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物理の曲面

2026年10月22日8分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第7章 曲面の幾何
目次
  1. Young–Laplace の式
  2. 膜の曲げエネルギー
  3. 確認テスト
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第7章 §7.5 ★★ 表面張力のある界面では圧力差が 2σH2\sigma H に等しい(Young–Laplace の式)。泡・液滴・毛管現象はこの1式で見積もれる

Young–Laplace の式

液体と気体の界面には、面積に比例するエネルギー σA\sigma A がある。係数 σ\sigma が表面張力で、単位は N/m=J/m2\mathrm{N/m}=\mathrm{J/m^2} である。界面が釣り合っているとき、界面を少し動かしたときのエネルギーの変化は0になる。この条件から、界面の両側の圧力差が曲率で決まる。

界面の内側(領域 I)の圧力を pIp_{\mathrm I}、外側(領域 II)の圧力を pIIp_{\mathrm{II}} とする。両側の体積を変えたときの仕事まで含めたエネルギーは

F=σA−pIVI−pIIVII(7.28)\mathcal F=\sigma A-p_{\mathrm I}V_{\mathrm I}-p_{\mathrm{II}}V_{\mathrm{II}}\tag{7.28}

である。圧力一定の気体を体積 δV\delta V だけ膨らませると、気体は外へ p δVp\,\delta V の仕事をする。(7.28) の圧力の項は、その仕事の分だけエネルギーを下げる。

補題 7.20(体積の第1変分)

界面の法線 n\bm{n} を領域 I の側に向け、界面を (7.22) のようにずらす。このとき領域 I の体積の変化は

δVI=−t∬ϕ dA+O(t2)\delta V_{\mathrm I}=-t\iint\phi\,\mathrm{d} A+\mathcal{O}(t^2)

である。

証明

界面の面積要素 dA\mathrm{d} A が法線方向に tϕt\phi だけ動くと、その厚さの薄い柱を掃く。柱の体積は tϕ dA+O(t2)t\phi\,\mathrm{d} A+\mathcal{O}(t^2) で、ϕ>0\phi>0 ならこの柱は領域 I に食い込むので I の体積が減る。面積要素について足し合わせると主張を得る。

定理 7.21(Young–Laplace の式 ★★★)

界面の法線 n\bm{n} を領域 I の側に向けて平均曲率 HH を計算する。(7.28) が界面のすべての小さな変形について停留するのは、界面の各点で

pI−pII=2σH=σ(κ1+κ2)(7.29)p_{\mathrm I}-p_{\mathrm{II}}=2\sigma H=\sigma(\kappa_1+\kappa_2)\tag{7.29}

が成り立つときである。

証明

定理 7.17 から δA=−2t∬Hϕ dA\delta A=-2t\iint H\phi\,\mathrm{d} A である。補題 7.20 から δVI=−t∬ϕ dA\delta V_{\mathrm I}=-t\iint\phi\,\mathrm{d} A、全体の体積は一定なので δVII=−δVI\delta V_{\mathrm{II}}=-\delta V_{\mathrm I} である。これらを (7.28) に代入すると

δF=t∬(−2σH+pI−pII)ϕ dA+O(t2)\delta\mathcal F=t\iint\bigl(-2\sigma H+p_{\mathrm I}-p_{\mathrm{II}}\bigr)\phi\,\mathrm{d} A+\mathcal{O}(t^2)

となる。これがすべての ϕ\phi について0になる条件は、系 7.19 と同じ議論で、括弧の中が恒等的に0であることである。

法線を圧力の高い側に向けると H>0H>0 になるので、曲率の中心は圧力の高い側にあり、界面は圧力の低い側へ膨らむ。石鹸膜のように両側の圧力が等しい界面では H=0H=0 で、§7.4 の極小曲面になる。半径 RR の球面の界面に中心へ向かう法線をとると、H=1/RH=1/R である。したがって内側の圧力は 2σ/R2\sigma/R だけ高い。

円柱の液柱

半径 aa の円柱状の液柱では、例題 7.2 により軸に向かう法線について κ1=1/a,κ2=0\kappa_1=1/a,\quad \kappa_2=0 である。したがって液柱の内部の圧力は外より σ/a\sigma/a だけ高い。同じ体積の球の液滴に比べてどちらの圧力が高いかを比べると、蛇口から出た細い水流が液滴に分かれる理由の見当がつく。この不安定性は Rayleigh–Plateau 不安定性と呼ばれる。

例題 7.5 水滴と泡の圧力差の見積もり ★★

オリジナル室温の水の表面張力を σ=0.072 N/m\sigma=0.072\ \mathrm{N/m}、石鹸水の表面張力を σs=0.025 N/m\sigma_s=0.025\ \mathrm{N/m} とする。

