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勾配・発散・回転

2026年10月15日20分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第1章 ベクトル解析の道具
目次
  1. 場とナブラ演算子
  2. 勾配
  3. 発散
  4. 回転
  5. 2回の微分と恒等式
  6. 確認テスト
  7. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

電磁気学入門 第1章 §1.1 ★★★ 3つの微分演算を成分で定義し、湧き出しと渦という意味を小さな箱と小さな閉曲線から導く

電磁気学の基本法則は、電場 E\bm{E} と磁場 B\bm{B} という空間の各点にベクトルが付いた量(ベクトル場)についての方程式である。その方程式は、場の湧き出しを表す発散 ∇⋅\nabla\cdot と、場の渦を表す回転 ∇×\nabla\times を使って書かれる。さらに、ある点での微分の形の法則と、閉曲面や閉曲線についての積分の形の法則を行き来するには、Gauss の発散定理と Stokes の定理が必要になる。この章ではこれらの道具を、定義から導出までそろえる。

1.1 節では勾配・発散・回転を成分で定義し、それぞれが小さな立方体からの流出や小さな閉曲線に沿った循環としてどういう幾何的な意味を持つかを導く。1.2 節では発散定理と Stokes の定理を証明し、第2章で静電場の解の一意性を示すときに使う Green の恒等式を導く。1.3 節では点電荷を表すための Dirac のデルタ関数を導入し、

∇21r=−4πδ(3)(r)\nabla^2\frac{1}{r}=-4\pi\delta^{(3)}(\bm{r})

を示す。この式は第2章の Poisson 方程式の解と、第5章の Biot–Savart の法則の導出で使う。

同じ節で、ベクトル場は発散と回転を与えればただ1つに決まり、回転なしの部分と発散なしの部分に分けられること(Helmholtz の分解)を示す。1.4 節では円柱座標と球座標での勾配・発散・回転・ラプラシアンを導く。これは第3章で Laplace 方程式を球座標で変数分離するときと、第9章・第11章で波を扱うときに使う。

この章では3次元のベクトルを太字で A=(Ax,Ay,Az)\bm{A}=(A_x,A_y,A_z) と書き、直交座標の単位ベクトルを ex,ey,ez\bm{e}_x,\bm{e}_y,\bm{e}_z と書く。位置ベクトルは r=(x,y,z)\bm{r}=(x,y,z)、その長さは r=∣r∣r=\left\vert \bm{r}\right\vert とする。

成分の添字 i,j,ki,j,k は 1, 2, 3 を走る。座標を x1=x, x2=y, x3=zx_1=x,\ x_2=y,\ x_3=z と番号で呼び、偏微分を ∂i=∂/∂xi\partial_i=\partial/\partial x_i と略す。添字についての和は ∑\sum を省かずに書く。

場とナブラ演算子

空間の各点 r\bm{r} に1つの数 f(r)f(\bm{r}) を対応させたものをスカラー場と呼ぶ。各点に1つのベクトル A(r)\bm{A}(\bm{r}) を対応させたものはベクトル場と呼ぶ。温度分布や静電ポテンシャルはスカラー場の例であり、流体の速度や電場はベクトル場の例である。この章で扱う場は、とくに断らない限り、必要な回数だけ連続的に微分できるものとする。

3つの偏微分を並べた記号

∇=ex∂∂x+ey∂∂y+ez∂∂z(1.1)\nabla=\bm{e}_x\frac{\partial }{\partial x}+\bm{e}_y\frac{\partial }{\partial y}+\bm{e}_z\frac{\partial }{\partial z}\tag{1.1}

をナブラ演算子と呼ぶ。∇\nabla はベクトルのように成分を持つが、右にある場に微分として働く点で普通のベクトルとは違う。この ∇\nabla をスカラー場に掛ける、ベクトル場と内積をとる、ベクトル場と外積をとる、という3通りの組み合わせから、勾配・発散・回転の3つの演算が得られる。

勾配

定義 1.1(勾配)

