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局所の Gauss–Bonnet

2026年10月22日20分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第15章 Gauss–Bonnet と位相への入口
目次
  1. 正規直交枠と接続1形式
  2. 測地曲率と接線の回転
  3. 確認テスト
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第15章 §15.1 ★★★ 内角の和の π からのずれが、囲んだ曲率の積分に等しい。章のほかの定理はすべてこの式から出る

第8章で、Gauss 曲率 KK が第一基本形式だけで決まる内在的な量であることを示した。第9章では、曲面の上でベクトルを平行移動して閉じた道を一周させると、囲んだ領域の曲率の積分だけ回ることを見た。この章では、その積分を閉じた曲面の全体でとると、計量をどう変形しても変わらない整数の 2π2\pi 倍になることを示す。これが Gauss–Bonnet の定理である。

前半の3節は曲面の話である。§15.1 で測地三角形の内角の和と面積の関係を証明し、§15.2 で三角形分割を通して大域の定理を導く。§15.3 では、同じ式からベクトル場の零点の指数の和が Euler 標数に等しいこと(Poincaré–Hopf の定理)を引き出す。

後半の2節は物理に移る。§15.4 では、電磁場のベクトルポテンシャルが波動関数の位相についての接続であり、磁場がその曲率であることを、曲面の接続1形式と並べて示す。§15.5 では、量子力学の断熱変化で現れる Berry 位相が同じ構造を持ち、曲率の積分が整数(Chern 数)になる筋を見る。

使う道具は、第12章の外微分と Stokes の定理、第7章・第8章の Gauss 曲率、第9章の平行移動である。Stokes の定理は、向きのついた領域 RR と1形式 α\alpha について次の形で使う。

∫Rdα=∮∂Rα.\int_R\mathrm{d}\alpha=\oint_{\partial R}\alpha .

この巻の最後の章なので、位相幾何・ファイバー束・トポロジカル相の本へ進むための入口として書く。

平面の三角形の内角の和は π\pi である。球面の上で大円の弧(球面の測地線)を辺とする三角形を作ると、内角の和は π\pi より大きくなる。北極と、赤道上の経度 0∘0^\circ と 90∘90^\circ の2点を結ぶ三角形を考える。この三角形では3つの角がどれも直角で、和は 3π/23\pi/2 になる(図15.1)。

この節では、内角の和の π\pi からのずれが、三角形が囲む領域での Gauss 曲率の積分に等しいことを示す。

図

図 15.1 単位球面の八分円の測地三角形 NAB。辺はどれも大円の弧で、3つの内角はすべて π/2\pi/2 である。内角の和から π\pi を引いた π/2\pi/2 は、三角形の面積 4π/84\pi/8 に等しい。

正規直交枠と接続1形式

向きのついた曲面の上で、1つの座標近傍に収まる円板状の領域 RR を考える。RR の上では、座標基底を Gram–Schmidt の方法で直交化すると、各点で正規直交な接ベクトルの組 (e1,e2)(e_1,e_2) が滑らかにとれる。これを正規直交枠と呼ぶ。向きは、e1↦e2e_1\mapsto e_2 が曲面の向きでの +90∘+90^\circ の回転になるように選ぶ。

双対の1形式を θ1,θ2\theta^1,\theta^2 と書く(θi(ej)=δij\theta^i(e_j)=\delta^i{}_j)。面積要素は dA=θ1∧θ2\mathrm{d} A=\theta^1\wedge\theta^2 である。枠のベクトルを接ベクトル XX の方向に共変微分する(第9章 §9.2 の Levi-Civita 接続)。第1の枠ベクトルは長さが1のままなので、その微分 ∇Xe1\nabla_Xe_1 は e1e_1 自身に直交し、もう一方の枠ベクトルの倍になる。

定義 15.1(接続1形式)

正規直交枠 (e1,e2)(e_1,e_2) について次の式で定まる1形式 ω12\omega_{12} を、この枠の接続1形式と呼ぶ。

∇Xe1=ω12(X) e2,∇Xe2=−ω12(X) e1.\nabla_Xe_1=\omega_{12}(X)\,e_2,\qquad \nabla_Xe_2=-\omega_{12}(X)\,e_1 .

