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ベクトル場を微分する問題

2026年10月22日14分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第9章 共変微分・平行移動・ホロノミー
目次
  1. 平面での復習:成分の偏微分と Christoffel 記号
  2. 物理の例:極座標の加速度
  3. 曲面では接平面へ射影する
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第9章 §9.1 ★★★ 成分を偏微分しただけではテンソルにならない。曲面では、微分を接平面へ射影したものが正しい微分になる

平らな空間では、離れた2点のベクトルを比べるのに迷うことはない。矢印を平行にずらして重ねればよいからである。ところが球面の上では点ごとに接平面が違うので、ある点の接ベクトルを別の点の接平面へそのまま運ぶことはできない。この章では、曲面や一般の多様体の上でベクトル場を微分し、ベクトルを曲線に沿って運ぶための規則を作る。

使う道具は前の章までにそろっている。第5章の計量、第7章の接平面と単位法線、第8章の Christoffel 記号と Gauss の標構方程式である。ここで作る共変微分は、第10章では測地線の方程式に、第11章では Riemann テンソルの定義に使われる。第13章の Killing ベクトルの条件と、第15章の Gauss–Bonnet の定理とゲージ場の曲率も、この章の言葉で書かれる。

物理の例は4つ現れる。極座標での加速度と曲面に拘束された質点(§9.1)、一様に加速する観測者(§9.2)、Foucault の振り子(§9.4)、ねじれた光ファイバーの中の偏光(§9.5)である。Foucault の振り子では、振動面が1日に回る角度が、緯線の囲む球面の部分の面積だけで決まることを示す。この「一周したときのずれが囲んだ曲率で決まる」という構造は、§9.5 で量子力学の Berry 位相へつながる。

記号を確認しておく。座標は一般の多様体では xix^i、曲面では uiu^i と書き、和は第3章の総和規約で書く。座標基底は ∂i=∂/∂xi\partial_i=\partial/\partial x^i と書く。計量は gijg_{ij}、その逆行列は gijg^{ij} と書く。Christoffel 記号は第8章で計量から導いた

Γkij=12gkl(∂iglj+∂jgli−∂lgij)(9.1)\Gamma^k{}_{ij}=\frac12 g^{kl}\bigl(\partial_i g_{lj}+\partial_j g_{li}-\partial_l g_{ij}\bigr)\tag{9.1}

であり、下の2つの添字について対称である。

関数 ff の微分 ∂if\partial_i f は、第3章で見たように1形式の成分として座標の取り替えに従う。ベクトル場 V=Vi∂iV=V^i\partial_i についても、成分を偏微分した ∂jVi\partial_jV^i を「ベクトル場の微分」と呼びたくなる。この節では、その素朴な定義が座標の取り替えで壊れることを確かめ、何を足せば直るかを2つの場面で調べる。

平面での復習:成分の偏微分と Christoffel 記号

平面の曲線座標でこの問題を調べ、何を足せば直るかを見つけたのは第4章 §4.4 である。この小節ではその結果を式の形で並べ直し、曲面へ進む足場にする。導出は第4章で済ませたので繰り返さない。

定理 9.1(成分の偏微分の変換則)

ベクトル場の成分の偏微分は

∂V′i∂x′j=∂xl∂x′j∂x′i∂xk∂Vk∂xl+∂xl∂x′j∂2x′i∂xl∂xkVk(9.2)\frac{\partial V'^i}{\partial x'^j} =\frac{\partial x^l}{\partial x'^j}\frac{\partial x'^i}{\partial x^k}\frac{\partial V^k}{\partial x^l} +\frac{\partial x^l}{\partial x'^j}\frac{\partial^2x'^i}{\partial x^l\partial x^k}V^k\tag{9.2}

と変換する。右辺の第1項は (1,1)(1,1) 型テンソルの変換則そのものであり、第2項がそれからのずれを表す。

証明

第4章の式 (4.16) と同じものである。変換則 V′i=(∂x′i/∂xk)VkV'^i=(\partial x'^i/\partial x^k)V^k を x′jx'^j で偏微分し、積の微分で2項に分ければ得られる。

