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Foucault の振り子

2026年10月22日11分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第9章 共変微分・平行移動・ホロノミー
目次
  1. 振動面の向きはなぜ平行移動されるか
  2. 1日の回転角
  3. 接する円錐を展開して見る
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第9章 §9.4 ★★ 振動面の向きは、地球の自転とともに緯線に沿って平行移動される。1日の回転角 2πsin⁡λ2\pi\sin\lambda は緯線が囲む極冠のホロノミーである

1851年、L. Foucault はパリで長い振り子を振らせ、振動面がゆっくり回ることを示した。振動面の回転は地球が自転していることの直接の証拠になる。回る速さは緯度 λ\lambda に依り、北極では1日に1回転、赤道では回らない。この節では、その角度を前の節の平行移動の計算から導く。

振動面の向きはなぜ平行移動されるか

地球を半径 R⊕R_\oplus の球、自転の角速度を Ω\Omega とする。自転の周期は恒星に対する1日(恒星日)の 86164 秒で、角速度は次の値である。

Ω=2π86164 s≈7.292×10−5 s−1.\Omega=\frac{2\pi}{86164\ \mathrm s}\approx7.292\times10^{-5}\ \mathrm{s^{-1}}.

緯度 λ\lambda の点は、慣性系から見ると余緯度 θ0=π/2−λ\theta_0=\pi/2-\lambda の緯線を1恒星日で一周する。地球の公転は、1日の間の回転角への寄与が小さいので無視する。

振り子の周期は数秒から十数秒で、1日に比べてはるかに短い。そこで、振動の各周期の間は振り子の支点と鉛直方向がほぼ止まっているとみなし、振動の向きがゆっくり変わる様子を調べる。振動の向きを表す水平な単位ベクトルを u(t)\bm{u}(t) と書く。これは鉛直方向 n\bm{n}(地球の中心から外向き)と直交し、球面の接平面の中にある。

慣性系で振り子のおもりに働く力は、重力と糸の張力である。重力は鉛直方向を向き、張力は糸に沿うので、どちらも鉛直方向と u\bm{u} で張られる振動面の中にある。振動面に垂直な力の成分が無いので、振動面を鉛直軸のまわりに回す力のモーメントは無い。したがって u\bm{u} が変わるのは、鉛直方向が向きを変えるのに合わせて水平に保たれる分だけである。

この条件を式で書くと、u\bm{u} の変化は n\bm{n} に平行な成分だけを持つ。

dudt=−(u⋅dndt)n.(9.24)\frac{\mathrm{d}\bm{u}}{\mathrm{d} t}=-\Bigl(\bm{u}\cdot\frac{\mathrm{d}\bm{n}}{\mathrm{d} t}\Bigr)\bm{n} .\tag{9.24}

右辺の係数は、u⋅n=0\bm{u}\cdot\bm{n}=0 を微分した式から決まる。(9.24) は、u\bm{u} の微分の接平面への射影が0であることを表す。§9.3 の言い換えによれば、これは u\bm{u} が緯線に沿って平行移動されることを意味する。

この議論の近似

  • 振動の周期が自転の周期に比べて短いことを使っている。誤差の大きさは、例題 9.6 の Coriolis 力による計算で見積もる。
  • 遠心力による鉛直方向のずれや、地球が完全な球でないことは、回転の速さに対して小さな補正にしかならない。

1日の回転角

命題 9.13(Foucault の振り子の回転)

緯度 λ\lambda の Foucault の振り子を考える(北半球で正)。その振動面は、地面に対して、上から見て時計回りに次の角速度で回る。

Ω⊥=Ωsin⁡λ.(9.25)\Omega_\perp=\Omega\sin\lambda .\tag{9.25}

1恒星日で回る角度は 2πsin⁡λ2\pi\sin\lambda である。

証明

地面に固定した基底として、南向きの eθ\bm{e}_\theta と東向きの eφ\bm{e}_\varphi をとる。地球の自転で、振り子の位置は慣性系で φ=Ωt\varphi=\Omega t と緯線を東へ動く。例題 9.4 の (3) で経度の変化率を Ω\Omega に置き換えると、u\bm{u} の角は次のように変わる。

dαdt=−Ωcos⁡θ0=−Ωsin⁡λ.\frac{\mathrm{d}\alpha}{\mathrm{d} t}=-\Omega\cos\theta_0=-\Omega\sin\lambda .