これは第9章 §9.3 の式 (9.18) で置いた接続1形式と同じものである。第2式の係数が第1式の係数の符号を変えたものになるのは、⟨e1, e2⟩=0\langle e_1,\,e_2\rangle =0 を XX で微分すると次の式になるからである。

⟨∇Xe1, e2⟩+⟨e1, ∇Xe2⟩=0.\langle \nabla_Xe_1,\,e_2\rangle +\langle e_1,\,\nabla_Xe_2\rangle =0 .

接続1形式は、隣の点へ移るときに枠がどれだけ回るかを測る。第14章の正準2形式 ω\omega とは別の量なので、この章では必ず添字 1212 を付けて書く。

補題 15.2(構造方程式と曲率)

正規直交枠の双対形式と接続1形式は次の3式を満たす。

dθ1=ω12∧θ2,dθ2=−ω12∧θ1,dω12=−K dA.(15.1)\mathrm{d}\theta^1=\omega_{12}\wedge\theta^2,\qquad \mathrm{d}\theta^2=-\omega_{12}\wedge\theta^1,\qquad \mathrm{d}\omega_{12}=-K\,\mathrm{d} A .\tag{15.1}

証明

1形式 θ\theta の外微分は、ベクトル場 X,YX,Y について次の公式で計算できる(第12章 §12.2)。

dθ(X,Y)=X(θ(Y))−Y(θ(X))−θ([X,Y]).\mathrm{d}\theta(X,Y)=X\bigl(\theta(Y)\bigr)-Y\bigl(\theta(X)\bigr)-\theta([X,Y]) .

X=e1X=e_1、Y=e2Y=e_2 とおく。双対形式の値 θi(ej)\theta^i(e_j) は定数なので、最初の2項は消える。

Levi-Civita 接続は捩れが無いので、括弧は共変微分で書ける。

[e1,e2]=∇e1e2−∇e2e1=−ω12(e1) e1−ω12(e2) e2.[e_1,e_2]=\nabla_{e_1}e_2-\nabla_{e_2}e_1=-\omega_{12}(e_1)\,e_1-\omega_{12}(e_2)\,e_2 .

これを代入すると次の2式を得る。

dθ1(e1,e2)=ω12(e1),dθ2(e1,e2)=ω12(e2).\mathrm{d}\theta^1(e_1,e_2)=\omega_{12}(e_1),\qquad \mathrm{d}\theta^2(e_1,e_2)=\omega_{12}(e_2) .

一方、ウェッジ積の値を計算すると次のようになる。

(ω12∧θ2)(e1,e2)=ω12(e1),(−ω12∧θ1)(e1,e2)=ω12(e2).(\omega_{12}\wedge\theta^2)(e_1,e_2)=\omega_{12}(e_1),\qquad (-\omega_{12}\wedge\theta^1)(e_1,e_2)=\omega_{12}(e_2) .

2次元では2形式は (e1,e2)(e_1,e_2) での値で決まるので、最初の2式が成り立つ。

第3式は曲率の定義から出す。曲率 R(X,Y)e1=∇X∇Ye1−∇Y∇Xe1−∇[X,Y]e1R(X,Y)e_1=\nabla_X\nabla_Ye_1-\nabla_Y\nabla_Xe_1-\nabla_{[X,Y]}e_1 に定義 15.1 を入れる。途中に現れる微分は次の形をしている。

∇X(ω12(Y)e2)=X(ω12(Y)) e2−ω12(Y) ω12(X) e1.\nabla_X\bigl(\omega_{12}(Y)e_2\bigr)=X\bigl(\omega_{12}(Y)\bigr)\,e_2-\omega_{12}(Y)\,\omega_{12}(X)\,e_1 .

e1e_1 の係数は、2つのベクトル場を入れ替えると打ち消し合う。残る e2e_2 の係数を上の外微分の公式と見比べると、次の式になる。

R(X,Y)e1=dω12(X,Y) e2.R(X,Y)e_1=\mathrm{d}\omega_{12}(X,Y)\,e_2 .

2次元の Riemann テンソルは次の形をしている(第11章 §11.2)。

Rabcd=K(gacgbd−gadgbc).R_{abcd}=K(g_{ac}g_{bd}-g_{ad}g_{bc}) .