スカラー場 ff の勾配(gradient)を

∇f=∂f∂xex+∂f∂yey+∂f∂zez(1.2)\nabla f=\frac{\partial f}{\partial x}\bm{e}_x+\frac{\partial f}{\partial y}\bm{e}_y+\frac{\partial f}{\partial z}\bm{e}_z\tag{1.2}

で定める。grad⁡f\operatorname{grad} f とも書く。

勾配の意味は、ある点から微小な変位 dr=(dx,dy,dz)\mathrm{d}\bm{r}=(\mathrm{d} x,\mathrm{d} y,\mathrm{d} z) だけ動いたときの ff の変化を見るとわかる。多変数の Taylor 展開の1次の項をとると

df=f(r+dr)−f(r)=∂f∂xdx+∂f∂ydy+∂f∂zdz=∇f⋅dr(1.3)\mathrm{d} f=f(\bm{r}+\mathrm{d}\bm{r})-f(\bm{r})=\frac{\partial f}{\partial x}\mathrm{d} x+\frac{\partial f}{\partial y}\mathrm{d} y+\frac{\partial f}{\partial z}\mathrm{d} z=\nabla f\cdot\mathrm{d}\bm{r}\tag{1.3}

となる。単位ベクトル n\bm{n} の向きに長さ dℓ\mathrm{d}\ell だけ動く場合を考える。dr=n dℓ\mathrm{d}\bm{r}=\bm{n}\,\mathrm{d}\ell を代入すると

dfdℓ=∇f⋅n=∣∇f∣cos⁡α\frac{d f}{d \ell}=\nabla f\cdot\bm{n}=\left\vert \nabla f\right\vert \cos\alpha

を得る。ここで α\alpha は、内積をとった2つのベクトルのなす角である。この量を n\bm{n} 方向の方向微分と呼ぶ。右辺は α=0\alpha=0 のとき最大になるので、次のことがわかる。

命題 1.2(勾配の幾何的な意味)

∇f≠0\nabla f\neq\bm{0} の点で次が成り立つ。

  1. ∇f\nabla f の向きは、ff がもっとも速く増える向きである。その向きの増加率は ∣∇f∣\left\vert \nabla f\right\vert に等しい。
  2. ∇f\nabla f は、その点を通る等値面 f(r)=一定f(\bm{r})=\text{一定} に垂直である。
証明

1 は上の方向微分の式 ∇f⋅n=∣∇f∣cos⁡α\nabla f\cdot\bm{n}=\left\vert \nabla f\right\vert \cos\alpha から直ちに従う。2 を示すために、等値面の上を通る任意の曲線 r(t)\bm{r}(t) をとる。曲線の上で f(r(t))f(\bm{r}(t)) は一定である。これを tt で微分し、(1.3) を使うと

∇f⋅drdt=0\nabla f\cdot\frac{d \bm{r}}{d t}=0

となる。drdt\frac{d \bm{r}}{d t} は等値面に接するどんなベクトルにもとれるから、∇f\nabla f は等値面のすべての接ベクトルと直交する。

第2章で見るように、静電場は電位 ϕ\phi から E=−∇ϕ\bm{E}=-\nabla\phi で得られる。これは、電場が等電位面に垂直で、電位の下がる向きを向くことを意味する。命題 1.2 がその根拠になる。

発散

定義 1.3(発散)

ベクトル場 A\bm{A} の発散(divergence)を

∇⋅A=∂Ax∂x+∂Ay∂y+∂Az∂z(1.4)\nabla\cdot\bm{A}=\frac{\partial A_x}{\partial x}+\frac{\partial A_y}{\partial y}+\frac{\partial A_z}{\partial z}\tag{1.4}

で定める。div⁡A\operatorname{div}\bm{A} とも書く。発散はスカラー場である。

発散の意味を見るために、まず流束を定める。向きを決めた面 SS の上の面積要素を dS\mathrm{d} S とする。その点での単位法線を n\bm{n} として、dS=n dS\mathrm{d}\bm{S}=\bm{n}\,\mathrm{d} S と書く。ベクトル場 A\bm{A} の面 SS を通る流束を

