物理のための微分幾何入門 第8章 §8.6
8.1 内在的な量と局所等長
- 8.1-1 (a)・(b)・(c) は命題 8.4 により必ず保たれる。(d)・(e) は保たれるとは限らない。半径 a の円柱と平面は局所等長である。しかし平均曲率は円柱で 1/(2a)、平面で 0 と異なる。円周方向の法曲率も、円柱で 1/a、平面で 0 と異なる。
- 8.1-2 偏微分は次のとおりである。
rs=(sinαcosφ, sinαsinφ, cosα),rφ=ssinα(−sinφ, cosφ, 0)
E=sin2α+cos2α=1, F=0, G=s2sin2α である。線素を dℓ と書くと(座標の s と区別する)、第一基本形式は次のようになる。
dℓ2=ds2+s2sin2αdφ2
平面の極座標の計量は dρ2+ρ2dϑ2 である。ρ=s, ϑ=φsinα を入れると dρ2+ρ2dϑ2=ds2+s2sin2αdφ2 となり、円錐の計量と一致する。命題 8.2 により、この写像は局所等長写像である。
経度が1周すると、ϑ は 0≤ϑ<2πsinα を動く。したがって切り開いた扇形の中心角は 2πsinα である。3. 8.1-3 地図の上の計量は dx2+dy2=R2dφ2+R2dψ2 である。東西方向(dψ=0)の微小な長さは、地図の上で Rdφ である。地球の上では Rcosψdφ なので、比は 1/cosψ になる。緯度 45∘ では 2≈1.414 倍になる。緯度 60∘ では2倍になる。南北方向の倍率は1なので、小さな領域の面積の倍率は 1×1/cosψ=1/cosψ である。4. 8.1-4 局所等長写像を f とし、命題 8.2 の座標をとると、対応する点で gij′=gij である。交わる2本の曲線の、交点での座標の速度を ξ,η とする。この座標では、像の曲線の座標の速度も同じ ξ,η である。なす角は命題 8.4 の証明の cosϑ の式で決まる。その式で gij を gij′ に替えても値は変わらない。座標の領域 D の像の面積は ∬Ddetg′dudv である。detg′=detg なので、もとの面積 ∬Ddetgdudv と等しい。
8.2 Christoffel 記号
- 8.2-1 偏微分の順序が交換できるので rij=rji であり、その接線成分の係数も等しいからである。直交直線座標では gij=δij が定数なので、(8.8) によりすべての Christoffel 記号は 0 である。
- 8.2-2 u=r, v=θ、E=1, G=r2 を (8.10) に入れる。E は定数なので Γrrr=Γrrθ=Γθrr=0 である。Gθ=0 なので Γθθθ=0 である。残りは次の2つ(と対称な成分)である。
Γrθθ=−2EGr=−r,Γθrθ=Γθθr=2GGr=r1
(8.11) の接線成分を k=r と k=θ について書く。k=θ では、対称な2つの成分 Γθrθ=Γθθr が同じ寄与をする。
r¨+Γrθθθ˙2=r¨−rθ˙2,θ¨+2Γθrθr˙θ˙=θ¨+r2r˙θ˙
3. 8.2-3 計量 E=G=1/y2, F=0 は横の座標 x によらない。Ex=Gx=0、Ey=Gy=−2/y3 を (8.10) に入れる。
Γxxx=0,Γxxy=2EEy=−y1,Γxyy=−2EGx=0,Γyxx=−2GEy=y1,Γyxy=2GGx=0,Γyyy=2GGy=−y1.