したがって ⟨R(e1,e2)e2, e1⟩=K\langle R(e_1,e_2)e_2,\,e_1\rangle =K である。Riemann テンソルの後ろ2つの添字の反対称性から ⟨R(e1,e2)e1, e2⟩=−K\langle R(e_1,e_2)e_1,\,e_2\rangle =-K となり、上の式と比べて dω12=−K θ1∧θ2\mathrm{d}\omega_{12}=-K\,\theta^1\wedge\theta^2 を得る。

証明の途中で、ω12(e1)\omega_{12}(e_1) と ω12(e2)\omega_{12}(e_2) が双対形式の外微分の値として出た。つまり接続1形式は双対形式の外微分だけで決まり、計量から直接計算できる。直交座標系(F=0F=0)では、この計算は次の形にまとまる。

命題 15.3(直交座標での接続1形式と曲率)

計量が E du2+G dv2E\,\mathrm{d} u^2+G\,\mathrm{d} v^2 の形のとき、枠を次のようにとる。

e1=∂uE,e2=∂vG.e_1=\frac{\partial_u}{\sqrt E},\qquad e_2=\frac{\partial_v}{\sqrt G} .

この枠について次の式が成り立つ(添字の u,vu,v は偏微分を表す)。

ω12=−(E)vG du+(G)uE dv,K=−1EG[((G)uE)u+((E)vG)v].(15.2)\omega_{12}=-\frac{(\sqrt E)_v}{\sqrt G}\,\mathrm{d} u+\frac{(\sqrt G)_u}{\sqrt E}\,\mathrm{d} v,\qquad K=-\frac{1}{\sqrt{EG}}\left[\Bigl(\frac{(\sqrt G)_u}{\sqrt E}\Bigr)_u+\Bigl(\frac{(\sqrt E)_v}{\sqrt G}\Bigr)_v\right].\tag{15.2}

証明

2つの式は、第9章の式 (9.20) と (9.22) で接続の係数から直接求めたものと同じである。構造方程式からは、双対形式 θ1=E du\theta^1=\sqrt E\,\mathrm{d} u と θ2=G dv\theta^2=\sqrt G\,\mathrm{d} v の外微分を並べれば確かめられる。

dθ1=−(E)v du∧dv=ω12∧θ2,dθ2=(G)u du∧dv=−ω12∧θ1.\mathrm{d}\theta^1=-(\sqrt E)_v\,\mathrm{d} u\wedge\mathrm{d} v=\omega_{12}\wedge\theta^2,\qquad \mathrm{d}\theta^2=(\sqrt G)_u\,\mathrm{d} u\wedge\mathrm{d} v=-\omega_{12}\wedge\theta^1 .

第2式は、この ω12\omega_{12} の外微分を dω12=−K dA\mathrm{d}\omega_{12}=-K\,\mathrm{d} A と比べたものである。

単位球面

球座標 (ϑ,φ)(\vartheta,\varphi) で計量は dϑ2+sin⁡2ϑ dφ2\mathrm{d}\vartheta^2+\sin^2\vartheta\,\mathrm{d}\varphi^2 である。E=1E=1、G=sin⁡2ϑG=\sin^2\vartheta を (15.2) に入れると次を得る。

ω12=cos⁡ϑ dφ,dω12=−sin⁡ϑ dϑ∧dφ=−dA,K=1.\omega_{12}=\cos\vartheta\,\mathrm{d}\varphi,\qquad \mathrm{d}\omega_{12}=-\sin\vartheta\,\mathrm{d}\vartheta\wedge\mathrm{d}\varphi=-\mathrm{d} A,\qquad K=1 .

枠の e1=∂ϑe_1=\partial_\vartheta は南向き、e2=∂φ/sin⁡ϑe_2=\partial_\varphi/\sin\vartheta は東向きである。外積 e1×e2e_1\times e_2 は外向きの法線になる。

測地曲率と接線の回転

領域の中の曲線を弧長 ss で表し、単位接ベクトルを TT とする。接ベクトルが e1e_1 から測ってなす角を ϕ(s)\phi(s) とする。接ベクトルと、それを左へ直角に回した単位法ベクトル NN は次のように書ける。

T=cos⁡ϕ e1+sin⁡ϕ e2,N=−sin⁡ϕ e1+cos⁡ϕ e2.T=\cos\phi\,e_1+\sin\phi\,e_2,\qquad N=-\sin\phi\,e_1+\cos\phi\,e_2 .