Φ=∫SA⋅dS\Phi=\int_S\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{S}

で定める。A\bm{A} が流体の速度なら、Φ\Phi は単位時間に面を通り抜ける流体の体積である。閉曲面の場合は、法線を外向きにとるのを約束とする。

点 (x,y,z)(x,y,z) を1つの頂点とし、辺の長さが Δx,Δy,Δz\Delta x,\Delta y,\Delta z の小さな直方体を考える。その表面から外へ出る A\bm{A} の流束を計算する。

xx 軸に垂直な2つの面の外向き法線は、次の向きである。

  • 位置 x+Δxx+\Delta x にある面:+ex+\bm{e}_x。
  • 位置 xx にある面:−ex-\bm{e}_x。

面の大きさが小さいので面の上での AxA_x の変化を無視すると、この2つの面からの流出は

[Ax(x+Δx,y,z)−Ax(x,y,z)]Δy Δz≈∂Ax∂xΔx Δy Δz\bigl[A_x(x+\Delta x,y,z)-A_x(x,y,z)\bigr]\Delta y\,\Delta z\approx\frac{\partial A_x}{\partial x}\Delta x\,\Delta y\,\Delta z

となる。yy 軸・zz 軸に垂直な面の組も同じように計算して足す。体積を ΔV=Δx Δy Δz\Delta V=\Delta x\,\Delta y\,\Delta z と書くと

∮直方体の表面A⋅dS≈(∂Ax∂x+∂Ay∂y+∂Az∂z)ΔV=(∇⋅A) ΔV(1.5)\oint_{\text{直方体の表面}}\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{S}\approx\left(\frac{\partial A_x}{\partial x}+\frac{\partial A_y}{\partial y}+\frac{\partial A_z}{\partial z}\right)\Delta V=(\nabla\cdot\bm{A})\,\Delta V\tag{1.5}

を得る。無視した項は ΔV\Delta V より高次の小ささなので、ΔV→0\Delta V\to0 の極限で

∇⋅A=lim⁡ΔV→01ΔV∮A⋅dS(1.6)\nabla\cdot\bm{A}=\lim_{\Delta V\to0}\frac{1}{\Delta V}\oint\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{S}\tag{1.6}

が成り立つ。発散は「単位体積あたりの外への流出」であり、正なら場がその点から湧き出し、負なら吸い込まれている。第2章で示す ∇⋅E=ρ/ε0\nabla\cdot\bm{E}=\rho/\varepsilon_0 は、正の電荷が電場の湧き出し口であることを表す。

回転

定義 1.4(回転)

ベクトル場 A\bm{A} の回転(rotation、curl)を

∇×A=(∂Az∂y−∂Ay∂z)ex+(∂Ax∂z−∂Az∂x)ey+(∂Ay∂x−∂Ax∂y)ez(1.7)\nabla\times\bm{A}=\left(\frac{\partial A_z}{\partial y}-\frac{\partial A_y}{\partial z}\right)\bm{e}_x+\left(\frac{\partial A_x}{\partial z}-\frac{\partial A_z}{\partial x}\right)\bm{e}_y+\left(\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}\right)\bm{e}_z\tag{1.7}

で定める。rot⁡A\operatorname{rot}\bm{A} や curl⁡A\operatorname{curl}\bm{A} とも書く。回転はベクトル場である。

3次元の Levi-Civita 記号 ϵijk\epsilon_{ijk} を使う。これは ϵ123=+1\epsilon_{123}=+1 で、どの2つの添字の入れ替えでも符号を変える記号である。この記号を使うと、回転の ii 成分は

(∇×A)i=∑j=13∑k=13ϵijk ∂jAk(1.8)(\nabla\times\bm{A})_i=\sum_{j=1}^3\sum_{k=1}^3\epsilon_{ijk}\,\partial_jA_k\tag{1.8}

と書ける。たとえば3番目の成分では、0 でない ϵ\epsilon を持つ2項だけが残り

(∇×A)3=ϵ312 ∂1A2+ϵ321 ∂2A1=∂Ay∂x−∂Ax∂y(\nabla\times\bm{A})_3=\epsilon_{312}\,\partial_1A_2+\epsilon_{321}\,\partial_2A_1=\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}