  1. 半径 1 mm1\ \mathrm{mm} の雨粒の内部は、外の空気よりどれだけ圧力が高いか。
  2. 水の中にできた半径 1 μm1\ \mu\mathrm m の気泡の内部は、まわりの水よりどれだけ圧力が高いか。大気圧 1.013×105 Pa1.013\times10^5\ \mathrm{Pa} と比べよ。
  3. 半径 2 cm2\ \mathrm{cm} のシャボン玉の内部の圧力は、外よりどれだけ高いか。膜には表と裏の2つの界面があることに注意せよ。
解答

どの場合も界面は球面で、法線を中心(内側)に向けると H=1/RH=1/R である。

(1) (7.29) から

Δp=2σR=2×0.0721×10−3 Pa=144 Pa\Delta p=\frac{2\sigma}{R}=\frac{2\times0.072}{1\times10^{-3}}\ \mathrm{Pa}=144\ \mathrm{Pa}

である。大気圧の約 0.14%0.14\% にあたる。

(2) 気泡でも、内側の気体の側に法線を向けると H=1/RH=1/R なので

Δp=2×0.0721×10−6 Pa=1.44×105 Pa\Delta p=\frac{2\times0.072}{1\times10^{-6}}\ \mathrm{Pa}=1.44\times10^5\ \mathrm{Pa}

である。これは大気圧の約 1.41.4 倍で、小さな気泡ほど内部の圧力が高い。

(3) シャボン玉の膜は厚さが半径に比べて十分小さいので、外側の界面と内側の界面の半径はどちらも RR とみなせる。外の空気から膜の中の液体へ移るときに 2σs/R2\sigma_s/R、液体から玉の内部の空気へ移るときにさらに 2σs/R2\sigma_s/R だけ圧力が上がる。したがって

Δp=4σsR=4×0.0252×10−2 Pa=5.0 Pa\Delta p=\frac{4\sigma_s}{R}=\frac{4\times0.025}{2\times10^{-2}}\ \mathrm{Pa}=5.0\ \mathrm{Pa}

である。

膜の曲げエネルギー

脂質二重膜のような生体膜では、表面張力より曲げにくさのほうが形を決めることが多い。膜の曲げのエネルギーは、局所的には曲率の2次式で書けると考える。曲率について2次までの量で座標の取り方によらないものは、平均曲率とその2乗と Gauss 曲率の組み合わせである。

Canham–Helfrich の曲げエネルギー

Fb=∬[kc2(2H−c0)2+kˉ K]dA\mathcal F_{\mathrm b}=\iint\Bigl[\frac{k_c}{2}\bigl(2H-c_0\bigr)^2+\bar k\,K\Bigr]\mathrm{d} A

  • 係数 kck_c を曲げ弾性率、kˉ\bar k を Gauss 曲げ弾性率と呼ぶ。定数 c0c_0 は自発曲率と呼ぶ。
  • 第2項の ∬K dA\iint K\,\mathrm{d} A は、第15章の Gauss–Bonnet の定理により閉じた膜の形を連続的に変えても変わらない。したがって膜の形の釣り合いには第1項だけが関わる。
  • 赤血球の円盤の形は、このエネルギーを体積と面積の制約のもとで最小にした形として調べられている。

確認テスト

オリジナル

  1. 7.5-1 半径 aa の円柱状の液柱の内外の圧力差を、Young–Laplace の式から1行で求めよ。
  2. 7.5-2 半径 1 cm と 2 cm のシャボン玉の、内外の圧力差をそれぞれ求めよ。石鹸水の表面張力は σs=0.025\sigma_s=0.025 N/m とする。2つを細い管でつなぐと空気はどちらからどちらへ流れるか。
  3. 7.5-3 半径 rr の細い管を水に立てると、水は高さ hh まで上がる。水が管の壁を完全にぬらす(接触角 00)とし、水面を半径 rr の半球とみなす。Young–Laplace の式と静水圧 ρgh\rho gh の釣り合いから h=2σ/(ρgr)h=2\sigma/(\rho gr) を導き、高さの値を求めよ。数値は r=0.1 mm, σ=0.072 N/m, ρ=1.0×103 kg/m3, g=9.8 m/s2r=0.1\ \mathrm{mm},\ \sigma=0.072\ \mathrm{N/m},\ \rho=1.0\times10^3\ \mathrm{kg/m^3},\ g=9.8\ \mathrm{m/s^2} とせよ。
  4. 7.5-4 半径 RR の球の液滴の半径を dR\mathrm{d} R だけ増やす。表面エネルギーの増加と、圧力差のする仕事を比べて、Δp=2σ/R\Delta p=2\sigma/R を直接導け。
  5. 7.5-5 c0=0c_0=0 とする。半径 RR の球面の膜について、曲げエネルギーの第1項 ∬kc2(2H)2 dA\iint\frac{k_c}{2}(2H)^2\,\mathrm{d} A を求め、半径によらないことを示せ。

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