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大域の Gauss–Bonnet と Euler 標数

2026年10月22日9分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第15章 Gauss–Bonnet と位相への入口
目次
  1. 三角形分割と Euler 標数
  2. 多面体の欠損角と Descartes の定理
  3. 確認テスト
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第15章 §15.2 ★★★ 閉曲面の全曲率は 2πχ に等しい。曲率という計量の量が、穴の数という位相の量で決まる

局所の定理 15.5 は1つの座標近傍の中の話だった。閉じた曲面の全体は1つの座標で覆えないので(第1章 §1.2)、曲面を小さな三角形に切り分け、各三角形に局所の定理を使ってから足し合わせる。足すと境界の項が打ち消し合い、角の項から曲面の形によらない整数が残る。

三角形分割と Euler 標数

境界の無いコンパクトな曲面 MM の三角形分割とは、MM を有限個の曲がった三角形に分けたものである。どの2つの三角形も、辺1本か頂点1つを共有するか、交わらないかのどれかであるとする。

各三角形は1つの座標近傍に収まり、辺は滑らかな曲線であるとする。どんな滑らかな閉曲面にもこのような分割があることが知られている(Radó の定理。ここでは主張だけを使う)。

定義 15.6(Euler 標数)

三角形分割の頂点・辺・面の数を、それぞれ V,E,FV,E,F と書く。次の整数を MM の Euler 標数と呼ぶ。

χ(M)=V−E+F.\chi(M)=V-E+F .

この定義が分割の取り方によらないことは、次の定理の系として出る。例をいくつか数えておく。球面を正四面体の形に分けると 4−6+4=24-6+4=2 であり、正八面体の形に分けても 6−12+8=26-12+8=2 になる。トーラスには頂点7・辺21・面14の分割があり(Möbius による最小の分割)、7−21+14=07-21+14=0 である。

穴が gg 個ある閉曲面を種数 gg の曲面と呼ぶ。その Euler 標数は 2−2g2-2g である。これは、球面から円板を2枚切り取って筒をつなぐたびに、穴が1つ増えて Euler 標数が2減ることから分かる。円板の内部(三角形1枚分)を除くと値は1減り、筒(三角形分割した円柱)の値は0なので、2枚を除いて筒でつなぐと合計で2減る。

定理 15.7(大域の Gauss–Bonnet の定理 ★★★)

MM を境界の無い向きのついたコンパクトな曲面とし、Riemann 計量を1つ与える。このとき Gauss 曲率の積分について次の式が成り立つ。

∫MK dA=2πχ(M).(15.6)\int_MK\,\mathrm{d} A=2\pi\chi(M) .\tag{15.6}

証明

三角形分割を1つとり、面を T1,…,TFT_1,\dots,T_F とする。各面に局所の定理 (15.4) を使う。面 TkT_k の3つの内角を αkj\alpha_{kj} と書く。外角は π−αkj\pi-\alpha_{kj} なので、次の式を得る。

∫TkK dA+∮∂Tkκg ds+3π−∑j=13αkj=2π.\int_{T_k}K\,\mathrm{d} A+\oint_{\partial T_k}\kappa_g\,\mathrm{d} s+3\pi-\sum_{j=1}^3\alpha_{kj}=2\pi .

これを k=1,…,Fk=1,\dots,F で足す。1本の辺はちょうど2つの三角形に共有され、2つの三角形はその辺を逆向きに回る。逆向きに回ると法線 NN の向きが変わって測地曲率の符号が反転するので、測地曲率の項は全部打ち消し合う。

内角の総和は、各頂点のまわりで角を集めると 2π2\pi ずつになるので 2πV2\pi V である。したがって足した結果は次の式になる。

∫MK dA+3πF−2πV=2πF.\int_MK\,\mathrm{d} A+3\pi F-2\pi V=2\pi F .

各面は3本の辺を持ち、各辺は2つの面に属するので 3F=2E3F=2E である。これを使うと次のように整理できる。

∫MK dA=2πV−πF=2πV−3πF+2πF=2π(V−E+F).\int_MK\,\mathrm{d} A=2\pi V-\pi F=2\pi V-3\pi F+2\pi F=2\pi(V-E+F) .

系 15.8

  1. V−E+FV-E+F は三角形分割の取り方によらない。
  2. 全曲率 ∫MK dA\int_MK\,\mathrm{d} A は計量の取り方によらない。
証明

(15.6) の左辺は分割を使わずに定義され、右辺は計量を使わずに定義される。両辺が等しいので、どちらもその定義に使わなかったものによらない。

この系から、球面をどう凹ませても全曲率は 4π4\pi のままであることが分かる。ある場所を平らにすると、その分の曲率はほかの場所へ移る。トーラスの全曲率は0なので、トーラスにはいたる所で K>0K>0 となる計量は存在しない。正の曲率の外側の部分と負の曲率の内側の部分が、必ず釣り合う。

多面体の欠損角と Descartes の定理

多面体の面は平らで、辺に沿って2枚の面を開くと平面に広げられる。したがって曲率は頂点だけに集まっている。その量を測るのが次の欠損角である。

定義 15.9(欠損角)

多面体の頂点 vv に集まる面の角の和を Θv\Theta_v とする。次の量を vv の欠損角と呼ぶ。

δv=2π−Θv.\delta_v=2\pi-\Theta_v .