となる。これは (1.7) の zz 成分と一致する。

回転の意味は、閉曲線に沿った循環から読み取れる。向きのついた閉曲線 CC について、

Γ=∮CA⋅dr\Gamma=\oint_C\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{r}

を A\bm{A} の CC に沿った循環と呼ぶ。

xyxy 平面に平行な小さな長方形を、次の4つの頂点の順にたどる。

(x,y) → (x+Δx,y) → (x+Δx,y+Δy) → (x,y+Δy) → (x,y)(x,y)\ \to\ (x+\Delta x,y)\ \to\ (x+\Delta x,y+\Delta y)\ \to\ (x,y+\Delta y)\ \to\ (x,y)

この向きは、zz 軸の正の側から見て反時計回りである。4つの辺の寄与を順に書くと

Γ≈Ax(x,y)Δx+Ay(x+Δx,y)Δy−Ax(x,y+Δy)Δx−Ay(x,y)Δy\Gamma\approx A_x(x,y)\Delta x+A_y(x+\Delta x,y)\Delta y-A_x(x,y+\Delta y)\Delta x-A_y(x,y)\Delta y

となる。第2項と第4項、第1項と第3項をそれぞれ組にして1次まで展開すると

Γ≈(∂Ay∂x−∂Ax∂y)Δx Δy=(∇×A)z ΔS(1.9)\Gamma\approx\left(\frac{\partial A_y}{\partial x}-\frac{\partial A_x}{\partial y}\right)\Delta x\,\Delta y=(\nabla\times\bm{A})_z\,\Delta S\tag{1.9}

を得る。ΔS=Δx Δy\Delta S=\Delta x\,\Delta y は長方形の面積である。長方形を別の向きに置いても同じ計算ができ、単位法線 n\bm{n} の向き(閉曲線のたどる向きに右ねじを回したとき、ねじの進む向き)を持つ小さな面について

(∇×A)⋅n=lim⁡ΔS→01ΔS∮CA⋅dr(1.10)(\nabla\times\bm{A})\cdot\bm{n}=\lim_{\Delta S\to0}\frac{1}{\Delta S}\oint_C\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{r}\tag{1.10}

が成り立つ。回転の n\bm{n} 成分は「n\bm{n} に垂直な小さな面のまわりの、単位面積あたりの循環」である。流体で言えば、その点に置いた小さな羽根車を n\bm{n} 軸のまわりに回そうとする強さを表す。(1.10) が直方体でなくどんな向きの面でも成り立つことは、次節の Stokes の定理の証明の中で、曲面をパラメータで表して確かめる。

湧き出しと渦

2つのベクトル場 B=(x,y,0)\bm{B}=(x,y,0) と A=(−y,x,0)\bm{A}=(-y,x,0) を比べる(図 1.1)。定義どおり計算すると

∇⋅B=1+1=2,∇×B=0,∇⋅A=0,∇×A=(1−(−1))ez=2ez\nabla\cdot\bm{B}=1+1=2,\quad \nabla\times\bm{B}=\bm{0},\qquad \nabla\cdot\bm{A}=0,\quad\nabla\times\bm{A}=\bigl(1-(-1)\bigr)\bm{e}_z=2\bm{e}_z

となる。B\bm{B} は原点から放射状に広がり、どの点でも外への流出がある。A\bm{A} は原点のまわりを反時計回りに回り、どの点にも湧き出しは無い。A\bm{A} の回転が原点以外でも 2ez2\bm{e}_z であることは、渦の中心から離れた点でも、置いた羽根車が回る(流れの外側ほど速いため)ことを表す。

図

図 1.1 発散だけを持つ場 B\bm{B}(左)と回転だけを持つ場 A\bm{A}(右)。矢印の長さは場の大きさに比例させてある。

2回の微分と恒等式

勾配の発散をラプラシアンと呼び、

∇2f=∇⋅(∇f)=∂2f∂x2+∂2f∂y2+∂2f∂z2(1.11)\nabla^2 f=\nabla\cdot(\nabla f)=\frac{\partial ^2f}{\partial x^2}+\frac{\partial ^2f}{\partial y^2}+\frac{\partial ^2f}{\partial z^2}\tag{1.11}

