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幾何学的位相の入口

2026年10月22日8分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第9章 共変微分・平行移動・ホロノミー
目次
  1. ねじれた光ファイバーの中の偏光
  2. Berry 位相の形
  3. 確認テスト
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第9章 §9.5 ★★ ホロノミーの構造は、光の偏光と量子状態の位相にも現れる。Berry 位相は「位相を平行移動したときの一周のずれ」である

前の節の振り子の回転角は、緯線が囲む面積だけで決まり、地球が回る速さには依らなかった。ゆっくり一周させたときに、経路の幾何だけで決まるずれが残る現象を、幾何学的位相と呼ぶ。この節では、その2つの例を、平行移動の形に書き直すところまで扱う。計算の詳しい展開は第15章 §15.5 で行う。

ねじれた光ファイバーの中の偏光

まっすぐでない光ファイバーの中を進む光を考える。ファイバーに沿う長さを ss、光の進む向きを t(s)\bm{t}(s) と書く。ファイバーの曲がり方が光の波長に比べてゆるやかなとき、光は進む向きに垂直な偏光ベクトル E\bm{E} を持ったまま進む。E\bm{E} は進む向きに垂直であり続けるために向きを変えるが、それ以外には回らない(Rytov の法則)。

dEds=−(E⋅dtds)t.(9.27)\frac{\mathrm{d}\bm{E}}{\mathrm{d} s}=-\Bigl(\bm{E}\cdot\frac{\mathrm{d}\bm{t}}{\mathrm{d} s}\Bigr)\bm{t} .\tag{9.27}

単位ベクトル t\bm{t} は単位球面の上の点とみなせ、その点での球面の接平面はちょうど t\bm{t} に垂直な平面である。したがって E\bm{E} は単位球面の接ベクトルで、(9.27) は Foucault の振り子の条件 (9.24) と同じ形をしている。つまり偏光ベクトルは、方向の球面の上で進む向きが描く曲線に沿って、平行移動される。

ファイバーの入口と出口で進む向きが同じなら、方向の球面の上の曲線は閉じている。偏光の回転角はそのホロノミーで、定理 9.12 から、曲線が囲む立体角に等しい(単位球面の Gauss 曲率は1)。A. Tomita と R. Y. Chiao は、らせん状に巻いた光ファイバーでこの回転を測り、立体角による予言と一致することを確かめた(1986年)。

例題 9.7 らせん状の光ファイバー ★★

オリジナル光ファイバーを円柱に巻きつけ、中心軸に対して一定の角 ϑ\vartheta をなすらせんにする。らせんを1巻きした後の偏光の回転角の大きさを求めよ。

角が 30∘30^\circ の場合の数値も求めよ。

解答

らせんの接線は、中心軸に対して一定の角を保ちながら軸のまわりを1回転する。中心軸を北極の向きにとると、方向の球面の上で進む向きは余緯度 ϑ\vartheta の緯線を一周する。偏光ベクトルはこの緯線に沿って平行移動されるので、例題 9.4 の結果が使える。

例題 9.4 の (3) で、半径を1、余緯度を ϑ\vartheta とおく。ホロノミーの回転角は、2π2\pi を法として次の値である。

Δα=2π(1−cos⁡ϑ).\Delta\alpha=2\pi(1-\cos\vartheta).

これは緯線が囲む極冠の立体角である。角が 30∘30^\circ なら、回転角は 2π(1−0.8660)≈0.8422\pi(1-0.8660)\approx0.842 rad、つまり約48.2度である。

回る向きはらせんの巻く向きで決まり、右巻きと左巻きで逆になる。NN 回巻けば回転角は NN 倍になり、ファイバーの長さや光の進む速さには依らない。

Berry 位相の形

量子力学では、パラメータ R\bm{R}(磁場の向きなど)に依るハミルトニアン H(R)H(\bm{R}) を考える。各パラメータで、縮退のない固有状態 ∣n(R)⟩| n(\bm{R}) \rangle と固有値 En(R)E_n(\bm{R}) をとる。パラメータをゆっくり変えると、断熱定理により、状態は位相を除いて nn 番目の固有状態に留まる。断熱定理の主張と条件は第15章 §15.5 で述べる。

位相を2つに分けて、状態を次の形に置く。

∣ψ(t)⟩=eiθn(t)eiγn(t)∣n(R(t))⟩,θn(t)=−1ℏ∫0tEn dt′.| \psi(t) \rangle =\mathrm{e}^{\mathrm{i}\theta_n(t)}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\gamma_n(t)}| n(\bm{R}(t)) \rangle ,\qquad \theta_n(t)=-\frac1\hbar\int_0^tE_n\,\mathrm{d} t' .

θn\theta_n はエネルギーと時間で決まる動的な位相である。これを Schrödinger 方程式に代入すると、動的な位相の微分の項は、ハミルトニアンが固有状態に掛かって出る項と打ち消し合う。残るのは次の式である。

iℏ(iγ˙n∣n⟩+∣n˙⟩)≈0.\mathrm{i}\hbar\bigl(\mathrm{i}\dot\gamma_n| n \rangle +| \dot n \rangle \bigr)\approx0 .