立方体の頂点には直角が3つ集まるので、欠損角は 2π−3π/2=π/22\pi-3\pi/2=\pi/2 である。正四面体の頂点には正三角形の角が3つ集まるので、欠損角は 2π−π=π2\pi-\pi=\pi である(図15.2)。頂点のまわりの面を切り開いて平面に置くと、欠損角の分だけ隙間ができる。逆に、平らな紙から中心角 δ\delta の扇形を切り取って縁を貼ると、頂点の欠損角が δ\delta の円錐になる。

図

図 15.2 頂点のまわりの面を切り開いて平面に置いた図。立方体では直角3つで 3π/23\pi/2、正四面体では正三角形の角3つで π\pi を占め、斜線の部分が欠損角 δv\delta_v である。縁を貼り合わせると隙間が閉じて頂点が尖る。

定理 15.10(Descartes の定理 ★★)

面が平面多角形の多面体で、表面が閉曲面 MM になっているものについて、次の式が成り立つ。

∑vδv=2πχ(M).\sum_v\delta_v=2\pi\chi(M) .

とくに凸多面体では、欠損角の総和は 4π4\pi である。

証明

nn 角形の内角の和は (n−2)π(n-2)\pi である。面 ff の辺の数を nfn_f と書く。各辺は2つの面に属するので、その和は 2E2E となる。面の角を全部足すと次の式になる。

∑vΘv=∑f(nf−2)π=2πE−2πF.\sum_v\Theta_v=\sum_f(n_f-2)\pi=2\pi E-2\pi F .

したがって欠損角の総和は次のように整理できる。

∑vδv=2πV−2πE+2πF=2πχ(M).\sum_v\delta_v=2\pi V-2\pi E+2\pi F=2\pi\chi(M) .

多角形の面のままでも V−E+FV-E+F は三角形分割の値と同じである。面に対角線を1本引くたびに、辺の数と面の数が1ずつ増えるからである。

この定理は、大域の Gauss–Bonnet の定理の多面体版である。多面体の角を半径 rr で丸めると滑らかな閉曲面になり、面と辺の部分では曲率は0である。丸めた頂点の小さな領域での曲率の積分は、r→0r\to0 でも変わらず欠損角 δv\delta_v に等しい。その領域の境界の閉曲線を平面に広げると中心角 2π−δv2\pi-\delta_v の扇形の弧になり、測地曲率の積分がその角に等しいからである。

例題 15.3 フラーレンの五員環はちょうど12個 ★★★

オリジナル炭素原子だけからなる閉じたかご形の分子(フラーレン)を、次のような凸多面体とみなす。各頂点には3本の辺が集まり、面は五角形と六角形だけである。

  1. 五角形の数 pp は、六角形の数 hh によらず12であることを示せ。
  2. C60\mathrm{C}_{60}(頂点60個)の六角形の数を求めよ。
  3. C60\mathrm{C}_{60} の各頂点には、五角形1つと六角形2つが集まる。面を正多角形とみなして1つの頂点の欠損角を求め、Descartes の定理を確かめよ。
解答
  1. 頂点から辺を数えると、各頂点から3本出て各辺は2頂点を結ぶので 3V=2E3V=2E となる。面の側から数えると、辺の数について次の式が成り立つ。

5p+6h=2E,F=p+h.5p+6h=2E,\qquad F=p+h .

頂点と辺の数を p,hp,h で書いて、Euler 標数の式 V−E+F=2V-E+F=2 に入れる。

V−E+F=5p+6h3−5p+6h2+p+h=−5p+6h6+p+h=p6=2.V-E+F=\frac{5p+6h}{3}-\frac{5p+6h}{2}+p+h=-\frac{5p+6h}{6}+p+h=\frac{p}{6}=2 .

したがって p=12p=12 であり、六角形の数は式から消える。2. V=60V=60 から E=90E=90 である。面の式 5⋅12+6h=1805\cdot12+6h=180 より h=20h=20 となる。3. 正五角形の内角は 108∘108^\circ、正六角形の内角は 120∘120^\circ なので、1つの頂点の欠損角は次の値になる。

δv=360∘−108∘−2×120∘=12∘.\delta_v=360^\circ-108^\circ-2\times120^\circ=12^\circ .

60個の頂点で合計 720∘=4π720^\circ=4\pi となり、Descartes の定理と一致する。

平らな六角形の網目(グラフェン)の1つの六角形を五角形に替えると、そこに欠損角 60∘60^\circ の円錐ができる。12×60∘=720∘12\times60^\circ=720^\circ なので、六角形の網目を閉じた球面状のかごにするには五角形がちょうど12個必要である。

確認テスト

オリジナル

  1. 15.2-1 球面・トーラス・種数2の曲面の Euler 標数をそれぞれ答えよ。また、どの曲面がいたる所で K>0K>0 の計量を持ちうるかを、(15.6) から判断せよ。
  2. 15.2-2 正八面体・正二十面体・正十二面体の1つの頂点の欠損角を求め、どれも総和が 4π4\pi になることを確かめよ。
  3. 15.2-3 次のトーラスを考える(0<b<a0<b<a)。

(x,y,z)=((a+bcos⁡v)cos⁡u, (a+bcos⁡v)sin⁡u, bsin⁡v),K=cos⁡vb(a+bcos⁡v).(x,y,z)=\bigl((a+b\cos v)\cos u,\ (a+b\cos v)\sin u,\ b\sin v\bigr),\qquad K=\frac{\cos v}{b(a+b\cos v)} .

全曲率が0であることを確かめ、曲率が正の部分と負の部分の積分をそれぞれ求めよ。4. 15.2-4 面がすべて三角形で、各頂点に5本か6本の辺が集まる凸多面体(ジオデシック・ドームやウイルスの殻の形)を考える。辺が5本集まる頂点はちょうど12個あることを示せ。

木下の勉強ステータス

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