と書く。ベクトル場 A\bm{A} に対しては、直交座標の成分ごとに ∇2A=(∇2Ax,∇2Ay,∇2Az)\nabla^2\bm{A}=(\nabla^2A_x,\nabla^2A_y,\nabla^2A_z) と定める。

定理 1.5(ベクトル解析の基本恒等式)

滑らかなスカラー場 f,gf,g とベクトル場 A,B\bm{A},\bm{B} について次が成り立つ。

∇×(∇f)=0,∇⋅(∇×A)=0,∇⋅(fA)=f ∇⋅A+A⋅∇f,∇×(fA)=f ∇×A+∇f×A,∇×(∇×A)=∇(∇⋅A)−∇2A.\begin{align*}&\nabla\times(\nabla f)=\bm{0},\tag{1.12}\\&\nabla\cdot(\nabla\times\bm{A})=0,\tag{1.13}\\&\nabla\cdot(f\bm{A})=f\,\nabla\cdot\bm{A}+\bm{A}\cdot\nabla f,\tag{1.14}\\&\nabla\times(f\bm{A})=f\,\nabla\times\bm{A}+\nabla f\times\bm{A},\tag{1.15}\\&\nabla\times(\nabla\times\bm{A})=\nabla(\nabla\cdot\bm{A})-\nabla^2\bm{A}.\tag{1.16}\end{align*}

証明

(1.12):(1.8) より ii 成分は ∑j,kϵijk∂j∂kf\sum_{j,k}\epsilon_{ijk}\partial_j\partial_kf である。

偏微分の順序は交換できるので、∂j∂kf\partial_j\partial_kf は j,kj,k について対称である。一方 ϵijk\epsilon_{ijk} は反対称である。和の添字の名前 j,kj,k を入れ替えると、和は自分自身の −1-1 倍に等しくなる。よって和は 0 である。

(1.13):発散をとった式は

∇⋅(∇×A)=∑i,j,kϵijk∂i∂jAk\nabla\cdot(\nabla\times\bm{A})=\sum_{i,j,k}\epsilon_{ijk}\partial_i\partial_jA_k

である。同じ理由(∂i∂j\partial_i\partial_j が i,ji,j について対称)により 0 になる。

(1.14) と (1.15):積の微分の公式

∂i(fAk)=f∂iAk+(∂if)Ak\partial_i(fA_k)=f\partial_iA_k+(\partial_if)A_k

を使う。これを発散 ∑i∂i(fAi)\sum_i\partial_i(fA_i) と回転 ∑j,kϵijk∂j(fAk)\sum_{j,k}\epsilon_{ijk}\partial_j(fA_k) に入れればよい。後者の第2項は ∑j,kϵijk(∂jf)Ak=(∇f×A)i\sum_{j,k}\epsilon_{ijk}(\partial_jf)A_k=(\nabla f\times\bm{A})_i である。

(1.16):縮約の公式

∑k=13ϵkijϵklm=δilδjm−δimδjl(1.17)\sum_{k=1}^3\epsilon_{kij}\epsilon_{klm}=\delta_{il}\delta_{jm}-\delta_{im}\delta_{jl}\tag{1.17}

を使う。この公式は、左辺について次の3点を確かめれば示せる(右辺も同じ値をとる)。

  1. 0 でないためには {i,j}={l,m}\{i,j\}=\{l,m\} かつ i≠ji\neq j が必要である。
  2. (i,j)=(l,m)(i,j)=(l,m) なら +1+1 になる。
  3. (i,j)=(m,l)(i,j)=(m,l) なら −1-1 になる。

ϵijk=ϵkij\epsilon_{ijk}=\epsilon_{kij}(巡回置換)に注意して

(∇×(∇×A))i=∑j,kϵijk∂j∑l,mϵklm∂lAm=∑j,l,m(δilδjm−δimδjl)∂j∂lAm=∂i∑j∂jAj−∑j∂j∂jAi\bigl(\nabla\times(\nabla\times\bm{A})\bigr)_i=\sum_{j,k}\epsilon_{ijk}\partial_j\sum_{l,m}\epsilon_{klm}\partial_lA_m =\sum_{j,l,m}(\delta_{il}\delta_{jm}-\delta_{im}\delta_{jl})\partial_j\partial_lA_m =\partial_i\sum_j\partial_jA_j-\sum_j\partial_j\partial_jA_i