曲面の中での曲がり方を表す測地曲率 κg\kappa_g を、∇TT=κgN\nabla_TT=\kappa_g N で定める。第10章 §10.1 の測地線は、測地曲率が0の曲線である。

∇TT\nabla_TT を定義 15.1 で計算する。

∇TT=ϕ˙ (−sin⁡ϕ e1+cos⁡ϕ e2)+cos⁡ϕ ω12(T) e2−sin⁡ϕ ω12(T) e1=(ϕ˙+ω12(T))N.\nabla_TT=\dot\phi\,(-\sin\phi\,e_1+\cos\phi\,e_2)+\cos\phi\,\omega_{12}(T)\,e_2-\sin\phi\,\omega_{12}(T)\,e_1 =\bigl(\dot\phi+\omega_{12}(T)\bigr)N .

したがって測地曲率は次の式で与えられる。

κg=dϕds+ω12(T),すなわちκg ds=dϕ+ω12  (曲線の上で).(15.3)\kappa_g=\frac{d \phi}{d s}+\omega_{12}(T),\qquad\text{すなわち}\qquad \kappa_g\,\mathrm{d} s=\mathrm{d}\phi+\omega_{12}\ \ (\text{曲線の上で}) .\tag{15.3}

右辺の第1項は「枠に対して接線がどれだけ回るか」、第2項は「枠そのものがどれだけ回るか」を表す。平面で枠を一定にとれば ω12=0\omega_{12}=0 となる。このとき測地曲率は、平面曲線の符号つき曲率(第6章 §6.1)に戻る。

領域の境界 ∂R\partial R は、角を有限個持つ区分的に滑らかな単純閉曲線とし、RR を左に見て回る向きにとる。ii 番目の角で接線が回る角を外角 ϵi\epsilon_i と呼ぶ。外角は (−π,π)(-\pi,\pi) の範囲にあり、その角の内角は π−ϵi\pi-\epsilon_i である。一周するあいだに接線は、滑らかな部分で dϕ\mathrm{d}\phi ずつ、角で外角の分ずつ回る。

定理 15.4(接線の回転定理(Hopf) ★★)

上の状況で、接線の角 ϕ\phi の総変化は次の値になる。

∮∂Rdϕ+∑iϵi=2π.\oint_{\partial R}\mathrm{d}\phi+\sum_i\epsilon_i=2\pi .

証明の筋

枠は RR の上で1価なので、一周して接線が同じ向きに戻ると、角の総変化は 2π2\pi の整数倍になる。この整数は、曲線・計量・枠を連続的に変形しても飛ばずに一定である。座標の中で計量を Euclid の計量へ連続的につなぎ、枠も Gram–Schmidt でつなぎ、曲線を円へ縮めることができる。平面の円では総変化が 2π2\pi であることが直接計算でき、これで値が決まる(角の扱いを含む完全な証明は曲線論の本に譲る)。

定理 15.5(局所の Gauss–Bonnet の定理 ★★★)

座標近傍に収まる円板状の領域 RR について、次の式が成り立つ。

∫RK dA+∮∂Rκg ds+∑iϵi=2π.(15.4)\int_RK\,\mathrm{d} A+\oint_{\partial R}\kappa_g\,\mathrm{d} s+\sum_i\epsilon_i=2\pi .\tag{15.4}

証明

(15.3) を ∂R\partial R に沿って積分し、Stokes の定理と構造方程式 (15.1) を使う。

∮∂Rκg ds=∮∂Rdϕ+∮∂Rω12=(2π−∑iϵi)+∫Rdω12=2π−∑iϵi−∫RK dA.\oint_{\partial R}\kappa_g\,\mathrm{d} s=\oint_{\partial R}\mathrm{d}\phi+\oint_{\partial R}\omega_{12} =\Bigl(2\pi-\sum_i\epsilon_i\Bigr)+\int_R\mathrm{d}\omega_{12} =2\pi-\sum_i\epsilon_i-\int_RK\,\mathrm{d} A .

