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内在的な量と局所等長

2026年10月22日13分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第8章 内在的な幾何と驚異の定理
目次
  1. 紙を丸めても長さは変わらない
  2. 局所等長と内在的な量
  3. 内在的でない量
  4. 地図の歪み
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第8章 §8.1 ★★★ 第一基本形式だけで決まる量を「内在的」と呼び、それを保つ写像として局所等長を定める。章全体の問いの立て方

第7章では、曲面を3次元空間の中に置いた姿のまま調べた。第一基本形式は曲面の上で長さを測り、第二基本形式は曲面が法線の方向へどう曲がるかを測る。この2つを組み合わせて、主曲率・Gauss 曲率・平均曲率を作った。

この章で問うのは、曲面の上に住む2次元の住人が、外の空間を見ずに何を測れるかである。住人は曲面上の曲線の長さと、2本の曲線のなす角を測れる。つまり住人が知っているのは第一基本形式だけである。第二基本形式は外向きの法線を使って定義したので、住人には直接は見えない。

結論は C. F. Gauss が 1827 年に発表した驚異の定理(Theorema Egregium)である。Gauss 曲率は第二基本形式から定義したにもかかわらず、第一基本形式とその2階までの導関数だけで決まる。したがって住人は、自分の住む面が平らか曲がっているかを、外へ出ずに判定できる。

道筋は次のとおりである。§8.1 で「内在的な量」と「局所等長」を定義し、円柱と平面、地図の歪みを例に取る。§8.2 で座標基底の微分を分解して Christoffel 記号を導入し、それが計量だけで書けることを示す。§8.3 で2階微分の順序交換から Gauss の方程式と Codazzi の方程式を導き、§8.4 で驚異の定理を証明して物理と地図に応用する。

この章の結果は、あとの章でそのまま使う。Christoffel 記号は第9章の共変微分と第10章の測地線の方程式に入り、§8.3 の Gauss の方程式の左辺は第11章で Riemann テンソルとして一般の次元へ広げる。外の空間を持たない時空の曲がりを論じる一般相対論(相対論入門 第8〜10章)も、この章の考え方の上に立つ。

第7章から借りる記号を1回まとめて書いておく。曲面は r(u1,u2)\bm{r}(u^1,u^2) と媒介変数で表し、(u1,u2)=(u,v)(u^1,u^2)=(u,v) とも書く。添字の付いた ri\bm{r}_i は偏微分、2つ付いた rij\bm{r}_{ij} は2階の偏微分を表す。和は第3章 §3.1 の総和規約で書く(添字は1と2を走る)。

gij=ri⋅rj,(E,F,G)=(g11,g12,g22),g=det⁡(gij)=EG−F2,n=r1×r2∣r1×r2∣,hij=rij⋅n,(L,M,N)=(h11,h12,h22),K=det⁡(hij)det⁡(gij)=LN−M2EG−F2,H=12gijhij=EN−2FM+GL2(EG−F2).(8.1)\begin{gathered} g_{ij}=\bm{r}_i\cdot\bm{r}_j,\quad (E,F,G)=(g_{11},g_{12},g_{22}),\quad g=\det(g_{ij})=EG-F^2,\\ \bm{n}=\frac{\bm{r}_1\times\bm{r}_2}{\left\vert \bm{r}_1\times\bm{r}_2\right\vert },\quad h_{ij}=\bm{r}_{ij}\cdot\bm{n},\quad (L,M,N)=(h_{11},h_{12},h_{22}),\\ K=\frac{\det(h_{ij})}{\det(g_{ij})}=\frac{LN-M^2}{EG-F^2},\qquad H=\frac12 g^{ij}h_{ij}=\frac{EN-2FM+GL}{2(EG-F^2)}. \end{gathered}\tag{8.1}

逆行列の成分は gijg^{ij} と上付きで書く。法線 n\bm{n} の向きを反転すると、hijh_{ij} と平均曲率は符号を変える。Gauss 曲率 KK は変わらない。

紙を丸めても長さは変わらない

長方形の紙を丸めて円柱にすることを考える。紙は伸び縮みしないので、紙に描いた線の長さも、2本の線のなす角も、囲んだ面積も変わらない。一方、3次元の中での形は大きく変わり、平らだった紙が円柱の側面になる。

