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ベクトル場の指数と Poincaré–Hopf の定理

2026年10月22日10分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第15章 Gauss–Bonnet と位相への入口
目次
  1. 孤立した零点の指数
  2. Poincaré–Hopf の定理
  3. 勾配のベクトル場と臨界点の数
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第15章 §15.3 ★★ 零点の指数の和は χ に等しい。球面の上の風はどこかで必ず止まる

ベクトル場の零点のまわりで、ベクトルの向きが何回まわるかを数える。その回数を曲面の上のすべての零点について足すと、どんなベクトル場を選んでも Euler 標数に等しくなる。証明は、前の2節の Gauss–Bonnet の定理から、接続1形式の性質を使って出る。

孤立した零点の指数

曲面の上の滑らかなベクトル場 XX が点 pp で0になり、その近くにはほかに零点が無いとする。点 pp のまわりの向きを保つ座標で、X=X1∂x+X2∂yX=X^1\partial_x+X^2\partial_y と書く。零点を中心とする小さな円 CC を反時計回りに一周するあいだの、平面のベクトル (X1,X2)(X^1,X^2) の向きの角の変化を考える。この角を ψ=arg⁡(X1+iX2)\psi=\arg(X^1+\mathrm{i} X^2) と書く。

定義 15.11(零点の指数)

上の状況で、次の整数を零点 pp の指数と呼ぶ。

indp(X)=12π∮Cdψ=12π∮CX1 dX2−X2 dX1(X1)2+(X2)2.(15.7)\mathrm{ind}_p(X)=\frac{1}{2\pi}\oint_C\mathrm{d}\psi=\frac{1}{2\pi}\oint_C\frac{X^1\,\mathrm{d} X^2-X^2\,\mathrm{d} X^1}{(X^1)^2+(X^2)^2}.\tag{15.7}

円を一周するとベクトルは同じ向きに戻るので、角の総変化は 2π2\pi の整数倍である。円の半径を連続的に変えても、円の上に零点が来ない限り、この整数は飛ばずに一定である。座標を向きを保つ別の座標に取り替えても、指数は変わらない。ヤコビ行列は、行列式が正の行列の集合の中で単位行列へ連続的につながり、そのあいだ整数は一定だからである。

補題 15.12(線形なベクトル場の指数)

2行2列の行列 AA が det⁡A≠0\det A\neq0 を満たすとする。ベクトル場 X(x)=AxX(\bm{x})=A\bm{x} の原点での指数は、det⁡A\det A の符号に等しい。

証明

行列式が正の行列全体は連結で、単位行列 II を含む。AA から II まで行列式を0にせずに連続的に変形すると、そのあいだ原点以外に零点は出ないので、指数は一定である。X=(x,y)X=(x,y) では角 ψ\psi が円の角そのものなので、指数は1である。

行列式が負の行列全体も連結で、diag(1,−1)\mathrm{diag}(1,-1) を含む。X=(x,−y)X=(x,-y) では、円の角 tt に対してベクトルの角が逆向きに回る。したがって指数は −1-1 である。

指数の値をいくつか並べる。

湧き出し (x,y), 吸い込み (−x,−y), 渦 (−y,x) : +1;鞍点 (x,−y) : −1.\text{湧き出し }(x,y),\ \text{吸い込み }(-x,-y),\ \text{渦 }(-y,x)\ :\ +1;\qquad \text{鞍点 }(x,-y)\ :\ -1 .

複素数 z=x+iyz=x+\mathrm{i} y を使って、成分が X1+iX2=znX^1+\mathrm{i} X^2=z^n のベクトル場を考える。ベクトルの角は narg⁡zn\arg z なので、指数は nn になる。複素共役 zˉ n\bar z^{\,n} にすると、指数は −n-n になる(図15.3)。

図

図 15.3 原点に孤立した零点を持つ3つのベクトル場(矢印は向きだけを示す)。赤い円を反時計回りに一周するあいだに矢印が回る回数が指数である。鞍点では矢印が逆向きに1回、z2z^2 では同じ向きに2回まわる。

Poincaré–Hopf の定理

定理 15.13(Poincaré–Hopf の定理 ★★★)

MM を境界の無い向きのついたコンパクトな曲面とする。XX を有限個の零点 p1,…,pmp_1,\dots,p_m だけを持つ滑らかなベクトル場とすると、零点の指数の和について次の式が成り立つ。