第2の等号で定理 15.4 を使った。移項すれば (15.4) になる。

3辺が測地線の三角形を測地三角形と呼ぶ。測地三角形の辺では κg=0\kappa_g=0 である。内角を α1,α2,α3\alpha_1,\alpha_2,\alpha_3 とすると外角は π−αi\pi-\alpha_i なので、(15.4) は次の形になる。

α1+α2+α3−π=∫TK dA.(15.5)\alpha_1+\alpha_2+\alpha_3-\pi=\int_TK\,\mathrm{d} A .\tag{15.5}

左辺を三角形の角過剰と呼ぶ。Gauss 曲率が正の曲面では内角の和は π\pi より大きく、負の曲面では小さい。平面では内角の和はちょうど π\pi である。

半径 aa の球面では、Gauss 曲率は一定値 1/a21/a^2 である。したがって角過剰は面積を a2a^2 で割ったものになる(Girard の定理)。図15.1 の八分円の三角形では、角過剰 π/2\pi/2 が面積 4π/84\pi/8 と一致する。

(15.5) の左辺は角度だけ、右辺は曲率と面積だけで書かれている。曲面の上で角度を測る人は、外の空間を見なくても曲率を知ることができる。これは第8章の驚異の定理と同じ内容を、積分の形で述べたものである。

平行移動の回転角との関係

  • 曲線に沿う平行なベクトル場を V=cos⁡ψ e1+sin⁡ψ e2V=\cos\psi\,e_1+\sin\psi\,e_2 と書く。(15.3) と同じ計算で、平行の条件は dψ=−ω12\mathrm{d}\psi=-\omega_{12} になる。
  • 境界を一周したときの角 ψ\psi の変化は次の値である。

−∮∂Rω12=∫RK dA.-\oint_{\partial R}\omega_{12}=\int_RK\,\mathrm{d} A .

  • これが第9章 §9.3 で見た「回転角=囲んだ曲率の積分」で、ここでは構造方程式から1行で出た。

例題 15.1 地球上の小さな測地三角形の角過剰 ★★

オリジナル地球を半径 a=6371 kma=6371\ \mathrm{km} の球とみなす。各辺が地表に沿って 100 km100\ \mathrm{km} の正三角形の測地三角形を考える。

  1. 三角形を平面の正三角形とみなして面積を見積もり、角過剰を秒角で求めよ。
  2. 1つの内角は 60∘60^\circ よりどれだけ大きいか。
  3. 球面三角法の余弦定理で内角を正確に計算し、1の見積もりと比べよ。
解答
  1. 平面の正三角形の面積は次のとおりである。

A≈34(100 km)2=4330 km2.A\approx\frac{\sqrt3}{4}(100\ \mathrm{km})^2=4330\ \mathrm{km}^2 .

角過剰は面積を a2a^2 で割ったものである。1ラジアンは 206265′′206265'' なので、次の値になる。

433063712=1.067×10−4 rad=22.0′′.\frac{4330}{6371^2}=1.067\times10^{-4}\ \mathrm{rad}=22.0'' . 2. 3つの角は等しいので、1つの内角は 60∘60^\circ より 7.33′′7.33'' だけ大きい。3. 辺が地球の中心に張る角を b=100/6371 radb=100/6371\ \mathrm{rad} とする。球面三角法の余弦定理から、内角 α\alpha は次の式を満たす。

cos⁡b=cos⁡2b+sin⁡2bcos⁡α,すなわちcos⁡α=cos⁡b1+cos⁡b.\cos b=\cos^2b+\sin^2b\cos\alpha,\qquad\text{すなわち}\qquad \cos\alpha=\frac{\cos b}{1+\cos b}.

