E の領域で、次の計量をJacobi 計量と呼ぶ。

g~ij=2(E−V(q)) gij(10.17)\tilde g_{ij}=2\bigl(E-V(q)\bigr)\,g_{ij}\tag{10.17}

このとき運動の軌道は g~\tilde g の測地線である。さらに、次の式で新しい径数 ss を定めると、それは g~\tilde g の弧長になる。

ds=2(E−V) dt(10.18)\mathrm{d} s=2\bigl(E-V\bigr)\,\mathrm{d} t\tag{10.18}

証明

W=E−V>0W=E-V>0 と書く。エネルギーの保存から g(q˙,q˙)=2Wg(\dot q,\dot q)=2W である。補題 10.11 を e2σ=2W\mathrm{e}^{2\sigma}=2W、つまり ∂iσ=∂iW/(2W)\partial_i\sigma=\partial_iW/(2W) として使う。

まず ss が弧長であることを確かめる。q′=dq/ds=q˙/(2W)q'=\mathrm{d} q/\mathrm{d} s=\dot q/(2W) なので、次のとおり速さは1になる。

g~(q′,q′)=2W⋅g(q˙,q˙)4W2=2W⋅2W4W2=1\tilde g(q',q')=2W\cdot\frac{g(\dot q,\dot q)}{4W^2}=2W\cdot\frac{2W}{4W^2}=1

次に q′′q'' を計算する。d/ds=(2W)−1d/dt\mathrm{d}/\mathrm{d} s=(2W)^{-1}\mathrm{d}/\mathrm{d} t と W˙=∂jW q˙j\dot W=\partial_jW\,\dot q^j を使う。

q′′k=12Wddt(q˙k2W)=14W2(q¨k−W˙W q˙k)q''^k=\frac{1}{2W}\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t}\left(\frac{\dot q^k}{2W}\right)=\frac{1}{4W^2}\left(\ddot q^k-\frac{\dot W}{W}\,\dot q^k\right)

(10.16) の追加項を q′iq′jq'^iq'^j と縮約する。2つの δ\delta の項は同じ寄与をし、最後の項には g(q˙,q˙)=2Wg(\dot q,\dot q)=2W が現れる。

(2δki∂jσ−gijgkl∂lσ)q′iq′j=14W2(W˙W q˙k−gkl∂lW)\left(2\delta^k{}_i\partial_j\sigma-g_{ij}g^{kl}\partial_l\sigma\right)q'^iq'^j =\frac{1}{4W^2}\left(\frac{\dot W}{W}\,\dot q^k-g^{kl}\partial_lW\right)

これらと Γkijq′iq′j=Γkijq˙iq˙j/(4W2)\Gamma^k{}_{ij}q'^iq'^j=\Gamma^k{}_{ij}\dot q^i\dot q^j/(4W^2) を足す。(10.15) は −gkl∂lV=gkl∂lW-g^{kl}\partial_lV=g^{kl}\partial_lW と書けるので、次のように打ち消し合う。

q′′k+Γ~kijq′iq′j=14W2(q¨k+Γkijq˙iq˙j−gkl∂lW)=0q''^k+\tilde\Gamma^k{}_{ij}q'^iq'^j=\frac{1}{4W^2}\left(\ddot q^k+\Gamma^k{}_{ij}\dot q^i\dot q^j-g^{kl}\partial_lW\right)=0

よって q(s)q(s) は g~\tilde g の測地線を弧長で走る曲線である。

Maupertuis の原理

Jacobi の定理を変分の言葉で言い直す。正準運動量は pi=∂L/∂q˙i=gijq˙jp_i=\partial L/\partial\dot q^i=g_{ij}\dot q^j なので、実際の運動の上では piq˙i=2T=2Wp_i\dot q^i=2T=2W である。一方で、Jacobi 計量での長さの要素は次のとおりである。

g~ijq˙iq˙j dt=2W⋅2W dt=2W dt=piq˙i dt\sqrt{\tilde g_{ij}\dot q^i\dot q^j}\,\mathrm{d} t=\sqrt{2W\cdot2W}\,\mathrm{d} t=2W\,\mathrm{d} t=p_i\dot q^i\,\mathrm{d} t

したがって、簡約作用と呼ばれる S0=∫pi dqiS_0=\int p_i\,\mathrm{d} q^i は、実際の運動の上で Jacobi 計量での長さに等しい。

Maupertuis の原理

エネルギー EE を決め、2点を結ぶ道を比べる。各点での速さはエネルギーの式 12g(q˙,q˙)=E−V\frac12g(\dot q,\dot q)=E-V で決める。このとき実際の軌道は、簡約作用 S0=∫pi dqiS_0=\int p_i\,\mathrm{d} q^i を停留させる。S0S_0 は Jacobi 計量での長さなので、この原理は定理 10.6 と定理 10.12 の言い換えである。

