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接続と曲率としてのゲージ場

2026年10月22日11分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第15章 Gauss–Bonnet と位相への入口
目次
  1. ゲージ変換と共変微分
  2. 平行移動と曲率
  3. 曲面の接続との対応
  4. Aharonov–Bohm 効果
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第15章 §15.4 ★★★ ベクトルポテンシャルは位相の接続、磁場はその曲率。ゲージ変換は枠の取り替えにあたる

曲面の接ベクトルを比べるには、隣の点の接平面との対応(接続)が要った。荷電粒子の波動関数でも同じことが起こる。波動関数の位相は各点で基準を自由に取り替えられ(ゲージ変換)、隣の点どうしの位相を比べるために接続が要る。その接続がベクトルポテンシャルで、曲率が磁場である。

ゲージ変換と共変微分

電荷 qq の粒子が磁場の中で運動するとき、Hamiltonian の運動エネルギーの項は次の形をしている。

12m(−iℏ∇−qA)2.\frac{1}{2m}\bigl(-\mathrm{i}\hbar\nabla-q\bm{A}\bigr)^2 .

ここで A\bm{A} はベクトルポテンシャルで、磁場は B=∇×A\bm{B}=\nabla\times\bm{A} である。波動関数の位相を場所ごとに取り替える変換を考える。

定義 15.15(ゲージ変換と共変微分)

実数値の関数 Λ(x)\Lambda(\bm{x}) による次の変換をゲージ変換と呼ぶ。

ψ↦ψ′=eiqΛ/ℏψ,A↦A′=A+∇Λ.(15.9)\psi\mapsto\psi'=\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda/\hbar}\psi,\qquad \bm{A}\mapsto\bm{A}'=\bm{A}+\nabla\Lambda .\tag{15.9}

また、次の微分を共変微分と呼ぶ。

Dψ=(∇−iqℏA)ψ.\bm{D}\psi=\Bigl(\nabla-\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\bm{A}\Bigr)\psi .

運動エネルギーの中の演算子は −iℏD-\mathrm{i}\hbar\bm{D} と書ける。共変微分は、ゲージ変換で波動関数と同じ位相因子を受け取るだけである。実際に計算すると次のようになる。

D′ψ′=(∇−iqℏA−iqℏ∇Λ)(eiqΛ/ℏψ)=eiqΛ/ℏ(∇ψ+iqℏ∇Λ ψ−iqℏAψ−iqℏ∇Λ ψ)=eiqΛ/ℏDψ.\bm{D}'\psi'=\Bigl(\nabla-\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\bm{A}-\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\nabla\Lambda\Bigr)\bigl(\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda/\hbar}\psi\bigr) =\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda/\hbar}\Bigl(\nabla\psi+\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\nabla\Lambda\,\psi-\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\bm{A}\psi-\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\nabla\Lambda\,\psi\Bigr)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda/\hbar}\bm{D}\psi .

したがって Schrödinger 方程式はゲージ変換で形を変えず、確率密度 ∣ψ∣2\left\vert \psi\right\vert ^2 も変わらない。普通の微分には ∇Λ\nabla\Lambda の項が余分に付くので、位相の基準の取り替えに対して共変でない。これは第9章 §9.1 で、ベクトル場の成分の微分がテンソルにならなかったことと同じ事情である。

平行移動と曲率

曲線 x(s)\bm{x}(s) に沿って共変微分が0になるように ψ\psi を運ぶことを、位相の平行移動と呼ぶ。条件は x˙⋅Dψ=0\dot{\bm{x}}\cdot\bm{D}\psi=0 で、これは次の微分方程式である。

dψds=iqℏ A⋅x˙ ψ.\frac{d \psi}{d s}=\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\,\bm{A}\cdot\dot{\bm{x}}\,\psi .

解は次の位相因子になる。

ψ(終点)=exp⁡(iqℏ∫γA⋅dx)ψ(始点).(15.10)\psi(\text{終点})=\exp\Bigl(\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\int_\gamma\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{x}\Bigr)\psi(\text{始点}) .\tag{15.10}

閉じた道が面 SS の境界になっているとき、Stokes の定理から位相因子は exp⁡(iqΦ/ℏ)\exp(\mathrm{i} q\Phi/\hbar) になる。ここで Φ\Phi は SS を貫く磁束である。これがこの接続のホロノミーで、ゲージ変換で変わらない。

曲率は、共変微分の交換子として現れる。第11章 §11.1 で、Riemann テンソルを共変微分の交換子として定義したのと同じ形である。

[Di,Dj]ψ=−iqℏ(∂iAj−∂jAi)ψ=−iqℏFijψ.(15.11)[D_i,D_j]\psi=-\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}\bigl(\partial_iA_j-\partial_jA_i\bigr)\psi=-\frac{\mathrm{i} q}{\hbar}F_{ij}\psi .\tag{15.11}