第2項は座標変換の2階微分を含むので、極座標のような曲がった座標へ移ると残る。平面では、位置ベクトルを曲線座標で微分した基底 ei\bm{e}_i の変化を微分に入れれば直る。基底の微分の係数が第4章の Christoffel 記号 ∂jei=Γkjiek\partial_j\bm{e}_i=\Gamma^k{}_{ji}\bm{e}_k で、極座標で0でないのは次の3つであった(第4章の式 (4.21))。

Γrθθ=−r,Γθrθ=Γθθr=1r.(9.3)\Gamma^r{}_{\theta\theta}=-r,\qquad \Gamma^\theta{}_{r\theta}=\Gamma^\theta{}_{\theta r}=\frac1r.\tag{9.3}

これは計量 ds2=dr2+r2dθ2\mathrm{d} s^2=\mathrm{d} r^2+r^2\mathrm{d}\theta^2 を公式 (9.1) に入れた結果と一致する。

ベクトル場 V=Viei\bm{V}=V^i\bm{e}_i をそのまま微分すると、成分の微分と基底の微分の2項が現れる(第4章の定義 4.18)。

∂jV=(∂jVi)ei+Vi∂jei=(∂jVk+ΓkjiVi)ek.(9.4)\partial_j\bm{V}=(\partial_jV^i)\bm{e}_i+V^i\partial_j\bm{e}_i=\bigl(\partial_jV^k+\Gamma^k{}_{ji}V^i\bigr)\bm{e}_k.\tag{9.4}

括弧の中が、矢印そのものの変化の成分である。一定の場 ex\bm{e}_x ではこれが4つの組み合わせのすべてで0になることを、第4章の例題 4.5 で確かめた。

物理の例:極座標の加速度

質点が平面上を (r(t),θ(t))(r(t),\theta(t)) と動くとき、速度 r˙=r˙ er+θ˙ eθ\dot{\bm{r}}=\dot r\,\bm{e}_r+\dot\theta\,\bm{e}_\theta を時間で微分したものが加速度である。基底の時間変化は dei/dt=u˙j∂jei\mathrm{d}\bm{e}_i/\mathrm{d} t=\dot u^j\partial_j\bm{e}_i なので、(9.4) と同じ計算で第4章の式 (4.22) を得る。

r¨=(u¨k+Γkiju˙iu˙j)ek,ar=r¨−rθ˙2,aθ=θ¨+2rr˙θ˙.(9.5)\ddot{\bm{r}}=\bigl(\ddot u^k+\Gamma^k{}_{ij}\dot u^i\dot u^j\bigr)\bm{e}_k,\qquad a^r=\ddot r-r\dot\theta^2,\qquad a^\theta=\ddot\theta+\frac{2}{r}\dot r\dot\theta .\tag{9.5}

ここで u1=ru^1=r、u2=θu^2=\theta と書いた。

−rθ˙2-r\dot\theta^2 は遠心力、2rr˙θ˙\frac2r\dot r\dot\theta は Coriolis 力に当たる項として力学で習う。この式から分かるのは、これらの項が力ではなく基底の回転から出てくるということである。デカルト座標では Christoffel 記号がすべて0なので、同じ運動に対してこれらの項は現れない。

曲面では接平面へ射影する

次に、空間 R3\mathbb{R}^3 の中の曲面 r(u1,u2)\bm{r}(u^1,u^2) を考える。接ベクトルの基底は ri=∂ir\bm{r}_i=\partial_i\bm{r} で、単位法線は n\bm{n} である。第一基本形式は gij=ri⋅rjg_{ij}=\bm{r}_i\cdot\bm{r}_j である。第8章の Gauss の標構方程式は、基底の微分を接平面の成分と法線の成分に分けた式であった。

∂jri=Γkjirk+hjin,hij=∂jri⋅n.(9.6)\partial_j\bm{r}_i=\Gamma^k{}_{ji}\bm{r}_k+h_{ji}\bm{n},\qquad h_{ij}=\partial_j\bm{r}_i\cdot\bm{n} .\tag{9.6}

ここで hijh_{ij} は第二基本形式の係数である。第7章で L,M,NL,M,N と書いた3つの量を、添字つきの1つの記号にまとめた。

接ベクトル場 W=Viri\bm{W}=V^i\bm{r}_i を、空間のベクトルとして uju^j で偏微分する。(9.6) を代入すると、結果は接平面の成分と法線の成分に分かれる。