となり、これは右辺の ii 成分である。

(1.12) と (1.13) の逆、つまり「回転が 0 なら勾配で書けるか」「発散が 0 なら回転で書けるか」は1.3 節の主題になる。(1.16) は第9章で Maxwell 方程式から波動方程式を導くときに使う。

例題 1.1 位置ベクトルの冪 ★★

オリジナルnn を実数とし、r≠0r\neq0 の点で次を計算せよ。

  1. ∇rn\nabla r^n。
  2. ∇⋅(rnr)\nabla\cdot(r^n\bm{r}) と ∇×(rnr)\nabla\times(r^n\bm{r})。
  3. 2 の結果から、r/r3\bm{r}/r^3 の発散を求めよ。
解答
  1. r=(x2+y2+z2)1/2r=(x^2+y^2+z^2)^{1/2} を微分すると

∂r∂x=xr,∂r∂y=yr,∂r∂z=zr\frac{\partial r}{\partial x}=\frac{x}{r},\quad \frac{\partial r}{\partial y}=\frac{y}{r},\quad \frac{\partial r}{\partial z}=\frac{z}{r}

となる。まとめて ∇r=r/r\nabla r=\bm{r}/r である。連鎖律より

∇rn=nrn−1∇r=nrn−2r.\nabla r^n=nr^{n-1}\nabla r=nr^{n-2}\bm{r} .

  1. (1.14) で f=rnf=r^n、A=r\bm{A}=\bm{r} とおく。∇⋅r=1+1+1=3\nabla\cdot\bm{r}=1+1+1=3 と 1 の結果から

∇⋅(rnr)=3rn+r⋅nrn−2r=3rn+nrn=(n+3)rn.\nabla\cdot(r^n\bm{r})=3r^n+\bm{r}\cdot nr^{n-2}\bm{r}=3r^n+nr^n=(n+3)r^n .

回転は (1.15) を使う。まず ∇×r=0\nabla\times\bm{r}=\bm{0} である。たとえば zz 成分は ∂y∂x−∂x∂y\frac{\partial y}{\partial x}-\frac{\partial x}{\partial y} で、各項が 0 になる。また ∇rn×r=nrn−2 r×r=0\nabla r^n\times\bm{r}=nr^{n-2}\,\bm{r}\times\bm{r}=\bm{0} なので

∇×(rnr)=rn ∇×r+∇rn×r=0.\nabla\times(r^n\bm{r})=r^n\,\nabla\times\bm{r}+\nabla r^n\times\bm{r}=\bm{0} .

  1. n=−3n=-3 とおくと、r≠0r\neq0 の点で

∇⋅rr3=0\nabla\cdot\frac{\bm{r}}{r^3}=0

である。点電荷の電場は r/r3\bm{r}/r^3 に比例するので、電荷の無い点では電場の湧き出しが無いことがわかる。原点での振る舞いは 1.3 節で扱う。

確認テスト

オリジナル

  1. 1.1-1 スカラー場 f=x2+2y2+3z2f=x^2+2y^2+3z^2 の等値面のうち点 (1,1,1)(1,1,1) を通るものについて、その点での単位法線ベクトルを求めよ。
  2. 1.1-2 A=(yz, zx, xy)\bm{A}=(yz,\,zx,\,xy) の発散と回転を求めよ。さらに A=∇f\bm{A}=\nabla f となるスカラー場 ff を1つ求めよ。
  3. 1.1-3 定数ベクトル ω\bm{\omega} について、v=ω×r\bm{v}=\bm{\omega}\times\bm{r} の発散と回転を求めよ。
  4. 1.1-4 恒等式 ∇⋅(A×B)=B⋅(∇×A)−A⋅(∇×B)\nabla\cdot(\bm{A}\times\bm{B})=\bm{B}\cdot(\nabla\times\bm{A})-\bm{A}\cdot(\nabla\times\bm{B}) を、Levi-Civita 記号を使って証明せよ。

木下の勉強ステータス

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