Hamilton の原理は時刻を止めて道を比べ、Maupertuis の原理はエネルギーを止めて道を比べる。後者は径数を捨てて軌道の形だけを問うので、測地線(径数によらない長さの停留)の問題になる。簡約作用 ∫pi dqi\int p_i\,\mathrm{d} q^i は、時間に依らない Hamilton–Jacobi 方程式の特性関数にあたる。その側からの見方は虎の巻『解析力学から様々な理論分野を組み立てる』第1部第13章にある。

折り返し点では計量がつぶれる

  • 運動できる領域は V≤EV\le E である(Hill の領域とも呼ぶ)。その境界 V=EV=E では g~=0\tilde g=0 になり、Jacobi 計量は計量でなくなる。
  • 真上に投げた球のように速さが0になって引き返す運動は、境界に触れて戻る。この点は Jacobi 計量の測地線としては扱えない。
  • 定理 10.12 は V<EV<E の内部だけで成り立つ主張である。

例題 10.4 Kepler 運動を Jacobi 計量の測地線として解く ★★

オリジナル平面上で、引力ポテンシャル V=−k/rV=-k/r の中を質量 mm の質点が運動する。定数 kk は正である。エネルギーを EE、角運動量を LL とする。

  1. Jacobi 計量を極座標で書け。
  2. 回転の対称性から、Clairaut の関係と同じ形の保存量 J\mathcal J を作り、それが角運動量 LL に等しいことを示せ。
  3. u=1/ru=1/r について軌道の方程式を導き、軌道が円錐曲線 u=mkL2(1+ecos⁡(φ−φ0))u=\frac{mk}{L^2}\bigl(1+e\cos(\varphi-\varphi_0)\bigr) であることを示せ。離心率 ee を E,LE,L で表せ。
解答
  1. 運動エネルギーは T=m2(r˙2+r2φ˙2)T=\frac m2(\dot r^2+r^2\dot\varphi^2) なので、g=m(dr2+r2dφ2)g=m(\mathrm{d} r^2+r^2\mathrm{d}\varphi^2) である。(10.17) から Jacobi 計量は次のようになる。

ds~2=F(r)(dr2+r2dφ2),F(r)=2m(E+kr)\mathrm{d}\tilde s^2=F(r)\left(\mathrm{d} r^2+r^2\mathrm{d}\varphi^2\right),\qquad F(r)=2m\left(E+\frac kr\right) 2. 関数 FF は方位角によらないので、φ\varphi は循環座標である。Jacobi 計量の測地線のエネルギー汎関数 12∫F(r′2+r2φ′2) ds\frac12\int F(r'^2+r^2\varphi'^2)\,\mathrm{d} s の φ\varphi の Euler–Lagrange 方程式から、次の量が保存する。

J=F r2φ′\mathcal J=F\,r^2\varphi'

これは (10.11) と同じ形である。実際の運動に戻すには、(10.18) の ds=2Wdt\mathrm{d} s=2W\mathrm{d} t を使う。φ′=φ˙/(2W)\varphi'=\dot\varphi/(2W) と F=2mWF=2mW から次の式を得る。

J=2mW r2 φ˙2W=mr2φ˙=L\mathcal J=2mW\,r^2\,\frac{\dot\varphi}{2W}=mr^2\dot\varphi=L 3. 弧長で径数づけているので F(r′2+r2φ′2)=1F(r'^2+r^2\varphi'^2)=1 である。r′=drdφφ′r'=\frac{\mathrm{d} r}{\mathrm{d}\varphi}\varphi' と φ′=L/(Fr2)\varphi'=L/(Fr^2) を入れると、次の式になる。

(drdφ)2=r2(Fr2L2−1)\left(\frac{\mathrm{d} r}{\mathrm{d}\varphi}\right)^2=r^2\left(\frac{Fr^2}{L^2}-1\right)

u=1/ru=1/r に変えると dr/dφ=−r2 du/dφ\mathrm{d} r/\mathrm{d}\varphi=-r^2\,\mathrm{d} u/\mathrm{d}\varphi である。これと FF の式を代入して、次の式を得る。

(dudφ)2=FL2−u2=2mEL2+2mkL2 u−u2\left(\frac{\mathrm{d} u}{\mathrm{d}\varphi}\right)^2=\frac{F}{L^2}-u^2=\frac{2mE}{L^2}+\frac{2mk}{L^2}\,u-u^2