左から ⟨n∣\langle n | を掛けると γ˙n=i⟨n∣n˙⟩\dot\gamma_n=\mathrm{i}\langle n | \dot n \rangle を得る。パラメータが閉曲線 CC を一周すると、γn\gamma_n は次の値だけ増える。

γn(C)=∮CAn⋅dR,An(R)=i⟨n(R)∣∇Rn(R)⟩.(9.28)\gamma_n(C)=\oint_C\bm{A}_n\cdot\mathrm{d}\bm{R},\qquad \bm{A}_n(\bm{R})=\mathrm{i}\langle n(\bm{R}) | \nabla_{\bm{R}}n(\bm{R}) \rangle .\tag{9.28}

An\bm{A}_n を Berry 接続、γn(C)\gamma_n(C) を Berry 位相と呼ぶ。

規格化の条件 ⟨n∣n⟩=1\langle n | n \rangle =1 を微分すると、⟨n∣∇n⟩\langle n | \nabla n \rangle は純虚数になる。したがって Berry 接続は実数のベクトルである(確認テスト 9.5-1)。固有状態の位相は取り方に任意性があり、∣n⟩→eiχ(R)∣n⟩| n \rangle \to\mathrm{e}^{\mathrm{i}\chi(\bm{R})}| n \rangle と取り替えると An→An−∇χ\bm{A}_n\to\bm{A}_n-\nabla\chi となる。χ\chi が一価なら閉曲線の線積分は変わらないので、Berry 位相は位相の取り方に依らない(確認テスト 9.5-2)。

この計算を、平行移動の言葉で読み直す。各パラメータでの「状態の位相の自由度」を、各点の接平面に当たるものとみなす。⟨n∣n˙⟩=0\langle n | \dot n \rangle =0 になるように位相を選んで運ぶことが平行移動に当たり、一周して戻ったときの位相のずれ eiγn\mathrm{e}^{\mathrm{i}\gamma_n} がホロノミーに当たる。Stokes の定理で書き直すと、Berry 位相は Berry 曲率 Ωn=∇R×An\bm{\Omega}_n=\nabla_{\bm{R}}\times\bm{A}_n の、閉曲線が囲む面を通る流束になる。

表 9.1 曲面の平行移動と Berry 位相の対応
曲面の平行移動Berry 位相
各点に付いた空間接平面状態の位相 eiγ\mathrm{e}^{\mathrm{i}\gamma}
接続接続1形式 ω12\omega_{12}Berry 接続 An\bm{A}_n
平行移動の条件α˙=−ω12(γ˙)\dot\alpha=-\omega_{12}(\dot\gamma)⟨n∣n˙⟩=0\langle n | \dot n \rangle =0
曲率−dω12=K dA-\mathrm{d}\omega_{12}=K\,\mathrm{d} ABerry 曲率 Ωn\bm{\Omega}_n
ホロノミー回転角 ∬K dA\iint K\,\mathrm{d} A位相 ∬Ωn⋅dS\iint\bm{\Omega}_n\cdot\mathrm{d}\bm{S}
基底の取り替えα→α−χ\alpha\to\alpha-\chiAn→An−∇χ\bm{A}_n\to\bm{A}_n-\nabla\chi

たとえば、磁場の中のスピン 1/2 で磁場の向きをゆっくり一周させると、Berry 位相は磁場の向きが描く立体角の半分(符号つき)になる。光ファイバーの偏光の回転角が立体角そのものであったのと、同じ形の結果である。この計算と、Berry 曲率を閉曲面で積分した値が 2π2\pi の整数倍になること(Chern 数)は、第15章 §15.5 で扱う。

確認テスト

オリジナル

  1. 9.5-1 規格化の条件 ⟨n∣n⟩=1\langle n | n \rangle =1 から、⟨n∣∇Rn⟩\langle n | \nabla_{\bm{R}}n \rangle が純虚数であることを示せ。このことから Berry 接続が実数であることを結論せよ。

  2. 9.5-2 位相の取り替え ∣n⟩→eiχ(R)∣n⟩| n \rangle \to\mathrm{e}^{\mathrm{i}\chi(\bm{R})}| n \rangle で、Berry 接続が An→An−∇χ\bm{A}_n\to\bm{A}_n-\nabla\chi と変わることを示せ。さらに次の2つを確かめよ。

    1. (a) χ\chi が一価なら、Berry 位相は変わらない。
    2. (b) χ\chi が一周で 2π2\pi の整数倍だけ増えるなら、位相因子は変わらない。
  3. 9.5-3 中心軸と 45∘45^\circ をなすらせんに巻いた光ファイバーで、1巻きあたりの偏光の回転角の大きさを求めよ。

  4. 9.5-4 Berry 位相 (9.28) が、閉曲線をたどる速さ(パラメータの取り方)に依らないことを示せ。

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