∑i=1mindpi(X)=χ(M).(15.8)\sum_{i=1}^m\mathrm{ind}_{p_i}(X)=\chi(M) .\tag{15.8}

証明

MM に Riemann 計量を1つ入れる。

各零点のまわりに、座標近傍に収まる小さな円板 DiD_i を互いに交わらないようにとる。円板を除いた残りを M′M' と書くと、その上ではベクトル場は0にならない。したがって M′M' の上では、e1=X/∣X∣e_1=X/\left\vert X\right\vert とそれを左へ直角に回したベクトルが正規直交枠になる。この枠の接続1形式を ω12\omega_{12} とする。

M′M' に Stokes の定理と構造方程式 (15.1) を使う。M′M' の境界は円 CiC_i の集まりで、残りの部分を左に見る向きは各円板から見て時計回りである。したがって、円を反時計回りにとって次の式になる。

−∫M′K dA=∫M′dω12=−∑i∮Ciω12.-\int_{M'}K\,\mathrm{d} A=\int_{M'}\mathrm{d}\omega_{12}=-\sum_i\oint_{C_i}\omega_{12} .

各円板 DiD_i の上には、座標基底から作った正規直交枠 (f1,f2)(f_1,f_2) がある。その接続1形式を ω12′\omega'_{12} とし、円の上で e1=cos⁡ψ f1+sin⁡ψ f2e_1=\cos\psi\,f_1+\sin\psi\,f_2 と書く。定義 15.1 から ω12=ω12′+dψ\omega_{12}=\omega'_{12}+\mathrm{d}\psi が出る(確認テスト 15.4-4 と同じ計算である)。

角 ψ\psi は枠 ff に対するベクトル場の向きの角である。したがって一周の変化は指数の 2π2\pi 倍である。枠 ff は座標基底から連続的に作ったので、ff で測っても座標成分で測っても、回る回数は同じだからである。一方、ω12′\omega'_{12} は円板の全体で定義されているので、Stokes の定理から次の式になる。

∮Ciω12′=∫Didω12′=−∫DiK dA.\oint_{C_i}\omega'_{12}=\int_{D_i}\mathrm{d}\omega'_{12}=-\int_{D_i}K\,\mathrm{d} A .

以上をまとめると次の式を得る。

∫M′K dA=∑i(−∫DiK dA+2π indpi(X)),すなわち∫MK dA=2π∑iindpi(X).\int_{M'}K\,\mathrm{d} A=\sum_i\Bigl(-\int_{D_i}K\,\mathrm{d} A+2\pi\,\mathrm{ind}_{p_i}(X)\Bigr),\qquad\text{すなわち}\qquad \int_MK\,\mathrm{d} A=2\pi\sum_i\mathrm{ind}_{p_i}(X).

左辺は大域の Gauss–Bonnet の定理 15.7 により 2πχ(M)2\pi\chi(M) なので、(15.8) が成り立つ。

証明の要点は、零点では枠 X/∣X∣X/\left\vert X\right\vert が定義できないことにある。そのことが、接続1形式の積分に「2π2\pi に指数を掛けた量」のずれとして現れる。この式は、指数の和が計量にもベクトル場にもよらないことを同時に示している。

系 15.14(毛玉の定理 ★★)

球面の上の連続な接ベクトル場は、どこかで必ず0になる。

証明

滑らかなベクトル場の場合、零点が無ければ (15.8) の左辺は0である。しかし χ(S2)=2\chi(S^2)=2 なので矛盾する。連続なベクトル場で零点が無い場合は、それに十分近い滑らかなベクトル場にも零点が無いので、同じ矛盾になる。

物理での読み方を2つ挙げる。地表の風の水平成分は球面の上の接ベクトル場なので、地球上のどこかに風の水平成分が0の地点が必ずある。地磁気の水平成分も同じで、伏角が 90∘90^\circ になる磁極が少なくとも1つ存在する。

トーラスの Euler 標数は0なので、トーラスは零点の無いベクトル場を持つことができ、∂u\partial_u がその例である。核融合のトカマクでは、磁力線が閉じた入れ子状の曲面(磁気面)の上を走るように磁場を作る。磁気面の上で磁場は接ベクトル場で、0になる点があると閉じ込めが破れる。したがって磁気面は Euler 標数が0の曲面でなければならず、球面状にはできずトーラス状になる。