∂jW=(∂jVk+ΓkjiVi)rk+hjiVi n.(9.7)\partial_j\bm{W}=\bigl(\partial_jV^k+\Gamma^k{}_{ji}V^i\bigr)\bm{r}_k+h_{ji}V^i\,\bm{n} .\tag{9.7}

空間の中で微分すると、接ベクトル場の微分は一般に接平面からはみ出す(図 9.1)。

図

図 9.1 球面上の点 pp での接ベクトル場の微分。空間で微分した ∂jW\partial_j\bm{W}(赤)は接平面からはみ出す。その接平面への射影(青)が共変微分で、残り(破線)は法線方向を向き、第二基本形式で決まる。

曲面の上に住む者には法線の方向が見えないので、ベクトル場の変化として意味を持つのは接平面の成分だけである。そこで次のように定義する。

定義 9.2(曲面上の共変微分)

曲面上の接ベクトル場 W=Viri\bm{W}=V^i\bm{r}_i を考える。その偏微分 ∂jW\partial_j\bm{W} を接平面へ直交射影したものを、rj\bm{r}_j 方向の共変微分と呼ぶ。その成分は (9.7) の第1項の係数で与えられる。

∇jVk=∂jVk+ΓkjiVi.(9.8)\nabla_jV^k=\partial_jV^k+\Gamma^k{}_{ji}V^i .\tag{9.8}

命題 9.3(射影の成分)

接ベクトル場 W=Viri\bm{W}=V^i\bm{r}_i の偏微分 ∂jW\partial_j\bm{W} について、次が成り立つ。

  1. (a) 接平面への射影は (∇jVk)rk(\nabla_jV^k)\bm{r}_k である。
  2. (b) 法線の成分は ∂jW⋅n=hjiVi\partial_j\bm{W}\cdot\bm{n}=h_{ji}V^i である。
証明

(9.7) の右辺の第1項は rk\bm{r}_k の1次結合なので接平面に入る。第2項は n\bm{n} に平行で、接平面と直交する。直交射影はこの分解の第1項を取り出す操作なので、(a) が成り立つ。

(b) は両辺と n\bm{n} の内積をとれば得られる。そのとき rk⋅n=0\bm{r}_k\cdot\bm{n}=0 と n⋅n=1\bm{n}\cdot\bm{n}=1 を使う。

この定義で大事なのは、射影した結果が Christoffel 記号だけで書けることである。第8章で示したように Christoffel 記号は第一基本形式だけで決まるので、共変微分は曲面の内在的な量になる。法線の成分 hjiVih_{ji}V^i は曲面の曲がり方の外在的な情報で、次の物理の例で拘束力として現れる。

曲面に拘束された質点

なめらかな曲面の上を、摩擦なしに、拘束力のほかには力を受けずに動く質量 mm の質点を考える。位置は r(u(t))\bm{r}(u(t)) で、速度は u˙iri\dot u^i\bm{r}_i である。(9.6) を使って加速度を接平面と法線に分けると、次の式になる。

r¨=(u¨k+Γkiju˙iu˙j)rk+hiju˙iu˙j n.\ddot{\bm{r}}=\bigl(\ddot u^k+\Gamma^k{}_{ij}\dot u^i\dot u^j\bigr)\bm{r}_k+h_{ij}\dot u^i\dot u^j\,\bm{n} .

運動方程式は mr¨=Nnm\ddot{\bm{r}}=N\bm{n} で、拘束力は法線を向く。

接平面の成分を比べると u¨k+Γkiju˙iu˙j=0\ddot u^k+\Gamma^k{}_{ij}\dot u^i\dot u^j=0 となり、これは第10章で扱う測地線の方程式である。法線の成分からは、拘束力の大きさが N=m hiju˙iu˙jN=m\,h_{ij}\dot u^i\dot u^j と決まる。つまり、加速度の接平面の成分が運動を決め、法線の成分が曲面に押し付ける力を決める。