この操作を式で書く。平面を r(u,v)=(u,v,0)\bm{r}(u,v)=(u,v,0) と表すと E=1, F=0, G=1E=1,\ F=0,\ G=1 である。半径 aa の円柱を

r(u,v)=(acos⁡ua, asin⁡ua, v)(8.2)\bm{r}(u,v)=\Bigl(a\cos\frac{u}{a},\ a\sin\frac{u}{a},\ v\Bigr)\tag{8.2}

と表すと、偏微分は ru=(−sin⁡(u/a),cos⁡(u/a),0)\bm{r}_u=(-\sin(u/a),\cos(u/a),0) と rv=(0,0,1)\bm{r}_v=(0,0,1) である。したがって円柱でも E=1, F=0, G=1E=1,\ F=0,\ G=1 になる。同じ (u,v)(u,v) の点どうしを対応させると、平面と円柱は第一基本形式がまったく同じになる(図 8.1)。

図

図 8.1 長方形を丸めて円柱にする。格子の長さと角は変わらず、斜めの線分(赤)は円柱の上では螺旋になるが長さは同じである。第一基本形式は一致するが、平面は曲がらず円柱は曲がっているので、第二基本形式は一致しない。

局所等長と内在的な量

この観察を定義にする。2つの曲面の間の写像が曲線の長さを保つとき、2つの曲面は住人から見て区別できない。

定義 8.1(局所等長)

2つの曲面の間の滑らかな写像 f ⁣:S→S′f\colon S\to S' を考える。どの曲線についても像の長さがもとの長さと等しいとき、ff を局所等長写像という。さらに ff が全単射で逆も滑らかなら等長写像という。

曲面 SS の各点の近くが、曲面 S′S' のある部分へ局所等長写像で移せるとする。このとき SS は S′S' に局所等長であるという。

座標で書くと、この条件は第一基本形式の一致になる。SS の座標 (u,v)(u,v) を使う。像の点 f(r(u,v))f(\bm{r}(u,v)) を、同じ座標の値で r′(u,v)\bm{r}'(u,v) と書く。これは S′S' の上に「対応する点に同じ座標の値を振った」座標を入れることに当たる(第2章 §2.4 の押し出しで言えば、f∗f_* が座標基底を座標基底へ送る座標を選ぶことである)。

命題 8.2(局所等長の判定)

上の座標のもとで、ff が局所等長写像であるための必要十分条件は、各点で gij′=gijg'_{ij}=g_{ij} が成り立つことである。ここで gij′=ri′⋅rj′g'_{ij}=\bm{r}'_i\cdot\bm{r}'_j とする。

証明

曲線 t↦(u(t),v(t))t\mapsto(u(t),v(t))(t0≤t≤t1t_0\le t\le t_1)をとる。その長さと像の長さは次のとおりである。

ℓ=∫t0t1giju˙iu˙j dt,ℓ′=∫t0t1gij′u˙iu˙j dt\ell=\int_{t_0}^{t_1}\sqrt{g_{ij}\dot u^i\dot u^j}\,\mathrm{d} t,\qquad \ell'=\int_{t_0}^{t_1}\sqrt{g'_{ij}\dot u^i\dot u^j}\,\mathrm{d} t

である。gij′=gijg'_{ij}=g_{ij} なら被積分関数が等しいので ℓ′=ℓ\ell'=\ell になる。

逆に、すべての曲線で長さが等しいとする。点 u0u_0 と任意の向き ξ\xi をとる。座標の直線 ui=u0i+tξiu^i=u_0^i+t\xi^i(0≤t≤ε0\le t\le\varepsilon)の長さを比べる。両辺を ε\varepsilon で割って ε→0\varepsilon \to0 とすると、被積分関数の始点での値が一致する。

gij′ξiξj=gijξiξjg'_{ij}\xi^i\xi^j=g_{ij}\xi^i\xi^j

対称行列の2次形式がすべての ξ\xi で一致するので、行列も一致する。実際、ξ=(1,0),(0,1),(1,1)\xi=(1,0),(0,1),(1,1) を代入すれば g11′=g11, g22′=g22, g12′=g12g'_{11}=g_{11},\ g'_{22}=g_{22},\ g'_{12}=g_{12} が順に出る。

定義 8.3(内在的な量)

曲面上の量が、ある座標での gijg_{ij} とその導関数だけから計算できるとき、その量を内在的であるという。

命題 8.2 から、内在的な量は局所等長写像で保たれる。対応する点の座標で gij′g'_{ij} と gijg_{ij} が関数として一致するので、その導関数も一致するからである。

命題 8.4(長さ・角・面積は内在的)