これを数値で解くと、角過剰は 3α−π=1.0668×10−4 rad3\alpha-\pi=1.0668\times10^{-4}\ \mathrm{rad} となる。1の値とは相対的に 10−410^{-4} の桁の差しかない。差は、球面の三角形の面積が平面の値と少し違うことによるもので、その大きさは b2b^2 の桁である。

1辺 100 km100\ \mathrm{km} でも角過剰は約 22′′22'' で、精密な測量では補正として入れる大きさである。

例題 15.2 緯線で囲まれた球帽と Foucault の振り子 ★★

オリジナル単位球面で、極角が ϑ0\vartheta_0 以下の球帽を RR とする。

  1. 曲率の積分と、境界の緯線の測地曲率 κg\kappa_g を求め、(15.4) が成り立つことを確かめよ。
  2. 緯度 λ\lambda の緯線に沿って一周する平行移動の回転角を求めよ。これを使い、北緯 35.7∘35.7^\circ の地点で Foucault の振り子の振動面が地面に対して1恒星日に回る角度を求めよ。
解答
  1. K=1K=1 と dA=sin⁡ϑ dϑ dφ\mathrm{d} A=\sin\vartheta\,\mathrm{d}\vartheta\,\mathrm{d}\varphi から次を得る。

∫RK dA=∫02π ⁣ ⁣∫0ϑ0sin⁡ϑ dϑ dφ=2π(1−cos⁡ϑ0).\int_RK\,\mathrm{d} A=\int_0^{2\pi}\!\!\int_0^{\vartheta_0}\sin\vartheta\,\mathrm{d}\vartheta\,\mathrm{d}\varphi=2\pi(1-\cos\vartheta_0).

境界を東向き(φ\varphi が増える向き)に回ると、北極側の RR を左に見る。このとき接線は T=e2T=e_2 で、第1の枠ベクトルからの角は一定値 π/2\pi/2 をとる。

(15.3) と単位球面の接続1形式から、測地曲率は次の値になる。

κg=ω12(T)=cos⁡ϑ0 dφ(∂φsin⁡ϑ0)=cos⁡ϑ0sin⁡ϑ0.\kappa_g=\omega_{12}(T)=\cos\vartheta_0\,\mathrm{d}\varphi\Bigl(\frac{\partial_\varphi}{\sin\vartheta_0}\Bigr)=\frac{\cos\vartheta_0}{\sin\vartheta_0}.

緯線の長さは 2πsin⁡ϑ02\pi\sin\vartheta_0 なので、境界の積分は 2πcos⁡ϑ02\pi\cos\vartheta_0 である。角は無いので、左辺の合計は次のとおり 2π2\pi になり、定理と一致する。

2π(1−cos⁡ϑ0)+2πcos⁡ϑ0=2π.2\pi(1-\cos\vartheta_0)+2\pi\cos\vartheta_0=2\pi . 2. 緯度 λ\lambda は極角 ϑ0=π/2−λ\vartheta_0=\pi/2-\lambda に当たる。囲んだ曲率の積分は 2π(1−sin⁡λ)2\pi(1-\sin\lambda) で、これが平行移動の回転角である。この角は 2π2\pi を法として −2πsin⁡λ-2\pi\sin\lambda に等しい。したがって振動面は地面に対して1恒星日に 2πsin⁡λ2\pi\sin\lambda だけ回る(向きは北半球で上から見て時計回り、第9章 §9.4)。

北緯 35.7∘35.7^\circ では次の値になる。

360∘×sin⁡35.7∘=210∘.360^\circ\times\sin35.7^\circ=210^\circ .

確認テスト

オリジナル

  1. 15.1-1 Poincaré の上半平面(K=−1K=-1)で、3つの内角がすべて π/4\pi/4 の測地三角形の面積を求めよ。また、この曲面の測地三角形の面積が必ず π\pi より小さい理由を述べよ。
  2. 15.1-2 半径 a=6371 kma=6371\ \mathrm{km} の球面で、内角が 90∘,60∘,60∘90^\circ,60^\circ,60^\circ の測地三角形の面積を求めよ。
  3. 15.1-3 単位球面の上の、辺が測地線の nn 角形の内角の和を、面積 AA を使って表せ。さらに、立方体を中心から単位球面へ射影すると、6つの面はどれも内角 2π/32\pi/3 の測地四角形になる。このことと内角の和の式から、1つの面の面積が 4π/64\pi/6 になることを確かめよ。
  4. 15.1-4 K≤0K\le0 の曲面の上では、2本の測地線が2点で交わって円板状の領域を囲むことは無いことを、局所の Gauss–Bonnet の定理を使って示せ。

木下の勉強ステータス

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