両辺を φ\varphi で微分し、2 du/dφ2\,\mathrm{d} u/\mathrm{d}\varphi で割ると線形の方程式になる。

d2udφ2+u=mkL2\frac{\mathrm{d}^2u}{\mathrm{d}\varphi^2}+u=\frac{mk}{L^2}

一般解は u=mkL2(1+ecos⁡(φ−φ0))u=\frac{mk}{L^2}\bigl(1+e\cos(\varphi-\varphi_0)\bigr) で、軌道は原点を焦点とする円錐曲線である。これを1階の式に戻して ee を決める。

e2=1+2EL2mk2e^2=1+\frac{2EL^2}{mk^2}

離心率の式から、エネルギーの符号で軌道の種類が分かれる。E<0E<0 なら e<1e<1 で楕円になる。E=0E=0 なら放物線、E>0E>0 なら双曲線である。時刻をまったく使わずに、軌道の形だけが測地線の問題として決まった。

E=0E=0 の Kepler 運動と平らな Jacobi 計量

E=0E=0 の場合を考える。このとき F=2mk/rF=2mk/r である。新しい座標 ρ=2r, χ=φ/2\rho=2\sqrt r,\ \chi=\varphi/2 をとる。dr=ρ dρ/2\mathrm{d} r=\rho\,\mathrm{d}\rho/2 と r=ρ2/4r=\rho^2/4 を使うと、Jacobi 計量は次の形に直る。

2mkr(dr2+r2dφ2)=2mk(dρ2+ρ2dχ2)\frac{2mk}{r}\left(\mathrm{d} r^2+r^2\mathrm{d}\varphi^2\right)=2mk\left(\mathrm{d}\rho^2+\rho^2\mathrm{d}\chi^2\right)

これは平面の極座標の計量の定数倍で、Jacobi 計量は平らである。測地線は (ρ,χ)(\rho,\chi) 平面の直線 ρcos⁡χ=ρ0\rho\cos\chi=\rho_0 である。

もとの座標に戻すと、4rcos⁡2(φ/2)=ρ024r\cos^2(\varphi/2)=\rho_0^2 である。2cos⁡2(φ/2)=1+cos⁡φ2\cos^2(\varphi/2)=1+\cos\varphi を使うと、次の放物線になる。

r=ρ02/21+cos⁡φr=\frac{\rho_0^2/2}{1+\cos\varphi}

例題 10.4 の e=1e=1 の場合と一致する。複素数で書くと、この座標変換は z=w2/4z=w^2/4 の写像である(図 10.4)。

図

図 10.4 E=0E=0 の Kepler 運動。Jacobi 計量を座標 ρ=2r\rho=2\sqrt r、χ=φ/2\chi=\varphi/2 で書くと平らになり、測地線は直線になる(左)。写像 z=w2/4z=w^2/4 でもとの平面に戻すと、直線は力の中心を焦点とする放物線に移る(右)。線の太さで対応する組を示した。

Jacobi 計量の曲率と軌道の安定性

  • 2次元の Jacobi 計量の Gauss 曲率は、確認テスト 10.4-3 のように計算できる。Kepler 運動では、曲率の符号は −E-E の符号と同じになる。
  • 第11章 §11.4 の測地線偏差の式により、曲率が正なら近くの測地線は寄り合い、負なら離れていく。
  • 負の曲率を持つ Jacobi 計量の測地線が初期値に敏感になることは、Hadamard や Anosov の研究で知られている。ここでは主張だけを書く。

確認テスト

オリジナル

  1. 10.4-1 一様な重力 V=mgyV=mgy の中を、質量 mm の質点が一定のエネルギーで運動する。エネルギーを EE とする。Jacobi 計量を書き、それが計量として使える領域を求めよ。
  2. 10.4-2 10.4-1 の Jacobi 計量について、xx の平行移動の対称性から保存量 J\mathcal J を作れ。それを使って軌道 y(x)y(x) の方程式 d2y/dx2=−m2g/J2\mathrm{d}^2y/\mathrm{d} x^2=-m^2g/\mathcal J^2 を導け。さらに J=mx˙\mathcal J=m\dot x を示し、放物運動の軌道と一致することを確かめよ。
  3. 10.4-3 2次元の計量 e2σ(dx2+dy2)\mathrm{e}^{2\sigma}(\mathrm{d} x^2+\mathrm{d} y^2) の Gauss 曲率は K=−e−2σΔσK=-\mathrm{e}^{-2\sigma}\Delta\sigma である。ここで Δ\Delta は平面のラプラシアンである。これを使って、例題 10.4 の Jacobi 計量の Gauss 曲率を求め、符号を EE の符号で分類せよ。
  4. 10.4-4 実際の運動の上で、正準運動量 pi=gijq˙jp_i=g_{ij}\dot q^j について piq˙i=2(E−V)p_i\dot q^i=2(E-V) であることを示せ。さらに piq˙i dtp_i\dot q^i\,\mathrm{d} t が Jacobi 計量の長さの要素 ds\mathrm{d} s に一致することを示せ。

木下の勉強ステータス

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