曲線の長さ、2本の曲線が交わる点でのなす角、領域の面積は内在的である。とくに局所等長写像で保たれる。

証明

長さは命題 8.2 の証明の式 ℓ=∫giju˙iu˙j dt\ell=\int\sqrt{g_{ij}\dot u^i\dot u^j}\,\mathrm{d} t で gijg_{ij} だけから計算できる。交点での2本の曲線の速度を riξi\bm{r}_i\xi^i と rjηj\bm{r}_j\eta^j とすると、なす角は次の式で決まる。

cos⁡ϑ=gijξiηjgijξiξjgklηkηl\cos\vartheta=\frac{g_{ij}\xi^i\eta^j}{\sqrt{g_{ij}\xi^i\xi^j}\sqrt{g_{kl}\eta^k\eta^l}}

座標の領域 DD に対応する曲面の部分の面積は、第7章の面積要素を使って次のように書ける。

A=∬D∣ru×rv∣ du dv=∬DEG−F2 du dvA=\iint_D\left\vert \bm{r}_u\times\bm{r}_v\right\vert \,\mathrm{d} u\,\mathrm{d} v=\iint_D\sqrt{EG-F^2}\,\mathrm{d} u\,\mathrm{d} v

2つめの等号は Lagrange の恒等式 ∣a×b∣2=∣a∣2∣b∣2−(a⋅b)2\left\vert \bm{a}\times\bm{b}\right\vert ^2=\left\vert \bm{a}\right\vert ^2\left\vert \bm{b}\right\vert ^2-(\bm{a}\cdot\bm{b})^2 による。どの式にも gijg_{ij} しか現れない。

内在的でない量

平均曲率は内在的でない。円柱 (8.2) の主曲率は、円周の方向で 1/a1/a、母線の方向で 00 である(法線の向きは内向きにとる)。したがって H=1/(2a)H=1/(2a) だが、局所等長な平面では H=0H=0 である。第一基本形式が同じでも平均曲率が違うので、平均曲率は gijg_{ij} だけからは決まらない。

法曲率も同じ理由で内在的でない。円柱の円周方向の法曲率は 1/a1/a だが、対応する平面の方向の法曲率は 00 である。一方、Gauss 曲率は円柱でも K=(1/a)⋅0=0K=(1/a)\cdot0=0 で平面と一致する。これが偶然でないことを §8.4 で示す。

地図の歪み

地図を作ることは、地球の表面(半径 RR の球面の一部)から平面への写像を選ぶことである。緯度を ψ\psi、経度を φ\varphi とすると、球面の第一基本形式は次のようになる。

ds2=R2 dψ2+R2cos⁡2ψ dφ2(8.3)\mathrm{d} s^2=R^2\,\mathrm{d}\psi^2+R^2\cos^2\psi\,\mathrm{d}\varphi^2\tag{8.3}

理想の地図は縮尺が一定の地図であり、それは球面から平面への局所等長写像を定数倍したものである。

もっとも素朴な地図は、経度と緯度をそのまま平面の座標にする正距円筒図法 x=Rφ, y=Rψx=R\varphi,\ y=R\psi である。平面の第一基本形式は dx2+dy2=R2 dφ2+R2 dψ2\mathrm{d} x^2+\mathrm{d} y^2=R^2\,\mathrm{d}\varphi^2+R^2\,\mathrm{d}\psi^2 になる。(8.3) と比べると、南北の長さは正しいが、東西の長さが 1/cos⁡ψ1/\cos\psi 倍に引き伸ばされる。極に近づくほど歪みは大きくなる。

別の写像を選べばこの歪みを消せるか、という問いが自然に出る。答えは「どう選んでも消せない」で、その証明が §8.4 の驚異の定理である。平面と円柱の場合と違い、球面と平面では Gauss 曲率が異なるからである。

例題 8.1 懸垂面と螺旋面は局所等長 ★★

オリジナル懸垂面 r(u,v)=(cosh⁡vcos⁡u, cosh⁡vsin⁡u, v)\bm{r}(u,v)=(\cosh v\cos u,\ \cosh v\sin u,\ v) と、螺旋面 q(t,w)=(wcos⁡t, wsin⁡t, t)\bm{q}(t,w)=(w\cos t,\ w\sin t,\ t) を考える。

  1. 懸垂面の第一基本形式を求めよ。
  2. 螺旋面で w=sinh⁡sw=\sinh s とおき、座標 (t,s)(t,s) での第一基本形式を求めよ。
  3. 懸垂面の点 (u,v)(u,v) を螺旋面の点 (t,s)=(u,v)(t,s)=(u,v) へ送る写像が局所等長写像であることを示せ。
解答