この角は南から東へ向かう向き(上から見て反時計回り)に測ったので、負の変化率は時計回りの回転を表す。

北極では1恒星日に1回転で、これは振動面が慣性系で止まり、その下で地面が回る様子そのものである。赤道では回らず、南半球では緯度が負なので反時計回りになる。例題 9.4 で見たように、時計回りの 2πsin⁡λ2\pi\sin\lambda は、反時計回りの 2π(1−sin⁡λ)2\pi(1-\sin\lambda) と等しい(回転角としての比較)。後者は、北の極冠の面積に Gauss 曲率を掛けた値である。

接する円錐を展開して見る

平行移動は、曲線に沿う接平面だけで決まる。空間での微分の接平面への射影 (9.24) で書けば、曲線から離れた所の曲面の形は現れないからである。そこで、緯線に沿って球面に接する円錐を考える。円錐と球面は緯線に沿って同じ接平面を持つので、緯線に沿う平行移動は、円錐の上で計算しても同じ結果になる。

円錐は切り開くと平面に伸び縮みなしに広げられる(第8章 §8.1)。広げた平面の上では、平行移動は普通の平行移動である。緯線の半径は Rsin⁡θ0R\sin\theta_0 で、円錐の頂点から緯線までの母線の長さは Rtan⁡θ0R\tan\theta_0 である。したがって、広げた扇形の中心角は次の値になる。

2πRsin⁡θ0Rtan⁡θ0=2πcos⁡θ0=2πsin⁡λ.(9.26)\frac{2\pi R\sin\theta_0}{R\tan\theta_0}=2\pi\cos\theta_0=2\pi\sin\lambda .\tag{9.26}

図

図 9.3 緯度 λ=30∘\lambda=30^\circ の緯線に接する円錐を切り開いた扇形(中心角 2πsin⁡λ=π2\pi\sin\lambda=\pi)。扇形の上では平行移動は普通の平行移動で、赤の矢印はすべて同じ向きを保つ。出発点で北(頂点の向き)を指していた矢印は、帰着点では北(破線)と逆を指し、地面の基底に対して 2πsin⁡λ2\pi\sin\lambda だけ回っている。

扇形の上で、出発点で北(頂点の向き)を指す矢印を、緯線に沿って平行に運ぶ。帰着点での北は、扇形の中心角だけ違う向きを指すので、矢印は地面の北に対して 2πsin⁡λ2\pi\sin\lambda だけ回っている。これは命題 9.13 の結果を、計算なしに図で読んだものである。

例題 9.5 パリと東京の振り子の見積もり ★★

オリジナル恒星日を 86164 秒とする。

  1. 自転の角速度 Ω\Omega を、1時間あたりの度数で表せ。
  2. パリのパンテオン(北緯 48.85 度)と東京(北緯 35.68 度)で、振動面が1時間に回る角度と、1回転にかかる時間を求めよ。
解答

(1) 恒星日は 86164/3600≈23.93486164/3600\approx23.934 時間である。したがって角速度は1時間あたり 360/23.934≈15.04360/23.934\approx15.04 度である。

(2) 回転の速さは (9.25) から Ωsin⁡λ\Omega\sin\lambda で、1回転の時間は 23.934/sin⁡λ23.934/\sin\lambda 時間である。

  • パリでは sin⁡48.85∘≈0.7530\sin48.85^\circ\approx0.7530 である。1時間に約 11.33 度回り、1回転に約 31.8 時間かかる。
  • 東京では sin⁡35.68∘≈0.5833\sin35.68^\circ\approx0.5833 である。1時間に約 8.77 度回り、1回転に約 41.0 時間かかる。

どちらも1日では1回転しない。1日で1回転するのは極だけである。

例題 9.6 Coriolis 力から回転の速さを確かめる ★★

オリジナル地面に固定した座標で、振り子のおもりの水平の位置を (x,y)(x,y) とする。xx は東向き、yy は北向きにとる。振幅が小さいとき、Coriolis 力 −2m Ω×r˙-2m\,\bm{\Omega}\times\dot{\bm{r}} を含む運動方程式の水平成分は次の形になる。

x¨=−ω02x+2Ωzy˙,y¨=−ω02y−2Ωzx˙,Ωz=Ωsin⁡λ.\ddot x=-\omega_0^2x+2\Omega_z\dot y,\qquad \ddot y=-\omega_0^2y-2\Omega_z\dot x,\qquad \Omega_z=\Omega\sin\lambda .