例題 9.1 直線運動を極座標で書く ★★

オリジナル平面上で、直線 y=by=b に沿って等速で動く質点を考える(b>0b>0 とする)。時刻 tt での位置の横の座標は vtvt である。

  1. 極座標の r(t)r(t) と θ(t)\theta(t) を書き、それぞれの1階と2階の時間微分を求めよ。
  2. 加速度の成分 (9.5) がどちらも0になることを確かめよ。
  3. 半径 aa の円の上を角速度 ω\omega で回る等速円運動について、加速度の2つの成分を求めよ。
解答

(1) 位置は (vt,b)(vt,b) なので、極座標は次の式になる。

r=v2t2+b2,θ=arctan⁡bvt.r=\sqrt{v^2t^2+b^2},\qquad \theta=\arctan\frac{b}{vt}.

rr を微分すると r˙=v2t/r\dot r=v^2t/r である。これをもう一度微分し、r˙\dot r を代入して整理する。

r¨=v2r−v2t r˙r2=v2(r2−v2t2)r3=v2b2r3.\ddot r=\frac{v^2}{r}-\frac{v^2t\,\dot r}{r^2}=\frac{v^2(r^2-v^2t^2)}{r^3}=\frac{v^2b^2}{r^3}.

θ\theta の微分は θ˙=−vb/r2\dot\theta=-vb/r^2 で、もう一度微分すると次の式になる。

θ¨=2vb r˙r3=2v3btr4.\ddot\theta=\frac{2vb\,\dot r}{r^3}=\frac{2v^3bt}{r^4}.

(2) rr 成分に代入する。

ar=r¨−rθ˙2=v2b2r3−r⋅v2b2r4=0.a^r=\ddot r-r\dot\theta^2=\frac{v^2b^2}{r^3}-r\cdot\frac{v^2b^2}{r^4}=0.

θ\theta 成分も同じく代入する。

aθ=θ¨+2rr˙θ˙=2v3btr4+2r⋅v2tr⋅(−vbr2)=0.a^\theta=\ddot\theta+\frac2r\dot r\dot\theta=\frac{2v^3bt}{r^4}+\frac2r\cdot\frac{v^2t}{r}\cdot\Bigl(-\frac{vb}{r^2}\Bigr)=0.

極座標の2階微分は0でないが、Christoffel 記号の項がちょうど打ち消し、加速度は0になる。

(3) 等速円運動では r=ar=a と θ=ωt\theta=\omega t である。0でない微分は θ˙=ω\dot\theta=\omega だけである。

ar=−aω2,aθ=0.a^r=-a\omega^2,\qquad a^\theta=0 .

中心向きの大きさ aω2a\omega^2 の加速度という、見慣れた結果に戻る。

確認テスト

オリジナル

  1. 9.1-1 座標の取り替えが1次式 x′i=Aikxk+cix'^i=A^i{}_kx^k+c^i であるとする。ここで AikA^i{}_k と cic^i は定数で、係数の行列は正則である。このとき ∂jVi\partial_jV^i が (1,1)(1,1) 型テンソルとして変換することを、(9.2) から示せ。
  2. 9.1-2 平面の回転のベクトル場 V=∂θV=\partial_\theta を考える。デカルト成分は (−y,x)(-y,x) である。極座標での ∇jVk\nabla_jV^k をすべて求めよ。さらに、デカルト座標での ∂jVk\partial_jV^k を (1,1)(1,1) 型テンソルとして極座標へ変換し、結果が一致することを確かめよ。
  3. 9.1-3 半径 RR の球面を次の式で表し、その上のベクトル場 V=∂φV=\partial_\varphi を考える。

r=R(sin⁡θcos⁡φ, sin⁡θsin⁡φ, cos⁡θ).\bm{r}=R(\sin\theta\cos\varphi,\,\sin\theta\sin\varphi,\,\cos\theta).

∂φrφ\partial_\varphi\bm{r}_\varphi を直接計算し、接平面の成分を ∇φVk\nabla_\varphi V^k と比べよ。法線の成分を hφφh_{\varphi\varphi} と比べよ。法線は外向きにとる。4. 9.1-4 半径 RR の球面の上で、拘束力だけを受けて動く質点を考える。質量を mm、速さを vv とする。拘束力が中心を向き、大きさが mv2/Rmv^2/R であることを示せ。

木下の勉強ステータス

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