勾配のベクトル場と臨界点の数

関数 ff の勾配の零点は、ff の臨界点である。臨界点で Hesse 行列 HH が正則なら、その点を非退化な臨界点と呼ぶ。非退化な臨界点の近くでは勾配は H(x−p)H(\bm{x}-p) で近似できるので、補題 15.12 から指数は det⁡H\det H の符号である。極大点と極小点の指数は +1+1、鞍点の指数は −1-1 になる。

したがって、非退化な臨界点だけを持つ関数について、次の数え上げの式が成り立つ。

(極大点の数)−(鞍点の数)+(極小点の数)=χ(M).(\text{極大点の数})-(\text{鞍点の数})+(\text{極小点の数})=\chi(M) .

球面の高さ関数は極大点1つと極小点1つを持ち、1+1=21+1=2 である。立てたトーラスの高さ関数は、極大点・極小点が1つずつ、鞍点が2つで、1−2+1=01-2+1=0 となる(確認テスト 15.3-3)。

例題 15.4 巻き数の計算と、零点が1つだけの球面のベクトル場 ★★

オリジナル

  1. 平面のベクトル場 X=(x2−y2, 2xy)X=(x^2-y^2,\,2xy) と Y=(x2−y2, −2xy)Y=(x^2-y^2,\,-2xy) の原点での指数を、(15.7) の積分で求めよ。
  2. 平面の一様なベクトル場 ∂x\partial_x を、北極からの立体射影で球面へ移す。北極のまわりの座標を使ってこのベクトル場の北極での指数を求め、Poincaré–Hopf の定理と合うことを確かめよ。
解答
  1. 単位円を x=cos⁡tx=\cos t、y=sin⁡ty=\sin t で表す。円の上で XX の成分は (cos⁡2t,sin⁡2t)(\cos2t,\sin2t) になり、ベクトルの角は円の角の2倍である。一周で角は 4π4\pi 変わるので、指数は2となる。YY の成分は (cos⁡2t,−sin⁡2t)(\cos2t,-\sin2t) で、角は逆向きに回る。したがって YY の指数は −2-2 である。
  2. 平面の座標を z=x+iyz=x+\mathrm{i} y とすると、北極のまわりの座標は w=1/zw=1/z である。ベクトル場 ∂x\partial_x に沿う流れは z↦z+ϵz\mapsto z+\epsilon である。北極のまわりの座標では、この流れは次の速度になる。

dwdϵ=−1z2=−w2.\frac{d w}{d \epsilon}=-\frac{1}{z^2}=-w^2 .

したがって北極のまわりの成分は X1+iX2=−w2X^1+\mathrm{i} X^2=-w^2 で、北極だけが零点である。その向きの角は 2arg⁡w+π2\arg w+\pi なので、指数は2である。平面の部分には零点が無いので、指数の和は 2=χ(S2)2=\chi(S^2) となり、定理と一致する。

このベクトル場の流線は、北極で接する円の族になり、双極子の磁力線に似た形をしている。毛玉の定理は零点が「少なくとも1つ」あることを言い、この例は1つで足りることを示している。

確認テスト

オリジナル

  1. 15.3-1 渦巻き状に吸い込むベクトル場 (−x−y, x−y)(-x-y,\,x-y) の原点での指数を、補題 15.12 を使って答えよ。
  2. 15.3-2 成分が X1+iX2=zˉ 3X^1+\mathrm{i} X^2=\bar z^{\,3} のベクトル場の成分を x,yx,y で書き、原点での指数を求めよ。
  3. 15.3-3 次の媒介変数表示のトーラスを考える(0<b<a0<b<a)。

(x,y,z)=((a+bcos⁡v)cos⁡u, bsin⁡v, (a+bcos⁡v)sin⁡u).(x,y,z)=\bigl((a+b\cos v)\cos u,\ b\sin v,\ (a+b\cos v)\sin u\bigr) .

高さ関数 zz の臨界点をすべて求め、それぞれの指数を Hesse 行列の符号から決めて、和が χ=0\chi=0 になることを確かめよ。4. 15.3-4 トカマクの磁気面が球面になりえないことを、Poincaré–Hopf の定理から示せ。磁気面は向きのついた閉曲面で、その上で磁場は面に接し、どこでも0でないものとする。

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