  1. 自転の角速度ベクトル Ω=Ω(0,cos⁡λ,sin⁡λ)\bm{\Omega}=\Omega(0,\cos\lambda,\sin\lambda) から、水平成分がこの形になることを確かめよ。
  2. ζ=x+iy\zeta=x+\mathrm{i} y と置いて方程式を1本にまとめ、ζ=e−iΩztη\zeta=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\Omega_zt}\eta と置き換えて解け。
  3. 振動面が角速度 Ωz\Omega_z で時計回りに回ることを示し、命題 9.13 と比べよ。
解答

(1) 速度を r˙=(x˙,y˙,0)\dot{\bm{r}}=(\dot x,\dot y,0) とすると、外積の成分は次のとおりである。

Ω×r˙=(−Ωzy˙,  Ωzx˙,  −Ωcos⁡λ x˙).\bm{\Omega}\times\dot{\bm{r}}=\bigl(-\Omega_z\dot y,\;\Omega_z\dot x,\;-\Omega\cos\lambda\,\dot x\bigr).

−2-2 を掛けた水平成分は (2Ωzy˙, −2Ωzx˙)(2\Omega_z\dot y,\,-2\Omega_z\dot x) で、問題の式の形になる。鉛直成分は糸の張力の小さな変化で釣り合うので、水平の運動には入らない。

(2) 2本目の式に i\mathrm{i} を掛けて1本目に足すと、Coriolis 力の項は −2iΩzζ˙-2\mathrm{i}\Omega_z\dot\zeta とまとまる。

ζ¨+2iΩzζ˙+ω02ζ=0.\ddot\zeta+2\mathrm{i}\Omega_z\dot\zeta+\omega_0^2\zeta=0 .

ζ=e−iΩztη\zeta=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\Omega_zt}\eta を代入するために、1階と2階の微分を書く。

ζ˙=e−iΩzt(η˙−iΩzη),ζ¨=e−iΩzt(η¨−2iΩzη˙−Ωz2η).\dot\zeta=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\Omega_zt}(\dot\eta-\mathrm{i}\Omega_z\eta),\qquad \ddot\zeta=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\Omega_zt}(\ddot\eta-2\mathrm{i}\Omega_z\dot\eta-\Omega_z^2\eta).

代入すると1階微分の項が打ち消し、次の式が残る。

η¨+(ω02+Ωz2) η=0.\ddot\eta+(\omega_0^2+\Omega_z^2)\,\eta=0 .

これは角振動数 ω=ω02+Ωz2\omega=\sqrt{\omega_0^2+\Omega_z^2} の単振動なので、たとえば η=Acos⁡ωt+iBsin⁡ωt\eta=A\cos\omega t+\mathrm{i} B\sin\omega t が解である。

(3) η(t)\eta(t) は、回転のない平面で一定の向きに振れる振動(一般には細長い楕円)を表す。ζ\zeta はそれを角 −Ωzt-\Omega_zt だけ回したものである。東から北へ向かう向きが反時計回りなので、負の角は時計回りを表す。したがって振動面は角速度 Ωz=Ωsin⁡λ\Omega_z=\Omega\sin\lambda で時計回りに回り、(9.25) と一致する。

振動の角振動数がずれる効果は (Ωz/ω0)2(\Omega_z/\omega_0)^2 の程度である。これは、平行移動の議論が無視した量の大きさを示している。

図

図 9.4 Coriolis 力を含む方程式の解 ζ=e−iΩztη\zeta=\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\Omega_zt}\eta の軌跡。Ωz/ω0=0.06\Omega_z/\omega_0=0.06 と大きく誇張し、点 (1,0)(1,0) で静かに放してから振動面が 90∘90^\circ 回るまでを描いた。振動面は時計回り(青の矢印)に回る。

確認テスト

オリジナル

  1. 9.4-1 赤道と北極で、Foucault の振り子の振動面が1恒星日に回る角度はそれぞれいくらか。平行移動の言葉で理由を述べよ。
  2. 9.4-2 北緯30度の地点で、振動面が1時間に回る角度と、1回転にかかる時間を求めよ。そこでの接する円錐を切り開いた扇形の中心角も求めよ。
  3. 9.4-3 南緯35度の地点で、振動面は上から見てどちら向きに、1時間に何度回るか。
  4. 9.4-4 例題 9.6 の方程式について、次の量が時間によらず一定であることを示し、その物理的な意味を述べよ。

ℓ=xy˙−yx˙+Ωz(x2+y2).\ell=x\dot y-y\dot x+\Omega_z(x^2+y^2).

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