1. 偏微分は次のとおりである。

ru=(−cosh⁡vsin⁡u, cosh⁡vcos⁡u, 0),rv=(sinh⁡vcos⁡u, sinh⁡vsin⁡u, 1)\bm{r}_u=(-\cosh v\sin u,\ \cosh v\cos u,\ 0),\qquad \bm{r}_v=(\sinh v\cos u,\ \sinh v\sin u,\ 1)

内積を計算すると E=cosh⁡2vE=\cosh^2v である。F=−cosh⁡vsinh⁡vsin⁡ucos⁡u+cosh⁡vsinh⁡vcos⁡usin⁡u=0F=-\cosh v\sinh v\sin u\cos u+\cosh v\sinh v\cos u\sin u=0 となる。G=sinh⁡2v+1=cosh⁡2vG=\sinh^2v+1=\cosh^2v なので、ds2=cosh⁡2v (du2+dv2)\mathrm{d} s^2=\cosh^2v\,(\mathrm{d} u^2+\mathrm{d} v^2) を得る。

2. w=sinh⁡sw=\sinh s を代入すると q=(sinh⁡scos⁡t, sinh⁡ssin⁡t, t)\bm{q}=(\sinh s\cos t,\ \sinh s\sin t,\ t) になる。偏微分は次のとおりである。

qt=(−sinh⁡ssin⁡t, sinh⁡scos⁡t, 1),qs=(cosh⁡scos⁡t, cosh⁡ssin⁡t, 0)\bm{q}_t=(-\sinh s\sin t,\ \sinh s\cos t,\ 1),\qquad \bm{q}_s=(\cosh s\cos t,\ \cosh s\sin t,\ 0)

内積は ∣qt∣2=sinh⁡2s+1=cosh⁡2s, qt⋅qs=0, ∣qs∣2=cosh⁡2s\left\vert \bm{q}_t\right\vert ^2=\sinh^2s+1=\cosh^2s,\ \bm{q}_t\cdot\bm{q}_s=0,\ \left\vert \bm{q}_s\right\vert ^2=\cosh^2s である。したがって第一基本形式は cosh⁡2s (dt2+ds2)\cosh^2s\,(\mathrm{d} t^2+\mathrm{d} s^2) となる。

3. 写像 (u,v)↦(t,s)=(u,v)(u,v)\mapsto(t,s)=(u,v) のもとで、2つの第一基本形式は同じ関数 cosh⁡2v (du2+dv2)\cosh^2v\,(\mathrm{d} u^2+\mathrm{d} v^2) になる。命題 8.2 により、この写像は局所等長写像である。

懸垂面の uu は周期 2π2\pi の角度である。一方、螺旋面の tt は周期を持たないので、懸垂面の1周は螺旋面の1巻き分に移る。全体の等長写像ではなく局所等長写像である理由はここにある。

確認テスト

オリジナル

  1. 8.1-1 局所等長写像で必ず保たれるものを次から選べ。(a) 曲線の長さ、(b) 2曲線のなす角、(c) 領域の面積、(d) 平均曲率、(e) 法曲率。
  2. 8.1-2 頂点の半角が α\alpha(0<α<π/20<\alpha<\pi/2)の円錐を考える。

r(s,φ)=(ssin⁡αcos⁡φ, ssin⁡αsin⁡φ, scos⁡α),s>0\bm{r}(s,\varphi)=(s\sin\alpha\cos\varphi,\ s\sin\alpha\sin\varphi,\ s\cos\alpha),\qquad s>0

この円錐の第一基本形式を求めよ。また、平面の極座標 (ρ,ϑ)(\rho,\vartheta) への写像 ρ=s, ϑ=φsin⁡α\rho=s,\ \vartheta=\varphi\sin\alpha が局所等長写像であることを示せ。円錐を切り開いた扇形の中心角を求めよ。3. 8.1-3 正距円筒図法 x=Rφ, y=Rψx=R\varphi,\ y=R\psi について、緯度 ψ\psi の点で東西方向の長さが地図の上で何倍になるかを求めよ。緯度 45∘45^\circ と 60∘60^\circ での値を出せ。小さな領域の面積は何倍になるか。4. 8.1-4 局所等長写像が、交わる2本の曲線のなす角と、座標の小さな領域の面積を保つことを、命題 8.2 を使って示せ。

木下の勉強ステータス

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