成分 Fij=∂iAj−∂jAiF_{ij}=\partial_iA_j-\partial_jA_i は磁場で、たとえば Fxy=BzF_{xy}=B_z である。

ここでの AiA_i は3次元のベクトルポテンシャルの直交成分そのものである。第4章 §4.3 の FμνF_{\mu\nu} は、Minkowski 計量で添字を下げた Ai=−AiA_i=-A^i から作る。そのため空間成分は F12=−B3F_{12}=-B^3 となり、ここでの FxyF_{xy} と符号が逆になる。

偏微分どうしは交換するので、交換子にはポテンシャルの微分の項だけが残る。

微分形式で書くと見通しがよい(第12章)。1形式 A=Ai dxiA=A_i\,\mathrm{d} x^i を使うと、ゲージ変換は A↦A+dΛA\mapsto A+\mathrm{d}\Lambda である。

2形式 F=dAF=\mathrm{d} A は、d2=0\mathrm{d}^2=0 によりゲージ変換で変わらない。ホロノミーはこの2形式の面積分で書ける。時空では、AA が4元ポテンシャルの1形式、FF が電磁場テンソルになる。Maxwell 方程式の半分は dF=0\mathrm{d} F=0 である(第12章 §12.6)。

曲面の接続との対応

曲面の正規直交枠でも同じ構造が現れる。枠を各点で角 Λ\Lambda だけ回す取り替えを考える。

e1′=cos⁡Λ e1+sin⁡Λ e2.e'_1=\cos\Lambda\,e_1+\sin\Lambda\,e_2 .

このとき接続1形式は ω12+dΛ\omega_{12}+\mathrm{d}\Lambda に変わる(確認テスト 15.4-4)。

曲率 K dA=−dω12K\,\mathrm{d} A=-\mathrm{d}\omega_{12} は、d2=0\mathrm{d}^2=0 により変わらない。接ベクトルを複素数 V1+iV2V^1+\mathrm{i} V^2 で表すと、平行移動の式 dψ=−ω12\mathrm{d}\psi=-\omega_{12} は複素数の位相の回転になる。枠の回転群 SO(2)\mathrm{SO}(2) と位相の群 U(1)\mathrm{U}(1) はどちらも円であり、2つの理論は同じ形の式で書ける。対応を表15.1にまとめる。

表 15.1 曲面の接続とゲージ場の対応。どちらも群が円(SO(2)≅U(1)\mathrm{SO}(2)\cong\mathrm{U}(1))の接続である。
曲面の接ベクトル荷電粒子の波動関数
各点で選ぶ基準正規直交枠 (e1,e2)(e_1,e_2)位相の基準
基準の取り替え枠を角 Λ\Lambda だけ回すψ↦eiqΛ/ℏψ\psi\mapsto\mathrm{e}^{\mathrm{i} q\Lambda/\hbar}\psi
接続ω12↦ω12+dΛ\omega_{12}\mapsto\omega_{12}+\mathrm{d}\LambdaA↦A+dΛA\mapsto A+\mathrm{d}\Lambda
曲率−dω12=K dA-\mathrm{d}\omega_{12}=K\,\mathrm{d} AF=dAF=\mathrm{d} A(磁場)
閉じた道の回転∫SK dA\int_SK\,\mathrm{d} A(第9章のホロノミー)qΦ/ℏq\Phi/\hbar(Aharonov–Bohm の位相)
曲率の積分の整数性∫MK dA=2πχ(M)\int_MK\,\mathrm{d} A=2\pi\chi(M)Chern 数・磁荷の量子化(§15.5)

Aharonov–Bohm 効果

細く長いソレノイドの外では磁場は0だが、ベクトルポテンシャルは0にできない。ソレノイドを貫く磁束を Φ\Phi とすると、外では次のように選べる。

A=Φ2πr φ^,A=Φ2π dφ(1形式).\bm{A}=\frac{\Phi}{2\pi r}\,\hat{\bm{\varphi}},\qquad A=\frac{\Phi}{2\pi}\,\mathrm{d}\varphi\quad(\text{1形式}) .