対称な成分 Γxyx=−1/y も 0 でない。4. 8.2-4 (8.11) で時間 τ を弧長 s に読み替えると、次の式になる。
ds2d2r=(u′′k+Γkiju′iu′j)rk+hiju′iu′jn
接ベクトルは法線と直交するので、n との内積をとると法線成分は hiju′iu′j である。
弧長で表しているので giju′iu′j=1 が成り立つ。したがって hiju′iu′j=giju′iu′jhiju′iu′j=II/I である。右辺は第7章の法曲率の式で、加速度の法線成分が法曲率に一致する。
8.3 Gauss の方程式と Codazzi の方程式
- 8.3-1 Gauss の方程式は R1212=LN−M2 の1本である。Codazzi の方程式は (i,j,k)=(1,2,1),(2,1,2) の2本で、合わせて3本である。
- 8.3-2 (a) はなりうる。定数の計量なので Christoffel 記号はすべて 0 で、R1212=0 である。Gauss の方程式の右辺も LN−M2=1⋅0−0=0 で成り立つ。hij が定数で Christoffel 記号が 0 なので、Codazzi の方程式の各項は 0 である。具体的には、半径1の円柱 r(u,v)=(cosu, sinu, v) がこれに当たる。E=1, F=0, G=1 で、法線 ru×rv/∣ru×rv∣=(cosu, sinu, 0) は外向きである。ruu=−(cosu,sinu,0) なので L=−1 となる。法線を内向きに取り替えれば L=1, M=N=0 になる。 (b) はなりえない。計量は (a) と同じなので R1212=0 だが、LN−M2=1 で Gauss の方程式が成り立たない。
- 8.3-3 例題 8.1 の偏微分から、外積は次のとおりである。
ru×rv=coshv(cosu, sinu, −sinhv),∣ru×rv∣=cosh2v
よって n=(cosu, sinu, −sinhv)/coshv である。
2階微分は次のとおりである。
ruu=−coshv(cosu,sinu,0),ruv=sinhv(−sinu,cosu,0),rvv=coshv(cosu,sinu,0)
n との内積から L=−1, M=0, N=1 を得る。第一基本形式は E=G=cosh2v, F=0 である。
Codazzi の第1式は、左辺が Lv=0、右辺が 2Ev(cosh2v−1+cosh2v1)=0 で成り立つ。第2式は、左辺が Nu=0、右辺も Gu=0 なので 0 で成り立つ。LN−M2=−1 なので K=−1/cosh4v である。
確認テスト 8.4-4 の (8.20) に λ=cosh2v を入れると、Δlogλ=2/cosh2v である。計量から求めた K も −1/cosh4v となり、Gauss の方程式とも整合する。4. 8.3-4 Weingarten の公式 (8.7) で hki=gklhli=0 なので、n1=n2=0 である。曲面は連結なので n は定数ベクトル n0 である。関数 r⋅n0 を微分すると ri⋅n0=0 なので、この関数も定数である。その定数を c とすると、曲面は平面 x⋅n0=c に含まれる。これは定理 8.9 の k=0 の場合でもある。
8.4 驚異の定理
- 8.4-1 球面と円柱は局所等長になりえない。球面の Gauss 曲率は正で円柱は 0 なので、定理 8.11 に反するからである。円錐と平面は(頂点を除いて)局所等長になる。確認テスト 8.1-2 で写像を具体的に作った(どちらも K=0 で、定理と矛盾しない)。
- 8.4-2 E=1, G=ρ2 なので、EG=ρ, Ev=0, Gu=2ρρ′ である。(8.18) の括弧の中は ∂u(2ρρ′/ρ)=2ρ′′ だけになる。
K=−2ρ1⋅2ρ′′=−ρρ′′
ρ=eu では K=−ρ′′/ρ=−1 である。3. 8.4-3 θ=π/4+ψ/2, t=tanθ とおくと y/R=logt である。したがって cosh(y/R)=(t+1/t)/2 であり、t+1/t は次のように変形できる。
t+t1=sinθcosθsin2θ+cos2θ=sin2θ2
sin2θ=sin(π/2+ψ)=cosψ なので、cosh(y/R)=1/cosψ を得る。
長さの倍率 1/cosψ が3倍になるのは、cosψ=1/3 のときである。すなわち緯度 ψ≈70.53∘ である。北緯 60∘ では y=Rlogtan75∘≈6371×1.3170km≈8390km である。地表に沿った実際の距離は経線の弧の長さ R⋅π/3≈6672km で、地図の上の距離は約 1.26 倍になる。4. 8.4-4 E=G=λ とおくと EG=λ である。したがって Gu/EG=λu/λ=∂ulogλ となる。同様に Ev/EG=∂vlogλ である。(8.18) に入れると次の式になる。
K=−2λ1(∂u2logλ+∂v2logλ)=−2λ1Δlogλ
上半平面の計量では λ=1/y2 で、logλ=−2logy である。Δlogλ=∂y2(−2logy)=2/y2 となる。よって K=−2y2⋅y22=−1 で、上半平面の計量は負の定曲率 −1 を持つ。5. 8.4-5 中心を北極にとると、領域は北極からの角 θ≤r/R の球冠である。面積要素 R2sinθdθdφ を積分する。
A(r)=∫02π∫0r/RR2sinθdθdφ=2πR2(1−cosRr)
1−cosx=x2/2−x4/24+⋯ を入れると、次のように展開できる。
A(r)=2πR2(2R2r2−24R4r4+⋯)=πr2(1−12R2r2+⋯)
差は主要項で πr4/(12R2)=π×108/(12×63712)km2≈0.645km2 である。平面の円の面積 πr2≈31416km2 に対して 2×10−5 程度の割合で、球面の円の方が狭い。
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