この1形式は閉形式(dA=0\mathrm{d} A=0)だが完全形式ではなく、第12章 §12.5 の穴のある平面の dφ\mathrm{d}\varphi の定数倍になっている。

図

図 15.4 Aharonov–Bohm 効果の配置。電子は磁場の無い領域だけを通るが、ソレノイドの両側を通る2つの道の位相因子の比は exp⁡(iqΦ/ℏ)\exp(\mathrm{i} q\Phi/\hbar) になり、干渉縞が磁束に応じてずれる。

ソレノイドの両側を通る2つの道の位相因子の比は、閉じた道 γ1−γ2\gamma_1-\gamma_2 のホロノミーである。その値は exp⁡(iqΦ/ℏ)\exp(\mathrm{i} q\Phi/\hbar) になる。電子が通る領域では磁場が0なので、古典的な力は働かない。それでも干渉縞は磁束に応じてずれ、これを Aharonov–Bohm 効果と呼ぶ。

曲率が0の領域でもホロノミーが自明でないのは、その領域に穴があって、閉じた道が1点に縮まないからである。穴の無い領域なら、曲率0の接続のホロノミーは Stokes の定理によりすべて1になる。

例題 15.5 Aharonov–Bohm の干渉縞のずれ ★★

オリジナル半径 0.50 μm0.50\ \mu\mathrm{m} の細いソレノイドの内部に一様な磁場 10 mT10\ \mathrm{mT} があり、外部の磁場は0とする。電子(電荷 q=−eq=-e)の2つの道がソレノイドの両側を通るとき、次を求めよ。

  1. 磁束 Φ\Phi と、2つの道の位相差 ∣q∣Φ/ℏ\left\vert q\right\vert \Phi/\hbar。
  2. 干渉縞は縞の間隔の何個分ずれるか。
  3. 位相差が 2π2\pi になる磁束(磁束量子 h/eh/e)。

数値は e=1.602×10−19 Ce=1.602\times10^{-19}\ \mathrm{C} と ℏ=1.0546×10−34 J s\hbar=1.0546\times10^{-34}\ \mathrm{J\,s} を使う。

解答
  1. 磁束は面積と磁場の積である。

Φ=π(0.50×10−6 m)2×0.010 T=7.85×10−15 Wb.\Phi=\pi(0.50\times10^{-6}\ \mathrm{m})^2\times0.010\ \mathrm{T}=7.85\times10^{-15}\ \mathrm{Wb}.

位相差は次の値になる。

eΦℏ=1.602×10−19×7.85×10−151.0546×10−34=11.9 rad.\frac{e\Phi}{\hbar}=\frac{1.602\times10^{-19}\times7.85\times10^{-15}}{1.0546\times10^{-34}}=11.9\ \mathrm{rad}. 2. 縞1個分のずれは位相差 2π2\pi に当たる。したがって 11.9/2π=1.9011.9/2\pi=1.90 個分ずれる。3. 位相差の式を 2π2\pi に等しいとおくと、次の値を得る。

Φ=2πℏe=he=4.14×10−15 Wb.\Phi=\frac{2\pi\hbar}{e}=\frac{h}{e}=4.14\times10^{-15}\ \mathrm{Wb}.

1の磁束はこの磁束量子の約1.9倍で、2の答えと一致する。電子の電荷が負であることは縞のずれる向きを決めるだけで、ずれの大きさには関係しない。

確認テスト

オリジナル

  1. 15.4-1 次のうち、ゲージ変換で変わらない量をすべて選べ。

    1. ベクトルポテンシャル A\bm{A}
    2. 磁場 B\bm{B}
    3. 閉じた道に沿う線積分 ∮A⋅dx\oint\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{x}
    4. 1点での波動関数の位相
    5. 確率密度 ∣ψ∣2\left\vert \psi\right\vert ^2
  2. 15.4-2 一様な磁場の対称ゲージ A=B2(−y, x, 0)\bm{A}=\frac{B}{2}(-y,\,x,\,0) について、交換子 [Dx,Dy][D_x,D_y] を直接計算し、(15.11) と一致することを確かめよ。

  3. 15.4-3 ソレノイドの外のベクトルポテンシャル A=Φ2πrφ^\bm{A}=\frac{\Phi}{2\pi r}\hat{\bm{\varphi}} の回転が、r>0r>0 で0になることを示せ。また、原点を1周する円での線積分を求めよ。

  4. 15.4-4 曲面の正規直交枠を各点で角 Λ\Lambda だけ回した枠を考える。

e1′=cos⁡Λ e1+sin⁡Λ e2,e2′=−sin⁡Λ e1+cos⁡Λ e2.e'_1=\cos\Lambda\,e_1+\sin\Lambda\,e_2,\qquad e'_2=-\sin\Lambda\,e_1+\cos\Lambda\,e_2 .

この枠の接続1形式が ω12+dΛ\omega_{12}+\mathrm{d}\Lambda になることを示せ。また、Gauss 曲率と、閉じた道に沿う平行移動の回転角が、枠の選び方によらないことを説明せよ。

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